「冗談で言ったのにホントだったのね。キスしたのねー!。」 アスカの悲鳴にもよく似た声が耳を貫く。 「しっしてないよ。途中で止めたんだよ!。」 僕は必死で反論するがアスカは聞く耳を持たない。 「エッチ、バカ、変態、もう信じらんなーい!。」 そういってアスカは僕を叩く。 ホログラフィのはずなのに僕は殴られた気がしていた。 (何回も殴られたから条件反射かな。) そのころ発令所では冬月副司令が 「また、恥をかかせおって。・・」 呟いていた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− つながれた手 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「ちょっとあんたそこで待ってなさいよ。」 「どうする気だよ。」 僕は電話越しにアスカに話し掛ける。 「あんたバカァ、今からそこに行ってあんたをとっちめてやんのよ。」 「危ないよ。」 「いいから!そこから動くんじゃないわよ。」 アスカはそういうと電話を切った。 見ると二号機のほうで僕を睨んでいるアスカが見えた。 「(本気だ。)」僕はその時心の中で悟った。 正直逃げ出したい気分だった。 でも、EVAが横たわっているとはいえ、二体重なっているのだ その高さはビル4階分にも匹敵する。 はっきり言って逃げ場はない。 そうこうしているうちにアスカが僕のすぐ近くまでやってきた。 「ハアッ、ハアッ。よく逃げないで待っていたわね。誉めてあげるわ。 でもね、乙女の唇を奪った罪は重いわよ。」 アスカが獲物をねらう猛獣のように僕の事を睨み付けている。 「だからやってないって。」 「問答無用!。」 僕の必至の弁解も聞かず、アスカは僕に飛び掛かってきた。 しかし、 「キャッ!。」 ツるッ! ドデン! アスカは初号機の上で疲れからバランスを崩し、滑った。 さっきも言った通り僕たちが今いる高さはビル4階分にも匹敵する。 落ちたらひとたまりもない そして初号機は今、バランスが不安定で斜めになっているのだ。 滑ったアスカはそのまま下へ落ちて行く。 「アスカ!。」 僕は必死になってアスカを追いかけ、 そして・・ ・ ガシッ!・・・どうにかアスカの手をつかむ事が出来た。 しかし、いまいち状況は良いとはいえない。 なぜなら。 僕とアスカはいわゆる宙づり状態。僕が手を放すと二人とも落ちてしまう状況にあるのだ。 「何やってるの、あの子達は!。」 「無様ね。」 その様子にのんびりと構えていた発令所が一気に目を覚ます。 「リツコ!のんびり構えてる場合じゃないでしょ。回収班はどうなってるの。」 「到着までもう少しかかるそうです。」 オペレーターのマヤが答える。 「肝心なときに役に立たないんだから。・・・シンちゃん・・もう少しがんばるのよ。」 ミサトは画面で苦悶の表情を浮かべるシンジを見ながらそっと呟いた。 「なに、やってんのよ。」 アスカの声が下から聞こえる。 僕は二人分の体重を片手で支えてるので非常につらい状態にある。 「しょ・・しょうがないだろ。アスカが勝手に滑って落ちるのが悪いんじゃないか。・・くっ・」 「だからって、あんたまで一緒に落ちる事ないじゃない。」 「だって・・アスカが落ちていくのに・・・見過ごすわけにはいかないよ・・。」 「ふんっ、助けに来て自分まで落ちるんじゃ、ざまあないわね。」 「アスカ、頼むからあまり喋らないで・・・喋るとゆれて・・余計つらくなる。」 「そうだ、いい方法があるわ。私の手を離すの、そうすればあんたは助かるわ。」 アスカが場違いに冷静な声で話し掛けてくる。 「な、なに言ってんだよ。・・そんなこと出来るわけないじゃないか。」 僕は苦悶の表情を浮かべながらアスカの提案を断る。 「あら、簡単な事じゃない、もともと私とアンタは他人同士なんだし。」 「バカなこと言うな!。」 僕はその時もてる限りの大声を張り上げた。 「お、お願いだからそんなバカこと言わないでよ・・・もう誰も傷つけたくないんだ・・・ それに・・アスカとは・・・せっかく・・心を通わせる・・事が出来たのに・・失うなんて・・ それに・・・ぼ・・僕は・・アスカが・・アスカのことが・・・す・・・くっ。」 そこまで言って僕に限界が訪れてきた。 腕力のあまりない僕に二人分の体重をこれ以上支えている事は出来ない。 「ア・・スカ、ごめん・・・もう・・限界・・だ・・・。」 「なっ何言ってるのよ。・・・ぐすっ・・私を離しなさいって行ってるでしょ!。」 僕の言葉に叫ぶようにアスカが返す。 アスカ・・泣いてるの?。 ・ ・ ・そして ・ ・ 僕は・・手を・・離した・・・。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・アスカの手をしっかり握り締めたまま、僕らは落ちて行く ガシッ! はずだった。 突然僕の手を誰かがつかんだ。 「ギリギリセーフだったな、シンジ君。」 「かっ加持さん!。」 僕はその手を握った人物を見て驚いた。 僕たちを救出してくれた人物、それはアスカの元保護者役の加持リョウジだった。 ・ ・ ・ 「ありがとうございました。ホントに助かりました。」 僕は助けてくれた加持さんに何度も頭を下げた。 「俺も仕事だからな。」 加持さんが苦笑しながら言う。 「まったくよ、危なくシンジと心中するところだったわ。」 アスカは両手を前に組んだいつものポーズで強がっている。 「ごめんねアスカ。アスカまで大変な目にあわしちゃって。」 僕はアスカと向かい合って言った。 「まったくよ、女の子一人支える力もないの?。」 呆れたような口調で言うアスカ。しかし、そういうアスカの頬はほのかに桜色に染まっていた。 「ごめん。」 「でも・・今日は私を助けてくれたわけだし・・・・だからこれは・・お礼よ。」 そういうとアスカは不意に前かがみになり顔を僕に近づけてきた。 そして僕の頬に何か暖かく、柔らかいものが触れた。 「次はアンタ一人でどうにかしてみなさいよね。」 アスカは僕の耳元でそう呟くと。 次の瞬間、アスカはきびすを返すように加持さんのほうへ走っていってしまった。 「加持さん、まってよーー。」 僕は一人、いまだ彼女のぬくもりの残る頬を手でそっと、抑えながら立ち尽くしていた。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「ただいま。」 僕は一人家に帰ってきた。 ミサトさんは今日の事後処理で遅くなっている。 アスカも・・ユニゾンの特訓が終わったんだからここから出て行くんだろうな。 そんなことを考えながら中へ入ろうとしたとき。 こちらへ向かってくる足音ともに声が聞こえた。 「おそーい!、こんな遅くまでなにやってるのよ。」 それは紛れもなく惣流・アスカ・ラングレーその人だった。 そんなアスカに僕は聞いてみた。 「どうして、アスカがここにいるの。ユニゾンの特訓は終わったんだよ。」 「別に、ここに住みたくなったからここにいるだけよ。」 「何で?」 僕はいまいち納得できなかったので聞き返した。 「いっ言っておくけど、アンタがいるからここに住むわけじゃないのよ。 アンタの作ったご飯が食べたいからここに住むだけなんだからね。」 するとアスカはなぜか焦ったように答えを返した。 僕はそのアスカの答えにそっと微笑むとアスカに言った。 「アスカ、今日の夕食何がいい?」 「えーとね、今日は****がいいな。」 こうして僕とアスカ(それとミサトさん)の同居が新しく始まった。
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