VOL.1 社会のはみ出し者は自己変革を目指す scene.B

 

「えっ・・・あっ・・・」

「やっ。久し振り」

そう言ってレイはあの日のように微笑む。

「レ・・・イッ・・・」

シンジはただうろたえるだけだ。

「・・・何よそのリアクションは・・・」

少し怒った顔になる。

「キミ今日同窓会来なかったじゃん。だからムサシ君にここ訊いてさ。1年振りに積もる話でもしようかなーなんて思ってたのにさ」

そう言って後ろを向き目線だけでシンジを見る。

「キミ来ないもんだからわざわざ来たのに。なんか・・・来ちゃいけなかった?」

「え?あ・・・いや・・・あ・・・いらっしゃい・・・」

その横にカゴを持った客がレジにくる。

レイはレジから少し離れてシンジの働いているところを見ている。

しばらくしてからレイは入り口の方に向かう。

「忙しそうだね・・・環七沿いのファミレスに居るから仕事終わったらきてよ」

そう言い残してレイは店から出ていく。

シンジはしばらくの間レジをうつのを忘れてレイが出ていった後を見ていた。

 

「おつかれさん」

トウジが外に置いてあるダンボールを倉庫に持っていきながらシンジに声をかける。

シンジは自転車にまたがってコンビニを後にする。

(ファミレスに居るから・・・)

「・・・・・」

先ほどのシーンが浮かんでき頬を少し赤く染めるシンジ。

自然と自転車をこぐスピードがあがっていくのであった。

 

「じゃーあっちの非常勤半年だけだったんか」

「うん・・・でこっちには半年前にね・・・」

静かにコーヒーを口にする。

そしてじーっとシンジを見つめてから口をひらく。

「しっかし・・・キミ。変わってないねー」

「人間1年やそこらで変わるもんか」

少しブスッとしてコーヒーを飲むシンジ。

「レイこそぜんぜん変わってないじゃん」

「あーら。こー見えても高校教師だもんね」

レイはそういって自慢げに話す。

「レイはマジメだからなー。学生の時はよくノート写させてもらったしね」

そう言ってからコーヒーカップを置く。

「もう・・・第3に戻って来ないんだと思ってた」

「・・・私だってやっぱこっちの方がいーよ。仲間もいるし・・・また一緒に遊ぼーねっ」

そう言って身を乗り出してくるレイ。

シンジは少しひく。

「まーね・・・」

「あ・・・そろそろ帰らないと。朝早いんだ」

「じゃあ送るよ」

レイはバックを持って立ちあがる。

シンジは伝票を持ってレイの先に立って店を出て行く。

 

「ごちそーさま。相変わらず自転車なんだねー」

シンジがレイの前に自転車を転がして持ってくる。

それを見てレイはつぶやいた。

「車じゃなくて悪かったね」

「べつにーそんなの期待されてると思ってた?」

意地悪い笑みを浮かべてシンジを見る。

シンジは少しムッとなってしまうがレイのカッコをみて反撃の糸口を見つける。

「レイこそ相変わらず色気のないカッコだよね」

「素材がいーから必要無いのよっ」

レイは思わぬ反撃に少しムッとなってしまうのだった。

 

「あ・・・このあたりさぁ。学生ん時夜中歩いたことあるよね」

そう言いながら周りの景色を見渡す。

シンジも一緒になって周りを見渡す。

「あー・・・そういやそうだったね。飲んでて終電逃して・・・」

ふとあの頃の記憶がよみがえる。

「あの時はバテた。大学1年の時だったかなー。若かったなー」

「若かった。若かった」

レイはうんうんとうなずきながら同意する。

シンジはちらっとレイの方を見てからぼんやりと前を向いて話し始める。

「・・・でも僕は気分は未だにあの時のまんまなんだよ。就職してないからかもしれないケドさ。まだ信じられないんだよねー。だって小学生からずーっと学生やってきたワケで・・・」

シンジの方を見るレイ。

シンジはそれに気付かないのか話しを続ける。

「僕自身学生の時と何にも変わってないし・・・社会人の自覚なんてまるでないし・・・きっと・・・僕みたいな奴の事世間では落ちこぼれってゆーんだろーな」

そう言ってからシンジはあらためてレイの方を見る。

「卒業式の日レイが言った事・・・ホラ学生気分でいても発展しないってさ・・・あれホントだね」

レイは少し考え込むように俯くとしばらくしてから顔を上げて微笑みながら話しだす。

「でもさ・・・碇君がサラリーマンスーツ着てバリバリ仕事してるとこってとても想像出来ないじゃん。だってさ・・・学生の時だってほっといたら平気で留年しちゃいそーな人だったもんねーだからね・・・メンドーみないといけない気にさせられるのよね」

