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知らなかったから3
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作者注:この小説は、過去の"知らなかったから"シリーズとの繋がりは全くありません。
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<とある田舎の小さな村>

2017年。鈴原トウジは16歳になっていた。未だ入院している妹の入院費を稼がな
ければならない彼は、人には頼らず進学を諦め就職の道を選んだ。

だが、使徒戦の影響で世の中は極端に不景気になっており、未成年で保護者もおらず、
足の自由がきかない彼は、働き先を探すどころか保証人も無しに住む家を貸してくれる
所すら見付からない状況だった。

そんな苦労の末、ようやく彼はこの村の工場で働くことが決まり、工場の近くに空いて
いた古屋も借りることができた。

「すまんなぁ。ワイの為にこんなとこ迄連れて来てもうて。」

「いいのよ。ノゾミも、もうしっかりしてきたし。」

「よっしゃぁ。明日からバリバリ働くでぇっ!」

「頑張ってね。」

やっとのことで住む家を借りれた彼は、将来を誓い合ったヒカリと今日からこの家へと
引っ越して来た。2人は貧しかったが、仲睦まじい幸せな生活が始まろうとしていた。

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翌日、初仕事が終わったトウジは、引っ越して来たばかりで目新しい夕暮れの村を、ヒ
カリと体を寄せ合って散歩していた。

「こういう田舎も、のんびりしててええなぁ。」

「わたしも東京市より、こっちの方が合ってるかもしれないわ。」

「退院したらな、妹もこっち呼びたいんやけどええかいな?」

「もちろんよ。みんなで暮らしましょ。」

「すまんなぁ。」

辺りをぐるりと見渡しただけで、村の全貌がわかる様な山間に挟まれた小さな村。人口
も100人少々なので、村人全員の顔を覚える日も近いだろう。

「ちょっと、役場の方も見に行かへんか?」

「そうね。これから、いろいろお世話になるだろうし。」

「せやな。病院とかも見とこか。」

2人は村の見物を楽しみながら、生活に必要になりそうな場所をチェックしていく。第
3新東京市に比べると不便ではあるが、のんびりと生活するには良い所かもしれない。

ドンっ!

役場の方へ向かって歩いていると、突然角から自転車に乗って曲がって来た同じ年くら
いの少年が、ヒカリにぶつかった。

ガシャン。

転ぶ少年。ヒカリも突き飛ばされ、よろけて転びそうになる。

「おいっ、ヒカリ。大丈夫かいな?」

「うん。平気。」

「おいおい、気ーつけて貰わな困るがな。」

ヒカリにも特に怪我は無い様だったので、トウジは転んだ少年の方へ近付く。

「なんだとっ! その女のせいでこけたじゃねーかっ!」

「なんやてーーっ!? ぶつかって来たんは、そっちやんけっ!」

平和に話し掛けたにも関わらず、ぶつかって来た本人が喧嘩腰にヒカリのことを非難し
てきたので、頭に血が上る。

「黙れっ! 人の自転車にぶつかったのはそっちだろうがっ!」

「ボケかっ!? わけわからんこと抜かすなっ!」

「この野郎っ!!! これでも食らえっ!!!」

言い合いになった途端、その少年はこともあろうか地面に落ちていた石を掴んでヒカリ
に殴り掛かって来た。当然トウジが黙って見ているはずもなく、間に体を割り込ませ受
けて立つ。

「何さらしとんじゃっ! ワレっ!」

「なんだとっ! やる気かっ!」

「ええ根性やんけっ!」

2人の少年は、そのまま縺れて殴り合いの喧嘩になる。トウジの運動神経は元々ずば抜
けており、片足が義足とはいえその腕力に適う相手ではなかった。

ドガッ!

