「僕、きっとおにいちゃんみたいな立派な刑事になるから。だから」

「・・・・・・がんばれよ。お前なら、きっとなれるよ」

「おにいちゃん・・・・・・」

「・・・・・・一人でも、がんばれよ」

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「おにいちゃん!」






「失礼、ケンスケ」

ノックの音が、まどろみの中にあった刑事・・・・・・ケンスケを現(うつつ)に引き戻した。

「何だ」

「また行方不明者がでた。今度は市民プールの更衣室から人が消えたと・・・・・・」

ケンスケは立ち上がり、壁に掛けてあった制服に袖を通す。

「更衣室・・・・・・鏡・・・・・・ね。この一致は偶然だと思えない」

「・・・・・・」

キイイ、と、涼やかな、しかし耳障りな音が響いているが、若い刑事はそれに気付かない。

(・・・・・・狙われているようだな、こいつ)

2人は部屋を出ると、駐車場に向かって歩き始めた。

「しかし、鏡に着目するとは変わった視点だな?」

「いや・・・・・・気になっているのは、あの女の子が言っていたことなんだ」

「金色の怪物か?まだそんなことを・・・・・・」

鼻で笑うケンスケ。

「もちろん怪物じゃないにしても、何かがあるような気がする。この事件の鍵を握る、何かが」

歩き続け、車の鍵を開けようとした瞬間―――

蜘蛛の糸が刑事の口を塞ぎ、喉に巻き付き、全身を縛り上げ、サイドミラーの中へ引きずり込んだ。

「・・・・・・大当たりだったな」

ケンスケは誰にともなく呟き、刺さったままの鍵を回す。

何事もなかったかのようにドアが開き、ケンスケを受け入れた。


♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪ 

朝焼けに包まれて 走り出した 

行くべき道を 

情熱のベクトルが 僕の胸を貫いていく 

どんな危険に傷つくことがあっても 



夢よ踊れ この地球(ほし)のもとで 

憎しみを映し出す鏡なんて壊すほど 

夢に向かえ まだ不器用でも 

生きている激しさを 体中で確かめたい 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪  




仮面ライダー龍騎EVAAVE騎龍ーダイラ面仮   
          第六話話六第 





「うおぉ!」

首筋をかすめるウイングランサーを避け、龍騎は情けない声を上げた。

「何するんだよ!アスカ!」

「当たり前よ」

ナイトは感情の込もらない声でそう言うと、再びウイングランサーを振りかざす。

「うあああっ!」

龍騎の胸部を包む装甲に裂傷が生じる。

「やっ!」

なおも容赦なく斬りつけてくるナイト。

「アスカ!!!」

『Swordvent』

頭部を狙ったウイングランサーが、龍騎の手に握られた青龍刀・・・・・・ドラグセイバーに止められる。

「アスカ!何のつもりだよ!」

ナイトは答える代わりに、新たなカードを剣に装填した。

『Trickvent』

「はぁ!」

再び、ウイングランサーが龍騎の喉を狙って突き出された。

「くそっ!」

難なくかわし、龍騎が蹴り出した足は、ナイトの身体を縦に裂いた。

「え?」

否、ドラグセイバーは空を切っただけで、ナイトの姿が2人に増えている。

「アスカって、ふっ双子ぉ?」

ナイトがウイングランサーを構えると、その姿はさらに4人へと増える。

