No More Tears

VOL.2 見方は世界を変える scene.A

 

暦上は春。

しかし四季を無くした日本は今日も暑かった。

「あついぃ〜・・・」

そんなことを言いながら今日もアスカは学校前のコンビニに入ってくる。

「すっずしぃ〜」

入った瞬間に幸せそうな顔になる。

「アスカ・・・毎日毎日何しにきてるの・・・?」

「え?」

レジからシンジが声をかける。

「何しにって・・・そんなの決まってるじゃん」

シンジの方に向き笑顔を作って近寄ってくる。

シンジはその笑顔が怖かった。

なぜなら・・・

「シンジに逢いによっ」

そう言ってレジ越しに抱きつく。

近頃入ってきてはシンジに抱きつくのである。

女の子に抱きつかれて嫌な気分にはならないのだが周りの視線があまりにもイタイ。

痛すぎるのである。

「ぬわっ。離れろっ」

慌てて振りほどく。

「なんだって毎日毎日抱きつかれなきゃならんのだ・・・」

そう言いながら制服を整える。

「ぶぅ〜・・・いいじゃん。ちょっとぐらい抱きついたって」

むくれ顔になるアスカ。

「いいじゃん、じゃない。まだバイト中だっ」

「ぶぅ〜・・・」

「ほら、ジャマジャマ。営業妨害だ」

「じゃあ、いつバイト終わるの?遊びにいこっ」

「まだまだ終わらん」

「ぬぅ〜・・・ケチ。いいもん。帰る」

それだけ言うとコンビニを出て行く。

「なんなんだあいつ・・・?」

その後ろ姿をただ見つめるシンジ。

その後ろ姿は寂しそうであった。

「ええんか?ほっといて」

「え?」

突然後ろから声をかけられ驚くシンジ。

「アスカかわいそうやなぁ〜・・・」

「勝手にあいつが付き纏ってるだけだよ。僕には関係無い」

そのときふとレイの言葉を思い出す。

【彼女さ・・・明るくていいコなの。授業中は誰とでも分け隔てなく明るく接してるし・・・でもね。休み時間とかはいつも一人でいるの・・・一人でいるというより誰とも関わりたくないって感じなの・・・】

【・・・仲良くしてあげてよ。あの娘ちょっと変だけどほんとにいいコなんだから】

(わかったよ・・・)

エプロンをはずし裏口に向かうシンジ。

「ちょっといい?15分で戻るから」

「ん?ああ店長にはわしがうまいこと言っといたるわ」

「ごめん」

シンジは走って外に出る。

しかしもうアスカの姿はなかった。

「まったく・・・猫みたいなやつだな・・・」

仕方なくシンジはまた店の中に入っていった。

 

