空港からアウトバーンをひた走る。

僕の隣にはアスカが眠そうにしながら外の風景を眺めていた。

 

複雑な表情を見せているアスカの視線には、それとなく懐かしい風景を楽んでいるようにも見えていた。

 

そうだ・・・・・アスカは帰ってきた、僕を連れて。

彼女の故郷となるこのドイツに。

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僕たちの居場所  -或いはそれも僕たちの可能性−                   written by あつみ

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僕達はあの凄惨な戦いを生き残った、結果的にサードインパクトによって生まれた被害は、

一部の死傷者を除けば大きくなかった。

 

でも一部の死傷者の中には、綾波、ミサトさん、リツコさん。

 

そして父さんも含まれていた。

 

天涯孤独の身になった僕を引き取ったのは冬月指令だ、っと冬月指令はその後ネルフにとどまている。

正直混乱直後の僕達のガードをするためと言う名目があったし、それに父さんの遺産整理があったからだ。

 

アスカはあの浜辺で死んだように眠ってから目を覚まさなかったんだ。

毎日の生活の中にアスカのお見舞いが加わった、疎開先から戻ってきた皆との再会も嬉しかったけど、

何より一番会いたい人が目を覚まさなかった事が気がかりで成らなかった。

 

もう逃げるのは嫌だから・・・・・・。

 

アスカが目覚めてからは、他人から見れば僕は地獄のような生活だったらしい。

罵声、奇声、あらゆる蔑みの言葉、僕が病室に入ってくると何かしら物が飛んでくる。

花瓶を投げつけられて血を出したこともあった。

もう僕は必要ないと考えたけど、他の人にあの姿は見ないアスカにとって唯一の他人だった。

暫くして洞木さんが会いに来たけどほとんど放心状態だった。

 

「とにかく今彼女に必要なのは感情の起伏による自我の確立です。」

医師の先生からそんな言葉を聞いて結局僕が耐えられるのならば訪れて欲しいといわれた。

 

ある日いつものように病室に入るとアスカの様子が違った。

ニコニコしている表情に僕は何故か嬉しさより不気味さが先に立った。

それでも少しの希望を残して話し掛けた。

 

「アスカいいことあった?今日元気みたいだから。」

その一言にアスカはニコニコするばかりだった。

 

「シ〜ンジ、これな〜んだ?」

アスカはニコニコしながら手にもったそれを振りながら見せつけた、

それは危険だからと鍵付きの引き出しに閉まっておいた果物ナイフだった。

 

「あぶないよ!」

僕は怖がるのではなく、そんなものを持ったアスカが怪我をしないようにと叫ぶ。

アスカに刺されてもいいとも思っていたし、

今のアスカならある程度抑えることが出来るからという余裕もあった。

 

「バカシンジ!アンタこれで刺されてもいいなんて考えてるでしょ?そんなことしても無駄だもんね。」

アスカは僕の考えを見透かすように冷ややかな視線を投げかける。

 

「アンタが刺されて、アタシが反省するとでも言うの?だからね〜こうしちゃおうかな?」

その言葉に僕は真っ青になった、アスカの行動が僕の一番恐れていたものになると思ったから。

 

アスカはいきなりパジャマを前を乱暴に開けるとそのナイフを自分の胸に当てた。

 

「アタシももうお払い箱だしこうすりゃアンタの気分も台無しになるしね〜。」

そんな言葉を吐きながら僕に優越感たっぷりの視線を投げかける。

 

「どうせ、生き残ったってアタシにはどこにもないんだから!」

その表情はいつも怒っている表情ではなく涙顔だった、

僕は目覚めてからはじめて見るアスカの表情を見ながら静かに話し出した。

 

「アスカ・・・・・・どこにも居場所はないよ。」

その言葉にアスカは不快な顔を向けた。

 

「僕も居場所はなかったよ。」

「じゃあなんでここに来るのよ!」

そんなアスカを見ながら僕は今思っていることを思い切りぶつけようと思った。

 

