「・・・・・・ここで私を殺すか、戦い続けるか、好きな方を選べ・・・」

差し出された黒いカードデッキ。

金色の―――コウモリを象ったであろう紋章が刻まれている。

「戦いの果て・・・・・・生き残った者の得る大いなる力だけが、あなたの望みを叶えるだろう」

「・・・・・・・」

「戦え!!そしてライダーとなれ!!」

散乱した実験器具。

涼やかに、不愉快に、とめどなく響く共鳴音。

巻き起こる風。

部屋の中央で羽ばたく巨大な、漆黒の翼―――

ダークウイング。

そして、倒れた母、キョウコ。

「お前の名は仮面ライダーナイト。闇の翼ダークウイングとともに、断罪の帳を以て敵を闇に葬る者」

共鳴音が止むと不気味な笑みを浮かべた男はいなかった。

荒れ果てた部屋の中、ナイトとキョウコだけが残された。










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朝焼けに包まれて 走り出した

行くべき道を

情熱のベクトルが 僕の胸を貫いていく 

どんな危険に傷つくことがあっても 



夢よ踊れ この地球(ほし)のもとで

憎しみを映し出す鏡なんて壊すほど

夢に向かえ まだ不器用でも

生きている激しさを 体中で確かめたい

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仮面ライダー龍騎EVAAVE騎龍ーダイラ面仮   
       第十二話話二十第 