「四つ子かぁ!?」

間抜けな声を上げる龍騎を取り囲むように、8人のナイトが円陣を組んだ。

「八つ子ぉ!?なんだよ、これ!」

「そのまま死んで」

龍騎の真正面にいたナイトが斬りかかる。

戸惑いつつも、ドラグセイバーを身体の前に構えて防御する龍騎。その無防備な背を真後ろにいたナイトが斬り
裂く。

「うわああっ!」

続いて、右前方にいたナイトが。左後方にいたナイトが。次々にウイングランサーを振い、龍騎の身体に傷を刻
んでいく。

龍騎が振ったドラグセイバーは、何発かは命中しているがダメージになっていない。

それどころか手ごたえすらまるでない。霞を斬るような感覚。しかし、ナイトの斬撃は確実に龍騎を追い詰めて
いく。

「くそっ!」

回転しながらドラグセイバーを振りかざし、一旦全てのナイトに距離を置かせる。

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」

「次で終わりにしてあげるわ」

8人のナイトは、それぞれウイングランサーを身体の前に構えた。

「はぁ・・・・・・」

龍騎は感覚を研ぎ澄ませ、己の中にある力を少しずつ解放し始める。

受けた傷の痛みが薄れるのとは逆に、空気の流れが、ナイトの敵意の波動が、ウイングランサーが空を斬る感覚
が伝わってくる。

音もなく斬りかかる1人目のナイト。

「くらうかぁっ!」

ウイングランサーとドラグセイバーが接触し、金属音とともに火花が散った。

「ていっ!」

『Guardvent』

背後から来た2人目のナイト。その攻撃は、龍騎の肩に生じた赤い楯に弾かれる。

「うりゃっ!」

重心を下げ、3発目のウイングランサーを避ける。とともに、肩の楯を手に持ち替えて4発目を受け止める。

「なんとっ!」

ドラグセイバーを振りかざして5発目を、楯を背後に突き出して6発目を。

「でええっ!」

正面から2発同時に来た最後の攻撃を、両手持ちドラグセイバーで弾く。

「何・・・・・・!?」

ナイトは再び円陣を組みながら、驚きの声を上げる。

「人間、やれば出来るもんなんだな〜・・・・・・」

驚いているのは龍騎自身も同じだったりする。

出来ると確信していたわけではない。ただ追い詰められてやってみただけのことだ。

「・・・・・・マグレは続かないわ。これで終わりよ!!」

再び、ランサーを構えるナイト。

「アスカ!!もうやめろよ!じゃないとこっちだって黙ってないぞ!!」

龍騎は警戒する様子もなくそう言ってのける。

「ふん」

その言葉を受けたわけでもないだろうが、1人目のナイトが背後から斬りかかった。

「おりゃああ!」

ドラグセイバーがその胴を薙ぐ。

手応えもダメージもなく、ただ空を切るドラグセイバー。

2人目が右側方から迫る。

「ていっ!とうっ!どありゃああ!」

ドラグセイバーを振りかざし、背後から来たものを蹴り、ランサーを楯で防いで全力で殴る。

「だありゃあ!でいやあ!どぉおおおおお!!」

3体が続けざまに胴を殴られる。

「うおおおおおっ!」

最後の1体。

ランサーをドラグセイバーが弾き、その胴を龍騎の右腕が撃ち抜く。

「バカ・・・・・・な・・・・・・っ」

今までとは違う確かな手応えとともにナイトが膝をつく。

龍騎は距離を取り、腰に手を当てながら言う。

「だ、大丈夫!?ごめんっ」

腹を押さえながら、ナイトが立ち上がった。

そのベルトにはヒビが入っている。

(シザースにやられた傷・・・・・・まだ治らないか)

