「ファースト、今度はあなたもくるのよ。」
「私行かない。」
「どうして。」
「私、肉嫌いだから。」

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奇跡の前に
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使徒が発見されたのは今日の夜のことだった。
衛星軌道上に存在した使徒には、地上からの迎撃は全く通用せず。
葛城二佐の提案により手でエヴァで受け止め殲滅することが可決された。
使徒の落下予測時刻は明日の昼を回ったころ。
地球を一周してこの第三新東京市に落ちてくる予測だ。


「バカシンジ!」
「わかったからもう少し待ってよ。」

僕たちパイロットは明日の決戦を前に自宅に帰された。
最後の晩餐になるかもしれないな。

「「いただきます」」

夕食がはじまった。
二人とも口数が少ない。

「ねえシンジ、シンジは恐くないの?死ぬことが。」
アスカがシンジに話し掛ける。
「・・・そんなのわからないよ。」
しばらく逡巡した後シンジはあいまいな言葉を返した。
「そう・・・」
夕食に二人が交わした言葉はそれだけだった。

無理もない、いくらエヴァに乗っているからと言って二人はまだ14歳になったばかりの子供だ。
自分の死と言う現実になかなか実感が湧かないのだ。

シンジは部屋でベッドで横になって考えていた。
何か特別なことを考えていたわけではない。
明日の戦闘、そして一人の少女のことを思っていた。

コンコン!
シンジの部屋のドアをたたく音がした。

(アスカだな)
今この家には僕とアスカしかいない。
ミサトさんは明日の作戦のための準備とかで今日は帰らないそうだ。
「どうぞ」
僕が促すとドアが開いた。
そこには予想通りパジャマを着たアスカの姿があった。
手にはなぜか枕を持っている。

「シンジ・・・お願いがあるの・・・一緒に寝てくれない?」

!
アスカの声がしおらしい。
しかも、僕にこんなお願いをするなんて
僕は信じられなくなって少しの間アスカを見詰めた。

それは確かにアスカだった。
ただいつもと違うのは少し体が震えてる。
死への恐怖。それがアスカの心を取り巻いているようだ。

「いいよ、おいで。」
僕はアスカにそう促した。

するとアスカは僕のベッドへと潜り込んできた。
そして一言
「襲うなよ。」
思わず僕の顔は真っ赤に染まった。

しばらくの間、僕とアスカは背中合わせで眠っていた。
背中からアスカの体温が呼吸が直に感じられた。
突然アスカが体をこっちに向けたのがわかった。
「ねえ、シンジ・・寝ちゃった?」
アスカが僕に声をかけてきた。
その時、もちろん僕はおきていた。
想いを馳せる女の子が隣に寝ていて眠れるほど僕の神経は鈍くはない。
「起きてるよ。」
僕は小さな声でアスカに返した。
「ねぇシンジ・・こっち向いてよ。」
僕にはその動作がためらわれた。
今、アスカのほうを向いてしまったら自分を抑えられる自信がない。
「シンジ、お願い。」
再度、アスカが僕を促す。
僕は耐え切れなくなってアスカのほうを向いてしまった。
するとそこでは瞳に涙を潤ませながら恐怖におびえながら僕を見つめているアスカがいた。
次の瞬間、僕は電気が走ったようにアスカのことを抱きしめていた。
(シンジ・・・)
アスカは驚いたようだった。無理もない、いきなり抱きしめられたのだから。
しかしアスカは抵抗するそぶりも見せずに僕の背中へ手を回した。

僕は先ほどまで邪な気持ちを抱いていた自分に腹が立っていた。
(僕はなんて馬鹿なんだ・・アスカだって女の子なんだ、恐くないわけないじゃないか、
ゴメンヨ・・アスカ。僕は自分のことしか考えていなかった。)
そう思うと僕はより強くアスカを抱きしめた。
これでアスカの恐怖が少しでも薄れれば、そんな想いを胸に僕は強く強くアスカを抱きしめながら
深い眠りへと落ちていった。
・
:
夜が明ける・・・・・
いつもと変わらぬ朝が僕たちを照らし出している。
横に寝ているアスカも、きっと僕が守ってみせる。
だから見守っていてね・・・母さん・・・。


・・ そして・・奇跡が・・・いま・・・はじまる・・・・・・・。


マナ:うまいことやったわね!

アスカ:何がよ。

マナ:怖がってる振りをして、シンジと一緒に寝るなんて・・・許せないわ。

アスカ:明日は決戦だったのよ。か弱い女の子のなんだから、怖いわよ!

マナ:マグマダイバーの時といい、なんだかんだ言ってシンジの布団に潜り込んで!!

アスカ:いいじゃない! シンジがやさしくしてくれるんだからぁぁ!

マナ:14歳で、そんなことしてていいと思ってるの!?

アスカ:なによ! いけないっての!?

マナ:だめに決まってるでしょ!

アスカ:どうしてよ!!

マナ:シンジと添い寝していいのは、わたしだけなの!!!

アスカ:結局それがいいたかったのね。やーねーモテナイ女の嫉妬は・・・。さぁってと、明日はシンジに守ってもらおーーっと。
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