「はい、こちらネルフ!!」

独特の間をもって受話器を取るトウジ。営業スマイルというか、明るい声と表情で。

「あ、君は誰だい???」

「・・・・・・はぁ!?お前こそ誰やねん」

「フッ、僕はねスーパー弁護士渚カヲルさ・・・・」

「あぁ、あの悪徳弁護士さんかいな・・・・」

途端に苦虫を噛み潰した表情に変わる。

「なにだい??君は僕の名前を聞いたとたん声色のトーンがだいぶ下がったよ・・・」

「何の用だ?頼まれてもお前の特集なんざ組まんへんで」

「フッ君はあまり好意に値することはないよ・・・」

「だまっとかんかい。無駄話するんなら切るで」

何故トウジがココまでカヲルことを嫌うのかは、カヲルが弁護士となって以後のとある事件。

カヲルの手腕で、有罪だったある政治家が不起訴となった。

その当時まだ大手編集社に勤務していたトウジが追っていた真実は、編集社そのものの圧力もあって闇に葬られ
たのである。

トウジが『真のジャーナリズム』を求めてネルフを立ち上げた理由にも少なからず関わっている。

「ああ!待ちたまえ。君のとこに、碇シンジっているね?」

「シンジがどうかしたか?」

「いや、実は今日一日借りたいと思ってね。どうせ新米には大した仕事させないんだろう?」

「そりゃまぁ、そうだが・・・・・・」

「ならば決まりだね・・・」

勝手に決めるカヲル。

「そんなとこだけ相変わらずだな、お前・・・・・・」

こめかみを押さえながら、トウジはしばし考える。

「・・・・・・ま、分かった。今日一日だけだぞ?」

「フ、すまないね・・。では、とりあえずクルマ回しとくよ」

「何の酔狂か知らんが・・・・・・まぁ、煮るなり焼くなり好きにしてくれ」

「感謝するよ。では、また後で」

「もう掛けてくるな」

「つれな・・・」

ガチャ。

ツー、ツー、ツー。

トウジが強制的に切った

「・・・・・・ったく」

「どうしたんですか、編集長?」

マユミが声を掛ける。

「いや、あの悪徳弁護士のカヲルがな・・・・・・」

「あの最低弁護士がどうかしましたか?」

「シンジを一日貸せ、だとよ。まったく、何考えてんだか分からんヤツや」

「・・・・・・で、了承したんですか?」

「ああ。変なヤツ同士何か感じるものがあるかもしれへんしな」

「・・・・・・」

言葉は発しないが、鬼気迫る表情のマユミ。無言の圧力というものを地でいっている。

「・・・・・・ぐっ」

「蹴りますよ」

「す、すまん」







「うおおおお・・・・・・・はううっ」

「ふー・・・・・・」

「カヲル君、いつもこんなことしてるんですか?」

「うん、してるよ、しかしその敬語はなんだい?やめておくれよ」

「は、はぁ、わかりました・・・」

第三東京都市から少し離れた所にあるマッサージ場。

シンジとカヲルは並んでマッサージを受けている。

筋骨隆々の男がシンジを、金髪の美女が嬉しそうにがカヲルの身体を解す。

ボリュームたっぷりの肘がシンジの背中をゴリゴリと抉った。

「はぐぅ・・・・・・」

苦痛とも快楽ともつかない歪み方をするシンジの顔。

「しかし、いきなり黒塗りの車が来た時は何かと思ったよ・・・・・・」

「単なるタクシーみたいなもんだよ」

軽く言うカヲル。

マッサージ用の白いローブに身を包んだその身体は、思ってた以上に引き締まっており、痩せ型の割にいい体つ
きをしている

「何か食べに行くとしようか??」

大きく伸びをする

「当然、おごりだから気にしなくていい」

「はぁ・・・・・・でも、なんでこんなこと?」

「この前、世話になったからね。恩は返すのが信用を買うコツさ・・・」

後を追って立ち上がったシンジの全身がゴキゴキと鳴る。

戦いとデスクワークに凝った体が解れ、気分爽快、といったところだろうか。

「さ、早く行こう」

急かすカヲルの顔は、シンジからはただの同年代の友達のようにしか見えない。








「カヲル君、いつもこんなもの食べてるの?」

「ああ」

と言う割に食は進んでおらず、赤ワインの入ったグラスを傾けているシンジ。

テーブルに所狭しと並べられた料理の数々は、一品だけでシンジの給料が飛んでしまう代物だった。

当然というか、味もサービスも一流。

清潔に整えられた内装、落ち着ける雰囲気。

客を回転させなければならない事情があるため、故意に居心地の悪さを作り出すレストランなどとは設計思想か
らして違う。

「あたしは、人間の欲望ってやつに興味があってね。せっかく生まれたからには、欲望を全部満たしたいって思
うワケさ」

「はぁ・・・・・・でも、全部って・・・・・・」

「お金もたっぷり必要だけど、それより何より時間。僕は時間さえあれば何でも出来る」

空いたグラスに、再びワインを注ぐ。

「80年くらいじゃ全然足りなさそうだね」

「そう。だから僕は永遠の命が欲しい」

「永遠の命・・・・・・か・・・」

(僕に入らないよ・・・愛しい人が先に老いて、そして、死んでいくのなんて見たくないしね・・・)

