「バカな・・・・・・出来るはずがないだろう?」

「それじゃ、バラしちまってもいいのかい?あんたと俺がやっていたこと」

「・・・・・・」

「俺はいいさ。もともと無くすもんなんかねえからな。でも、あんたには積み上げてきたもんがあるだろ?」

「・・・・・・そうだ。俺は積み上げてきた。今の自分になるために、青春の全てを費やした」

「だったら、考えるまでもねえだろ?」

「ああ―――」

「ぐっ!?・・・・・・な、何をぉっ・・・・・・」

「この俺の人生が、貴様なんかのために狂ってはならないんだ」

「てめ・・・・・・ぐはっ!!」

「死ね」














♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪  

朝焼けに包まれて 走り出した 

行くべき道を 

情熱のベクトルが 僕の胸を貫いていく 

どんな危険に傷つくことがあっても 



夢よ踊れ この地球(ほし)のもとで 

憎しみを映し出す鏡なんて壊すほど 

夢に向かえ まだ不器用でも 

生きている激しさを 体中で確かめたい 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪ 


仮面ライダー龍騎EVAAVE騎龍ーダイラ面仮   
          第八話話八第 


















「くそっ!」

窓ガラスから飛び出すと、アスカはまず辺りを見回した。

誰もいない、気配もしないことを悟り、廊下を駆け始める。

と、ほどなく倒れたままのシンジが視界に入った。

「シンジ!」

襟元を掴み、頬をバンバンと叩く。

「・・・・・・へあ?」

うっすらと目を開けたシンジに対し、前触れ無く問う。

「奴はどこよ?」

「奴・・・・・・?」

「・・・・・・もういい。そこで寝てなさい・・・」

「ぐへあっ!」

アスカはシンジから手を離し、再び走り出した。

結果、頭から廊下に叩きつけられるシンジ。

「いった〜・・・・・・。なんなんだよ、・・・・・・」

シンジが後頭部をさすりながら呟く。

「・・・・・・って、それより、あのカニは?」

ようやくシンジの思考が回転を始めた。きょろきょろと辺りを見回し、何もないことを確認すると走り始める。アスカに遅れること数十秒。






「人っ子一人いない・・・・・・な・・・・・・」

シンジの独り言どおり、全く人がいない。

それに加えて、教室を覗いたシンジの目には、開かれたままの教科書やノートが映っている。板書も明らかに不
自然なところで止まっていて、少なくとも授業が終わったという雰囲気ではない。

つまり、生徒も、教師も、放課後になったから帰ったわけではないということになる。

なら、いなくなった理由は。

シンジは胸騒ぎを覚えながら再び廊下へ飛び出した。

前方の廊下に、見覚えのある何かが落ちている。

水色の、雪だるまのぬいぐるみ。

「・・・・・・!?」

慌てて駆け寄り、手にとって確かめてみる。

「これ・・・・・・あの子の・・・・・・」

自分のポケットにあるものと比べてみても、間違いなかった。

あの少女が持っていたもの。

それが何故、ここに落ちているのか。

「・・・・・・」

シンジは結論を出さないまま、走り続けた。






キイイイン。

耳障りな音が響く。

「・・・・・・」

シザースの気配ではないが、モンスターを放っておくわけにもいかない。

アスカは適当な窓ガラスの前でデッキを取り出し、映す。

腰にベルトが生じるとともに、デッキを持った右腕を肘から曲げ、左の腰まで回して叫ぶ。

「変身!」

言葉と同時にデッキをバックルに装填すると、アスカの姿は仮面ライダーナイトへと変貌を遂げた。

「・・・・・・今の私は機嫌が悪いのよ。覚悟しなさい・・・」

一人呟きながら、ナイトは窓ガラスの中へ消えていった。






「・・・・・・こっちか!」

シンジは、アスカとは別にモンスターの気配を感じ取っていた。

校長室の前。

「この中にいるのか・・・・・・?」

震える手でノックすると―――そもそも、ノックをしている状況ではないだろうが―――、予想外に軽い返事が
中から響いてくる。

「フ・・・どうぞ、入りたまえ」

若い男の声。

「・・・・・・は?」

シンジは拍子抜けしつつも、扉を開けた。

「誰だい?」

校長の椅子には誰も座っていない。その代わり、テーブルを挟んだ来客用の席に、スーツ姿の男がいる。

「いや、僕は・・・・・・」

説明のしようがない。

いくらシンジでも『モンスターを倒しに来ました』では通用しないことぐらい分かっている。

「フ・・・まぁいいさ・・・。そろそろ帰るとするよ・・・。いくら待っても来ないからね」

男は立ち上がる

「あの、あなたが校長ですか?」

「ふ・・・違うよ」

(なんか調子狂うなぁ)                                                

「僕は弁護士の渚カヲル。結構有名だと思うんだけど、知らないかい?スーパー弁護士渚カヲルってさ」

「いや・・・・・・」

今度はシンジが手をひらひらと振った。


「まぁ、いいさ・・・。僕は帰るとするよ」

「あの・・・・・・そのスーパー弁護士さんが、なんで学校なんかに?」

純粋な好奇心から、シンジはその男・・・・・・カヲルに向かって尋ねた。

「ああ、校長に弁護頼まれてね。ちょっと前にここの生徒がいじめで自殺したことでさ・・・それにしてもなぜ
リリンは・・・・・・」

(は?リリン???)