「ここも僕の居場所だから。」

「僕が来たい、僕のいたい場所。」

「僕が自分で作った所だから・・・・・・アスカを元気にしてあげたいと思ったから。」

「どんなに辛くても、どんなに苦しくても逃げちゃいけない所だから。」

「だから僕の居る所・・・・・・そしてアスカの居場所・・・・・・僕が一緒に作れる場所。」

「アスカも作れるよ・・・・・・自分の居場所。」

 

そんな僕の独白を呆然と聞いてたアスカだけどハッと気づくと僕に嫌悪の視線を投げていた。

「何それ!アンタはそれでいいでしょうね!やっぱやめたわ!バカバカしい!」

そう言って胸からナイフを外したアスカに安心して僕はそれを取ろうとした。

 

シュッっと音がして僕の目の前をナイフが通り過ぎる、驚いた僕にアスカは嬉しそうな顔をした。

「やっぱアンタを殺した方がいいわ、安心しなさいアタシも気が向いたら逝ってやるから。」

 

その憎悪の視線を僕は癒すことが出来ないのだろうか。

僕が居なければその視線はまたあの輝いた視線に戻るのだろうか?

判らなかった。

 

でも、僕はそのナイフを鷲づかみにしたその行為にアスカがびっくりするのもかまわずに。

「ごっごめん・・・・・・そのお願いだけは聞けないんだ。」

今アスカがナイフを引けば確実に僕の手のひらはひどいことになっていただろう。

でもそれはなかった。

 

「約束したんだ、皆に会いたいからって、辛いけどもう一度会いたいって。」

「だから僕は死ぬなんていう楽な道は選ばないんだ。」

「ミサトさんの言葉でね、『一生懸命生きてから死になさい』って、いわれてるしね。」

そういいながら僕は微笑んだんだ痛いけど、負けちゃいけない僕は約束したから。

「だから手だけはあげる、死ななければ何か出来るから、もう逃げたくないから。」

そう言って逃げずにアスカと視線を合わせていた、その憎悪に染まる蒼い視線を。

 

暫くして、切り口が痛くなってきた、視線はそこに持っていってないけどたぶん血が落ちてる。

 

「離しなさいよ・・・・・・。」

そのアスカの言葉は妙に落ち着いていた、僕はゆっくりと手を離す、アスカの瞳はもう狂気の

視線ではなかった。

 

「今日は帰って。」

僕に果物ナイフを渡すとアスカはそう言って布団を頭からかかぶり寝てしまった、僕は何も言わずに

その場を後にした。

 

 

次の日からアスカの態度は少し変わった、あまり会話はなかったけど、一日も早く病院から抜け出そうと

食事も良く取ったし、リハビリにも精を出していた。

 

また暫くして僕にお弁当を要求した。

何でも病院食は味気ないと言う、僕は医師の先生に聞いて見たけどにっこり笑って了解してくれた。

 

退院のめどが立ったとき僕は冬月指令と一緒に病室を訪れた、今後のアスカの話だ。

結局、まだ混乱時期は収まったと言っても僕らには最低二年ほど監視がつく、

前みたいなきつい監視ではないみたいだけど、だからどちらかと言えば本部つまり日本に居て欲しいということだ。

 

アスカは残念だったのか、ほっとしたのか判らない表情をしていた、僕は正直ドイツに帰りたいとばかり思っていた。

 

「シンジは今どうしてるの?」

「僕は、父さんの関係で冬月さんの所にいるんだ。」

僕がそう言うとアスカは冬月指令の方をチラチラと見ていた。

 

「シンジ・・・・・・アタシ帰り方・・・・・・居場所の作り方わかんないよ・・・一生懸命考えたけど・・・。」

寂しそうに話すアスカの姿に最初マヤさんの所に預けようかと話していた考えがしぼんでいく。

 

「アスカは・・・・どうしたい?」

でも僕はあえて聞いたんだアスカが自分で言わないと意味がないし、

どこに行きたいか判っても僕の出来ること、僕にしか出来ないことをしたかった。

 

