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ファーストキス
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全てはあの一言から始まった・・


「だったら、アスカお願い!。」

親友であるヒカリが私に向かって両手をあわせて懇願している。

「どうしても紹介してくれって頼まれちゃって。」

ヒカリの知り合いからのデートの誘い。

もちろん、今まで私はそう言った類のものは全て断ってきた。

私はチラッと同居人である碇シンジの方を見る。
次から次へとデートの誘いの耐えないのも全てコイツのせいだ。
コイツがはっきりしないから・・。

でもアイツはアイツで綾波レイの方を熱心に見つめていた。

ふぅ・・

思わず溜息が漏れる
何期待してるんだろう、私ったら。

「いいわよ。別に。日曜だったら暇だし。」

私はヒカリに向かってそう言った。

理由も無しに親友であるヒカリの頼み事を断るわけにもいかない。
それに・・日曜はアイツも留守だという話し・・断る理由は私にはなかった。







そして日曜日。




「「「それじゃ行って来ます」」」

私とシンジとミサトは3人そろって家を後にした。


ミサトは知り合いの結婚式だそうだ。
シンジは母親のお墓参り・・もう何年も行ってないんだって。
そして私はというと・・・・・


「君がアスカちゃん?やっぱり噂通り可愛いねぇ。」

デートの待合い場所に行ってみるとヒカリの親戚という男が
私を待っていた。

軽い男・・・

それがその男に対する私の印象だった。
加持さんも軽い男と言われてるかもしれない
でも・・加持さんには目の前の男にはない強さがある。
私もそこに惹かれたのだ・・そしてシンジにも・・・


その後、私たちはそろって遊園地へと向かい。

ぶらぶらと歩いた後、私たちは遊園地中が見渡せるという観覧車へと乗り込んだ。




「うわぁ。」

観覧車が上間で来たとき、アタシは思わず感嘆の声を上げていた。
そこからは遊園地だけでなく第3新東京市の姿も見ることができていた。


あ、あれコンフォートマンションだ。
あそこに私たちが住んでるのよね・・・・
こうしてみると私たちの街も捨てたモンじゃないわね。

思わず私の顔からは笑みがこぼれていた。


と、いい気分で外を見つめている私は、自分の手に違和感を感じた。
とっさに横を振り向くと、例の男がいつの間にか私の横に座っていた。


「何?。」

私は感動を邪魔され、不機嫌そうに押し殺したような声で聞くと
男は何も言わずに私へ向かって唇を寄せてきた。


やめっ!


よりにもよってこの私に・・・

私は必死に逃げようとする・・が、狭い観覧車内
そう易々と逃げおおせるようなものではない。


「何も逃げることないだろ。いいじゃないか、外人にとって
キスなんて日常茶飯事なんだろ。」

偏見である。


はぁ、なんで私の周りにはこういうバカしか寄ってこないのかしら。

思わず嘆息する私。・・・・
でもその瞬間私は油断してしまっていた。


「痛っ!手、離しなさいよバカ!。」

一瞬の油断で私は狭い観覧車の中、両手を男に掴まれ、組み伏されてしまった。


目をつぶった男の唇が私の眼前に寄ってくる・・・


しかし、その瞬間男は明らかに無防備であった・・・
そして男は知らなかったのだろう・・・

私の足癖の悪さを・・


ガゴッ!


