「力が、力が欲しい・・・」 ここは暗い暗い、闇の場。 彼は死んでしまった。自分の愚かなる油断によって・・ 「くそぉ!くそっ!!僕はまた誰も助けることができないのか・・・」 そんな闇からうっすらと何かが現れる・・・が顔の下、半分のみしかみえない 《力が欲しいか》 「誰だ!!」 そう彼が叫ぶとゆっくりと近づいてくる・・・そして姿が現る 「鬼!?」 それは鬼、それ以外には考えられないような物だった 《貴様等のなかにはそう呼ぶ者もいるらしいが正確にはリリンと言う》 だが彼は前回の知識から疑問を持つ 「なっ・・だけどアレは人間を指すんじゃなかったのか??」 《正確には違う・・我は神に反抗した堕天使。しかしその力があまりにも強大だったため人という器に分散され入れられたもの・・・》 「・・・・け、けどそういうことだとしたら人に分けられた君が何故僕のところに?」 《それは貴様が最後の人となり我がそこに全て集められたからだ》 それの体から粒子のような物があふれ始める 《・・・くっ!あまり時間がないな・・・》 だんだんとそれの体が透けだす 「おいっ大丈夫か!?何が起こってるんだ!?」 《我は今だ、神の力により押さえつけられている・・それによって我がまた分散されようとしているのだ》 「・・・そうか・・・でも悪いけど、あと一つだけ質問させて・・何故君は堕天使になったんだい?」 《それは我が感情を持ったからだ・・・》 「え?」 《その証拠にサキエル達は感情がないように見えるだろう》 (は?・・・う・・う、嘘だろ?・・・そんなの横暴だよ・・・) 《くっ・・・もう時間がない・・さぁもう一度問う、力が・・・欲しいか》 (・・・・・あぁ欲しいさ・・だが僕はもう死んでしまったんだ・・・力をもらっても使えやしない・・僕は愚か者だ・・・ははは・・) 彼は自嘲気味に笑う 《それは問題ない・・もう一度チャンスをやる・・・・・・》 「なっなんだって!?僕はまた戦えるのか!?」 《ああ・・・だがそうなれば貴様には我の魂と貴様の魂が融合するということになる》 「・・・けど魂の融合って・・・?それによってどうなるの?」 《・・・貴様の魂と我の魂の波長が合わねばどちらも消し飛ぶ...それでも力が欲しいか?》 「・・・・僕はみんなの為に戻ってきたんだ・・だから僕なんてどうでもいいさ・・・みんなを救えるのであれば!!」 《そうか・・・ならば授けよう我の力を》 それの体が完全に粒子となり淡く輝き始め球状になる 「鼓動が・・・聞こえる・・・生命の鼓動が・・・」 そして彼はそれを手に取り、胸に沈める。 「ぐうううううううぅぅぅぅ!!!!!!」 体中に激痛が走る、死んだときの痛みさえ比べもにならないほどの痛みが 「ぐぅぅぅぁぁ!!」 ほんの数十秒だったのであろうが一体何日かと思えるような辛く苦しい間であった 《今の力はまだ半分だ・・・残りはある者に預ける・・・話が長くなったな..我は眠る・・・その前にいいことを教えてやろう》 「いいこと?」 《ゼーレの裏には神が潜んでいる・・・》 そういってそれは彼の中で眠りに入った 「・・・神か・・でも邪魔するなら倒すまで・・そうみんなが本当に笑って暮らせるように!!」 そして彼は帰還した (どうやら僕の意識がなくなった間にエヴァは回収されたらしいな・・・) リツコやマヤがせわしなく動きミサトが頭を抱えていた (零号機を使うつもり?・・くそっ僕が死んでいたからか・・・) そうこうしてるうちにサキエルがジオフロントまで来ていた (さて早速やらないと・・・まず初号機・・・君を解放しなくちゃね) そうして彼は初号機にとり込まれた 気づくと金網を叩くような音が聞こえる そこでシンジは檻見た中には真っ白な毛をした狐のような動物が怪我をしながらも檻から出ようと体当たりをしていた その隣に女が椅子に座っている 「うるさいわねぇ無理に決まってるじゃない・・・所詮貴方は人に作られたものなのだから」 その女は見下ろしながら言い、檻を踏みつけるように蹴り飛ばす そこに真っ黒な服を着た彼・・・そうシンジが現れる 「なによあなた誰?」 