「なによっ!シンジのくせして!」

アスカはぶつくさ言いながら学校の通学路を帰っていた。

「アースカッ」

突然後ろから抱きつかれる。

「わっ!?」

ビックリしすこし飛び跳ねてしまう。

「な、なんだマナかぁ・・・ビックリさせないでよね」

さらに膨れ面になりそっぽを向いてしまう。

「なぁに膨れっ面になってんのよ」

バンバンと背中をたたく。

「イタイイタイッって」

体を捩って回避する。

「もおぉ・・・なんなのよ〜・・・」

アスカは仕方なく立ち止まりマナのほうを向く。

「だってアスカ最近帰り早いしぃ。ほら部活だって出てないじゃん。だからこれは何かあるなって・・・」

そこで一旦言葉を切りニヤリ顔になる。

「もしかして・・・男?」

「え?」

一瞬動揺が走るが努めて冷静に切り返したつもりだった。

「そ、そんなことないわよ!」

「そうなの?」

「も、もちろん」

そっぽを向いてしまうアスカ。

「ふ〜ん・・・そう言うことにしとくかぁ〜」

「なによ・・・その言い方わぁ・・・」

「べっつにぃ〜」

「・・・」

アスカは触らぬ神に祟り無しっと言った感じでまた歩き始める。

マナもその後ろを歩きはじめる。

しかし顔はニヤリ顔のままである。

「ああ!?あそこにシンジさんが歩いてるっ!!」

「え!?どこ?」

アスカは慌てて周りを見渡す。

「どこ!?どこよ!?」

しかしシンジの姿どころか人影さえ見つからない。

「くっくっくっくっ・・・」

そこに声を殺した笑い声が聞こえてきた。

アスカは首だけをぎぎぎっとマナの方にむける。

「マァナァ〜・・・」

「くっくっくっ・・・ああ〜おかしぃ」

「アンタよくもぉ〜・・・」

「いいじゃない」

「よくないっ!」

マナは笑いながら先に走っていく。

慌ててアスカも追いかける。

しかし少し前に行ったところでマナは振り向く。

その顔は真剣だった。

「正直にならないと知らないからねっ」

「え?」

アスカは驚いて立ち止まる。

「それってどういう・・・」

「ほら、帰ろっ」

アスカの言葉を遮ってマナはアスカの腕を取って歩き出す。

「ちょちょっ・・・」

何か言いたそうなアスカを無視して引っ張りながら今日あった面白いできごとを話す。

アスカも最初は戸惑っていたがしだいに(どうでもいいか)と思い始め話しをはじめた・・・

 

「おつかれさま〜」

「おう、おつかれ」

シンジはトウジに挨拶するとそのまま店をでる。

(結局・・・レイ店にこなくなったな・・・)

あれ以来レイは一度も店に来ていない。

少なくともシンジがいるときには来ていないのだ。

(やっぱ・・・気まずいよなぁ・・・)

はぁ〜っと大きなため息を一つつく。

(謝っておくべきか・・・?)

自転車に乗り家に向け漕ぎ出す。

(いやしかし・・・何を謝ればいいんだ?)

謝るべきものが何も思いつかない。

当たり前である。

何も悪いことはしていないのだから。

(ん〜・・・しかしこのまま気まずいのはつらい・・・どうする?)

前までとは言わずせめてトモダチの関係までは戻したい。

(なにか上手い方法はないか・・・?)

いくら考えてもいい方法は思いつかない。

「まいった・・・」

自然と小さく呟いてしまった。

 

翌日。

「ちわ〜。今日もあついね〜」

アスカが片手を挙げながら店に入ってくる。

「また来たか・・・」

「がんばってるかね?青年?」

「はいはい。がんばってるよ」

シンジはおざなりに返事をして奥に行ってしまう。

入れ替わりにトウジがレジに入ってきた。

「よお。今日も来たんか。しっかし毎日あついなぁ〜」

「そうね。ところでシンジなんで奥に行っちゃったの?」

「ああ。今休憩中なんや」

「ふ〜ん・・・」

アスカは忍び足で中に入っていく。

「シ〜ンジ♪」

「わっ!?」

急に後ろから抱き着かれ驚くシンジ。

「な、なんでここまでこれるんだよ!?」

シンジはしごくまっとうな意見をのべる。

「バイトもうおわり?」

しかしアスカは答える気がないのか別の質問をシンジにかける。

「まだだけど・・・」

「ねえ?これ行かない?」

そう言ってカバンから映画のチケットを取り出す。

「なに?チケット?くれるの?」

シンジはそう言いながらチケットをアスカの手から取ってしげしげと見つめる。

チケットには『怪獣大決戦!エヴァVSヒトデゴン』と書いてある。

「怪獣大決戦って・・・オマエこんなのが好きなのか?」

「アタシの趣味じゃないわよ!新聞屋さんにもらったの!それにあげるなんて一言も言ってないじゃない!」

アスカは慌ててチケットを取り返す。

「ねえ?どう?いかない?」

「行かないって・・・オマエとか?」

「もちろん」

「ん〜・・・」

アスカの顔を見ながら考える。

「ねえぇ。行こうよぉ〜。こ〜んなかあいいオンナノコ、が誘ってるんだよ?」

アスカはシンジの腕にじゃれつく。

(ん〜・・・たしかに可愛いんだが・・・)

