2025年4月

第3新東京市郊外にある一件のボロアパートの一室。

部屋は多少散らかってるが汚いというほどでもない。

部屋の隅にはチェロとカメラがある。

そんな部屋の真中に布団が一つ敷かれてる。

ジリリリリ・・・・

けたたましく鳴り響く目覚まし時計の音。

時計の針はまだ午前5時を指したところだ。

・・・・チン

布団の中から勢いよく手だけが伸びてきて鳴り響く目覚ましを止める。

「う・・・う〜ん・・・くそっ・・・バイト行かねば」

勢いよく起きあがる青年。

彼の名前は碇シンジ。

黒髪の結構ハンサム系の顔立ちをしている。

「あつい〜」

そう言いながら着々と着替えをすましていく。

セカンドインパクトにより地軸が傾きその影響で日本は常夏の国と化してる。

「こんな夜も明けきらないうちから労働に赴かなければならないとは・・・」

カチッ

コーヒーでも飲もうかとお湯を作ろうとしてコンロのボタンを押すが火がつかない。

「あれ?」

カチッカチッ

何度やっても結果は同じである。

「止められてる・・・うぉー・・・」

しかたなしにコーヒーをあきらめて玄関に向かう。

「何だよ・・・今回は早いじゃないか・・・」

ぶつくさと言いながらバイトに行くため部屋を後にした。

 

No More Tears

VOL.1 社会のはみ出し者は自己変革を目指す scene.A

 

都心に近い私鉄沿線の小さな街の朝は人よりもカラスの方が早起きだったりする。

第3新東京市立第壱高校前のコンビニ「ネルフ」。

ここは朝や夕方になると高校生でごった返す結構繁盛しているコンビニである。

シンジはここで働いている。

「二十円のおつりです。ありがとうございました」

女生徒におつりをわたす。

まだ朝早いのか客はさっきの女生徒を最後にだれもいなくなった。

最後の客を見送ったあとふと溜め息がもれる。

(月末かぁ・・・家賃払わないとなぁー・・・あー・・・ガス代もか・・・ガスが使えないとなんにもできないからなぁ・・・しかし、この前溜まってた水道料金払ったばっかだし)

ふと〈愛の募金〉と書かれた箱が目に入る。

「・・・・・」

カァァァ

外からシンジを呼ぶようにカラスの声が鳴り響く。

外に目を向けると1羽のカラスが入り口のところに立っていた。

 