檻の中を指して 「それを解放させし堕天使」 そう呟くそれに対しその女は血の気をなくし襲いかかってくる 「この子を出したらだめなのよ!!そんなことしたらシンジが!!」 「母さん・・・・もう自分の息子さえもわからないんだね・・・もういいんだやめて・・・」 そしてシンジは檻を開けようと手を伸ばす しかし女が狂ったように襲いかかってきた 「それがないと私のシンジが危ないって言ってるでしょうが!!!」 「母さん!!!もう目を覚ませよっ!!!」 彼女はシンジが女の頬をはたき飛ばす するとその女は数メートル飛び、沈黙した 「・・・・ごめん母さん・・・・・さぁ君を解放してあげよう・・・」 カシャン・・・・ だが白い動物はシンジに爪を立てて襲い掛かる 「あくっ・・・・」 シンジは何を思ったのかその動物を抱きしめた そしてさらに牙が食いこむ 「そうだよな憎んでるよな・・・辛い思いをしてきたんだもんな・・しかも自分が人に造られたものだなんて言われたら・・・もう自分でさえ 信じられるわけないよな・・」 知らず知らずのうちに涙が流れ出す 「君も僕と同じなんだな・・・・」 そしてゆっくりとそれを放つ 「後は君が好きなようにするといい・・・」 そういってどこかへ歩き出すシンジ それを見て困ったようにくるくるとその場を回り、鳴き声を上げるそれ 次の瞬間シンジに向って駆け出した 「ん?なんだよ・・」 足にまとわりつくそれ 「僕とついてきたら大変だぞ?神を倒すつもりなんだ・・・」 その動物はまるで考えるかのようにウロウロと歩き回り意を決したように彼に擦り寄る 「・・・・・・」 呼応するかのように一吼え 「・・・そうか、ありがとう・・・」 (初号機も協力してくれた・・・もう時間もないな綾波が出ちゃう・・・) 「せ、先輩、初号機再起動しました!」 「なんですって!?彼はもう死んでるはずじゃ?」 (まさか彼女が!?いえ・・・ありえないわ・・なら誰が・・・) 初号機の鋭い目が光を宿す 「さぁいくぞっ」 膝を曲げると数百メートルもの距離を射出口さえも打ち破りとびだした 「マヤ!!シンクロ率は!?」 マヤはシンクロ率をみると驚き何度も眼を疑った 「せ、先輩・・・シ、シンクロ率、ぜ、0%」 それを聞いて司令室は驚愕に包まれた 「ありえない!!ありえないわ!!」 (まさか、彼女ではなくエヴァ自体が・・・?) 「初号機からATフィールドを感知!!!」 リツコが考え事をしてる最中リツコからは考えもできないような戦闘が行われていた 轟音をとどろかせジオフロントに出るとサキエルが目の前にいた 「神によって感情をなくし、神に操られた物か・・・今解放してやろう・・神から・・・・さぁいくよ・・・・・初号機」 =その呼び方は止めてよ= 「ん?って君喋れるの?」 =さっき覚えた= 「へぇ〜頭いいな君・・・で、何?イヤなの?」 =あったりまえだろ?こんな記号みたいな呼び方= 「・・・う〜んそうか名前かぁ・・じゃ他のをつけるか・・・でもこういうの苦手なんだよなぁ・・・」 =つべこべ言ってねぇでさっさと考えろよ。協力しねぇぞ?= 「わかったわかったよ!!・・・ってか、なんか態度でかいよな・・」 =なんか言ったか!?= 「なっ、なんもいってないよ」 ん〜と考えひらめいたかのようにシンジは人差し指を立てる 「よし!!じゃぁセツ!!これでいいだろ??」 =あんまセンスないなぁ・・まいっか= 「うるさいよ・・もう・・・じゃいくか・・・でも武器が全くないし、右腕がないんだったよな・・・どうしようセツ?」 =だったら造るしかないだろ・・バカか?それに右腕もってかれてるなんて何やってんだよ・・・だせぇなぁ= 「一言多いよ・・・まぁでもそうだね仕方ない今回だけは造るか」 初号機の左手が赤く光り、銃のような形をしたATフィールドがつくられる それが完全にできた時サキエルからシンジを一度死に追いやったあの攻撃が放たれた 「無駄だよ」 打ち出された光りの槍を全て銃の塚で弾きそれからATフィ−ルドの弾丸が発射される もちろんサキエルのATフィ−ルドなどたやすく破壊しサキエルの両手は弾き飛んだ そしてその片一方の手を左手でつかむと右腕があった場所に押し付ける すると初号機の生身の腕となり再生した 「じゃぁサキエル・・・君を解放してあげるよ」 サキエルは眼から前回のガキエル並の光線を放ったがATフィールドに阻まれた 「もう・・・じゃ行くよセツ」 =ああ・・いいぜ= 初号機の右手に銃が作られる 「うわぁ!!」 