この作品は1024×768の環境で書いてますので、それ以下のサイズだと読みにくいかもしれません(^^;



「貴方の本音が聞きたいの」

by あっくん


「それで、私にどうしろと言うの?」

アスカの話しを聞き終えたリツコは、目の前の頬を染めているアスカに問い返した。

「だ、だだ、だからぁ〜、その女の子がシンジの本心を聞きたいって言うから、何かいい手が無いか訪ねてるんじゃないのよぉ!」

「でもそんな事は貴女が直接シンジ君に聞いて、その恥ずかしがり屋で勇気の無い女の子に教えてあげればいいのではないかしら?」

アスカの言葉に、人の悪い笑みを浮かべながらからかい口調で答えるリツコ。
リツコは内心おかしくて仕方が無かったのだ。
リツコの聞いたアスカの話しを要約すると、シンジに想いを寄せる女の子がいる。
その女の子はシンジとはかなり親しいのだが、想いと正反対の行動ばかりシンジに取ってしまう。
だから告白したいのだけど、断られたら今の関係も崩してしまう事を恐れて告白出来ないでいる。
だからと言って今のままでいると、人気急上昇中のシンジが他の女の子に取られてしまうかもしれないのでシンジの気持ちを知りたいと言う話しだった。

「そ、そそ、そんな事出来るわけ…じゃなくて!なんでアタシがそこまで面倒を見ないといけないのよ!!」

更に顔を紅くして叫ぶアスカ。
そんなアスカを見て、リツコは今にも声をあげて笑いそうになる。

「でも、そんなに意地悪とかしてシンジ君に嫌われてないんでしょ?だったら直接告白しても大丈夫だと思うわ」

「そ、それが駄目なのよ!そ、その娘ったら、友達にからかわれてついシンジの前で『シンジは只の友達よ!』って
 叫んじゃったのよ。そのせいで影でシンジを狙っていた女の子達が表立って動き出したし…」

「あらあら…それは完全に自爆ね。無様だわ」

アスカの話しを聞いてリツコは思った。

『まったく!シンジ君の事が好き、それも絶対に人に渡したくない程好きな癖して………
 ホント、素直じゃない娘ね。しかも折角アスカに遠慮して控えていた女の子達に自ら口実を与えるなんて』

ぐっ!………と、兎に角!何か良い手だてはないの、リツコぉ〜」

「う〜ん、そうねぇ〜」

アスカの問い掛けに考えるフリをしながらリツコは別の事を考えていた。

『ホント、不器用な二人だわ。アスカはミエミエだし、シンジ君の方もアスカの事を想っているのは間違いない。
 さもなければ優しさだけでB型装備のままマグマに飛び込み事なんて出来やしないわ。
 ………アスカがちょっとだけ素直になるか、シンジ君が少しだけ勇気を出せば丸く収まるのに』

ねぇ!リツコぉ!!

『アスカかシンジ君がぼやいている所を録画して見せれば事は終わるわね。けど、それじゃ面白くないわ』

ちょっと!

『五月蠅い娘ねぇ〜。誰の為に考えてあげてると思ってい………そうだわ!』

「良い手があるわ、アスカ」

何かを思いついたリツコは、他人が見たらかなり人の悪い笑み……悪魔の笑みを浮かべてアスカに答えた。
普段の冷静さをもって観察すれば、アスカもリツコの笑みに何か企みがある事に気がついた事だろう。
だが、今はシンジが他の娘に取られてしまうかもしれない状況になって精神的にも追い詰められていたのでその事には気付かなかったのだ。

え!ほ、ホント!!

よってアスカは歓喜の声をあげて喜んでしまう。

「ええ。少し待ってなさい。すぐに持って来るから」

そう言うとリツコは席を立ち、個人の研究室へと姿を消した。
 
 
 
 

「後は、このジュースに中和剤を入れれば………よし♪」

家に戻って来たアスカは、夕食後に『ヒカリがくれたジュースがあるんだけど、アンタも飲むよね?』と言って、
シンジに反論する暇も与えずにキッチンへ駆け込み準備をしていた。
もっとも、シンジが飲まないと言い出すのを恐れてではなく、シンジが自分がすると言い出すの恐れた為に慌てて駆け込んだのだが…

「ふふふ、このジュースをシンジが飲んだ後、アタシが質問をすれば…」

アスカが用意しているジュースは、ヒカリから貰ったジュースではなかった。
これはリツコから貰った『ホンネード』と言う薬で、これを飲んだ者は質問内容に対して絶対に本音を語ってしまうという一種の自白剤だ。
アスカの懸命なお願いにリツコがくれた新開発の薬。人体実験(被験者マヤ)も済んでおり、後遺症も残らないとの事だったので、
アスカはこれに飛びついたのだった。