「それで、面倒なことになる前に、僕に尻拭いさせようってわけなのさ」

「はぁ・・・・・・」

「もっと早く言ってくれればよかったのねぇ・・・・。面倒なことになってしまっているのさ」

と、そこまで聞いたところで。

「そうだ、こんなことしてる場合じゃないんだ・・・・・・」

シンジはようやく、本来の目的を思い出した。

「ん?何だい?」

カヲルは不気味笑顔を浮かべ、身を乗り出してくる。

「弁護なら僕に任せるといい・・・。お代は高くつくけどねぇ・・・。まぁ僕の腕だったら当たり前さ・・・」

と言いつつ、シンジのポケットにさりげなく名刺を差し込む。

「あ、どうも・・・・・・」

「ふ・・・君は好意に値するよ・・・・それで何が『こんなことしてる場合じゃない』なんだい?」

「いや、その・・・・・・」

カヲルに顔を覗き込まれ、シンジは答えに窮してしまう。

結局部屋に入る前と同じ問題が残った。『モンスターを倒しに来た』で納得されるはずがないのだ。

「ふ、何でもいいさ。トラブルあったら僕に連絡するといい・・・。金払ってくれれば何でも解決するからさ・
・・・」

カヲルはシンジの肩を軽く叩き、ひらひらと手を振りながら校長室を出て行った。

「何だか、ペース狂う人だな・・・・・・」

ともかく、シンジにとっては好機である。

気配はごく近くにあった。ミラーワールドに入ってから接近した方が効率が良い、と判断し、シンジは鏡を探す
。

外に面した窓を見つけると、すかさずデッキを取り出し、映す。

「変身!」

バックルにデッキを装填、龍騎と化してガラスの中・・・・・・鏡の世界の中へ。






「・・・・・・ふ、龍騎か・・・」

カヲルは車に乗り込んではいるが、キーを差し込んだだけで、ルームミラーを眺めたまま発進させようとしない

「これで3人・・・・・・僕を入れて4人か。誰だか知らないけど、潰し合いしてくれるならそれでいいさ・・」


龍騎、ナイト、そしてシザース。

ミラーワールド内にいる3人のライダーの姿を、ルームミラー越しに見ている。TVを観るのと同じ感覚で。

「でも、不便だね・・・このカード。変身前の姿が分かったら手間も掛からないのに・・・」

『SEARCHVENT』と記されたカードを見ながら、カヲルは呟く。

「ま、せいぜい数減らしてもらうとするよ」

カヲルはキーを回した。

助手席に放り投げられた『SEARCHVENT』のカードは、もう何も映さない。






「ギョエエエエエエッ!!」

龍騎がミラーワールドに入るなり、モンスターの絶叫が響いた。

爆炎とともに浮かび上がるエネルギーを、ダークウイングが掴み取る。

「・・・・・・またシンジか」

ナイトは龍騎を一瞥すると、別の方向に視線を移した。

「おい、ア、アスカ!一体・・・・・・」

「今度会う時は『殺す』と言ったわよね?」

「さあな」

龍騎を全く無視し、ナイトは別の相手と会話している。

その視線を追って首を曲げた龍騎の目に、金色の装甲に身を包んだ何かの姿が飛び込んできた。

「・・・・・・カニ?」

正直な感想だった。

左手には鋏があるし、顔にもそれらしい装飾が施されている。

金色のカニのかぶりもの、といった印象を受け、龍騎は首を捻った。

「仮面ライダーシザース・・・・・・倒すべきライダーの1人・・・」

呆れ声ながら、一応ナイトが解説する。

「仮面・・・・・・ライダー?・・・・・・カニの?ってことは、あのカニは・・・・・・」

「あれは俺の契約モンスター。ボルキャンサー、という」

シザースが声を発した。

「あ・・・・・・」

「ようやく気付いたようだな」

龍騎に指差されながら、シザースは少しずつナイトとの間合いを詰めていく。

「ケンスケ・・・・・・なんで、お前が」

「知る必要はない。お前ら達2人はここで死ぬのだからな」

シザースが、ケンスケの声で言う。

「・・・・・・ケンスケ、ひょっとして」

「そうだ。ボルキャンサーに喰わせたのさ。生徒も、教師も、生命あるもの全てな」

龍騎は拳を握り締めながら、怒りに震える声をようやく絞り出す。

「なんで・・・・・・なんでそんなことを!」

「モンスターは契約した後も人間を欲しがっている。俺はそれに従っただけだ」

「クズね」

ナイトもまた、嫌悪を露にして吐き捨てるように呟いた。

「どちらがクズかは、戦えばすぐに証明されることだ。2人まとめてかかってこい」

「・・・・・・私一人で十分よ」

シザースとナイトが、互いにデッキに手を掛ける。

「僕は・・・・・・」

そんな中、龍騎が低く小さい声で、下を向いたまま呟く。

「僕はモンスターを倒すためにライダーになった。誰かを守るためにライダーになったんだ」