トウジのこぶしが炸裂する。少年は、鼻血を出しながら地面に転がった。

「これに懲りたら、2度とヒカリに手出すなやっ!」

「くそっ! 俺にこんなことして、ただで済むと思うなーーーっ! 覚えてろっ!」

顔を腫らした少年は、捨て台詞だけを残して自転車に乗り何処へともなく消えて行った。
これがあの、後悔してもしきれなくなる事態の始まりだった。

家へ帰ったトウジは、今日もヒカリの料理に舌鼓を打つ。材料は安物でも、ヒカリの手
に掛かれば全てがご馳走に早変わり。

「いやぁ、やっぱ美味いわ。飯ん時がいっちゃん幸せやのう。」

「毎日お世辞言わなくても、ちゃんと作ってあげるわよ。」

謙遜しつつも、嬉しそうなヒカリ。

「お世辞やあらへん。ほんま美味いんや。」

未だかつてヒカリの料理がまずかったことは1度たりともない。ただでさえ料理が上手
い上、愛するヒカリの手料理。不味いはずがない。

かと言って愛する人の手料理なら全てが美味しいとも限らないらしい。某諜報部員のお
っさんは、愛する相手の手料理が1番不味いと、溢していると言うことだ。

「今日の仕事、どうだったの?」

「今日は説明を聞いただけや。明日から本番やなぁ。」

「そう、頑張ってね。」

これで仕事も軌道に乗れば、当分安定した生活を送れるだろう。全てが順調に進み始め
様としていた。

その時。

ドンドンドン。

容赦無く、玄関の扉を叩く大きな音が聞こえて来た。その音から、様子がおかしいと感
じたトウジは、ヒカリを家の奥に残して出て行く。

「なんですかいなぁ。」

「貴様どういうつもりじゃっ!」

玄関に出ると、村の工場の社長と先程ケンカした少年の姿があった。

「あっ! お前はっ!」

「雇ってやった恩も忘れて、わしの息子に手を上げるとは何ごとじゃっ!」

カンカンに怒っている社長。その後ろであの少年が、ほくそ笑んでこちらを見ている。

「ほやかて、こいつが先に喧嘩仕掛けて来たさかい、しゃーなくやったんやがな。」

「違うよっ、パパ。この男が、急に暴力振るって来たんだ。」
「なんだとっ、貴様っ!」

「なんやてーーーっ!」

あらぬことをベラベラと喋り出す少年。さすがにそんな言い掛かりをつけられては、黙
っているわけにはいかない。

「ほないなわけないやらろがっ! お前がっ!」

「わしの息子に、お前呼ばわりするとは何ごとじゃっ! わしに逆らったもんは、この村
  じゃ生きて行けんぞっ!」

「ほやかてっ! こいつがっ!」

そこに、奥の部屋で話を聞いていたヒカリが、慌てて飛び出しきたかと思うと、トウジ
の頭を押さえつけてその親子の前で土下座する。

「すみません。わたしが悪かったんです。」

「ちょっと、待たんかいっ! ヒカリっ!」

「ほら。早く謝って。」

「ちょー待てや。なんで、ワイがっ!」

「謝ってっ!」

「うぐっ。」

無理矢理トウジを土下座させ、平謝りを続ける。そんな様子を、社長とその息子は優越
感に浸って見下ろしていた。

「わしら親子がどれだけ恐ろしいか、良くわかったろう。これからは気をつけろよっ!
  ワハハハハ。」

「申し訳ありませんでした。これからは、よくよく気をつけます。」

満足気に玄関の扉も閉めずに帰っていく親子を、土下座したまま見送るヒカリ。そして、
2人の姿が見えなくなった頃合いを見計らって、玄関の扉を閉めに行った。

「なんでやっ! ワイらが悪いんちゃうやんけっ!」

「でも、社長さんなんでしょっ? 首になったらどうするの? 妹さんの入院費は? 住
  む所は?」

「う・・・。」

働き口もなかなか見付からないが、それ以上に保証人も無く住む所がそう簡単に借りれ
ない。ここは、ようやく見付かった寝れる場所なのだ。

「犬にでも噛まれたと思って、気にしなきゃいいのよ。」

「すまん・・・ワイのせいで。」

「さ、ご飯の続き、食べましょ。」

「ほんま、すまんのぉ。」

しかし、ことはそれだけでは済まなかった。翌日、工場へ行ったトウジを、あの少年が
待ち構えていた。

「おぉ。働いてるんかっ。」

ベルトコンベアで流れてくる機械を組み立てるトウジの側へ、ニヤニヤしながら近寄っ
てくる少年。トウジは、昨日ヒカリに言われたこともあり、無視して仕事を続ける。

「汗掻いてるんちゃうか? 冷やしてやるぜ。」

「うっ!」

ひたすら無視を決め込んでいると、今度は頭の上から牛乳を掛けて来た。堪忍袋の尾が
切れそうになるトウジだったが、妹のことを考えるとここをクビになるわけにもいかず、
奥歯を噛み締め我慢する。