シンジはその横顔を見て少し頬を染める。

いつしか一件のアパートの前に来ていた。

レイはそこで足を止める。

「ここなんだ。送ってくれてあんがと。じゃっまたね」

レイはそう言って階段を上っていこうとする。

「あ・・・レイ・・・」

シンジは慌ててレイを引きとめる。

「週四日くらいあの店に出てるから。時間はイロイロだけど・・・学校終わったらまた寄ってみて・・・」

「うん。そーだね」

そう言って階段を上っていくレイをシンジはしばらく見ていた。

 

しかしあれ以来レイは店に来ず・・・

代わりにやってくるのは・・・

「ん?」

「おはよ。シンジ」

元気よくアスカが入ってくる。

もちろんカラスも一緒だ。

「アスカか・・・」

「何よその反応は!?」

ムッとなりレジに身を乗り出すアスカ。

シンジはレジから1歩から下がる。

「い、いや・・・」

「まぁいいわ。ねぇそれよりもさ、アタシ声変じゃない?朝まで友達とカラオケしててさー」

「朝までって・・・アスカってアソビ人?」

「失礼な・・・遊んでるけどアソんでないよ」

アスカは頬を少し膨らます。

「なんでいつもこんなに朝早いんだ?」

「なんででしょう?あ・・・もう学校の時間だ。今日はちょっと顔見に寄っただけ・・・じゃーねー」

アスカは走って学校に向かって行く。

それに入れ違いにトウジが入ってくる。

「なんや、アスカきとったんかい?ここんとこ毎日やな。アイツどこに住んどるんや?」

「さぁ・・・」

「さぁってそんくらい訊かんのか?」

「訊いても答えてくれないんだよ。アスカって名前だけであとはなんにも・・・なんかそっちのほうがミステリアスだとかどうとかと何かと言い訳して教えてくれないんだよね・・・」

「ほうなんか?まぁわしはどうでもええんやけどな・・・しかしシンジもすみにおけんやっちゃなぁ」

そういってヒジでシンジのわき腹をぐりぐりする。

「いや・・・僕は・・・」

(メンドーみないといけない気にさせられるのよね)

ふとこの間のレイの横顔が頭によぎる。

シンジは少し顔を赤くするのだった。

 

「おつかれさまー」

「ちょい待ちぃ、シンジこれ」

帰ろうとするシンジにS−DATのテープを渡す。

「何これ?」

「シンジ、カメラいじるのもチェロ弾くのも趣味やったよな?」

「うん。それが?」

「今度ワシらのバンドでCD出すんやわ。自主版やけどな。ンで、それのジャケットに写真が欲しいのと一曲だけチェロで間奏が欲しいんやわ」

「えー僕そんなに上手くないよぉ」

「えーんやて。ワシらもシロートやし。写真はモノクロでカッコええやつ頼むわ。チェロの方はその曲に合ったやつなんでもええしな。そのテープ聞いてイメージつかんでや」

「ロックなんてわかんないよ」

「イメージでええんやて、イメージで。んじゃヨロシクな」

トウジは言うだけ言うとレジに戻っていく。

「そんなこと言われてもなぁ・・・」

シンジは貰ったテープをただ見つめるだけだった。

 

テープから流れてくる音は何だか排他的で攻撃的だったけど・・・不快じゃなかった・・・

(音楽かぁ・・・もっと真剣に打ちこめちゃったりしてたら僕ももーちょっとは違う自分になってたかな・・・)

【碇君はやりたい事無いの?】

学生時代のレイの言った事が頭によみがえってくる。

【私はねー教師になりたいの】

(レイはいつだって前向きだった。賢くて凛々しくて・・・)

【碇君授業サボっちゃダメだよ】

(メンドー見がよくって・・・僕はレイに頭が上がらない。1年経った今でも・・・だから・・・)

 

買い物帰りのシンジ。

今日は早めにバイトが終わったようだ。

カァァァ

「ん?」

バサッ

突然足元に舞い降りてくる1羽のカラス。

「わっ!?あれ・・・こいつ・・・」

「カンスケ」

横から聞き慣れた声が聞こえてくる。

ゆっくり振り向くシンジ。

「アスカ?」

「シンジじゃん」

「何してるの?」

「カンスケの散歩」

「カラスに散歩?」

「コイツ足悪いじゃん。普段は部屋の中に居るんだケドネ・・・」

そう言ってシンジの腕に絡み付くアスカ。

「まぁまぁ立ち話もなんですし・・・」

公園に引っ張り込むアスカ。

「ちょ、ちょっと。買い物の帰りなんだけど・・・」

「こーんな美少女のお誘いを断るの?」

じーっとみつめるアスカ。

「ふぅー・・・わかったよ」

「じゃ行こ行こ。あそこのベンチに行こう」

そう言ってシンジをベンチに座らす。

(なんで僕が・・・)

