満月の夜に奴はやってくる・・・。

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LGR
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<ネルフ本部>

明後日に結婚式を控えたゲンドウとリツコを祝い、明日に催されるネルフ内輪だけの祝
賀パーティーが開かれることとなった。

今日は、ネルフスタッフの親しい者だけが集まりパーティー準備。

「今迄、苦労掛けたな。リツコ。」

「あなたと結婚できる日が来るなんて、思ってませんでしたわ。」

「もう、わたしにはお前しかおらんのだ。」

「嬉しい・・・。」

まさにLGR(ラブラブ・ゲンドウ・リツコ)全開の状態の2人。職員もこれ迄の2人
の・・・特にリツコの・・・苦労を知っている為、皆で喜んでいた。

「どーすんのよぉ? もうすぐリツコがアンタのお母さんになるのよぉ?」

「何て呼べばいいのかなぁ。」

「今迄通りでいいんじゃない?」

「リツコさん?」

「そうそう。変に意識しない方がいいって。」

今後リツコにどう対応しようか悩むシンジに、いろいろとチャチャを入れてくるアスカ。
そんな様子を見たミサトが、更に横からチャチャを入れてくる。

「あっらぁ。人事みたいに言ってるじゃない? アスカぁ?」

チシャ猫の様な目で、アスカのことをジトリと見据える。まさか親友に先を越されると
は思っていなかった花の三十路女。

「どういうことよ?」

「そのうちリツコは、あなたのお義母さんになるんじゃないのぉ?」

「うっ・・・。」
「ミサトさんっ! からかわないで下さいよっ!」

「あっらぁ。知ってんのよぉ。わたしがいない所で、なーんかイチャイチャしてんの。」

「そんなことしてませんよっ!」
「そんなことしてないわよっ!」

「じゃ、これは何かしらーん?」

終始ニヤニヤしながら、豊満な胸を覆う上着の胸ポケットから取り出したるは、アスカ
とシンジのイチャイチャ証拠写真が多数。

「な、なによこれーーーーっ!!!!」

ミサトから写真を引ったくり、ワナワナと写真を持つ手を震わせて睨みつけるアスカ。
シンジは頭を抱えて蹲っている。

「ネルフの情報収集能力を甘くみないことねっ!」

偉そうに踏ん反り返るミサト。

「情報収集じゃないでしょうがっ! 覗きよっ! れっきとしたプライバシーの侵害よっ!」

そんなこんなでなんだかんだあるものの、結局のところ皆ゲンドウとリツコの結婚に浮
かれている。それは世界が平和になった証しなのだ。

「さぁさ、司令もリツコも帰ったことだし、そろそろ明日の準備を始めるわよーっ!」

ミサトの音頭でそれぞれが自分の持ち場へと移動し、明日のパーティーの会場セットや
小物,料理作りを始め様としていた。

「私・・・少し寝るわ。」

そんな中、1人うかない顔をしているレイがボソリと言う。

「どうしたの?」

「体調が悪いの・・・。」

ボソボソと言いつつ仮眠室へ歩いて行くレイ。出生の秘密を知っているミサトは、もし
かしたら感情の何処かにユイの記憶が残っていて、この結婚を辛く想っているのかと、
そっとしておくことにした。

レイは、仮眠室へ向かいながら不思議に思う。

どうしたのかしら?
おめでたいのに、イライラする・・・。

そこでレイはようやく自分の体の異変に気付いた。

はっ!
今日は満月っ! 
そう、そうだったのね。

どうやらイライラの原因は、ゲンドウとリツコには関係がない様だ。
レイは決まって、満月の夜イライラして寝ることもなかなかできなくなる体質だった。

だが、ただ1つ。それを解決する方法をレイは知っていた。

カポッ!