「やめてくれまへんか。」

「なんだとっ。せっかく汗を冷やしてやってんだ。『ありがとうございます』だろうが
  よ。えぇ?」

更に仕事を続けるトウジの頭から、牛乳をダラダラと垂らす少年。

「くっ。あ、ありがとうございます。」

「そうだ。それでいいんだ。はははっ! 牛乳で部品汚すなよっ。」

少年はひとしきりトウジをからかうと去って行く。

そんな嫌がらせは、翌日もその翌日も、毎日の様に続いた。

トウジはヒカリに心配させまいと、何も言わず堪えて仕事を続けていた。

しかし、数日経ったある日。とうとうトウジの我慢も限界となった。

「ヒカリ。もう我慢ならんのや。」

「そう、そんなことになってたの・・・。」

「ここを出たら住む所があらへん。ヒカリは、東京市に帰ってくれへんか?」

「ううん。」

「ほやかて・・・。」

「鈴原が、ここが嫌なら他へ行きましょ。」

「・・・・。」

「住む所が無くてもいいじゃない。」

「それは、あかん。」

「どうして?」

「ワイは、男やさかいかまへん。ほやけど・・・。わかった。もう少しここで頑張って
  みるわ。」

「鈴原・・・。」

「すまんのぉ。愚痴を溢してもうて。」

ドカンっ!

その時、玄関で大きな物音がした。何事かと覗き込んで見ると、社長の息子と幾人かの
友人の男が、ドアを蹴破り入って来ている。

「おぅっ! 鈴原よぉ。ちょっと借りたいもんがあってな。」

「お前らっ! 何しとんやっ!」

ぎょっとして飛び出して行くトウジ。しかし、そんなトウジを冷ややかに笑いながら、
幾人もの男が押し入って来る。

「暇でよぉ。ちょっと、お前の女貸してくれへんか。」

「なっ! ざけんなコンボケーーッ!」

「おぉ? 社長の息子の俺に、反抗する気かっ? おいっ! あんな奴やっちまえっ!」

社長の息子の命令で、屈強な5人程の男達が殴り掛かって来た。

「ヒカリ逃げーーっ! 」

「でもっ!」

「『でも』やあらへんっ! 早よにげーっ! お前がおったら邪魔やっ!」

「わ、わかったっ!」

裏口の勝手口から裸足で飛び出すヒカリ。

ヒカリは逃げた。

ただひたすら真っ暗な村を走った。

しばらく走ると、田舎の駅が見えて来た。

電車に乗る。

電車が走る。

ヒカリを乗せて。

第3新東京市目指して電車が走る。

頼れる友人がいる場所へ。

<ミサトのマンション>

「で、頼る人もいなくて、どうしようかと思ってアスカに相談に。」

ミサト,アスカ,シンジの前で、これまでの事情を説明するヒカリ。

「なんだってーーーっ!!!」

親友のトウジがそんな目に合っていることを知り、穏和なシンジの目が吊り上がる。

「ざけてんじゃないわよっ!!!!!」

バンっ!

泣きそうなヒカリを前にし、アスカが髪を逆立てテーブルを殴り付ける。

バシュッ!