『いい事。今までの経緯から言って、この『ホンネード』をシンジ君にだけ出したら彼は疑うわ。
 だがらこの中和剤をあげるから、これを入れたものを貴女も一緒に飲むのよ。
 そしてシンジ君が飲んだら貴女の聞きたい事を質問すれば………分かったわね』

「………でも、もしシンジがアタシの事を好きじゃなかった…ひょっとして嫌いだったら………
 うぅん!そ、そんな事無いわ!好きじゃない可能性はあるけど、一緒に住んでるんだもん!嫌いって事はないわよね」

直前になって不安が過ぎるアスカ。
だが、このままでは何時まで経っても二人の仲は進展しないと判断したアスカは、決意する。

「ま、まずはシンジの気持ちを知るのが先決!万が一嫌いであったらアタシを好きになるようにし向ければいいのよ。
 いざとなれば色仕掛けだって」

結構過激な発言をしながらアスカは『ホンネード』を入れたコップをお盆にのせると、シンジの待つリビングへと向かった。
 
 
 
 

「お待たせ、シンジ」

「あ、有り難うアスカ」

シンジの側まで行ったアスカは、中和剤を入れていない方のコップを取ると、それをシンジに手渡す。

「で、これは何のジュースなの?」

「さぁ?アタシもヒカリに美味しいって言われて貰った物だから、そこまでは知らないわ」

知る筈もない『ホンネード』の味について、適当に誤魔化すアスカ。
そして、シンジに警戒されては終わりだと判断したアスカは、シンジより先に『ホンネード』を口にする。

「………あ!」

「ど、どう?美味しいの?」

それを黙って見ていたシンジは、味についての感想をアスカに問い質す。
するとアスカはシンジに笑顔で答えた。

「うん!美味しいわ♪」

「へぇ〜、じゃ、僕も頂こうっと」

アスカの言葉に釣られ、シンジも『ホンネード』を口にする。

『やったぁ!シンジが飲んだわ♪こ、これでシンジの本音が、誰が好きなのか分かるわ♪………でも、ホントこれって美味しいわね♪』

「どぉ?美味しいでしょ」

「うん。美味しい。これは明日にでも洞木さんにお礼を言わなくちゃね♪」

アスカの問い掛けに、シンジは極上の笑みを持って答える。
その笑みを見たアスカは、思わず顔を紅くするのだった。そして思った。

『このシンジの笑みはアタシのモノ。アタシだけが独占するのよ』

そしてアスカは、いよいよ質問に入る為にシンジの隣に腰を下ろす。

『リツコは即効性の薬だって言っていたから、もう大丈夫よね。………それじゃ、い、いくわよ』

意を決したアスカは、シンジの顔を見つめると、本音を聞き出す為の質問を開始した。

「ねぇシンジぃ〜、ちょっと聞きたい事があるんだけどさぁ〜」

期待感からか、アスカの声はいつもよりも甘えた声になっていた。

「ん?なんだい」

「し、シンジって好きな女の子っているのかしら?」

な!なな、何をいきなり!?

アスカの質問に対してシンジは思いっきり慌てる。
しかし、それはアスカも同様である。てっきり薬が効いて素直な回答を得られると思っていたあてが外れたのだから。

ちょ、ちょっとぉ!効いてないじゃないのよぉ!!

内心でリツコに怒りを覚えるアスカ。
当然である。こんなアスカの質問を聞けば、自分が知りたい事を聞き出す前にシンジが問い返して来る可能性があるからだ。そしてそれは現実のものとなる。

「ど、どうしたんだよ、アスカ?急にそんな質問なんかして」

「それはね。アタシがシンジの好きな女の子を知りたいからよ」

な!?

言ったアスカは、自分がシンジの質問に素直に答えた事に内心驚いた。
それも、今までどうしてもシンジに対して素直に聞けなかった言葉をスラスラと答えてしまった事に。
だが、驚いたのはアスカだけではない。急にアスカからそんな言葉を聞かされたシンジの方も慌ててしまう。

え?えーーーーーっ!?

「ちょ、ちょっと、い、今のは冗談よ、冗談!」

驚いたシンジに対して必死に弁解をするアスカ。

「え!?だ、だって今確かに僕の好きな女の子の事を聞いてきたじゃないか?」

「うん。アタシはシンジの好きな子が知りたいの」

もはやアスカの口はアスカの意志に関わらず質問に答えてしまう。
そう、リツコの開発した『ホンネード』を飲んだのはシンジではなくアスカの方だ。
だが悲しいかな、パニックを起こしているアスカにいつもの聡明な頭脳はショートを起こしており、その事実にまで辿り着けない。

「ど、どど、どうしてアスカがそんな事聞くんだよ?あ、アスカには関係ないだろ!」

「あるわよ。だってアタシはシンジの事が好きなんだから、シンジに好きな子がいるかいないか聞きたいわ」

きゃー!きゃー!!ちょ、ちょっとぉ!!何、決定的な事を言ってるのよアタシは!?

