「・・・・・・ここか」 

「はい。血痕が鏡の前で途切れているんですが・・・・・・」 

「鏡の中に消えた―――とでも言うのか?三文ミステリーじゃあるまいし」 

「おまわりさん・・・・・・」 

うさぎの人形を大事そうに胸元に抱え、2人の刑事を見上げる顔があった。 

「あぁ、この子です。被害者の娘さん」 

「お嬢ちゃん・・・・・・何か覚えてることはないか?」 

年配の刑事は腰をかがめ、少女と同じ目線に立つ。 

「鏡の中に・・・・・・」 

えずきながら、少女が語り始める。 

「鏡の中に、金色のおばけがいたの・・・・・・ママが、ママが・・・・・・」 

刑事達は顔を見合わせ、それから、揃って鏡を見た。 

何も答えず、ただ血痕の行く末として残る、鏡を。 



♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪ 

朝焼けに包まれて 走り出した 

行くべき道を 

情熱のベクトルが 僕の胸を貫いていく 

どんな危険に傷つくことがあっても 



夢よ踊れ この地球(ほし)のもとで 

憎しみを映し出す鏡なんて壊すほど 

夢に向かえ まだ不器用でも 

生きている激しさを 体中で確かめたい 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪ 



仮面ライダー龍騎EVAAVE騎龍ーダイラ面仮   
          第四話話四第 

「アスカ!」 

「・・・・・・しくじったわね。あのクモは逃がしちゃったわ」 

「それより、デッキが・・・・・・!」 

「ああ、問題ないわよ。しばらくすれば治るわ。・・・・・・で、シンジは?」 

「ずっと意識が戻らないの。どうしたらいいのか・・・・・・」 

「ライドシューターなしでミラーワールドに行ったんだもん。多少は仕方ないわよ」 

シンジは闇の中で、そんなやり取りを聞いていた。 

「・・・・・・あのクモが狙っている人間は分かる?」 

「分からない。この人なら知ってると思うけど」 

「モンスターは1度狙った獲物は逃さない。必ずまた現れるはず」 

(・・・・・・モンスター?) 

「・・・・・・っと、電話だ。出た方がいいのかな?」 

「さあ?まぁいいわ私が出るからどうせネルフでしょ」 

「はい、今シンジなら気絶してるわよ」 

止まっていた思考が少しずつ動き始める。 

「じゃぁヒカリそうゆうことだから」 


ピッ


蜘蛛。 

マユミさんの首に巻き付いていた、糸。 

(狙っていた獲物って・・・・・・マユミさんとあの店員さんのことか!?) 

