「・・・・・・俺は、どこで間違ったんでしょうか?」

「さあな・・・・・・」

「戻れないんですよ、もう」

「それも、お前の選んだ道だ」

「・・・・・・俺は、あなたのような刑事になりたかった。でも、無理だった。俺には無理だった」

「・・・・・・」

「さよなら」










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朝焼けに包まれて 走り出した 

行くべき道を 

情熱のベクトルが 僕の胸を貫いていく 

どんな危険に傷つくことがあっても 



夢よ踊れ この地球(ほし)のもとで 

憎しみを映し出す鏡なんて壊すほど 

夢に向かえ まだ不器用でも 

生きている激しさを 体中で確かめたい 

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仮面ライダー龍騎EVAAVE騎龍ーダイラ面仮   
          第九話話九第 







「もうやめるんだ!これ以上戦う意味なんてないだろ!!」

迫り来るボルキャンサー、否、その背に隠れたシザースに向けて、龍騎が叫ぶ。

「ライダー同士は戦わなければならない!理由はそれだけだっ!!」

シザースもまた、傷付いた身体で地を蹴り、走り出した。

「・・・・・・くそっ!」

龍騎は仕方なくベルトからカードを取り出し、左手のバイザーに差し込んだ。

『Advent』

「オオオオオオ―――ン!!」

天を揺るがすとも思える咆哮。

真紅の龍―――ドラグレッダーが、ボルキャンサーに向けて飛翔を始めた。

「貴様を倒してその龍を喰らえば、さぞ力が増すことだろうな!」

満身創痍ながらも駆け続けるシザース。

「グオオオオオオッ!!」

その動きが、凍りついた。

「な・・・・・・」

「こいつ・・・・・・まさか・・・・・・」

ナイトの呟きは、何かが砕ける音の前に掻き消された。

「く・・・・・・」

砕け、飛び散っていく金色の破片。

光の粒子となり消えゆくそれは、跡一つ残さない。

金属質でありながら粘つく音が響き続ける。

「喰ってる・・・・・・」

使役する立場である龍騎すら、呆然と立ち尽くすしかなかった。

肩に喰いつかれ、ボルキャンサーの鋏が右腕ごと落ちた。

続いて左の鋏がドラグレッダーの顎に収まり、ぐちゃり、ぐちゃり、と連続する音のみが残る。

(契約が解除されれば、ライダーはモンスターに殺される・・・・・・だが、モンスターが死んだ場合はどうな
るの・・・・・・?)

ナイトは冷静に状況を観察している。

決して自分と関わりがないことではない。ライダー同士で戦い続ける限り、あらゆる状況に対応出来ねばならな
いのだ。

餓鬼のごとくボルキャンサーの身体を貪っていくドラグレッダー。

ボルキャンサーは両腕を失い、頭の半分ほどを食われ、身体そのものが光の粒子となり失せようとしていた。

「う・・・・・・ううううう・・・・・・っ!」

ボルキャンサーの身体が欠けていくごとに、シザースの身体からも何かが欠けていく。

数多の人間を喰らい、体内に満ちていた力そのものが失われていく。

風船から空気が抜けていくように、とめどなく。

「おおおおおお・・・・・・!」

シザースの装甲から金色の輝きが消えた。錆び付いた鉄のようにくすみ、澱んだ色の装甲だけが残る。

ボルキャンサー・・・・・・もはや、僅かに金色を残しただけの塊・・・・・・が弾けた。

爆炎巻き起こる中、光球が舞い上がる。

「オオオ・・・・・・」

身体を喰らいつくしても未だ飢えが満たされないのか、ドラグレッダーが吼えた。

次の瞬間、その口で光球を飲み込み、空へと消える。

(デッキ自体は無事・・・)

未だ呆然としている龍騎、観察するナイト、そして。

「う・・・・・・うわあああああっ!!」

走り出すシザース。

「逃がすとでもおもってんの!?」

ナイトもまた駆け出す。

本来ならダークウイングを呼び出すところだが、カードは1枚につき1度しか使えない。

残っているのは『TRICKVENT』と『FINALVENT』のみ。どちらも逃げる相手を捕まえるには向いていない。

「お、おい・・・・・・」

龍騎はヨロヨロと力なく数歩進み、ドラグレッダーが去った空に視線を向けた。

(これが僕と・・・・・・ドラグレッダーの力なのか・・・・・・?)