厚みからは想像出来ない柔らかさでナイフが通る肉を口に運びつつ、シンジはカヲルの顔を見る。

笑ってはいるが、冗談を言う顔ではない。

「たった一つだけあるんだ、方法が」

「・・・・・・」

咀嚼するたびに旨味の詰まった肉汁が溢れる。

おそらく2度と口にすることはないであろうその味を、シンジは十分に堪能した。

「さて・・・・・・と。お腹も落ち着いたことだし、軽く運動と行こうか?」








「泳がないの?カヲル君?」

「ああ・・・・・・すまないねそんなに気遣ってくれて嬉しいよ」

程よい温度に整えられた室内プール。外の陽を効率よく取り込む構造で、明るい雰囲気が常に保たれている。

広大な空間だが、いるのはカヲルとシンジ、そしてカヲルが用意した女性数人だけ。

カヲルは、水着に着替えてはいるものの、ベッドに横たわってシンジが泳ぐ様を眺めている。

片手に持ったジュースをたまに口に運びながら。

「元気はいいねぇ・・・・・・お金じゃ買えないからね」

横たえた体には、どうしようもなく疲れが溜まっている。

シンジの能天気な声が響くプールで、カヲルの呟きを聞く者はなかった。






「これでいいのかい?」

「はい。確かに」

カヲルは大家に札束を渡すとシンジの方を向いた。

「じゃぁ、また」

「はぁ・・・・・・あの、ありがとうございます」

時刻はすでに夕暮れにさしかかっていた。

シンジを家まで送り届けたカヲルは、3ヶ月家賃を滞納したために追い出されかけたシンジの肩代わりをしたの
である。

「気にしなくていいさ。僕は、お金は腐るほど持ってるからね。その代わり、また付き合っておくれ」

「はい・・・・・・」

「それと、敬語はやめてくれよ」

「はい・・・・・・じゃなくて、うん」

手を振って、カヲルは車に乗り込む。

「そう・・・・・・お金は・・・・ね」

「グ・・・ガハッガハ・・ゴハァッ・・ゴフッ」

シンジが部屋に入ったのを確認してから・・・・・・激しく咳き込み、喀血する。

「・・・・・・時間は、ないのに・・・全く君が羨ましいよ・・・シンジ君・・・」

カヲルの車は、ほとんど音もなくその場から走り去っていった。

直後。

キイイイイイン、と、耳障りな共鳴音がシンジを部屋から飛び出させる。

「ちっ!ちょっとくらい余韻に浸らせろよ!」

愚痴を言いながら、最寄のガードミラー・・・・・・位置が高いので妙な格好になるが・・・・・・にデッキを
映す。

「変身!」

腰に現れたベルトに、デッキを装填。

シンジの姿は赤い装甲に包まれ、仮面ライダー龍騎へと変じた。

「はぁ・・・・・・行くか・・・っしゃぁっ!!行くぞ!!」

鏡に吸い込まれる龍騎を、ライドシューターが出迎える。

龍騎はミラーホールを抜け、生物のいない世界・・・・・・ミラーワールドへ突入する。

ライドシューターから降りた龍騎の前に、見覚えのあるモンスターが姿を現した。

「またあんた・・・・・・」

ナイトを襲っていたモンスター。

龍騎の姿を確認するなり両肩から気弾を発する。

『Guardvent』

直撃するかと思われた気弾は、両肩に現れた楯に弾かれ霧散した。

「今度はこっちの番だ!」

『Swordvent』

空から降ってくる剣を手に取った龍騎はモンスターに向けて、モンスターは龍騎に向けて、それぞれ突進する。

「うおおおおおっ!」

「グルオオオオオッ!」

2つの影が交差しようとした瞬間。

『Shootvent』

無機質な音声とともに、交差地点から爆炎が巻き起こった。

「おわー!」

龍騎は爆風で吹っ飛びながら、受身を取って体勢を立て直す。

「新手か!」

感覚を研ぎ澄ませると、確かにもう1体、何かの気配があった。

新たなカードを装填するとともに、左手を気配の方に向ける。

『Shootvent』

「と―――っ!!」

龍の顎と化した龍騎の手から、不可視速度の火球が放たれる。

『Guardvent』

着弾、炸裂。

吹き荒れる爆風。

しかし、直撃を受けたはずの相手は、巨大な楯を携え平然としている。

「あ・・・・・・」

動揺する龍騎に向けて、銃のようなものを構え、引き金を引く。

「うおっ!」

辛うじて弾丸を避けつつ、相手に向けて叫ぶ龍騎。

「おい!君・・・・・・仮面ライダーだろ!?」

「・・・・・・」

緑色の、仮面の戦士。

それはライダーというより、機械人形・・・・・・ロボットだった。

仮面の奥で赤く明滅する何か。

耳に当たる部分では、剥き出しの歯車が噛みあい、不気味に駆動している。

腰には、牛を模したらしい紋章が刻まれたデッキ。牛の頭部には角が生えていた。

左手に携えた銃は、おそらくはカードバイザーなのだろう。

「僕はライダー同士戦う気ないんだ!」

「・・・・・・何言っているんだい?バカか?君は?」

緑色のライダーはそう吐き捨て、銃に右手を掛ける。

弾倉に当たる部位が開き、カードがちょうど1枚入りそうなスペースが現れた。

『Strikevent』

そして、カードが装填されるとともに、空から巨大な・・・・・・牛の角を模した武具が降り、ライダーの右手
を包む。

都合、右手から2本の角が生えているような格好になった。

「お、おい!やめろって!アイツが逃げちゃうだろ!」

と龍騎が言うまでもなく、モンスターの気配は既に消えていた。

「モンスターの心配してる場合なのかい?自分の心配をしたらどうなんだい!!」

2本の角が、龍騎に向けて突き出される。






『Nastyvent』

『Finalvent』

連続して2回、無機質な音声が響く。

「震空飛翔斬っ!!」

「グル・・・・・・ウウウ、オオオオオオッ!!」

その名の通り、空が震える中降ってくる疾風の如き漆黒の槍。

モンスターは動くことすらままならず、そのまま身体を貫かれて爆砕した。

現れた光球をダークウイングに吸収させながら、ナイトは新たな敵の気配を感知する。

「ライダー・・・・・・ね」

呟くと、空高く跳躍する。

「とっ!」

「ギ―――ッ!」

その背中にダークウイングがマントとなって装着、跳躍は飛翔へ変わる。

空を駆け、気配の元へ向かうナイト。

降り立った場所で見たものは。

「ぐぐぐぐ・・・・・・くのっ!」

角を両手で止め、唸り声を上げる龍騎。

そして、2本の角で龍騎を貫こうとする、緑色のライダー。

「ゾルダか・・・・・・また厄介な奴が来たもんね」

言いながらカードを装填する。

『Advent』

「ギ―――ッ!」

ナイトの背中から外れたマントが翼となる・・・・・・否、闇の翼ダークウイングとなる。

ダークウイングは全速力で角に体当たりし、ライダー2人を引き離した。

「おわー!」

「くっ!」

「そいつの前に、私が相手をしてやるわよ」

「ナイト・・・・・・」

緑色のライダー・・・・・・・ゾルダは、倒れた龍騎から視線をナイトへ移した。

ダークウイングが再びナイトの背に戻り、マントへと変化。

漆黒の騎士、緑の銃士が対峙する中、龍騎が立ち上がる。

「どうして・・・何故みんな・・・ライダー同士戦うんだよ」

「ライダーだから。理由はそれだけさ・・・」

『Shootvent』

ゾルダの肩に現れる2門の砲台。

『Swordvent』

ナイトの手に現れる漆黒の槍。

「やめてよ!やめてくれ!!」

龍騎の叫びが虚しく響き渡る。


続く


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