小気味良い音を響かせ、
私の膝が電光石火で男の顎にヒット・・・

男はその一撃で白目をむいて完全にのびてしまった。



そしてその後、私は観覧車の中でのびている男を置き去りに・・
さっさと自分の家へと帰っていった。









「ただいまー。」


私が家路へとつくとそこには
チェロを弾くシンジがいた・・・

「あ、お帰り。早かったんだね。」

「べっつに、余りに退屈だからジェットコースター待ってる間に
帰って来ちゃった。」

とっさに私の口からでた嘘・・
まさか唇を奪われそうになって、勢いでその相手をK.O.して来ちゃった
なんていえないわよね。


「へー、チェロなんて持ってたんだ。」

私は話題を変えようと、シンジにそう聞いた。

「うん。小さい頃からちょっとずつやってたんだ。」

「でも見直しちゃった。一つの事をずぅっとやり続けられるって
凄いことよ。」

「別に、僕はいつ止めてもよかったんだ。」

「じゃあ、なんで今もやってるの?。」

「誰も止めろって言わなかったから。」


あ、そう・・

一瞬でもシンジを凄いと思った私がバカだったわ。
でも・・それって他人に一度も弱みを見せなかったってことよね


「今、片づけるからちょっと待ってて。」

「別にいいわよ。もう少しシンジのチェロ聞きたいな。」

「べ、別に。僕のへたくそな演奏なんて聴いても面白くないよ。」

「面白いか面白くないかは私が決めるわ。
アンタは私の言うとおりチェロを弾けばいいの。」

私がそう言うと、シンジは諦めたように
再び弦を手にとると、ゆっくりと演奏を開始した・・

なんだか・・まだ心の中に残っていたモヤモヤが消えて行くような感じがした・・・





結局、その演奏は日が落ちるまで続いた・・・・


その後、シンジは今日の夕食をつくりだした・・・
チェロを聞かしてくれたお礼として私もちょっとだけ手伝ってやったわ。

そしたらシンジのヤツ、顔を赤くして
「ありがと。」
だって・・・ふんっ、勘違いしてるんじゃないわよ。

でも・・シンジの横で野菜を刻んでいる私の鼓動は人知れず高鳴っていた。








「「ごちそーさま。」」

私とシンジは全くの同時に夕食を食べ終わった。
ユニゾンの特訓以来、私とシンジは食事を食べるスピードまで一緒に
なってしまっていた・・・


「アスカのつくってくれた料理、とても美味しかったよ。」

「あ、あったりまえじゃない。」

笑顔を顔に湛えながらそう言ったシンジの言葉に
私は思わず顔を赤くしてしまった。


「また作ってくれるといいな。」

「え?。」

何気なく呟いたシンジの言葉に私の顔はこれ以上ないほど
真っ赤にそまってしまっていた事だろう。

「な、ななな何バカなこといってるのよ。
そんな事言ってる暇があったらさっさとお風呂入ってきなさい。」

「え?でもお皿は・・。」

「お皿ぐらい私が洗ってあげるわよ。ほら、早く!。」

「わ、わかったよ。だから背中押さないで。」

私はシンジの背中を押して、無理矢理お風呂場へと押しやった。

以前の私ならお皿洗いなんて面倒なことはシンジに押しつけて
自分はさっさとお風呂に入ってリビングでくつろいでいたのに・・

私も変わったわよね。


私はそこで軽く苦笑すると。
シンジがお風呂に入る音を聞きながら、お皿を洗い出した。













2人ともお風呂に入り・・・


2人はそろってリビングでくつろいでいた。

シンジはSDATを聞きながら料理の本を眺め、

アスカは見るともなしにつけたテレビに視線を向けながら・

今日の出来事を思い返していた・・・・



それにしても今日は危なかったわ・・・
もう少しで私のファーストキスをどこの誰ともわからない輩に奪われるとこだったわ。
今度からはもう少し注意しないといけないわよね。

ファーストキスは好きな人とって決めてるんだから・・

と、私はそこで視線をシンジへと向けた

アイツは相変わらずSDATを聞きながら料理の本を眺めており、
私の視線に気づく様子はない・・・・


シンジか・・・・


今まで何度も私の事を助けてくれたし・・・


普段お世話になってるし・・・


顔はそう悪くないし・・・


私もシンジのこと、そう悪くは思ってないし・・


今日はギリギリ助かったけど、次も助かるとは限らないし・・・
それならそうなる前に今・・・・・


シンジになら・・・あげてもいいかな?




「ねえシンジ・・キス・・しようか?」


そう思った瞬間、私はSDATを聞く、シンジにそう話しかけていた。


「え?何?。」

案の定、SDATを聞くシンジのヤツは一回では私の声を聞き取れなかったようだ。

「キスよ、キス。したことないでしょ?」

私はSDATをはずしたシンジに再度そう問いかけた。

「う、うん。」

「じゃあ、しよう。」

「・・・どうして。」

ど、どうしてって・・・・レディにそんな事聞くんじゃないわよ。
でもここで本当の事言ってもシンジをつけあがらせるだけよね。
第一私のイメージに合わないわ・・

「退屈だからよ」

とっさに私はそんな答えを導き出していた。

「退屈だからって・・・。そんな。」

ふふふふ
案の定、シンジのヤツ落ち込んだ顔してる
でも・これが私のファーストキスだって知ったらどんな顔するんだろうな

「お母さんの命日に女の子とキスするのは嫌?天国から見てるかもしれないから?」

「・・・別に。」

「それとも女の子とキスするの怖い?」

「怖くないよ!キスぐらい。」

「歯、みがいてるわよね?」

「・・うん。」

「・・・じゃあ、行くわよ。」


私はそう言ってシンジへと顔を近づけていく・・・・


でもキスってどうやるんだろう

シンジの鼻息がこそばゆい

「鼻息がこそばゆいから、息しないで。」

思わず私はシンジの鼻を押さえてしまった・・・

よし、これならこそばゆくない。

我ながら良い考えよね。


でも・・・テレビで見るキスシーンって鼻抑えてたかしら?