「シンジと・・・シンジとまた一緒に暮らしてみたい。」

その声はどちらかと言うと僕というよりも冬月指令に聞こえるようにはっきりとしたものだった。

僕ももう一度やり直してみたいと思った、ただ僕はいま何の力もないし、守られる立場、

でももう一度アスカと一緒に自分達がやらなきゃいけない事を見つけてみたかった。

 

「冬月指令・・・。」

僕は勇気を出さなきゃいけないと思った、僕が出来ること、それは懇願することだけでも・・・・・・。

 

「シンジくん、確か二階にいい部屋が空いていたな、私の書斎と反対方向だし日当たりもいい。」

「それじゃあ!」

「しかしな・・・シンジ君の部屋の隣は・・・まあいい、孫が二人できたと思えば。」

そう言って笑いながら話す冬月指令にお礼を言ってアスカと笑った。

 

 

退院後のアスカは、約束どおり僕と一緒に冬月さんの所にお世話になった。

早速学校への入学手続きをして僕らの最初の高校生活が始まった。

何よりもそこには僕にとってもトウジやケンスケがいたしアスカには洞木さんがいたから良かったと思う。

 

アスカは入学早々やっぱり人気が出てたけどそんなものは一向に相手をしなかった。

 

僕にしても新しい生活をはじめて色々やってみた、

加持さんの言葉の意味をもう一度見つけて見たいと思ったしそれがあの時の二人との約束だから・・・・・・。

 

変わったといえば少しアスカがおしとやかになった、まあ冬月指令と一緒だから結構厳しいんだよね。

礼儀作法に、料理。

といっても料理は僕が教えた、勉強を教わる代わりにどんなことでも僕らはぶつかり合って一緒にやってきた。

 

二年になると僕達は別々のクラスになった、僕とアスカは一年の夏休みの後陸上部に入ったから関係なかった。

 

 

ある日、僕は偶然人気のないところで告白されているアスカを見つけた、

うつむきながら聞いているアスカに僕の知らない彼女がそこにいた。

 

僕はアスカの何なんだろう?アスカは僕にとってどうなんだろう?

僕はその考えを伸ばしたくなかった、もやもやとした感情を持つのはもう嫌だった。

 

気づくと僕は、その方向に向かって歩いていた、どんな結果になろうとここで僕は聞いてみたかった。

その姿に二人が気づいたから僕も一言いい出そうとしていたけどアスカの行動に固まってしまった。

 

アスカは僕の方に走ってきて腕を絡めると相手に向かって

「ゴメン、アタシいまこいつと付き合ってるんだ。」っていって謝っていた。

 

相手もそんなアスカのそぶりを見て僕を一睨みしてその場を去っていった。

「今のはダシよダシ!」

そういって力いっぱい否定したけどその絡んだ腕は離れることがなかった。

 

アスカの不用意な発言は翌日には全校いやここらの地域に知れ渡っていた。

特に僕らが一緒に暮らしていることについても言及されたけど、そこは冬月指令が保護者と言うことで

先生方からは何も言われなかった。

 

でも生徒達はそうもいかない、あれからだね結構学校生活が騒がしくなったのは。

 

その勢いで僕らの関係も急速に近づいた、そしてアスカのその言葉で僕らは正式に恋人同士になったと思う。

 

「アンタとは死んでも嫌・・・・・・。」

「でも今までと・・・これからもがんばるアンタだったら・・・病室で言ってくれたシンジだったらアタシ、アンタと一緒にいたい。」

 

僕はその時、大切なものを一つ手に入れることが出来たと思う。

 

 

そんな時、アスカのお義母さんがやってきた、僕らは海外には出ることが出来なかったので訪ねてきたらしい。

その夜はちょっとしたパーティーもやった。

 

話によるとアスカに妹が出来るらしい、

もう一度それを機に皆やり直したい、出来れば監視が緩やかになったらドイツに帰ってきて欲しいと。

僕はアスカに紹介された傍らその言葉を話す二人を見ながら呆然としていた。

 

