「葛城二佐。」

なにやら重い空気の漂う司令室。
ここではシンジやアスカの保護者そしてネルフの総司令である
碇ゲンドウが対峙していた。」

「はい、何でしょうか。」

「前回の戦闘での君の作戦は見事だった、ほめておこう。」

「ありがとうございます。」
静かな調子で時が進む。

「しかし、初号機の小破は君のミスだ。従って責任は君にある。
そう君も言っていたな。」

衛生軌道上からの使徒の落下。それに付いてのミサトの作戦は手で受け止める言う
無謀な物。しかし、その作戦も無事成功し、使徒を撃退することに成功したのである。
ただし、初号機が小破してしまい。ミサトは責任を負わされる身となった。

「そこで・・今回君にとってもらう責任は・・・・・。」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

奇跡の代償は

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「減給ぅーー!。」

コンフォートマンションにこの家の主夫をつとめるシンジの絶叫が響きわたる。

「どうするんですか!、減給なんて。ただでさえミサトさんのエビちゅで
生活が苦しいっていうのに。」

「ごめんなさい。初号機小破の修理費私の給料で払う事になっちゃったの・・」
ミサトから素直な謝罪の言葉が紡ぎ出される。

「今更謝ってもらっても仕方がありません。問題なのはこの危機をどう乗り越えるかです。」
そう言ってシンジは考え込む。

「そんなの簡単じゃん。ミサトのエビちゅを取り上げればいいんじゃん。」

「「えっ!」」

それを聞いたシンジとミサトの顔が跳ね上がる。

「じょ「そりゃあ良い考えだ!。」」
冗談じゃないわよ!・・ミサトの声はシンジの一声にかき消された。

「そうだよね。ミサトさんのエビちゅさえなければどんなに家計が助かるか・・。」

「ちょっとまってよ。シンちゃん・・エビちゅはちょっち・・。」
ミサトが弱々しい声で抗議する。

が
「ミサトさんは黙っていてください。これはこの家が滅ぶかどうかの瀬戸際なんですよ。」

こういわれるとミサトは沈黙するしかない。

「じゃあ、ミサトが禁酒をすることで決まりね。」

「うん、そう言うことになるね。」

「しくしくしくしくしく・・・・。」
ミサトの涙はひたすら流れるだけだった。

「さあ、シンジ。そうと決まったらさっさと出かけるわよ。」

「えっ?」その言葉にミサトが反応する。

「えっ、また買い物?いい加減にしてよ。昨日も行ったばかりじゃないか。」

「つべこべいわないの。別に行きたくないならいいわよ。他の男の子誘うから。」
アスカのその言葉にシンジはとたんに焦りを見せる。

「ちょっ、ちょっと待ってよ。誰も行かないとは行ってないじゃないか。」

「ちょっと待って二人とも・・。」
しかしミサトの声は二人には届いていない。

「じゃあ、行くのね。」
アスカはシンジにしか見せない最高の笑顔を見せる。

「分かったよ、行けばいいんだろ。行けば。」
シンジは顔を赤くしながらも渋々承諾する。

「最初っから素直に行きたいって言えばいいのよ。
まったく・・・手間をとらせるんじゃないわよ。」

「アスカが無理に誘おうとするからだろ。」

「別に私は、無理に来てほしいなんて言ってないわよ。」

アスカとシンジの楽しい痴話喧嘩が続いている。
いつもならエビちゅを片手に、にこやかにその様子を眺めているミサトだったが、
今回は状況が違った。

「ちょっと待ちなさいって言ってるでしょ!!!!!!。」
ミサトが突然吠えるように声を荒上げる。

「何よミサト。」
「そうですよミサトさん、あんまり大きな声を出すと近所に迷惑ですよ。」

「うるさいわねっ、あんた達が私の話を聞かないからじゃないの。」

「「それで何のようなん(ですか)の?」」
二人はユニゾンして聞き返す。

「あんた達どこに行くって?。」

「「買い物(よ)ですけど。」」

「この私が禁酒するという財政難に何であなた達が買い物なんてできるのよ。」

「別にいいじゃないですか。買い物ぐらい。ミサトさんのエビちゅに比べたら
安いもんですよ。」

「そうよ、ミサト。アンタはおとなしく家で水でも飲んでなさい。」

「そんな不条理なこときけるわけないでしょ。あんたたちもデートなんか行かないで
節制しなさいよ。」

「「でっデートじゃない(ですよ)わよ。」」
二人のユニゾンがまた炸裂する。

「買い物につきあうだけなんですからね。」
「そうよ、買い物につきあってもらうだけなんだらね。デートじゃないわよ。」
それでも二人はチラッチラッと互いの事を気にしているようで
ふと目があうと赤くなってうつむいてしまうという醜態をさらしている。