ま、いいか・


私はそう結論づけると自らの唇をシンジの唇へと重ねた

「ん・・。」

その瞬間2人の間からかすかに空気が漏れた。




シンジの唇って柔らかい・・

それに・・なんかとっても優しい感じがする・・



唇が重なった瞬間・・・

私はなんだかとても幸せな気分になっていた。








でも・・・


それを続けてるうちに私の中で一つの疑問が浮かび上がってきた・・



キスっていつまでやるんだろ



こういうのって普通男から唇を離すものよね。

テレビで得た知識からそう答えを導き出すアスカ。



しかし・・・・シンジにそれを求めるのは大きな間違いであった。



や、やばいわ・・い、息が続かなくなってきた・・
キスってこんなに疲れるものなのかしら・・



だ、だめだわ・・もう限界
息が段々・・・




つ、




続か




続かない!





そう思った瞬間

「「プハァッ!。」」

私とシンジはほとんど同時に離れていた。

これもユニゾンの特訓の結果なのだろうか・・


しかし・・ここで考えてる暇は私にはなかった。


なぜなら長時間の息を止めたキスのせいで私は疲れ切っていた



ダッシュで洗面所へ向かい・・顔を洗う・・ついでにうがいも少々

「やっぱり暇つぶしでキスなんてするモンじゃないわね。」


やっぱりこういうのはちゃんと勉強して・・・
それなりの雰囲気で・・・・・




次第に落ち着きを取り戻したアスカがそう思考を巡らせていると・・

そこへ珍客が・・


誰よ一体・・・・



先に出迎えたシンジが誰かと話してる・

この声は・・



加持さん




私はその瞬間飛び出し、


「加持さん!。」


玄関でミサトを抱えている加持さんに飛びついた。



その瞬間、加持さんの服に付いてるラベンダーの香りが鼻についた


ラベンダーの香り・・



そう・・・加持さん、ミサトとより戻したんだ・・・



私はそう思うと、力無く加持さんの腕を放した・・・







でも・・・・・・・・・・・・それならそれで・・・

最後の思い出にファーストキスは加持さんに貰って貰えばよかった・・


何も焦ってシンジとする必要は無かったんだ・・・・





「あれ?どうしたのアスカ。」



そんな事とは知らないシンジが呑気に私に話しかけてくる。


ムカッ


こいつもこいつよ、折角この私がキスしてあげたのにその呑気さは何?
私のキスなんて何とも思わなかったって訳?


「アンタとキスなんてしたからよ!。」


そう思った瞬間、私は声を張り上げて、自分の部屋へと一目散に駆け込んだ。




そうよ・・別にシンジにあげる必要はなかったのよ・・

加持さんにあげればもう少しロマンチックなキスになったのになぁ・・・



でも・・





まぁ、これもこれでいいか

一生忘れないキスにはなったもんね




私は1人・・・そう想い、微笑むと・・・ゆっくりと目を閉じた・


だから・・次にするキスは・・・もっとロマンチックにね


バカシンジ。










〜終わり〜









あとがき

さて・・長らくお待たせしました
「嘘と沈黙」の別解釈(爆死)
出来るだけ本編ストーリー通りに話を進め、
キャラの心の動きを表し、LASにしてしまうというこの企画(笑)
多少強引な面もありますが、裏にこういう事情その他が隠れていたならば
「アンタとキスなんてしたからよ!。」
この台詞もあまり痛くないですよね(^^;
それでは皆様、今日の所はこれにて失礼いたします。
また違う作品でお会いしましょう(爆死)


マナ:あらぁ、観覧車でまんざらでもなかったみたいねぇ。

アスカ:だーれがっ! アンナ奴っ!

マナ:嫌だったの?

アスカ:イヤだからはったおしたんでしょうがっ。

マナ:だからって、シンジを襲わないでよねっ!

アスカ:襲ってなんかいないわよ。シンジも合意のことよ。

マナ:だいたい、鼻なんかつまんで、ひどいわよ。

アスカ:仕方ないでしょ、顔に息がかかるんだもん。

マナ:わたしだったら、そんなことしないけどなぁ。

アスカ:どうだか・・・。

マナ:それじゃ、実際にやってみせましょうか?

アスカ:いらないわよっ! やめなさいよっ!

マナ:お手本見せてあげるわ。

アスカ:いらないって言ってるでしょっ! シンジに手出すんじゃないわよっ!

マナ:わかったわ・・・。

アスカ:よろしい。

マナ:リップだけ出すから・・・。

アスカ:アンタ・・・。
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