アスカのお義母さんが帰っていった後、アスカは少し寂しげな表情だった。

迷っている僕はそれに助けてあげる事は出来ても決めることは出来なかった。

 

「アタシ・・・ドイツに帰る。」

なかなか寝付けない夜、僕の部屋を訪れたアスカはそう言った、僕の方をすまなそうにしていた視線が痛かった。

 

「でも・・・でも、アタシ・・・シンジと一緒にいたい」

「でもね・・・自分の居場所・・・自分で作ってみたい、だからいつ此処に戻ってこれるか判らない・・・ううん戻ってこれるかも・・・。」

アスカは一人の人間として悩んでいた、だからその想いを止めることはしたくなかった、なんと言われようと。

そう言って泣き出すアスカの姿が愛しくて僕達は数えるほどしかしていない口付けを交わした。

だれも知られない暑い月夜の晩に・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

「シンジ〜、後どれくらい?」

「あのね、僕は始めてなんだよ?こっちこそ聞きたいよ。」

「むう〜、せっかく郷愁に浸っているのに味気ないわね〜。」

僕は延々と続くアウトバーンから視線を外さないで笑っていた。

 

 

 

 

 

「農業バイオプラント工学?」

僕は進学するにあたり進路指導でその言葉を口にした。

僕ら二人は、アスカは別にしろなかなかいい成績で卒業できそうだった。

僕は加持さんの影響か何かを作る方面で貢献の道へ進みたかった。

そして選んだのが農業工学、今ではバイオテクノロジーの実用導入などで進んでいる分野だ。

先生は、近場で成績のいい新東京大学を進めたけど僕は目的をもつならその方面の大学へと話してみた。

隣にいた冬月指令はそんな僕の姿にうんうんと頷いて賛同してくれた。

 

アスカにとっては「アンタらしい。」と妙に優しく言われたのが印象的だった。

僕らは高校卒業後、監視が解けるそれは二人の別れを示唆していた。

アスカはすでに向うの大学から数校誘いがきていた。

 

翌日、僕は冬月指令の遅い夕飯に付き合っていた。

「シンジ君、君はもう18だ、立派に一人で考えることも出来るだろう。」

そう言った冬月指令の言葉は、子供か孫に何かを伝えようとしている言葉だった。

「昨日、君が希望した分野でね、私の知り合いがいるんだが君の話をしたら是非うちにきてくれないかと言っていてね。」

「ただ彼もこの分野ではかなりの権威だ、学校もレベルは高い。」

その言葉に僕は引き込まれた、せっかくこうして皆が僕を支えてくれている、僕ががんばれば答えてくれる。

 

「冬月先生、お願いします!僕やってみたいんです。」

そう言って笑った冬月指令の手元から一冊のパンフレットが僕に渡された。

 

『ドイツ・ハイデルブルグ大学 バイオテクノロジー研究所』

 

「やれやれ孫が巣立っていくというのはこんなことかね碇・・・・・・。」

寂しそうな、それでも嬉しそうな視線を投げかけながら冬月指令は遠くを見つめていた。

 

 

「がんばってな。」

そう言って握手を交わした僕らは空港のロビーでしばしの別れを惜しんでいた。

無事、卒業した皆もきてくれてかなりの人数だ。

実際向うは9月から新学期だからちょうど夏休み、だから僕ら二人の門出を祝ってくれた。

「結婚式には呼ぶように!」

ケンスケのそんな言葉に僕らは二人して真っ赤になったんだ。

「シンジ君、君のものだ。」

そう言って渡されたものは父さんの遺産だった、かなりの額だったけどあまり嬉しくなかった。

「こんなものしか残せなくて、碇もさぞ悔しいだろう。」

「ただ言わせて貰えばそれを食いつぶしてでもがんばってな、二人で・・・・・・。」

そんな冬月指令の言葉を最後に僕らは機上の人となった。

 

 

 