ええ!?あ、アスカが僕の事を好きぃ!?

「うん。大好き♪」

い、いやぁぁぁぁぁ!!恥ずかしいぃぃぃぃぃ!!

「だ、だってさ、アスカはいつも僕の事を苛めていたじゃないか?」

「ごめんね。でもそれはかまって欲しい故の事だったのよ」

『ど、どうしてアタシが………………も、もしや!』

パニックを起こして慌てていたアスカも漸く自分がリツコにハメられた事に気がつく。
しかし、時既に遅しである。
こうなってしまっては選択肢は二つ。シンジの前から逃げ出すか、いっそ開き直るかしかない。
だが、此処で逃げ出すと言っても自分はシンジと同居の身であり、クラスメートであり、戦友である。
ホントに逃げるのであればシンジの居ない場所へ行くしかない。つまりはシンジを諦めるという事だ。
そしてアスカは選択した。

「そ、そんなのって…」

「あ、アタシは自分の気持ちを伝えたわ。だ、だからアンタの気持ちも教えなさいよ!」

当然の選択だった。
アスカのシンジへの想いは簡単に諦められる程に軽い気持ちでは無くなっていた。
だからこそ、変われない自分、素直になれない自分に思い悩んでいたのだ。

「お、教えろって………だ、大体どうしていきなりこんな話になったんだよ?」

「それは………」

そしてシンジはアスカの口から、こうなった経緯を聞き出した。
アスカから聞いた話を吟味して総合すると、アスカはリツコに完全にハメられたという事になる。
そして元をただせばアスカが自分をハメて、素直に聞き出せなかった事を聞き出そうとしていたという事も分かった。
だが、シンジにはそんなアスカの態度や気持ちが可愛らしく、そして意地らしく感じられた。

『アスカが僕の事を………あの自信に溢れているアスカがそんなにまで悩む程に………』

そしてシンジの中で今までは漠然とした想いが、今ハッキリとした形へと変化する。

『僕がしっかりしていなかった為に、アスカは一人悩んでいたんだ。僕も勇気を出さなきゃ!』

そして話を聞き終えたシンジは、真剣な眼差しをアスカに向けるとアスカの飲んだ『ホンネード』の入ったグラスを手にする。

あ!?

「アスカ。君の気持ちは嬉しいよ。そして僕もアスカの事が好きだ。
 けど、こんな状況じゃ僕の言葉だけじゃ信じて貰えないかもしれないよね。
 男の癖してアスカに告白されるまで返事が出来なかったんだから。
 だから、僕はこの薬を飲むよ。そして僕の本心、僕すら気付いていないかもしれない本心をアスカが聞いて欲しい」

そしてグラスに口を近づけようとしたが、アスカがそれを遮った。

「待ってよ!もし、もしもその薬で聞いたシンジの本心がアタシの事を好きじゃなかったら!………
 今シンジはアタシの事を好きって言ってくれたわ。それでアタシは十分よ」

必死に訴えるアスカ。
そんなアスカにシンジは優しげな瞳を向けて語りかける。

「アスカ、それでもし僕の本心がアスカを本気で好きじゃなかったとするよ。
 そうすれば僕はアスカと付き合っても、遊びの気持ちで付き合う事になってしまう。
 それは僕にとってもアスカにとっても良い事じゃないんだ。下手をすればお互いを傷つけ合うかもしれない」

「でも!」

「だからさ、僕はアスカの気持ちを聞いた。そしてアスカもこれから僕の気持ちを聞いて欲しい。
 最初からお互いをさらけ出しておけば歩み寄っていく事も出来ると思うんだ」

そのシンジの言葉がアスカを決心させる。
そしてこれだけ自分の事を考えてくれるシンジの本心が、先程の言葉に偽りはないとの安心感も与えた。

『そうよ、シンジが言葉と本心が違うなんて事ないわ。アタシはシンジの言葉を信じればいいのよ…うぅん!信じてあげないきゃ!』

そしてシンジの手を遮っていたアスカの手が解かれ、シンジはグラスの中の『ホンネード』を飲み干すのであった…
 
 
 
 

そして翌日。
アスカはシンジを引き連れてリツコの研究室へと駆け込んで来た。

リツコぉ!!

