血塗れたシンジがレイの方へ歩み寄る

ザッザッザッ

シンジがレイの目の前に来てi犬のおすわりのようにしゃがみこみ、手を伸ばす

「ガウ・・・」

スッ

だが予想もしない反応が返ってきた

「ぃ・・ぁ・・いやぁ!!!こ、来ないで!!!」

キィン

怯えた表情でATフィールドを張りシンジからミユウを抱えながら後ずさりする・・・・

「ガ・・・・ゥガゥ」

そんなレイをじっと見つめるシンジ・・・そして何かを悟ったかのように寂しい表情で暗い闇の中へ静かに消え
ていった













「う・・・・ぅぁ・・」

あれ?声が出ない?あたしどうしたんだっけ?

キョロキョロとあたりを見回す

病院ね・・・・

シュッ

圧縮空気が抜けドアが開く音がする

コッコッコッ

誰だろう・・・シンちゃんかな?

シャッ

カーテンが開く

「蒼月さん?起きたの?」

あ・・・金髪マッドか・・・

「あうあ・・・ぃあ」

「まだ喋っちゃダメよ。喉、ケガしてるんだから・・あ、心配しないで治ったらちゃんと声、また出るようになるか
ら」

え?

喉を触ると包帯をしている

あ・・・そっかそういえばアレにやられたんだっけ

シンちゃん・・・助かったのかな?

「はい、紙とペン。コレで筆談できるでしょ」

紙とペンを受け取る

=愛しのシンちゃんは?=

「あ・・・えぇ・・」

何でしどろもどろするんだろ?まさか!!

=生きてますよね?=

「ええ、生きてるわ・・・ただし会わせてあげることは出来ないけど」

え?なんで?

=何故です?=

「その・・・ね・・」

シュッ

リツコさんが何か言おうとした時誰かが入ってきた

「わたしの・・・せいなの」

レ、レイ!?・・ってなにそれ?どういうこと?

=どういうこと?=

目を伏せるレイ・・どうしてなんだろう・・・

「わたしが碇君を傷つけたから・・・」

なっ・・・いったい何を?

筆圧が強い濃い字で紙に書かれた文字は=なにしたの=だった

「わたしが・・・わたしが・・・」

そう言うと綾波さんは泣き出してしまったわ

リツコさんが綾波さんの肩を叩き仕方が無かったのよと言っている

「私から説明するわ・・・」

まだ綾波さんは泣いている

「この子・・シンジ君を拒んじゃったのよ・・・」

「なっ!」

思わず声が出た

芯がおれるほど強く書かれた文字

=どう言うことですか=

「その前に・・・・蒼月さんはもうあの未来を見たのよね?」

=ええ=

「じゃ言うけどシンジ君がアレを倒した時の倒し方が悲惨で・・・その・・この子怯えちゃって来ないでって言っ
て・・・ATフィールドまで張っちゃったらしいのよ」

そこまでリツコさんが言うとレイはまた泣き出したわ

だけどそんなことは関係無い・・わたしはレイを立たせた

パァン!!