「マユミさんっ!!」 

「あいたっ!」 

勢いよく身体を起こしたシンジの顔面と何かが衝突し、シンジは再び意識を失いかけた。 

「いてててて・・・・・・」 

「なにすんのよ!!馬鹿シンジ」 

鼻で笑う、ふん、という声。 

「アスカ!?」

再び、今度はゆっくりと身体を起こすシンジ。 

ベッドに寝かされた自分の傍らに、鼻を押さえる女性と、アスカが立っている。 

「・・・・・・母さん?」 

「おはようシンジ」

にこりと笑いながら言う 

「・・・うん・・・って何で母さんが??」 

「まぁっそれは後で説明するからちょっと待ちなさい・・・・・・シンジも、ライダーなの?」 

「は?」 

ユイは唐突にシンジの身を気遣うこともせず、ただそう訊いた。 

「ライダー・・・・・・って、何?」

今度はアスカが口を開く

「そう・・・なんも知らないのね・・・仮面ライダー、よ。・・・・・・どこでデッキを手に入れたの?」 

「デッキ?」 

「・・・・・・最初から説明する気はないから。デッキを出しなさい」 

表情一つ変えず、そう言い放つアスカ。 

「アスカ。シンジもあの龍に狙われてるんだよ。今デッキを手放したら―――」 

「そうなれば好都合よ」 

「アスカ!」 

ユイに睨みつけられ、アスカはやれやれといった感じで肩をすくめる。 

「分かったわよ。・・・・・・シンジ。龍に喰われてもいいけど、封印はダメよ」 

「アスカ・・・・・・一体・・・・・・」 

「そのうち分かるわ。ライダーになるならね」 

アスカはそう言い残し、コートを翻しながら部屋を出て行った。 

「もう・・・・・・」 

ユイが溜息をつく。 

「あの、母さん?」 

「ん?何?」 

「いったいどうなってるのさ」 

「説明はあとって言ったでしょ。とりあえずこのカードを手放さないで」 

と言いつつ、匠に1枚のカード―――鏡の中で使っていたのと同じもの―――を手渡す。 

『SEAL』。絵柄は、中央の穴に向かって紫色の渦が描かれている。 

「それがあれば、モンスターに襲われても大丈夫だから」 

「いや、まずモンスターって・・・・・・」 

「簡単に説明するとね・・・・・・」 






「・・・・・・マジで言ってんの、それ?」 

聞き終えたシンジの第一声。 

「人がせっかく説明してあげたのに、その態度はないでしょ?」 

ユイ・・・・・・は頬を膨らませながら言う。・・・・すでにオバさんだというのに・・・(笑) 

