ガサガサ、ゴソゴソ.........
少年は、焦っていた。目的のものが、なかなか見つからないのだ。
ガサガサ、ゴソゴソ.........
一刻も早く見つけだして、すぐ立ち去らなければ身の破滅。.......なぜなら、ここは『女子更衣室』だからだ。
ガサガサ、ゴソゴソ.........
ところが、運命の女神というヤツは、そうそう微笑みかけてはくれないヒトらしく......
「アンタ! 何やってんのよ!!」
ビクッ!!!
よりにもよって、一番知られたくなかった少女に見つかってしまった。
行動といい、態度といい、弁解の余地はない。
これでこの少年が、メガネ&カメラ小僧だったら............問答無用で変態の烙印、このお話も The End なのだが。
中性的な顔立ちと潤んだ瞳が、深い理由をうかがわせた。
「............じゃあ、話してもらいましょうか。......どうしてアタシのロッカーをあさってるのよ?!」
「....................。」
その少年〜碇シンジは、ぎゅっと下唇を噛みしめて、俯いた......
敏芳祥・「The Epistles」における記念すべき第10作は
本編であり得たかも知れないエピソード
私が書くとやっぱあんまり甘くなんないけど
それはそれでそれっぽいんじゃない?と開き直ったりしている
要するに懺悔企画第2弾!
この身果てるとも
by 敏芳祥
「なんか理由があるんでしょ? 言ってごらんなさいよ............」
「................................。」
「(ムカッ)あっそ! じゃあここで、大声で叫んじゃおっかなー?」
「...........!!」
「そしたらアンタ、どう考えても痴漢に決定!......破滅よハメツ! それでもいいってーの?!」
「........................くっ......。」
青ざめた顔、引きつった頬............それでもシンジは、ひたすら耐えて、黙っている。
「......ホント、アンタがこんなに強情だったなんて、知らなかったわ。いったい、なんだってのよ?」
「......................。」
「............なーんてね。実はわかってるんだよね。コレでしょ!!」
アスカが、制服の胸ポケットから固く結ばれた紙片を取り出した途端、
「あ!!!」
それまでだんまりを決め込んでいたシンジがサッと顔色を変え、焦りの色を露わにした。
「ふっふっふ、やっぱりコレが目当てだったのね。......おおっと! 渡さないわよ!」
シンジが手を伸ばしたが、さっと身を翻し、防ぐ。
「そう簡単に渡してなるもんですか! たーいせつな証拠物件だもんね。
..................アンタがアタシを、亡き者にしようとした、ってことのね!」
アスカの目が、憎悪に燃える。
「そ、そんなこと!」
「あっらー、じゃあどういうつもりだったのかしら?! アンタだって、今回の作戦内容は知っていたでしょ?
............どこに落ちてくるかわからないデカブツを受け止める............限りなく奇跡に近いお話よ。
そんなとき、アンタはアタシのプラグスーツにこっそりと異物を仕込んだ。
............これはもう、アタシのシンクロ率を落として抜け駆け............あわよくば抹殺を狙ったとしか......」
「ち、違うよ! 絶対そんなんじゃないよ!!」
「..................!」
今にも泣き出さんばかりの表情で、震えながら言葉をつむぎだすシンジ。
「ゴ、ゴメン............そんなつもりは、全くなかったんだ............アスカを傷つけようだなんて............
僕は、そんなこと...........」
「わ、わかってるわよ............アンタが本気でそんなことするヤツじゃない、ってことぐらい......。
だ、だから正直に理由を言いなさいよ! アンタが黙ってるから、変な勘ぐりしちゃうんじゃない!!」
「そ、それは............」
「だーーーーっ!!! この期に及んで往生際の悪い!!
フン、どうせこの紙に秘密があるんでしょ! えーい、見てやるぅ!」
「............!」
怒り猛ってるワリには実に器用な手つきで、アスカは紙の結び目をほどいていった。すると案の定、なにやら文字が書いてある。
「どれどれ............えーっと、コレ、なんて書いてあるのよ?」
表面に大書された、(漢字に弱いアスカにとっては)小難しい2文字。
それを突きつけられたシンジは、もはやここまでと思ったのか............ちょっと肩を落としながら呟いた。
「遺書、だよ..................」
「な、なによアンタ............『書くこと無い』って、言ってなかった?」
「ウ、ウン......そのつもりだったんだけどさ............ちょっと、気が変わって。」
「............読むわよ?」
「.............................。」
その沈黙を肯定と取って、アスカは手紙を広げた。
惣流・アスカ・ラングレー様
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「........................。」
「.............................。」
「............こんなの、卑怯よ..................。」
「.............そ、そうだね................直接言わなくちゃね............。」
「違うわよ!!............こんなこと言われたら、一生忘れられないじゃない......」
「え? なに?」
「な、なんでもないわよ!!............とにかくアンタ、感謝しなさいよね。」
「............何を?」
「知ってるでしょ? このアタシが、ラブレターを受け取るなんて、メッタにないんだからね!」
「ら、ららららぶれたあ?!!」
「なによ? どこが違うっての?!」
............確かに、あの手紙を素直に解釈すれば、どこをどうとっても告白文だ。
だからこそ、証拠隠滅を目論んでいたのだが............こうなった以上、もう言い逃れできない。
ウジウジキング・シンちゃんも、ここにきて覚悟を決めたようだ。
「はい............おっしゃるとおりです............」
「よろしい!............じゃあさっそく今! その気持ちを、言葉にして言いなさい!」
「え、えええぇーーー?! そんなぁ............」
「なによ。書けたんだから言えるでしょ? ほらほら、男らしく!」
「......こ、こういうことはさ............もっと落ち着いて、雰囲気が整ってから............
だから、家に帰ってからにしようよ..................」
「アンタバカァ?............これから、ミサト達とラーメン食べに行く予定じゃない!」
「え? だ、だから?」
「だ、だから............その後だと、ニオイが残っちゃうじゃない............。」
「............それが、どうかしたの?」
「............アンタ、ホントにわかんないの?!」
「............うん。」
ハァーーーーーーーー。
「あーあ! アタシ、鈍感男とガキは嫌いよ。」
「!..................そ、そう..................ゴメン。」
「................................。」
「.......................................。」
「................それだけ?」
「.....................だって、アスカは僕のことなんか............」
「ええ嫌いよ! 鈍感もガキも嫌いだけど、嘘つきはもっともっと大っっっ嫌いよ!!!」
「ウソってなんだよ! 僕は、真剣だったんだよ!」
「............だったらこんなことくらいで諦めるんじゃないわよ!
命がけで伝えたかった気持ちなんでしょ?!
............だったら、その気持ちがホントなら............ちゃんと言えるはずよ............。」
ちょっと伏し目がちに、それでも強い意志をたたえたアスカの瞳に、勝てるワケはなく。
シンジはそっと溜め息をついて、............そして小さくひとつうなずいて、言った。
「........うん、僕はアスカのこと...............
..............死ぬほど、好きだよ。」
fin.
皆さんどうも。敏芳祥です。
あああ、またこんなところで切ってしまいました。
......でも今回、この続きも書いたんですよ。あんまりベタベタコテコテなもんで省いたんですが。
こういうことするのは未練がましくてなんですが、読みたい方はご一報下さい。
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