空は、何も返さない。

ただひたすらに、青く広がっている。






「ギィ・・・・・・」

「く、来るなっ!来るなあっ!!」

ナイトが追いついた時、シザースは地にへたり込み、情けなく後退りするだけだった。

右腕が、ない。

「ギギギ・・・・・・」

目の前には、巨大な蜘蛛のモンスターが脚をもたげている。

「ここで生き延びたとしても、片腕ではベントイン出来ないわね・・・・・・終わりよ、あんたは」

「お、俺は絶対に・・・・・・!」

「ギッ!」

シザースの言葉を遮って、蜘蛛の身体から無数の子蜘蛛が湧き出た。

その全てがシザースに向かってカサカサと音を鳴らしながら這ってくる。

「俺はぁっ!!」

おそらくは、ミラーワールドに入って来た地点に戻るつもりなのだろう。現実に戻りさえすればこの場は凌げる

シザースは再び走り出し、子蜘蛛はその後を追って群れを成す。

「・・・・・・さて、試してみるとしますか・・・」

シザースの後ろ姿から視線を外し、親蜘蛛に目を向けるナイト。

その手には2枚のカードがある。

『Trickvent』

まず、1枚のカードが剣型のバイザーに収められ。

『Finalvent』

続けて残ったカードが装填される。

「やああああああ・・・・・・」

高速で疾駆するナイトの背からマントが離れ、巨大な漆黒の翼・・・・・・ダークウイングに姿を変える。

「ふっ!」

ダークウイングはナイトとともに飛翔し、その身体を覆う。

黒い槍と化したナイトが、空を切り裂きながら叫ぶ。

「八連飛翔斬っ!!」

叫びがナイトの姿を八つに割った。

「ギ・・・・・・ギギッ!」

蜘蛛が反応する余裕もなく。

まさに四方八方から、黒い槍が蜘蛛の身体を容赦なく穿っていく。

「でぇやぁっ!!」

最後に、真上から槍が突き立ち、爆炎を巻き起こした。

炎の中、マントを翻すナイトの頭上で、ダークウイングは光球を吸収して飛び去った。










「・・・・・・ケンスケは・・・・・・どうなったんだ?」

「・・・・・・」

シンジの問いに、アスカは何も答えない。

ただ黙って歩いている。

「・・・・・・僕の、せいなの?僕がケンスケのモンスターを殺したから」

縋るようなシンジの声。

「・・・・・・今だけは、何もかも忘れよう。私達がライダーであることも、ライダーを倒したことも・・・」

そう言ってアスカは、花鶏のドアを開いた。

「いらっしゃい!」

屈託の無いユイの笑顔。

「あ、アスカ・・・・・・」

「久し振りね」

「アスカ、今までどこに・・・・・・」

「あの、一応僕もいるんだけど」

軽く手を挙げて存在をアピールするシンジ。

「あ、シンジもいたんだ」

「いたんだ、って・・・・・・(実の息子にそれはないよなぁ)」

「・・・・・・客に注文も取らないつもり?」

「あ、はい。ご注文はお決まりでしょうか?」

背筋を伸ばすユイ。

「今から考えるわ」

「何よ、それ」

「私は客よ。文句は言えないわ」

「・・・・・・なんか僕、邪魔かなぁ」

シンジはブスッとした表情を浮かべながら、手近な椅子に座った。

アスカがその横に座る。

「嫉妬?」

「べっつにー」

ほんの少し前まで、生死の狭間にいたことを、シンジは本当に忘れた。

今、ここにあるものを手放したくない。そう思った。










「・・・・・・くっ・・・やっぱり無理・・か」

「ギ・・・・・・」

「あいつが・・・・・・憎いのか?」

無数の蜘蛛が寄り集まり、一匹の巨大な蜘蛛へと姿を変えていく。

「モンスターにも感情があるのだとしたら・・・・・・それを狩る者に正義を語る資格があるのか・・・・・」

金色の閃光とともに、融合が終わる。

「ならば俺で力をつけろ・・・俺はお前らの力となり復讐を果たす!!」

「ギー!!」

群れをなした蜘蛛が襲い掛かった

「ふはは・・・・はは・・・はぁははっははは・・・シンジィ、アスカァ・・・・必ず・・・必ず殺してやる」

ケンスケの狂気の笑いがその空間を満たし、そしてそれがケンスケとしての最後の行動だった









蜘蛛の姿をした何かが、光の中に生まれた。

蕾のごとく閉じた蜘蛛の胴体から人間らしき体が生えている。

『それ』は、もはや、人間でもない。

復讐を胸に抱き、生まれ変わったもの。

失われていた腕の部分に光の粒子が集まり、新たな腕が生まれる。

「ギ・・・・・・」

蜘蛛は悪意、絶望、希望を象徴する。

悪意を持って戦い、絶望の中に倒れ、新たな希望を手にし、再び戦いの運命を紡ぐ者、それが今、ここに誕生し
た。








 

続く


マナ:相田くん、なかなかしぶといわね。

アスカ:そりゃぁ、アイツだって必死でしょう。

マナ:アスカに敵意剥き出しみたいね。

アスカ:っていうか、やられたら出番終わりだもんね。

マナ:それは・・・切実だわ。(;;)
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