「やれやれやっとついたか。」

アスカはそう言って車を降りると背伸びをした。

カッコイイからと遺産でこの車を選んだのはアスカなのに。

目の前には僕の下宿先、そしてアスカの家が見えた。

 

玄関から二人の夫婦が出てくる、そこに飛び込んでいくアスカがみえた。

僕は緊張しながらバックを担ぎ直すとそこに歩いていく。

「お待ちしてました。」

アスカの義母さんがその脇に子供を抱えて笑顔で迎えてくれた、その隣でアスカの父さんが品定めしている。

「パパ、そんな気にしないでよ。」

アスカはドイツ語でそんな父に話し掛ける。

「そんなことを言ってもなあ。」

 

しげしげと見つめられて僕も緊張しながら挨拶を交わす、ドイツ語は卒業してこの半年みっちり鍛えられた。

「はじめまして碇シンジです、アスカさんには色々とお世話になって、今回も僕の下宿先に部屋を提供していただき有難うございます。」

そういって頭を下げるとおかしそうに頷きアスカに話し掛けていた。

あっ蹴られた、アスカが顔を真っ赤にしながら父さんに早口でまくし立ててる、わからないんだよなあそこまで早いと。

 

 

僕達が到着して挨拶を済ました頃、周りの人たちも集まってパーティーが開かれた。

野外でのちょっとした歓迎と帰宅のパーティーでご近所さんも集まった。

 

「アスカ!」

「ロッテ!」

「お帰り!ずいぶん見違えちゃって、綺麗になったわよ。」

「ロッテだって、元気だった?小学校以来だもの。」

「元気元気!ほらリーベルもいるわよ!」

「へ〜泣き虫リーベル?」

「なんだラングレーあいかわらずだな。」

「少しは強くなった?」

「ラングレーには及ばないよ。」

「何よ〜それ〜。」

「でも綺麗になったね。」

「あっレイチェル!」

「よう!」

「アンタもしかしてヴィクター?」

 

アスカの周りにそんな感じで同年代の人たちが集まっている、

その姿を僕は少し離れたところで見ていた。

『よかった、自分の居場所見つけられたね。』

少し寂しい想いをしながらいままで知らなかったアスカをぼんやりと眺めていた。

 

「しかし惣流がこんなレディになるんなら今から立候補したいな。」

体格のいいヴィクターがそう言って笑いかける。

「そうだね、ラングレー?いまどうなの?」

「今はいいのよ。」

「またまた〜。」

 

そんな話をしているとアスカの父さんと何の気なしに話していた僕を呼んだ。

「紹介するね、アタシの今のところの第一候補、碇シンジ、ハイデルブルグ大学の若きホープよ!」

そう言って僕の腕に巻きつくとそれまで騒いでいた男達が固まった。

 

そんな中僕も真っ赤にしながら一応挨拶する。

「こっこんにちは碇シンジです、一応、現在アスカの恋人らしいです。」

「なによその一応って!らしい?ハン!アンタあんな事してそ〜言うこというんだ。」

「だって!アスカがいいって言うから!」

「なによ!そんなこと言うと追ん出すわよ!」

「そんな〜。」

顔を真っ赤にしながらそれでも腕から離れないアスカと僕のやり取りに固まる友人達。

 

「なあ、何かもうラングレーって売約済みじゃないか?」

「そんな感じね。」

「ところであのジャパニーズ、ハイデルブルグだって?」

「なんでここいるの?」

「知らないのロッテ?今度アスカの家に下宿するのよ彼。」

「誰が?」

「あの人。」

「「・・・・・・・・・・・・。」」

 

「「「うええええええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」」」

その声に僕たちのほうが固まったんだ。

 

「ラッラングレー!」

「何よ!」

「おまえその男と寝るのか?」

「変なこと言わないでよ!下宿人よ下宿人。」

 

「でもでも」

「「イヤーンな感じ!」」

「不潔よ不潔!!」

何か僕はその光景を見てこの人たちとはとても仲良くなれると思ったよ。

 