「ほら。残り物だけど。食いな」

シンジが弁当を一箱カラスたちの前に置いてやる。

それにいっせいに群がるカラス達。

「・・・・・」

「何や?カラスなんかにエヅケしてんのかオマエ?それ弁当の残りとちゃうん。店長に怒られるで」

カラス達を見ていたシンジに後ろから声がかかる。

シンジが慌てて振り向くとシンジと同じ格好をした男が今朝の各新聞を入り口に並べていた。

「内緒にしといてよ、トウジ。どーせすてちゃうんでしょ」

「物好きなやっちゃな」

そう言いながらトウジと呼ばれた男は店の中に入っていった。

「確かに・・・」

シンジはまだエサを食べつづけているカラス達に視線をもどしてつぶやく。

「ん?」

視界の隅にビッコをひきながらピョコピョコ歩いてる足の悪い1羽のカラスが目に入る。

「あれ・・・この足の悪いヤツ・・・また来てる・・・」

そう言いながらカラス達が食べてる弁当を足の悪いカラスの方に寄せてやる。

「ホラ、お前。あぶれてるぞ」

「アタシにもちょうだい」

「え?」

突然横から女の子の声がかかる。

と同時に足の悪いカラスが声のかかった方にはばたく。

シンジがその方を見ると朝日をバックにしたキレイな金色をした髪をもつキレイな少女が壱高の制服を身にまとい立っていた。

カラスはその少女の肩にゆっくり着地する。

「・・・・・」

シンジは少しの間見とれていた。

「アタシにもお弁当ちょーだい」

少女は微笑みながらシンジにもう一度言う。

シンジはあわてて意識を現実に引き戻す。

「あ・・・あのね。そーゆーことしちゃいけないキマリになってるんだよ。ワルイけど」

シンジはその少女を直視できずに視線を少しそらしながら一応のキマリを言う。

「えー今カラスにあげてたじゃーん」

ホホを膨らませながらジト目でシンジを見つめる少女。

「いや・・・まーそーダケどね・・・」

その少女をチラッとみながら(かわいいな・・・)と思いながらも視線をさ迷わすシンジ。

「いーじゃん。アタシ今日起きるのちょっと遅れて朝ゴハン抜いてきちゃったんだぁ。おなかへってんのよー。カラスにあげたと思ってさぁ」

そう言って少し上目使いになってオネガイのポーズをする。

「・・・・・」

その姿に(やっぱりちょっとかわいいな・・・)と思いながら少し考える。

「ふぅー。わかったよ。ついてきて」

「やたっ」

シンジは少女を裏口に連れて行きコッソリと弁当を渡す。

「へへーサンキュウ」

少女は嬉しそうに微笑む。

「こんなトコ見られたらヤバイんだから」

そう言いながらシンジは周りに誰もいないかを確認する。

「ねぇー毎日ここでバイトしてんの?」

「ん・・・うん・・・週四日くらいかな・・・」

「大学?」

「・・・は去年卒業した。今はプーだよ」

「カラス好き?」

少女は少し顔を傾けて聞く。

シンジはその顔を直視できずに少し視線をさ迷わす。

「好きって・・・まぁ・・・な・・・馴れるとカワイイかな・・・」

「たまにコイツ世話になっちゃってありがとね」

少女はそう言って肩におとなしく留まってるカラスの頭をなでてやる。

「・・・それ・・・キミのカラス?」

「そーだよっ。名前カンスケってゆーの。かわいいでしょ?じゃねっ。オベントサンキュウ」

少女はそう言いながら校門に向かって走っていった。

「ちょっとかわいいかな・・・」

走り去って行く少女の後ろ姿を見つめながらつぶやく。

「おーおったおった。おおシンジそんなとこでさぼってんとはよこっちきて手伝えや」

「うん。今行くよ」

そう言いながらシンジはこれから忙しくなる店内に戻っていった。

 

街を夕日がきれいに染めている。

シンジは今日のバイトを終え部屋に戻ってきた。

部屋の前にある郵便受けをのぞく。

中には1枚のハガキがあった。

シンジはそれを取りだし部屋の中に入っていく。

カバンを玄関の壁にかけ、中に入っていきながらハガキに目を通す。

《いわゆる同窓会ってやつをやります。1年たって日頃のウップンを語り合いましょうー。日時は4月25日(日曜日)pm6:00〜 場所は・・・・・・》

シンジは一通り目を通すと無造作にハガキを丸めゴミ箱に投げ捨てる。

「今日もろーどーゴクローサン・・・てか」

ゴミ箱に入ったのを確認するとそのまま横になり目を閉じた。

 

木陰に一人の女性が座っている。

この常夏の国日本において維持するのが難しいぐらいに肌が白く透き通っており髪は日本人にはありえない空色をしている。

儚く見えるその雰囲気はその女性を一層美しく見せていた。

シンジはその女性の前まで歩いていく。

女性はシンジに気付いて微笑む。

『さよならだね』

『さよならって・・・実家の第2に帰るだけだろ』

『そうだけど・・・』

その女性は少し視線を外す。

『向こうで非常勤講師の口があるんだ・・・しばらく居るかもしんない』

『ふーん・・・そうなんだ・・・』

『ホントはね。こっちに居たいんだけどさ・・・ホラ、向こうの非常勤の口蹴ったってこっちで見つかるとも限んないし・・・それに・・・』

シンジを見てまた微笑む。

『それにもう今日から学生じゃないんだし。このままバイト生活続けてても発展しないじゃん』

 

ピンポーン

インターホンが鳴る。

シンジはその音を聞きゆっくり目を開く。

「う〜・・・寝ちった」

ピンポーン

再度鳴るインターホン。

シンジは起きあがると玄関に向かう。

「誰?」

そう言いながらドアを開ける。

「よっ」

「あっ、ムサシ」

 

整理された机の上に水の入ったコップが1個置いてある。

「・・・何だよコレ」

「見ての通り水だよ」

「そうじゃなくてジュースとかないの?」

「ない。いらないんだったら片付けるよ」

そう言いながら部屋に落ちてるゴミを袋にまとめていくシンジ。

「誰もいらないとは言ってない」

そう言ってムサシは水をいっき飲みする。

「ムサシ今日会社は?」

「今日は土曜ダロ」

そう言ってあらためて部屋を見渡すムサシ。

「しかしいつ来ても変わんねーな」

「ほっといてくれ」

「時代錯誤もいいとこだ。時代をチョーエツしてるってゆーの?電話はどこにこんなモンあったか知らんが留守録なしのヤツだし初代PSつながってるし・・・オマエん家来っと励まされるわーやっぱ。オレもまだまだ」