恐怖の夜は始まった。

<調理場>

ヒカリとマヤは、ケーキや料理作り担当。ミサトも当初このメンバーに入ろうとしてい
たが、ネルフスタッフの猛反対で違う場所へ移ったのは周知の事実。

「やっぱり、ヒカリちゃんにお手伝いに来て貰って助かったわ。」

「料理好きですからぁ。」

唯一、ネルフスタッフ以外で助っ人に来ている洞木ヒカリ。

「ほんと、そうみたいね。」

「それに、鈴原が赤木博士にはいろいろと世話になりましたし。」

バルディエルの事件の後、トウジの足をバイオテクノロジーでほぼ元の形に戻したのは
リツコである。そんな経緯があるので、ヒカリもリツコとかなり親しくなっていた。

「料理の方、だいぶできて来たわ。ヒカリちゃんのケーキは?」

「はい。もうすぐです。」

「この分じゃ、終電迄には帰れそうね。」

「はいっ! 頑張りましょ。」

ほとんどの料理も作り終わり、最後の仕上げにかかるマヤとヒカリ。

しかし、今日は満月の夜だった。

満月の夜に奴はやってくる・・・。

ペタペタペタ。

廊下から不気味な足音。

「あら? ヒカリちゃん。何か音しない?」

ペタペタペタ。

「ん? 本当ですね。」

ペタペタペタ。

「ちょっと見てきてくれる?」

ペタペタペタ。

「はい。」

ペタペタペタ。

何の音だろう?と、ヒカリが調理場の扉を開けようとする。

しかし、その扉は自動的に開かれた。

恐怖の儀式が始まる。

「がおーーーーーーーー。」

突然現れたリトルゴジラ。

「キャーーーーっ!」

悲鳴を上げるヒカリ。

「なっ! なにっ!?」

マヤも恐怖に顔を引き攣らせる。

ペタペタペタ。

問答無用でリトルゴジラ進入。

「いやーーーっ! なにーーーっ!?」

その場に立ち尽くすヒカリ。真っ青。

ペタペタペタ。

リトルゴジラが料理の側へ駆け寄る。

ムシャムシャムシャ。

「いやーーーーっ! りょ、料理がーーーーっ!」

ムシャムシャムシャ。

ありとあらゆる料理が食べられていく。

「やめてーーーーーっ!」

折角作った料理。

マヤは、おたまを持って怪獣に飛び掛かろうとした・・・が。

クルリ。

体はそのまま、リトルゴジラの顔だけ後ろを向いた。

「がお?」

「いやーーっ! エクソシストーーーっ!」

悲鳴を上げるマヤ。

ムシャムシャムシャ。

両手でよっこらしょと顔を元に戻したリトルゴジラに、今度はケーキが食べ尽くされて
いく。

「誰か助けてーーーっ!」

ヒカリが悲鳴を上げ助けを呼ぶ。

「がお? がおーーーーーーーー。」

人が駆け付けて来てはまずいのか、リトルゴジラは急ぎ足で去って行った。

ペタペタペタ。

後に残されたのは、食べ尽くされた料理とケーキの残骸。

「しくしくしく。」
「しくしくしく。」

その後人が駆け付けた時、そこには徹夜が決定して悲しみに暮れるマヤとヒカリの姿が
あったと言う。

だが、恐怖の儀式はまだ始まったばかり。

「がお?」

<イベント会場>

ここは、明日ゲンドウとリツコのお祝いパーティーが開かれることになっているイベン
ト会場。

シンジ,青葉,日向が、飾り付けや席のセッティングを行っている。本来加持もここに
いるはずなのだが、夕方から姿が見えない。逃げた。

青葉と2人で会場の周りに飾り付けをするシンジ。日向はテーブルにクロスを掛けたり、
椅子のセッティングなどをしている。

「これからシンジくんは、赤木博士と暮らすのかな?」

「いえ、ぼくはもうしばらくはミサトさんと・・・。」

「アスカちゃんのこともあるしな。」

「そんなんじゃありませんっ!」

またしても、二言目にはアスカのことでからかわれ、恥ずかしそうに反論にならない反
論をする。

「もうすぐ終わりだな。終電迄には帰れそうだ。」

「そうですねっ!」

ほとんどの会場の準備も作り終わり、最後の仕上げにかかるシンジ,青葉,日向。

しかし、今日は満月の夜だった。

満月の夜に奴はやってくる・・・。

ペタペタペタ。

廊下から不気味な足音。

「ん? なんの音だ?」

青葉が不思議そうな顔をする。

ペタペタペタ。

「さぁ、ちょっと見てきます。」

「おう。頼むよ。」

何の音だろう?と、シンジがイベント会場の扉を開けようとする。

しかし、その扉は自動的に開かれた。

恐怖の儀式が始まる。

「がおーーーーーーーー。」

突然現れたリトルゴジラ。

「なんだ????」

ペタペタペタ。

目が点になるシンジの横を、リトルゴジラが通り過ぎる。

ペタペタペタ。

「なんだ? なんだ?」

ミラーボールをセッティングしようと、机の上に椅子を乗せその上に立っていたシゲル
が目を丸くした。

ガシャーンっ!

次の瞬間、こともあろうか日向がセッティングしていたテーブルをひっくり返すリトル
ゴジラ。

ガシャーンっ! ガシャーンっ! ガシャーンっ!