「・・・・・・ご立派なことだな」

シザースの嘲りの言葉を耳に入れず、龍騎は続ける。

「だけど、ケンスケは」

顔を上げる龍騎。

「お前は許せないかも知れない。戦わなくちゃいけないと思う。たとえ昔の仲間だろうともう知らない!!!
ケンスケ・・・いやお前のことを倒す!!」

「シンジ、アンタには無理よ」

ナイトが即座に言葉を紡ぐ。

「許せないから戦うんじゃない。ライダーだから戦うんだ。理由はそれだけで―――」

『Swordvent』

「ぐっ!」

今までと立場が逆だった。

ナイトの言葉を遮り、龍騎がその腹を殴る。

腹を抱えたまま崩れ落ちるナイト

「お前だけは、倒してみせる!」

ドラグセイバーを右手に携え、龍騎はシザースに向けて叫んだ。

「やれるものならやってみろ」

『Swordvent』

左手に装着されるやや小さな鋏。

『Strikevent』

続いて、右腕を覆う巨大な鋏。

『Guardvent』

シザースの鋏を見ると、龍騎はもう1枚のカードを装填する。

空からドラグシールドが龍騎の左手に舞い降りた。

「行くぞ!」

言葉と疾走はほぼ同時。

シザースの大小の鋏が龍騎を切り裂くべく迫る。

が、小さな鋏はドラグセイバーに弾き飛ばされ、巨大な鋏はドラグシールドにまともに受け止められた。

衝撃音だけが虚しい轟音となって辺りに轟いている。

「くっ!」

『Guardvent』

巨大な鋏を放棄すると、シザースは距離を取り、龍騎の反撃に備えて楯を装着する。

シザースの前面を完全に防御する蟹の甲羅。その強度は、ドラグセイバーを砕いたボルキャンサーの装甲と同等
である。

『Shootvent』

龍騎が新たなカードを装填した。

「何をしようと無駄だ!このシザースシェルを突破することは絶対に出来ん!」

シザースの叫びが響く中、龍騎の両肩に真紅の砲台が装着される。

ドラグキャノン。装填されたカードの絵柄にはそう記されている。

「うるっせぇんだよ!!いっけえええええっ!!」

両肩から白煙とともに撃ち出される、凄まじい速度と高熱の火球。

弾丸というよりは、炎の塊といったイメージ。

シザースシェル越しに、シザースの手にも接触の衝撃が伝わってくる。

「ぐうううっ・・・・・・!」

受け止めた2発の火球が弾け、更なる衝撃波を放った。

ピシッ、という音。

それがきっかけとなり、完全な防御だったはずのシザースシェルはいともあっけなく破砕し、黒い炭となって燃
え尽き、消滅する。

「バ、バカな!こんなはずは・・・・・・!」

シザースは後退りしながら、龍騎の方を見た。

『Finalvent』

最後のカードを装填する、龍騎の姿。

「お、俺は負けない!貴様を殺して生き残るんだ!生き残るのはこの俺だけだっ!!」

『Finalvent』

シザースの足元に鏡面が生じ、中からボルキャンサーが姿を現す。

「はああああああ・・・・・・」

龍騎が腰を深く落とし、ドラグレッダーが周囲を舞う。

「うおおおおおっ!!」

シザースが身体を丸め、光に包まれながら限界まで力を溜める。

「とっ!」

龍騎はドラグレッダーとともに空高く飛翔する。

「行くぞっ!!」

ボルキャンサーが、両腕でシザースを空高く弾いた。回転しながら急上昇していくシザース。

「いくぞぉ!!だあああありゃあああああ!!」

ドラグレッダーの放つ炎を纏い、龍騎は急降下しながら蹴りを放つ。

「シザース・アタック!!」

炎の弾丸と、光の弾丸。

2つの弾丸が空中で互いを撃ち合った瞬間、閃光と爆炎が迸った。

完全に蚊帳の外になっているナイトの身体をも吹き飛ばしかねない衝撃波が辺りを薙ぎ払う。

「ぐう・・・・・・おおっ・・・・・・」

どさっ、という鈍い音。

続いて、軽やかな着地音。

「・・・・・・僕の、勝ちだ」

全身の装甲にヒビが入り、損傷したシザース。

そして、対照的に傷一つない龍騎。

「俺は・・・・・・俺は・・・・・・!」

『Advent』

「俺は生き残ってみせる!!」

無理矢理に差し込まれたカードの効果で、1度は消えたボルキャンサーが再び姿を現す。

「ボルキャンサー、そいつを殺せ!殺して、その魂を喰らえ!!」

シザースの、なかば悲鳴のような叫び声が響く。

ボルキャンサーが地を蹴る音とともに。






続く


マナ:相田くんがぁっ。(;;)

アスカ:アイツも不幸なヤツだったわね。

マナ:声だけでも残って、良かったのかしら。

アスカ:きっと、その声もモンスターと一緒に消えるのよ。

マナ:どこまでも可愛そうなキャラなのね。(;;)
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