レイの頬を叩き睨んだ

「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・わたしが・・拒まなけ・・・」

パァン

また、叩く

紙に何か書くレイ

わたしは紙を見せる

=そんなことはとっくに反省してるのは分かってる・・・だったら今、何をすべきか、それを考え行動しなさい=

それを見たレイは目を少し見開くと、ぽろっと涙が零れ落ちた

「ええ、わかったわ・・・」

そこでルイはにっこり微笑んだ











ー司令室―

「ミサト、今シンジ君はどこにいるの?」

「あ、リツコ・・それがね、速過ぎて見つけてもすぐロストしちゃうのよ」

「じゃぁだいたいどこにいるの?」

「およそだけどこの辺」

ミサトが指した範囲はゆうに1キロを越えていた

「こんなに広いわけ!?」

「仕方ないっしょ、シンちゃん、車よりも速いんだから」

そう言うことでわたし達は車でシンちゃんを探すことになった













ブウウウウ

土煙を上げながらジープが走る

「シンちゃーん!!」

「ミサト・・・あなた馬鹿?そんなことしたら、シンジ君が逆に逃げちゃうじゃない」


―3時間後―


前を走っていた3台のうちの一番前の車がいきなり転倒した

そして前から順にまるで何かに弾き飛ばされるように横転する

「まさか・・・碇君?」

シンちゃん・・・

前から一直線にシンちゃんが走ってきた私はそれをじっと見つづけていたの

すると・・・

「ウ、ウガゥ!!!」

シュッ

「なっ避けてくれた!?」

一瞬私と目が合って、少し顔が緩んだように見えたの

「碇君・・・」

タッタッタッタシュッ

「キャー!何よこの狐」

前でミサトさんが襲われてる・・・あ、その狐こっち来た

ルイの膝に静かに丸くなるその狐

「お前らシンジを助けたいか?」

「なっ!狐が・・・・・まさか!使徒!!?」

「我は使徒であって使徒でなき者・・・まぁシンジに一番近き者だな」

「そっそんなこといってもだまされないわ!!!」

「その目線、心音・・・迷いが見えるな」

狐がいろいろ喋ってる・・・でもシンジ君を助けられるなら・・・なんでもいい!!

「おい娘・・・シンジを助けるためになら何でもすると今思ったな?それは本当か?」

え・・・これ私の心が読めるの?

「ふん・・まあな」

そう・・・なら楽ね、私シンちゃんのためならなんでもする!

「ふん・・・いいだろうならばついて来い・・」

狐がジープを出て走り出す

あ・・・追いかけなきゃ・・・

ジープから下りようとするルイをレイが引き止めた

「まって!!私も行く!!」

コクリとうなずくルイ

そして二人は走り出した













ハアハアようやくたどり着いた・・・

「フン・・・蒼髪の娘も来たか・・まぁそっちの方が都合がいい」

「あ・・・ここは・・・」

え?

「そうだ・・シンジが戦っていた場所だ・・・」

レイが顔をうつむかせる

レイ・・・

「娘ども・・・この二丁の銃を一つずつ手にしろ」

狐がその銃の周りを歩く

え・・・あれ、なに?

「あれは・・碇君が使っていた銃・・」

「そうだ、コレはシンジと出会うのは短かったがシンジに一番通じている物だ」

でも・・そんな物でいったい・・まさか殺すとか言うんじゃ・・

「勘違いするな茶髪の娘、今のシンジはルシフェルにとり憑かれている・・だからそいつを撃つんだ」

「でもこんな物で撃って碇君は大丈夫なの?」

「わからん・・・それはあいつの精神力によるが・・・もし失敗すれば確実にシンジは死ぬだろう・・そして失敗
の確率は・・・50%だ」

そんな・・・

「・・・・・」

「やるのか・・やらないのか・・・どっちだ?」

レイが銃を拾う

「茶髪の娘・・・おまえはどうする・・」

・・・・やる・・やってやるわ!!

ルイも銃を拾う

お、おも・・・

「では行け」

「待って!!あなたの名前は?」

「初号機・・・いや今はセツだ」

そう呟くと茂みに消えていった















ハッハッハッハッ

碇君・・・どこなの・・・

きっともうあの範囲にはいない・・・もしかして・・碇君・・

ハッハッハッハッ

私が初めて人というものを受け入れられたあの場所・・・

今思えばあれがなければ、私は人形のままだったかもしれない・・

あのとき私は人を受け付けなかった・・・なのに碇君は私を救ってくれた・・・

そう・・救ってくれたの・・・だから、だから今度は私が救う!!