「とにかく!ミサトさんは家でおとなしくしていてくださいね。」

強引にシンジがまとめるとシンジとアスカはマンションを出ていってしまった。


トコトコトコトコ

「禁酒してくれって言っても、そう簡単にはやめられないわよねぇ。」
マンションに一人残ったミサトはそう言うと冷蔵庫の前までやってくる。

「さーて、エビちゅエビちゅと・・。」

そう言いながらミサトは冷蔵庫のドアを開ける。

:
:
「ぎゃーーーーー!。」

ミサトの悲鳴が上がる。

「エ・・エビちゅがエビちゅが・・・・・・ない。」

昨日まであれほど大量にストックしてあったエビちゅが
冷蔵庫の中から綺麗に消えさっていた。

「シンジくんね・・全く変なところでまめなんだから。
いいわよ。冷蔵庫にエビちゅがないんなら買ってくればいいだけのことよ。」


気を取り直したミサトは近くの酒屋へ向かう。

「すみませーん。エビちゅくださーい。」
努めて明るくミサトはエビちゅを注文するが、その声はすぐに絶叫に取って代わってしまった。

「なんでよぉーー。あんた酒屋でしょ。それならエビちゅ売りなさいよぉ。」

どうやらエビちゅの購入を断られた様だ。

「それがダメなんですよ。シンジ君から葛城さんにはエビちゅは売らないでくれって言われてましてね。」
店主は今にも暴れ出しそうなミサトを抑えるように必死に弁解する。

「ちょっとくらいなら分からないわよ。ね!、少しでいいから売って。お願い。」
そう言ってミサトは両手をあわせて拝むように店主に懇願する。

「ダメなものはダメです。シンジ君を裏切るとここの商店街では商売ができなくなりますからね。」

「えっ?。」
何それ?

ミサトは顔を上げる。

「ここの商店街のお客さんから店の店主。それから会長までみんなシンジ君のファンなんですよ。
みんな二人の生活不能者を抱えるシンジ君を不憫に思いましてね・・・。
ですから葛城さんにエビちゅを売ることはできんのですわ。すみませんね。」

ミサトはそれ以上は何も言おうとはせず、
商店街を後にした。


「ふっふっふっふっ・・酒屋がダメなら自販機があるもんね。」
ミサトはそう思いエビちゅの自販機の前に立っていた。

ミサトはクレジットカードを自販機に通す。
(この時代はすべてにおいてクレジットカードが有効となっている。)

が、
「あれっ?おかしいわね。」

いくらクレジットカードを自販機に通しても反応はない。

「まさか・・シンジくん・・。」

シンジはすでにミサトのカード会社に電話をして、カードの使用を禁止していた。

「・・ふふふふ・・なかなかやるわね。シンジくん・・でもまだ最後の手段があるわ。」

そう言って。携帯をとりだす。
そして一連の番号をプッシュすると回線がつながるのを待った。

プっ
回線がつながった。

「あっ加持?。」
すぐさま声を掛けるミサト。
どうやら加持リョウジに飲みにつれていってもらおうという魂胆らしい。

しかし、受話器から聞こえてきたのは・・・・

『はい、加持です。ただいま留守にしております。ご用のある方はピーという発信お・・。』
ブチッ

ミサトは携帯の電源を切った。

「なんでよぉーー!!!!!!!!!。」

ミサトの絶叫が第三新東京市の夕焼けに吸い込まれるように
響いていた。

:
:
:
「すっかり遅くなちゃったね。」

「別にいいじゃない。私たちパイロットには休息が必要なんだから。」

「ミサトさん大丈夫かな。」

「大丈夫よ。人間半日ぐらいアルコールを摂らなくても死にはしないわよ。」

「それもそうだね。」

シンジとアスカは他愛もない話をしながらもマンションの部屋の入り口へとやってきた。

突然部屋の中から奇声が聞こえた。
「キェーーー!。」

シンジ達にはその声に聞き覚えがあった。

「ミサトさん?・・だよね。」
アスカはそれに頷くことで肯定する。

「ええ・・エビちゅがきれるとこうなるのね・・・きっと・・。」

部屋の中では相変わらず奇声があがっている。
「キーーェーーエエエー。」

「今日は帰らないほうがいいかもね。」
シンジが何気なく呟く。

「えっ。」その言葉にアスカが反応する。
その頬は薄いピンク色に染まっている。

「それって・・。」
アスカは不安そうに聞き返す。

「行こう・・アスカ・・。」
そう言うとシンジはアスカの手を握ると
歩き出した。

アスカもそんなシンジの手をそっと握り返すと
シンジに連れ添うように闇の支配する夜の街へ歩いていった。

二人がその後どうなったのかそれを知るものはいない。


マンションではミサトの奇声が一晩中鳴り響いていた。


マナ:せめて、禁酒じゃなくて節酒にしてあげれないの?

アスカ:たまにはいい薬よ。

マナ:でも、ちょっと可愛そうだわ。

アスカ:シンジが決めたことよ。

マナ:言いだしたのは、あなたでしょう。

アスカ:そうとも言うわね。

マナ:このままじゃミサトさん、働けなるわよ。そうなったら、より一層生活が苦しくなるじゃない。

アスカ:働けなくなったら、追い出すまでよ。

マナ:ちょ、ちょっと・・・あそこはミサトさんの家でしょ?

アスカ:碇司令から借りてるね。

マナ:まさか・・・あなた達・・・司令までもが共犯で・・・。

アスカ:よくわかったわね! アタシとシンジの愛の巣にじゃまなものは排除するのよ!

マナ:・・・・・・・・・・・・。
作者"ベファナ"様へのメール/小説の感想はこちら。
shi-ma@din.or.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

inserted by FC2 system