ささやかな宴はまだ続いている、

やっと真っ赤になったアスカから開放された僕は、その喧騒から少しはなれて挨拶に回っていた。

 

ふと気づくと少しお酒が入った皆がおかしそうに踊っていた。

何故か男同士、女同士で踊っていてアスカが笑っている。

 

そんな見たこともない知らないアスカの表情がおかしく見える。

 

 

ねえアスカ・・・居場所ってこんなところでも作れるんだね。

 

知らないアスカをみて僕はふと考えた。

 

僕たちの今までのこと、これからのこと。

 

 

でも、

 

もしかしたらコレは夢かもしれない。

 

もしかしたら僕たちはお隣さん同士で幼馴染で皆とわいわいやったり。

 

もしかしたら悪役なんかやったり・・・・・・・。

 

もしかしたら地球じゃないどこかの星で君と二人で賞金稼ぎなんかやったり・・・・・・。

 

 

 

だってここに来ただけで知らないアスカをこんなに見つけたよ。

 

もしかしたら僕たちには。

 

もっと可能性があるんだよね。

 

これからもそうやって自分達の居場所を見つけていくんだね。

 

みんな見てくれると思うよ。

 

 

 

「何ひたってんのよ。」

ほろ酔い加減のアスカが僕の腕を掴む。

「ほらっ、アンタ主賓でしょ?みんな待ってるわよ。」

「そうだね・・・・。」

僕は誘われるままにアスカの手を握ってそのまま踊っている中に入っていく。

 

アスカの父さんと義母さんも笑いながら僕たちを見ていた。

 

 

 

ねえシンジ・・・・・・。

 

なに・・・・・・。

 

アタシ達色々あったけど、これからもやっていけるよね?

 

うん・・・・・・・。

 

これからも色々あるかもしれないけどね・・・・・・。

 

色々ってなによ〜。

 

だって僕たち皆がそう思えば。

 

なんだって形になるんだから・・・・・・。

 

じゃあ手始めにアタシと踊りなさい。

 

え〜っ!何だよソレ?

 

お姫様とその騎士。

 

ハイハイお姫様。

 

ふふっ満足じゃ。

 

軽やかなステップで輪の中に入っていく、アッ足踏んじゃった。

痛い・・・・・・、抓んないでよアスカ・・・。

 

でもこれからも色々あるんだろうな。

 

どんな人生が待ってるんだろ。

 

まあそれは皆さんにおまかせ。

 

僕はこのアスカで手一杯だから。

 

「シンジッ」

アスカの酔って楽しそうに微笑んでる姿に僕も笑顔を向ける。

僕も負けずに微笑んだ。

 

「これからもよろしくね。」

「こちらこそ。」

アスカがそう言って笑った笑顔を見て思ったんだ、

ホントなんとなく思ったんだけどね、

 

100万ドルの笑顔だって。

 

あっ100万ユーロかな?

 

まっいいや。

 

そういって僕たちのダンスは何故かいつまでも続いたんだ。

 

僕たちの話のように。

 

これからもね・・・・・・。

 

Fin


マナ:100万ヒット記念作品ありがとう。

アスカ:自分の居場所かぁ。簡単な様で難しいわねぇ。

マナ:どこにでもあるようで、なかなか無いものなのね。

アスカ:きっと、自分で作っていくものなのよ。

マナ:いったいいくつの自分の居場所って作れるのかしら?

アスカ:自分の可能性の数だけ、作れるんじゃない?

マナ:わたし達には、まだまだいろいろな可能性があるのね。

アスカ:ちょっと、悪役ってのはイヤだけどねぇ・・・。

レイ:私はギャグキャラじゃない・・・。

アスカ:な、なんか聞こえたっ!?

マナ:ん? なにも?

アスカ:そう? まぁいいわ。

マナ:これからも、みんなでいろんな可能性探していきましょ。

アスカ:そうね。アンタとシンジが結ばれる可能性は無いと思うけど。

マナ:そんなことなわよーだ。
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