シンジは知らず知らずのうちにアスカのペースにはまっていることに気付き悩む。

「ほら、遊んでおいで」

アスカはカンスケを飛ばしてやる。

「あのさぁ・・・それ家で飼ってて家族にヒンシュク買わないの?」

「・・・・・」

「アスカ?」

アスカは一瞬顔を曇らすがすぐにいつもの笑顔にもどる。

「家族なんていないよ」

「え?」

「家族はカンスケだけ。あいつここで拾ったんだ。ケガして死にそーだったの」

「ふーん。そんでいつも連れ歩いてるワケね・・・」

アスカから視線をはずしまっすぐ前を見る。

シンジはいつも抱いている疑問を聞いてみることにした。

「あのさぁ、いっつも僕が訊いても答えないクセに正体明かしたくない理由でもあるの?例えば万引きの常習犯だとか・・・」

アスカはシンジの方をみてキョトンとする。

しかしすぐに満面の笑みを浮かべる。

夕方でもないのに顔が少し赤い。

「アタシは・・・シンジに会いたいから店に行くんだよ」

「・・・そりゃどーも」

シンジはなんの反応も返さない。

「ちょ、ちょっと!?なんでなんの反応も返さないのよ!!」

当然のことながら怒り出すアスカ。

顔を真っ赤にしながらシンジの胸座を掴む。

「な、なんでって・・・」

「こーんな美少女にコクハクされて・・・いや!女の子にコクハクされてるのになんで何も反応を返さないのよ!」

シンジの体を激しくゆさぶる。

「ちょ、ちょっと待ってよ・・・」

「待てないぃぃ!!」

「だ、だからね・・・しょ、正体不明の女の子に好かれて浮かれるほど、お、おめでたくないよぉ。しかもついこの間会ったばっかだしぃ」

揺さぶるのをぴたっと止める。

「ぜーぜーぜー」

「それもそうかぁ。でもズイブン謙遜なのねー。こーんな美少女に言い寄られてるってゆーのにさー」

そう言いながらシンジの胸から手を離す。

「フツウの男ならすぐに手ぇだすわよ。やっぱシンジはそこらへんの男達と違うわね」

満足そうにうんうんと頷くアスカ。

ピーーーッ

口笛をならすアスカ。

カンスケはその音に反応してアスカの肩に留まる。

「でもね・・・アタシはシンジのことずっと前から知ってるんだ」

そう言って微笑む。

「何だそりゃ?いつから知ってるの?」

「気になるぅ?」

一瞬ニヤリ顔になる。

シンジの背筋に冷たい物が走る。

「い、いや・・・べつに・・・」

「ふっふっふっ・・・また一つアタシの謎が深まったってトコね。碇サンッ」

勝ち誇った顔になるアスカ。

「さてアタシは誰でショウ?シンジの記憶が良ければアタシがダレだかわかるかもね」

そう言ってアスカはベンチを離れて行く。

「あいにくと思い出したくない事が多すぎて」

アスカの背中に声がかかる。

アスカはその声を聞くと振り向いた。

さっきまでとは違う真剣な顔で。

シンジもそれに気付く。

「5年前の雨の日だった。初めて会った時の事・・・本当に覚えてない?」

アスカは悲しさを顔に浮かべながら公園を去っていく。

シンジはその顔に少し罪悪感を感じる。

そのあと寝るまで考えたが結局思い出すことはなかった・・・

 

scene.B おわり 

 


あとがき

どうも2回目お届けいたします。

いやぁ〜なかなか物語すすみませんねぇ・・・(汗)

じつはまだ起承転結の起の始め部分だったりするんですよねぇ・・・(笑)

アスカ様の性格もなんか違うし、レイにいたってはなんかすでにオリジナルの域に達してるような・・・(汗)

シンジくんも性格変わってるし・・・

まぁ、作者の意思が多分に含まれているのでそこんとこはかんべんしてください。

で・・・シンジクンなんかレイに気がありげでアスカ様をふったかんじになってますが・・・アスカ様怒らないでください・・・(滝汗)

あぁ!?物を投げないで!?(泣)

最初はこんな感じだけどちゃんと最後にはスウィートな関係にしますから。

それにやはり障害があったほうが恋は燃えるってもんでしょ?(滝汗)

で、ではこれ以上いたら身の危険があるのでそろそろ撤退させてもらいます・・・(汗)

ではまたお会いしましょう


マナ:あらぁ? 振られちゃったりして?

アスカ:違うわよっ! シンジは真面目だから。

マナ:シンジも上手く断ったわね。

アスカ:まだお互いのことよく知らないからなのっ。

マナ:そりゃぁ、そうでしょうねぇ。

アスカ:お互いのことがもっとよくわかったら、シンジだって。

マナ:それはマズイんじゃない?

アスカ:マズかないわよ。コンビニに通ってるうちに、アタシのことが伝わるのよ。

マナ:そして、アスカの正体がわかってきて、シンジは逃げ出すわけね。

アスカ:逃げてどーすんのよっ! 逃げてっ!!!(ーー#
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