以前、自分のミスでトウジに怪我をさせてしまったミサトの握るエビチュの缶が、ビー
ルを吹き上げ握り潰された。

「シンちゃんっ! アスカっ! 出撃準備っ!」

バタバタと走り出す葛城家メンバー。

「へ? あの? 出撃って・・・。」

唖然とするヒカリ。

「あっ! ファーストっ? 非常事態宣言発令よっ! 第1種戦闘配備っ!」

レイの携帯に電話を掛けるアスカ。

「父さんっ! そういうわけなんだっ! N2地雷の準備をっ! うんっ! 500発あれ
  ば十分だよっ!」

ゲンドウに電話を掛けるシンジ。

「加持っ! 諜報部員全員徴収っ! 村人は非難させといてっ!」

加持に電話を掛けつつ、出動準備を整えるミサト。

「あぁ、マナっ!? 戦自の出動可能な戦車、全機出動依頼しといてっ!」

今度は、シンジはマナに電話している様だ。

「ちょっと・・・あの・・・第1種って・・・。あの・・・N2って・・・村の社長さ
  んなんだけど・・・。」

目の前で、何が起こり始めているのかわからず・・・いや理解したくないヒカリは、そ
の場に唖然と立っていることしかできない。

「アスカっ! シンちゃんっ! ヘリが来たわよっ!」

ベランダに到着するヘリに、シンジとアスカそしてミサトが乗り込んで行く。

誰もいなくなった家に、開きっぱなしのベランダの窓から風が吹く。

ひゅーーーー。

「・・・・・・。」

後には、一陣の風が吹き抜けた後のミサトのマンションに残されたヒカリだけが立って
いた。

<とある田舎の村>

トウジは、自分の家で社長の息子に縛り上げられていた。

「おらっ! あの女を何処にやったんだっ!」

「知るかいっ! 知ってても教えるかっ!」

「さっさと吐かんと、痛い目に合うぞっ!」

ドカッ!

体中殴り蹴られ、腫れたトウジを更に殴り付ける社長の息子。

ドカドカ。

「ぐっ!」

「パパは社長なんだ。俺に逆らったらどうなるか思い知れっ!」

ドタドタドタ。

そこへ社長の息子が見たこともない少年と、蒼い瞳と紅い瞳の絶世の美女が2人、玄関
から入って来た。

「あっらぁ、鈴原、男前じゃん。」

「そ、惣流・・・、シンジに綾波まで・・・なんで・・・。」

「おいっ! トウジから離れろっ!」

社長の息子を睨み付け、怒声を上げるシンジ。

「なんだと貴様っ! 俺のパパが、社長だってこと知ってるのかっ!」

「それを言ったら、ぼくの父さんは・・・。」
「この村。用済み・・・。」

「なんなんだっ! お前らっ!」

ニヤリと笑って、アスカが近付く。

「確認するけどさぁ、なんで鈴原がそんなになってるの?」

「社長の子供の俺に手を出したら、どうなるか教えてやってんだよ。ハハハハ。」

「あっらぁ〜。そうぉ〜。なら、アタシも教えてあげるわ。」

アスカが蒼い瞳をキっと見開いた。

「アタシ達の友達に手を出したらどうなるかってねっ!」

ズガーーーン。

トウジが縛られていた椅子の背後にあった壁が一気に崩れ落ち、それと同時にヘリから
繋がったワイヤーがトウジを吊り上げた。

「なっ! なんだっ!?」

びっくり仰天状態で、腰を抜かさんばかりに驚く少年。

「うわーーーーーーっ! なんなんやーーーーーっ!!!!」

もちろん、吊り上げられたトウジも目を丸くして、悲鳴を上げている。

ズバッ! ズバッ! ズバッ!

トウジの家の玄関方面の3方向から、家を突き破りエントリープラグが突き出して来る。
それに乗り込んで行く3人の少年少女。

「うわーーーーーーっ! エヴァンゲリオンが、どうしてこんな所にーーーっ!???」

パニックに陥る社長の息子。

「ネルフに喧嘩を売ったら、どうなるか思い知るといいわっ!」

「ネ、ネルフぅぅぅぅっ!? ちょ、ちょっと待ってくれーーーっ! 俺はーーーっ!」

「さぁ! 早く逃げないと、死ぬよ?」

「待ってくれぇ。知らなかったんだ。知らなかったんだぁぁぁっ。」

グイーーーーーン。

エヴァ3体始動。

手には、ポジトロンライフル。

「助けてくれーーーーーーーーーーっ!!!!」

何がなんだかわからないまま、社長の息子と、一緒に来ていた男達は、無我夢中で逃げ出
す。

するとそこには、戦略自衛隊の戦車が数百台進行して来ていた。

「砲撃開始っ!!!」

ズドーーーーーン!
ズドーーーーーン!
ズドーーーーーン!
ズドーーーーーン!
ズドーーーーーン!

工場目掛け、戦車大隊が一斉に砲撃を開始する。

「うわーーーーーーーっ! パパの工場がぁぁぁぁぁぁああああっ!」

ズドーーーーーン!
ズドーーーーーン!
ズドーーーーーン!
ズドーーーーーン!
ズドーーーーーン!