そのアスカの怒鳴り声に、呼ばれたリツコは平然とした顔で言葉を返すのだった。

「あら、アスカ…それにシンジ君も。一体どうしたの?」

そのリツコの態度がさらにアスカと言う名の火山に爆弾を放り込む。

ど、どど、どうしたのじゃないわよ!!よっくもアタシを騙してくれたわねぇ!!

「騙す?何の事かしら。私は貴女の願いに応えただけよ」

言いながら人の悪い笑みで応えるリツコ。
すると珍しくも今度はシンジが文句らしき言葉を発する。

「リツコさん!幾らなんでもアレは人が悪すぎます!」

「あら?シンジ君までアスカに味方するのね。ふ〜ん、結局上手くいったわけじゃない」

「あ、アンタねぇ〜!このアタシを騙してただで済むと思ってんのぉ!!」

「だってアスカの望みは達成出来たんでしょ。こんな風に…」

言いながらリツコは机のリモコンを手に持つと、テレビがある方へと向けてボタンを押した。
すると…

『僕が好きなのは…僕がずっと側に居て欲しい人はアスカ、君だよ』

『し、シンジぃ…』

『アスカ。君の事が大好きだよ』

『シンジぃ!!』

『わ!?』

『嬉しい!嬉しいよぉ〜』

『僕もだよ』

『アスカ…』

『シンジ…』

『『………ん』』

画面には昨夜のアスカとシンジの告白劇がハッキリと映し出され、そして二人のキスシーンまでしっかりと映っていた。

な、な、なな!?

わぁ!?

「ほら、上手くいってるじゃない……ね、ミ・サ・ト」

「ホ〜ント、人が居ないと思ってさぁ〜」

リツコに答えながら、二人の保護者である葛城ミサトが奥の部屋から顔を出す。
そしてミサトを見た二人は、もうどうしようもない程にパニックを引き起こしていた。

ちょ、ちょ、ちょっと!?

な、なな、何でミサトさんが此処に!?

暫くして、二人は完全に自分達が二人の中年女の玩具にされた事を悟る。
これで当分は……いや、下手をすると一生このネタで自分達はこの悪魔のおばさんズにからかわれる事になるだろう。
そして二人の事は既にネルフの主要メンバーに知れている事も間違いないと思い、頭を抱えるのであった。
 
 
 
 

だが!
この時、鬼の首を取った勢いで喜び笑っていたリツコとミサトは…

「はい♪シンジぃ〜、あ〜んして(はぁと)」

「あ〜ん………うん!美味しいよ♪」

「じゃあ、次アタシね♪」

「はい♪アスカぁ〜、あ〜んして(はぁと)」

「あ〜ん………あは♪やっぱシンジに食べさせて貰うと美味しいわ♪」

「あ!アスカ、ゴハン粒が…」

「え?」

「取ってあげるよ」

ぺろ

「きゃ♪いや〜ん、シンジったらぁ(はぁと)」

「「ぐががががが!あ、あんのぉ〜色ガキ共がぁぁぁぁぁ!!」」

毎日、二人のラブラブぶりを見せつけられる事になったとさ。
 
 
 
 

END


〜後書き〜

どうも、あっくんです(^^)/
本当は前回投稿した作品のShinjiSideを書いて投稿する予定だったのですが、先にこの作品の構想が浮かんだもんで(笑)
まぁ、ネタとしてはとてもありきたりなネタです。ただ、本作品の中に出てくる『ホンネード』と言うものにピン!ときた人は
きっと私と同じ趣味をお持ちの方だと思います(笑)

でも、この作品て・・・LASだと思うが、単に二人のラブラブに当てられるおばさんズを書きたかっただけかも(爆)

では、へっぽこな作品ですが読んで下さるととても嬉しいです(^^)


マナ:あなたも、良く騙されるわねぇ。

アスカ:人の弱みに付け込んでぇぇっ! やり方がきたないのよっ!

マナ:って言うかさぁ。バレバレなこと赤木博士に言うからよ。

アスカ:なんでばれたんだろう?

マナ:誰だってわかるわよっ。

アスカ:でも、結果オーライで、めでたしめでたしよっ!

マナ:そうでもないのよねぇ。

アスカ:なにがよっ!

マナ:実験台になったマヤさんが、自分の気持ちに正直になっちゃって、シンジを取り返しに行くっ! とかたくらんでるらしいわよ?

アスカ:なんですってっ! そんなこと許すもんですかっ!

マナ:しかも、その計画に綾波さんも結託したとか。

アスカ:なんですってーーーっ! これは厳重に警戒しないといけないわね・・・。 アンタも協力しなさいよっ!

マナ:それが駄目なのよぉ。

アスカ:なんでよっ!

マナ:実はさぁ。わたしも、マヤさんや綾波さんと同じグループに入ったもーん。(^^v

アスカ:コイツら・・・。(ーー;;;
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