「何がだよ」

シンジはゴミ袋を結びながらジト目で睨む。

「ムサシこそ赤貧に喘ぐ友人にだなー手土産の一つくらい持ってくるってのが社会人のジョーシキってもんじゃないの?」

「オレが働いた金をなんでプータローに使わにゃならんのだ?」

そう言ってからかぶりをふるムサシ。

「違う。こんな事を言いに来たんじゃなくてー今日は用があって来たのだ」

そう言って座りなおすムサシ。

「同窓会だよ。同窓会。葉書来てたダロ」

「何?ホントにやるのあれ?去年卒業したばっかじゃん」

「まー社会に出て1年経って色々気軽にグチが言いたいのさ」

「僕はゴメンだね。そんな席。だいたい、こんな就職すらできなかった奴がいたらみんな気を使って白けるだけだろ」

「できなかったじゃなくてしなかったんだろ?」

「・・・・・」

ムサシはシンジの方を見つめて話す。

「だってオマエ就職活動してなかったじゃん。最初から就職する気無かったんダロ?」

「最初はあったよ」

シンジはムサシから視線を外して窓の外を見つめながら話しだした。

「ケドさ・・・ふと思っちゃてさ・・・やりたい事無いんだよ」

「べつに誰もが本当にやりたい仕事に就いてるってワケじゃねーと思うけど。でも結局生活の為にコンビニで働いてるワケだから同じ事なんじゃねーの?」

「・・・・・バイトだと思うと気がラクなんだよ。イヤになったら辞めればいいんだし・・・使う方だってほらバイトだと思えば期待もしないだろ」

「会社員になったってそーゆー考えの奴はいるさ。要は社会的リスクの問題だと思うケド。最初はピンとこなかった仕事でも馴れてくるとやりがい感じてくるもんなんだよ。ま・・・とにかく。同窓会来いよ。だいたいいつものメンツだし」

そう言ったあとムサシはニヤリと笑う。

「綾波レイも来るしな」

「・・・・・」

なんの反応も返ってこないシンジに少し訝しげになるムサシ。

「もしかして・・・禁句だった?」

「いーよべつに」

そういってシンジはムサシから視線をそらす。

「でもあいつ第2に居るんだろ?」

そう言いながらシンジは水を飲もうとコップを口につける。

「いやそれがやっぱ非常勤でこっちの高校に赴任したらしいぜ」

「!?ごほっごほっ」

誤って気管に水を入れてしまうシンジ。

「あ。動揺してる。・・・あのさぁ。前から聞きたかったんだけどサ。オマエらつきあってたの?」

「いいや」

シンジはムサシの方を向かずに答える。

「ナンダそーか」

「そういやさっき、あいつの夢見た」

あらためて水を飲むシンジ。

「あれは卒業式の日だった。あの日は何を隠そうあいつにコクハクしようと思ってたんだ」

「あーソレでフラれたワケですか?」

「フラれるも何も・・・”いつまでも学生気分でいるんじゃねーよ”みたいな事遠回しに言われて何が言えるか」

「あいつ美形だから狙ってる奴けっこーいたんだけどな。オレも実は狙ってたんだけど・・・いつもオマエと一緒にいたからさ・・・ナンダそーかオトモダチかタダの・・・」

そう言って立ちあがる。

「さて、オチもついたとこでオレ帰るわ」

ムサシはサイフから名刺を取り出してシンジに渡す。

「コレうちの名刺」

「出たっ。社会人必須アイテム。いよっサラリーマン」

「いやぁ。照れるなぁ」

 