ガチャ

そこには開いた窓、風にあおられて波打つカーテン、その窓から真っ暗な黒い空が顔を覗かせていた

「碇君!!」

まるで犬がおすわりをするかのように床に座り、悲しげな表情でレイが寝ていたベッドを見つめているシンジ

そしてレイに気づいたのか少し驚いたかのような顔をみせると唸り出した

「ウウウウウウウウ」

「ごめんんさい・・・・許してもらえないでしょうけど・・・謝らせて」

「ウガウ!!」

バキッ

「あう!」

シンジに殴られ横に倒れるレイ

「ウウウウウウ」

ふらりとレイが立ちあがる

「ごめんなさい・・・あなたが望むのならもうあなたの前には現れない・・・だけどせめて・・せめて・・」

「ガアア!!」

バコッ

また殴られる

だがまた殴られるのが分かってて立つレイ

「かふっかふっ・・・ごめんなさい・・ごめんなさい・・・せめて・・せめて・・あなたを、元に・・・」

「ウガアアアアアアアアアア!!!!!!!」

今度は殴るのではなくシンジの鋭い爪がレイを襲う

きゅっと目をつぶるレイ

だがいくら待っても痛みや衝撃は来なかった

ふと目をあけるとシンジの振り下ろした右手がシンジの左手にレイをかばうように刺さっていた

「い、碇・・君?」

「れ・・・・・い・・・・・ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

ヒュッ

シンジは窓から逃げるように出ていってしまった

「碇君・・・うぅ・・」

ポロリとレイの目から涙がこぼれ落ちそうになる

それをグイッと拭くレイ

「碇君・・絶対助けるわ」

そうしてレイも出ていった















シンちゃん・・・・どこへ・・・

ザッ

その音に反応し後ろを見るとシンジが立っていた

シンちゃん!!あ・・・手、怪我してる・・・

ルイがシンジに近づこうとするとシンジはまた走り出した

シンちゃん!待って!

ルイも走り出す・・が追いつけるはずもなく目で追いかけるのが精一杯だった

何とか一番最後に見れたのはカートレインに入っていくシンジの姿

シンちゃん・・・追いかけなきゃ

携帯にレイからメールが入る、

=ルイ!!今そっちに合流するから!=

少し待つとレイが走ってきた

「ルイ!!」

綾波さん!あっちにシンちゃんが!!

カートレインの方を指差す

「えっ!?碇君が外に出たらどこに行くかわからなくなる・・・・早く追いかけましょう」

そうして二人は地上に出るためのエレベーターに乗った

















ヒウウウ チーン

エレベーターから下りると、カートレインの出口から黒い影が飛び出した

「碇君!!追いましょう」

ハッハッハッハッ

あれ・・・この道・・・前に通ったような・・・

ハッハッハッハッ

・・・やっぱり・・前に・・・

「碇君が公園に入ったわ!」

えっ公園!?・・・まさか・・

公園の中に入るとシンジがぼうっと月を見上げていた

やっぱり・・・わたしが、逆行した時についた最初の場所・・・そして・・シンちゃんに初めて会った場所・・・

「グウウウウウ!!」

シンジが唸る

「シンジ君!!」

シンちゃん・・・・

ルイがシンジに近寄る

「ルイ!?ダメッ」

ルイはそれでもシンジにゆっくりと近づいていった

シンちゃん・・・・辛そう・・・

ルイがシンジの目と鼻の先にまで達するがシンジは何もしようとしない

シンちゃん・・・もう終わろう・・・前の・・前のシンちゃんにもどってよぅ・・

シンジは見てしまった・・・ミユウの目に涙が浮かんでいるのを

ルイがレイに向かって振り向いた・・口が何か言うように動く


このままうってれい


「えっ・・・だめよっ当たったらあなたは確実に死ぬわよ!」


ニコリと笑った


しんちゃんがもとにもどるのなら



「・・うん・・・・わかったわ・・・」

レイの指が引き金にかかる



シンちゃん・・・大丈夫だからね・・・



レイの指に力がこもる



大好きだよ・・シンちゃん・・

あいしてる





ドン!!

「あ・・う・・・」

だがその弾はミユウに当たることなくシンジだけに当たった・・よく見るとシンジの腕がルイを突き飛ばしていた

なんで・・・シンちゃん!!

「シンジ君!!」

二人が駆け寄る・・・

「みゃ、脈がない・・・そ、そんな・・・いや・・・」

い、いや・・・・・シンちゃん・・・戻ってきてよ・・シンちゃん!!いやあああああああああ!!


作者"bakuozi"様へのメール/小説の感想はこちら。
bakuozi@yahoo.co.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

inserted by FC2 system