顔を真っ青にしながらも、もう村に残っているのは自分達しかいない様である。必死で
逃げて行く社長の息子。

ゴーーーーーーーーーーーーーーーーー。

耳を劈く音が聞こえた。空を見上げると、月明かりに照らされネルフの爆撃機が、数百
機来襲している。

「な、なんなんだあれはーーーーーーーーーーーっ!!!!」

絶叫する社長の息子。

ズバーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
ズバーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
ズバーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
ズバーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
ズバーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
ズバーーーーーーーーーーーーーーーン!!!

轟音が轟いた。逃げながら振り返ると、3体のエヴァがATフィールドで建物から近隣
の山の土砂まで宙に浮かせながら、ポジトロンライフルを連射している。

木っ端微塵に吹き飛ぶ工場、村の施設。

「ぎゃーーーーーーーーーっ! む、村がぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

「N2地雷、N2爆雷投下よーーーいっ!」

爆撃機の中で、ミサトが指令を出す。

地上では、エヴァがポジトロンライフルの一斉射撃慣行中。

「シンちゃん、行くわよーーーーっ!」

戦車大隊が、退却していく。

エヴァは、ATフィールドで防御開始。

「投下っ!」

ズドドドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!
ズドドドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!
ズドドドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!
ズドドドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!
ズドドドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!
ズドドドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!
ズドドドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!
ズドドドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!
ズドドドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!

村にきのこ雲が無数に浮かぶ。

川を流れていた水が消える。

近隣の山が蒸発する。

クレーターが、大きく大きくどんどんと広がって行く。




そんな絨毯爆撃が永遠と続き、そして朝が訪れた。




「じゃーねー。ヒカリっ! 仕返しはしたわよーーっ!」

ヘリから村に下ろされたトウジとヒカリに笑顔で手を振るアスカ。

「じゃ、またねぇぇぇ。」

ヘリコプターで去って行くアスカ達。

飛び去って行くアスカ達を呆然と見上げるトウジとヒカリ。

「なぁ、ヒカリ?」

「ん?」

「ワイが、なんで人に頼りたくなかったか、知らんかったんか?」

「ううん・・・。」

「ワイが、なんでアイツらに頼りたくなかったか、知らんかったんか?」

「ううん・・・。」

「なんでアイツらに、助け求めたんや?」

「えっと・・・。」

働く所があるとかないとか。住む家があるとかないとか。

そんな問題では、なくなっていた。

山も川もクレーターとなり、なーーんにもなくなった村に呆然と立つ2人。

「なぁ、ヒカリ。」

「ん?」

「アイツらが、どんな奴らか知らんかったんか?」

「んーーーー。」

ぼーーっと、クレーターを眺めて立ち尽くすトウジ。

その横で、喋る気も起こらずぼーーっと立ちつくすヒカリ。

ヒカリは、最後に心の中で呟いた。



知ってた筈なのに・・・。

fin.
作者"ターム"へのメール/小説の感想はこちら。
tarm@mail1.big.or.jp
おまけ小話 -はずれくじ-

シンジ,レイ,アスカは、第3新東京市の夏祭りに来ていた。
アスカ「ねぇねぇ、くじ引きしてみない?」
レイ「くじ引き?」
アスカ「そうよ。当たったら、プレステ5よっ!」
シンジ「どうせ、当たらないよ。」
アスカ「当たるわよっ!」
嫌がるシンジと、よくわかっていないレイを無理矢理押して、くじ引きを始めるアスカ。
アスカ「あーーん。はずれぇ。もう一回よ・・・シンジとファーストは?」
一生懸命くじを捲るレイ。
レイ「アっ! スカ。」
はずれだったようだ。
シンジもくじを捲る。
シンジ「アっ! スカ。」
アスカ「むっ!」
なんとなく、ムッとするアスカ。その横で次々とお金を払い、くじを捲るシンジとレイ。
シンジ「アっ! スカ。」
レイ「アっ! スカ。」
シンジ「アっ! スカ。」
レイ「アっ! スカ。」
アスカ「むむむむむっ!」
シンジ「アっ! スカ。」
レイ「アっ! スカ。」
シンジ「アっ! スカ。」
レイ「アっ! スカ。」
アスカ「いちいち、”アっ!”を付けて、声に出すなーーーーっ!!!!」
アスカが怒声を上げたので、視線を向けるシンジ。
シンジ「どうしたの? ア、スカ。」
ブチン。
アスカの何かが切れた。
ドカーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!
次の瞬間、金魚掬いの金魚と一緒にシンジは泳いでいたのだった。

fin.
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