同窓会のある日曜日。

すでに時間は六時をすでにすぎている。

「なーんかさぁ・・・」

トウジはアゴに手をやり募金ボックスを見ながらつぶやいた。

「コレ減ってるような気ぃせーへんか?」

「えっ・・・そ、そうかな?ききき気のせいだよ」

「いや・・・でもワシがこの前盗ったときは・・・」

そう言いながらトウジは控え室に入っていく。

「トウジもやってたの!?」

シンジはトウジの後姿を見ながらつぶやくのだった。

「これくださいっ」

突然声をかけられる。

慌てて振り向くシンジ。

「あっ」

「やっ。この前はどーもね」

そこには先日弁当をあげた少女が微笑みながら立っていた。

肩にはこの前のカラスを乗せている。

「あの時はホント助かったよ。起きたらさぁもう朝練遅刻寸前の時間だったしさぁー夜は宿題で晩御飯食べてなくって・・・」

「あの・・・」

シンジは気付いた事を言おうと会話を止める。

「ん?」

「当店ではペットの持ちこみは・・・」

「えーダイジョブだよ。コイツ行儀いーんだから」

そう言ってカラスを抱きかかえる。

「今日は一人?」

「いや。もう一人奥にいるけど・・・」

「ふ〜ん・・・」

じーっとシンジの胸を見る少女。

「な、何?」

「下の名前なんてゆーの?いかりクン?」

「え・・・あ・・・シンジ・・・だけど・・・」

シンジは名札を見ながら答える。

「アタシ、アスカね」

そう言ってポケットから小さい紙袋を取り出す。

「これお弁当のお礼」

「え・・・どーも・・・」

袋を受け取るシンジ。

「開けてみて」

シンジは言われた通りに袋を開けてみる。

「これは・・・」

中から出てきたのはアスカの瞳と同じ色をしたアクアブルー色の小さな石みたいだった。

「ガラスビンのかけら・・・海で拾ったの。角が削れて宝石みたいでしょ」

「ふーん・・・きれいだね」

シンジはかけらを戻そうと袋に手を入れた。

「あれ?なんだもう1個入ってる?なんだコレ?マニキュア?」

目線を前に向けるがそこにはすでにアスカはいなかった。

「あ・・・ソレ前にココで万引きしたヤツ返すね」

入り口の方から答えが返ってくる。

振り向くとアスカはすでに店を出たあとだった。

「わけわからん・・・!?えっ・・・あっ・・・」

入れ違いに入ってきた人物に驚くシンジ。

そこには夢に出てきた人物綾波レイが立っていた。

 

scene.A おわり  

 


あとがき

どうもはじめまして。

初投稿初SSにして連載物という大胆なことしでかしてしまった超初心者LAS作家『20th chiidren』でございます。

いつもは読むだけでしたが

(そろそろなんか書いてみるのもいいかも・・・)

などと大胆不敵なことを考え付いてしまいこういうことになったわけであります。

SSは本当にたいへんですね・・・これをちゃんと連載されてる作家様は大変すごいことをしてらっしゃると改めて思いました。

文才ないし・・・(汗)

しかしVOL.2からはすでに構成が済んでます。

というわけで文才がなく全然読みにくいと思いますが読んでくれる人が一人でもいたら嬉しいです。

さて、内容ですが・・・LASになる予定です。ていうか、LASにします!(笑)

マナ嬢ですがVOL.3以降キャラがどういった動きをするかまったく予想がつかないので・・・今回は出番があるかないかわかりません(笑)

今のところは出演を考えてますが・・・どうなるかはわかりません(笑)

おっと!?ムサシが出てるのに出番が無いなんて僻まんといてくださいよ。ムサシは完璧な脇役アンドちょい役なんですから(笑)

もし脇役でもいいなら言ってください。ちょい役でアスカ様の友情出演という形で必ず出してあげますから(笑)

あっ、そうそう!アスカ様は高校2年生でシンジはすでに24です。

補足はこのぐらいでしょうか・・・

ではまたお会いしましょう。


マナ:20th childrenさん、投稿ありがとー! \(^O^)/

アスカ:シンジが年上かぁ。楽しそうな設定ね。

マナ:でも、なんだか生活に困ってるみたいだけど・・・。

アスカ:ガス止められるなんて、よっぽどね。

マナ:こういうシンジを見ると、母性本能がくすぐられちゃうわ。

アスカ:アタシが助けてあげなくちゃっ!

マナ:アスカって、そんな風なイメージのキャラじゃないみたいよぉ?

アスカ:アタシが助けるのっ! お弁当貰ったんだから、恩返ししなくちゃいけないしっ。

マナ:カラスの恩返し?

アスカ:アタシはカラスじゃなーいっ!!!
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