もの凄い勢いでテーブルをひっくり返していく。

「なんだこの怪獣はーーーっ!」

焦る日向。

ガシャーンっ! ガシャーンっ! ガシャーンっ!

問答無用で、次から次へとひっくり返されるテーブル。

「わーーーっ! せっかくセッティングしたんだーーっ!」

ガシャーンっ! ガシャーンっ! ガシャーンっ!

「やめろーーーっ!」

飛び掛かる日向。

ペタペタペタペタペタペタペタペタペタ!!!

走って逃げ出す。

「このーーーっ!」

椅子を振り翳し攻撃するシゲル。

ペタペタペタペタペターーーーペッターーーーーン!!!

リトルゴジラが、青葉を踏み台にして飛び上がる。

ペタンっ!

机の上に置いていた椅子に飛び乗る。

片手を大きく振り上げるリトルゴジラ。

ミラーボールは目の前。

「わーーーーーーっ! やめてくれーーーーーーーーーーっ!」

せっかく組みたてたミラーボールが、リトルゴジラの前に風前の灯火。

両手で頭を抱えて、真っ青になる青葉。

グワシャーーーーンっ!

手が振り下ろされた。

ミラーボールを叩き落とす。

ガンガラガッシャーーーンっ!

床に転がり粉砕するミラーボール。

「わーーーっ! ミ、ミラーボールがぁぁぁっ!」

ペタペタペタペタペタペタペタペタペタ!!!

走るリトルゴジラ。

「このーーーっ!」

シンジが迫る。

「がお?」

振り向くリトルゴジラ。

「ん?」

シンジの目とリトルゴジラの目が一直線に合う。

「がお?」

「ん?」

見つめ合うシンジとリトルゴジラ。

ぽっ!

ぽっ!

頬を染めるシンジとリトルゴジラ。

2人はそのまま見詰め合う。

シンジは思う。

いぼいぼが可愛い・・・。

「シンジくんっ! 何してるんだっ! 早く捕まえろっ!」

「はっ!」

日向の言葉に、我を取り戻したシンジは、両手を広げてリトルゴジラを捕まえようとし
た。

ペタペタペタペタペタペタペタペタペタ!!!

逃げるリトルゴジラ。

「待てーーーっ!」

ペタペタペタペタペタペタペタペタペタ!!!

体型の割りにめちゃくちゃ速い。

バタン。

そして、リトルゴジラはイベント会場から逃げ出し、何処へともなく消えて行った。

後に残されたのは、無残に破壊しつくされたイベント会場。

「しくしくしく。」
「しくしくしく。」

そこには、徹夜が決定して悲しみにくれる青葉,日向の姿があった。

いぼいぼ可愛かった・・・。
アスカ、今度付けてくれるかな?

シンジだけは、変なことを考えていたようだ。

恐怖の儀式はまだまだ続く。

「がお?」

<ミーティングルーム>

アスカとミサトは、ミーティングルームを借り切って、明日使う小物や飾り物などを作
っていた。

「シンちゃん、変に気負いしてないみだいで良かったわね。」

「なんかシンジも喜んでるいたいよ?」

「それがいいわ。」

「アイツ、変なとこでウジウジ悩むとこあるからねぇ。」

「それが、シンちゃんなのよ。」

そんな会話をしながら、紙で小物を作ったりイベントルームに置く木や花の装飾をして
いく2人。

「終電迄には終わらせちゃうわよん。」

「わかってるってっ!」

ほとんどの作業も終わり、最後の仕上げにかかるアスカとミサト。

しかし、今日は満月の夜だった。

満月の夜に奴はやってくる・・・。

ペタペタペタ。

廊下から不気味な足音。

「なんの音?」

ペタペタペタ。

「何かしら?」

ペタペタペタ。

「アスカ? ちょっと見て来て?」

ペタペタペタ。

「わかったわ。」

ペタペタペタ。

何の音だろう?と、アスカがミーティングルームの扉を開けようとする。

しかし、その扉は自動的に開かれた。

恐怖の儀式が始まる。

「がおーーーーーーーー。」

突然現れたリトルゴジラ。

「なによアンタっ!!!!」

ペタペタペタペタペタペタペタペタペタ!!!

ミーティングルームに駆け込んで来るリトルゴジラ。

「がおーーーーーーーー。がおーーーーーーーー。がおーーーーーーーー。」

ペターーーーン。

机の上に飛び乗る。

今迄作った装飾品が、ぺったんこになってしまった。

ペタンッ! ペタンッ!