二丁の銃から放たれた弾丸は、サキエルを貫き大穴をあけた 「さぁセツ、キメるよ」 さらに初号機の右手にATフィールドが展開され日本刀のようなものに変化する しかし慣れていないのか時間がかかり、その間にサキエルの両腕と穴が修復してしまう =はぁ〜ドジ・・・こんなに下手なら最初っから刀にすりゃいいだろうがよ・・・= 「うるさいよ!!僕は銃の方が好きなんだい!」 そうこうしているうちにサキエルが槍を放つ =おい・・来たぞ= 「っりゃぁ!!」 右の刀でなぎ払い、左の銃を放つ・・・が・・ =お前・・・・下手じゃん!?さっきまではマグレかよ・・・= 「うるさいうるさいうるさい!!ハンドガンは撃った事がないんだよ」 =はぁ・・・じゃ両方とも刀にしとけ= 「わかったよ・・・」 すると物影に隠れ左手に集中する だがサキエルもバカじゃない、シンジに向って撃ってくる そのため隠れていた壁が崩れ丸見えになる さらに集中していた左手のATフィールドも消えてしまう 「あーーーー!!!消えたぁ!!!」 =はぁ・・・だっせーな・・・それで救えるのかよ= 「・・・・・」 その言葉にシンジが俯く・・・が、次の瞬間セツはしばし硬直した それは酷く冷たい表情のシンジがそこにあり、まるで仮面をつけている様だったからだ。 =(・・・こいつ・・相当重いらしいな・・・)= 先ほどと違い低く冷たい声をシンジが出す 「・・・セツ・・行くよ・・・」 =ああ= そしてゆっくりと歩き出す・・・シンジの眼にもしっかりとした意志の光が宿る・・それと同時に初号機の眼にも光が宿り手をぶらりと下げ 歩きだす・・・・それも何も小細工をせず・・・ただ普通に・・ サキエルももちろん黙ってはいない。自分のもてる力全てを使って攻撃を仕掛けてくる だが全て右手に持たれた刀によって弾かれ、最小限の動きで避けられる そしてサキエルの眼が光り、初号機が爆炎に包まれる さらにその煙の中に光のパイルを身体中から撃ちこむ そこがさらに砂が舞いあがり煙に包まれ、全く見えなくなる サキエルも全てを出し尽くしたのかだらりと腕を下げただ立ち尽くしている しばらく沈黙が続く・・・まるで嵐の前の静けさのように・・ そしてそれは突然起こった 砂煙が一瞬へこんだかのように見えるとそこからサキエルが放ったはずの槍が飛んできた だがサキエルにはわからなかった何が起こったんのか・・・いや誰にもわからなかっただろう気づけば刺さっていた サキエルがその槍を抜くと赤い液体が噴出す。そして焦りからか先ほどと同じように槍を撃ちこんでしまう また沈黙が続き、煙が晴れていく・・・しかしそこには初号機の姿はなかった あたりを見回してもいない・・・感情がないはずのサキエルが焦ってうろたえているように見えた そのサキエルのあたりだけが暗くなる、いや影がかかる それを感じたのか見上げたサキエルが見たものは、初号機が刃の先をこちらに向け、上から降ってくるものだった 「サキエルよ・・・今解放してやろう」 そうシンジが言い放つと共に、サキエルに頭からコアをつき抜けて刀が刺さる 残心の構えをとる初号機、ビクッビクッと痙攣しだすサキエル 残心の構えを解くとサキエルに刺さった刀に手をかける 「辛かったろう、苦しかったろう・・・だけどもうそれも終わるんだ。もう、楽になれるよ・・・さぁ、無に帰るがいい」 刀に力をこめると一気に刀を引きぬく、そしてそのまま縦に斬りつけ、さらに横に一刀両断する。 コアを中心に四つに斬られたサキエルはそのままボトボトと崩れ落ち、辺りを赤い液体で汚した そして初号機はそれを見ようともせず、ネルフへ帰還した。
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