腕にじゃれつくアスカを見ながらそう思う。

「だぁーじゃれつくな!」

シンジは腕をほどき立ちあがる。

「ひどい・・・かよわい乙女に暴力をふるうなんて・・・」

およよと泣き崩れるアスカ。

「わーった、わーった。行くよ」

「ホント?」

コロッと態度を変え目がきらきらと輝く。

「ああ」

「じゃあ今から行こっ」

アスカはシンジの腕を引いて外に行こうとする。

「待て。まだバイト中だって言ったダロ」

「待てない!」

「なら行かんぞ?」

「うっ・・・」

アスカは固まってしまう。

「ふぅ〜・・・なぁ?ちゃんと行くって約束したんだから待てないのか?」

「だって・・・」

「今度の日曜でどうだ?その日ならバイト休みだしな。時間は・・・そうだな。13時なんかどうだ?」

「う〜・・・わかった」

「じゃあ今日はおとなしく帰れ」

「わかったわよぅ〜」

不承不承うなずいたアスカはおとなしく休憩室から出て行く。

シンジもその後に続き出口まで着いていってやる。

「じゃあ今度の日曜ね。駅前のベンチで待ってるから」

「わかったわかった」

「楽しみにしてるからね〜」

手を振りながら駆け出して行く。

「絶対、ぜ〜ったい来てよぉ〜」

しばらく走っては振り返り走っては振り返りを繰り返す。

「約束したんだからねぇ〜」

それは姿が見えなくなるまで続いた。

シンジはその間苦笑いしながら手を振っていた。

姿が見えなくなり店の中に入る。

「な〜んやシンジ?アスカとデートか?」

レジの方を見るとトウジがニヤニヤしながらこっちを見ている。

「デ、デートっていうもんじゃないよ」

「ほうか?まぁどっちゃでもええんやけどな。ほら棚の整理してくれや」

「あ、ああ」

シンジは何も言い返せず棚の整理に向かった。

 

その夜。

シンジは眠れず散歩に出ていた。

「なんか・・・眠れないんだよなぁ・・・」

しばらく歩き公園に差し掛かったころ前から人が歩いて来るのに気づき前を見る。

「あっ・・・」

「あっ・・・」

前から歩いてきた人物も同時に声をあげる。

目の前には綾波レイが立っていた・・・

scene.A おわり

 


あとがき

ひさしぶりの更新です(汗)

つーより1年ぶり?

もしかして忘れ去られている?(汗)

まぁ今回はオリジナルと原作とをうまくミックスさせていけたらなぁって思ってます。

さてさて内容の方はってゆーと・・・シンジ君アスカ様の初デートってな感じです。

しかしそう簡単にはデートさせませんよ〜(笑)

2,3個障害を作らしていただきますね(悪)

だってそのほうが愛は萌え上がるでしょう!!(爆)

あとシンジ君性格アンド言葉使いが全然違う!って言う抗議は受け付けませんので(笑)

だってこうしないと物語進んで行かないんだもん(汗)

ということで皆様お許しくださいね。

ではまた次回お会いいたしましょう。


アスカ:苦難の末、シンジにデートを取り付けたのよっ!

マナ:女のコから誘うなら、それらしい映画があるでしょ?

アスカ:チッ! チッ! チッ! あのシンジがそんな映画に来るわけないでしょ。

マナ:だからって、なにも「怪獣大決戦」じゃなくても・・・。

アスカ:バカにしてんじゃないわよ。迫力あるんだから。

マナ:ど、どこが・・・。(ーー;

アスカ:あの、怪獣が歩く効果音! ズドドン。ズドドン。怪獣が吼える声! ギャオーン!

マナ:結局、なんだかんだ言って、あなたの趣味なんじゃない。(ーー;

アスカ:ば、ばれた?(^^;
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