「だいたい、あなただって見たでしょ?ライダーも、モンスターも」 

「そりゃ、そうだけど・・・・・・っていうか、僕もなってたし・・・・・・ライダーに」 

生命の存在しない世界・ミラーワールド。 

ミラーワールドとこの世界は、鏡を出入り口として繋がり得る。 

ただし、自由に行き来が可能なのは、『アドベントカード』のデッキを手にした人間・・・・・・『仮面ライダ
ー』と、ミラーワールドに棲むモンスターのみ。 

「アドベントカードは全部で13組。ただ、モンスターと契約してないデッキは何の役にも立たないけどね。あ
なたみたいに・・・」 

「キツいな・・・・・・」 

シンジは頭を掻きながら、言われた内容を整理し、その途中で思い出した。 

「そうだ!マユミさんが!」 

「マユミさん・・・・・・って、あなたが倒れてたこと言ったら、迎えに来るって言ってたけど。そろそろ着く
んじゃない?」 

「それどころじゃないって!あのクモ、マユミさんを!」 

シンジがまくしたてたその時・・・・・・ 

キイイイ、と、涼しい、しかし耳障りな、何かが接近する音が響いた。 

「これ・・・・・・何だ?何かが近付いてくる・・・・・・」 

「モンスター・・・・・・マユミさんについて来たみたいね」 

ユイは落ち着いた様子でそう言っただけで、特に動こうとはしない。 

「何してんだよ!早く―――」 

「私が行ったって足手まといになるだけ。アスカに任せるしかない・・・・・・シンジだって一緒よ」 

「でも!じっとしてるなんて出来ない!」 

「ちょっと!シンジ!」 

ユイの声を背に受けながら、シンジは響き続ける音の発生源を追った。 

「変身!」 

窓ガラスにデッキを映し、変身するアスカの姿がそこにある。 

騎士の姿をしたライダー・・・・・・仮面ライダーナイト。 

「シンジは黙って見てなさい。せいぜい喰われないように気をつけてね」 

ナイトが鏡の中に消えた。 

が、その姿は見えている。鏡をスクリーンにした映画のように。 









蜘蛛の八本の脚と、人間の胴体、そして異形の頭部を持つモンスターが、現れたナイトと対峙する。 

『Swordvent』 

ナイトの手にウイングランサーが握られるとともに、蜘蛛の脚が地を砕きながら迫った。 

軽く跳躍を繰り返して避けながら、全ての脚に一撃ずつ斬撃を加えていく。 

動きが目に見えて鈍くなったところで、腰に収めた剣とウイングランサーを交換し、バイザーにカードを装填する。 

『Advent』 

ナイトのマントが外れ、漆黒の巨大なコウモリ・・・・・・ダークウイングと化した。 

「キイッ!」 

ダークウイングは空気を震わせながら蜘蛛に近付き、その頭部を打ち据える。 

「ギ・・・・・・」 

しかし、その一瞬の接触で、蜘蛛はダークウイングの翼に糸を巻き、動きを封じていた。 

「ちっ!」 

『Nastyvent』 

次なるカードの装填とともに、ダークウイングが凄まじい怪音を上げ始める。 

臓そのものを直接振動させるかのごとく響く音に、蜘蛛がダークウイングを投げ飛ばし、距離を取った。 

「はぁあ!」 

その間にナイトは蜘蛛の頭部に達し、剣を振り下ろす。 

が、人間型の胴体から生えた腕に薙ぎ払われ、地に叩きつけられて剣を落としてしまう。 

「ぐはっ・・・・・・!」 

「ギ――ッ!!」 

ダークウイングがすかさず剣を拾い、ナイトの手に運ぶ。 

「うああああああ!」 

蜘蛛の脚が一本、根元から吹き飛んだ。 

匠には何が起こったかすら分からない一瞬の間に。 

「はあっ、はあっ、はあっ・・・・・・」 

優勢になるかと思われた時、ナイトの身体から光の粒子が漏れ出した。 

否、ナイトそのものが光の粒子となって消え始めているのだ。 

「ちっ・・・・・・デッキのヒビか・・・・・・」 

舌打ちすると、ナイトはウイングランサーを手に駆け出す。 

「うりゃぁっ!」 

もう一本、脚の先端が切り落とされた。 

が、ナイトの様子がおかしいのは、ライダーのことはほとんど知らないシンジにも明らかに分かる。 

「アスカ!早く戻れ!」 

シンジの言葉を聞いているのかいないのか、ナイトはまだウイングランサーを振るうのを止めない。 

「早く戻れって!!」 

「・・・・・・ちっ!」 

渋々、といった感じで、蜘蛛に背を向けるナイト。 

蜘蛛の方も深追いはせず・・・・・・というか、傷を癒すためなのだろうが、粒子となって姿を消す。 

「ぐうっ・・・・・・う」 

窓ガラスの前に戻って来たのはナイトではなくアスカ。 

額に血を滲ませ、肩を押さえながら。 

「アスカァ!!!!!」 

「・・・・・・人のことを心配する前に、自分の前を見なさいよ・・・・」 

「え?」 

アスカの言葉どおり、今までナイトと蜘蛛の戦いを見ていたガラスに龍が映り込んでいる。 

「う、うぉ!」 

ほとんど反射的に、手に持っていたカード・・・・・・『SEAL』をかざして顔を庇う。 

「グル・・・・・・」 

龍は顔を背け、ほどなく姿を消した。 

何かを恐れている・・・・・・そんな動きで。 












「鏡の中に怪物がいた・・・・・・だと?」 

「はい。被害者の娘はそう供述しています」 

「くだらん。子どもの言うことなど気にしている暇があるなら、現場を洗い直せ」 

「はい」 

若い刑事が指示を出し、年配の刑事がそれに従う。 

違和感のある光景だが、最近はそれが当たり前になっている。 

「ケンスケ」 

「何だ」 

「このところ起こっている連続行方不明事件・・・・・・部屋の鏡の前、カーブミラー、そして今回の試着室
・・・・・・なぜ鏡の前に血痕があるみたいなんだ?何かのトリックなんかな?」 

「さあな・・・・・・それを調べるのが我々の仕事だ」 

「そうだ・・・な」 

ケンスケ、と呼ばれた男は、純白の手袋をはめて歩き始めた。 

口元に薄い笑いを浮かべながら。 
















続く


アスカ:なんだか、シンジと会っても死なないみたいよ?

マナ:なーんだ。つまんないの。

アスカ:ナ・ニ・ガ、つまんないのよっ!

マナ:ミラーワールドって何?

アスカ:モンスターがいるとこみたいね。

マナ:あぁ、アスカの家ね。

アスカ:コロス!(ーー#
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