机の上で飛び跳ねる。

「なにすんのよっ!!!」

怒り狂ったミサトが、飾りつけた木をリトルゴジラ目掛けて振り回す。

「ガオーガオーガオー!!」

ペッタンペッタンペッタンペッタン!!!!!

逃げ惑うリトルゴジラ。

「こんちくしょーーーーっ!!!」

アスカも木を両手に持って逃げ惑うリトルゴジラを追い掛ける。

「ガオーガオーガオー!!」

いくらなんでも相手が悪かった。

アスカとミサトのコンビを相手にしてはいけない。

リトルゴジラっ! ピンチっ!

「よくもやってくれたわねーーーっ!!!!」

周りに大量に置いていたビールを次々と投げるミサト。

「ガオーガオーガオー!!」

ペッタンペッタンペッタンペッタン!!!!!

脂汗を流しながら、何とかよけて逃げるリトルゴジラ。

「うりゃーーーーーーっ!!!!!」

飾り付けていた花束をむんずと掴み殴り掛かるアスカ。

ドベキっ!!!!

脳天炸裂。

「ガオーガオーガオー!!」

ペッタンペッタンペッタンペッタン!!!!!

頭を押さえて必死で逃げる。

ズルっ!

滑った。

ミサトが投げたビールで床が濡れていた。

「ガオーガオーガオー!!」

涙目のリトルゴジラ。

「うりゃーーーっ!!!」

飛び掛かってくるミサト。

「ガオーガオーガオー!!」

ズルズル足を滑らせながらも、なんとか置きあがりリトルゴジラは逃げる。

ペッタンペッタンペッタンペッタン!!!!!

逃げ足だけは異様に速い。

「まてっ! こんちくしょーーーーっ!!!!」

廊下に逃げるリトルゴジラ。

がっ! 真後ろ迄アスカとミサトが迫って来ている。

「ガオーガオーガオー!!」

目に涙を浮かべて逃げる。

アスカが手近にあった消化器を投げ付ける。

ガコーーーン。

リトルゴジラの脳天に直撃。

「ガオーガオーガオー!!」

あまりの痛さに涙がドバドバ出てくるが、止まると殺される。

死ぬ思いで我慢して逃げるリトルゴジラ。

「おんどりゃーーーーっ!」

ミサトもしつこい。

「まてこのーーーーーっ!」

アスカもまたしつこい。

ペッタンペッタンペッタンペッタン!!!!!

逃げるリトルゴジラ。

廊下の曲がり角を曲がる。

続いてアスカとミサトも曲がる。

「えっ!?」

唖然とする2人。

リトルゴジラが消えた。

「なんで?」

「何処行ったのよっ! あの怪獣っ!」

ふと見ると、そこには女子更衣室があった。

「ミサトっ!」

「間違い無いわねっ!」

2人して目配せすると、更衣室の扉のオープンスイッチをオン。

ウイーン。

扉が開いた。

「どうしたの?」

しかし、そこに立っていたのはレイ。

「??????????」
「??????????」

わけがわからないアスカとミサト。

ボストンバック片手に、澄ました顔で通り過ぎるレイ。

「あの怪獣・・・何処行ったの?」

わけがわからないという顔で、アスカを見下ろすミサト。

「き、消えた・・・。」

アスカの顔が引き攣る。

「ま、まさか、お化け。」

ミサトの顔も引き攣る。

「「いっ、いやーーーーーーっ!!!!!!!!!!!」」

2人は脂汗と冷汗をダラダラ流しながら、ミーティングルームへ戻って行ったのだった。

<仮眠室>

ボストンバッグをかたわらに置いたレイは、ようやく仮眠室で横になることができた。

どうも満月の夜になると、イライラが募り眠ることもできなくなるのだが、なぜかこの
着ぐるみを着ると心のイライラがなくなり眠ることができる。

着ている間は記憶が無くなるのだが、いつも意識が戻ると汗ばんでいるので、何か運動
でもしているのだろう。

今日もスヤスヤと眠りにつくことができる。

レイ幸せ。

「スースー。」








その頃、徹夜が決定したネルフスタッフは、涙を流しながら、明日のイベントの用意を
やり直していた。

まさかあのリトルゴジラが、LGR(リトルゴジラ・レイちゃん)だとは、誰も知らな
い。




恐怖の儀式はまた満月の夜に繰り返される。

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作者注:この小説は、リトルゴジラ・レイちゃん復活委員会に協賛しています。また、
        リトルゴジラ・レイちゃんの設定を変えている部分があります。
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fin.
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