「ア、アスカぁ、もうやめようよ・・何のつもりか知らないけど」

龍騎の言葉を無視し、ナイトは次のカードをホルダーから抜き取る。

「何も知らずに馴れ合いを求めないで!戦わなければ生き残れないのよ!」

『Nastyvent』

「ギ―――ッ!」

巨大な翼を持つコウモリのモンスター・・・・・・闇の翼ダークウイング。

ナイトの頭上に飛来したそれが翼をはためかせると、筆舌に尽くし難い不協和音が龍騎の頭に直接叩き込まれる

「があああああ!や、やめて!やめてよ!」

やめろと言われてやめるわけもなく。

龍騎が耳を塞いでいる間に、ナイトは更なるカードを装填している。

『Finalvent』

「ああああああっ!もうっ!!」

『Shootvent』

無意識にカードを装填し、龍騎がダークウイングに向けて突き出した右手。

それは龍の顎と化し、不可視の速度で炎の弾丸を放つ。

「ギイッ!」

ダークウイングは翼に炎を受け、地に落ちる。

とともに、龍騎を襲っていた不協和音が止まった。

「ふぅ〜・・・・・・って、何だよこれ!」

額の汗を拭おうとして・・・・・・そもそも装甲越しに汗は拭えないのだが・・・・・・挙げた右手が龍になっ
ていることにようやく気付く。

「ダークウイング!」

「ギ―――ッ!」

ナイトの呼び掛けに応じ、ダークウイングは素早くその背中に憑依、マントとなった。

「アスカ・・・」

「たっ!」

遥か上空まで飛翔、マントと化したダークウイングを全身に纏い、漆黒の槍となって相手を貫く技―――ナイト
のファイナルベント。

「飛翔ざぁぁぁぁぁぁんっ!!」

「わっわわ!なんかないのかぁっ!?」

凄まじい速度で迫るナイトに対して、適当にカードを引き抜いてバイザーに押し込む。

『Guardvent』

「グラオオオオッ!!」

装填されると同時に、真紅の無双龍・・・・・・ドラグレッダーが龍騎の側に現れ、守護するかのように周囲を
飛翔し始める。

黒い弾丸が着弾する直前。

「な、何っ!?」

ナイトの速度を更に上回る気流・・・・・・竜巻が、ダークウイングごとナイトを吹き飛ばした。

龍騎を中心として急激に巻き起こった竜巻。シュルシュルとその余韻が収まっていく。

「・・・・・・ますます、今のうちに潰さないとまずそう・・・・」

「何言ってんだよ!早く戻らないと―――」

龍騎の言葉に、ナイトは自分の掌を見る。

案の定、光の粒子が漏れ始めていた。時間切れである。

「・・・・・・チッ!」

舌打ちして去っていくナイト。

龍騎もまた、時間切れのペナルティ―――『消滅』は知らないだろうが―――来た鏡からミラーワールドを脱出
する。

赤いバイク・・・・・・ライドシューターに乗って。

ミラーワールドと現実の間には、ミラーホールと呼ばれる空間がある。

ライダーであっても、そこを自力で通りぬけようとすると大きなダメージを被ることになる。それを防ぐための
移動手段だ。

バイクというより、カプセル状。上部から降りるシールドが完全にライダーを防御している。

高速で流れていくミラーホール内の、幾何学模様が広がる景色。

龍騎は疲れ果てた体をライドシューターに預け、全身の力を抜いた。






「何のつもりなんだよ!アホアスカ!!」

シンジは現実に戻るなり、アスカの腕を掴みながら叫んだ。

「ライダーはモンスターを倒すもんなんだろ?なんでライダー同士戦わなくちゃいけないんだ!」

「うるさい!うるさい!!」

アスカは振り向き様シンジの顔面に拳を叩きこむ。

「がっ!」

倒れ込んだシンジに向かって再び背を向け、歩き始めるアスカ。

「13人のライダーは戦う宿命。戦わなければ生き残れない!」

吐き捨てるような言葉だけを残して、アスカは足早に去った。

(バカシンジっ何であんたがライダーなんかに何のよ!!・・・あぁぁもう!)

「くっ・・・・・・何なんだよ、どうしたんだよあいつ・・・・・・」

「大丈夫?」

「え?」

顔を上げたシンジの目が、端正な顔立ちの男を認識した。

差し伸べられた手を受け取り、立ち上がる。

「私は南署の者です。ここで何があったんですか?」

「あ、いえ・・・・・・ってケンスケ??」

「え??もしかしてシンジか?」

「そうだよ、そうだよ」

「じゃもしかして今のがあのアスカ?」

アスカに顔面を殴られて鼻血が出ている。

ハンカチを差し出しながら

「相変わらずだなあいつも」

「ハハハ・・・あ、さんきゅ・・・」

どうやらケンスケは自衛隊に入りたかったのだが基礎体力がなく泣く泣く警官になったようだ。

「だけどあのケンスケがこんな物腰穏やかで、紳士的な態度でこんな二枚目になるとはね。」

「なんだとこのやろぉっ、まぁ三バカやってた時からは想像もつかないかもな」

シンジは鼻血を拭きながら、うんうんとうなずく。

「まぁねぇハハハハ」

「そだよなぁハハ」

そんな二人の笑いがこの場を包んだ




続く


マナ:とうとうアスカはシンジの敵になっちゃったのね。

アスカ:なんで戦わなくちゃいけないのよぉ。

マナ:ライダーの宿命だってぇ。

アスカ:宿命なんて、やぁぁぁ。アタシとシンジの仲はどーなんのよぉ。

マナ:もう、おしまいね。

アスカ:これは、最大のピンチだわ。(ーー)

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