「霧島マナです!北海道から来ました!」


その子は大きな声で挨拶すると、ぺこりとお辞儀をした。



Mail Friend 第三話 作:ちょ〜さん
「席は、あの一番後ろの空いているところを使ってください。」 先生はそう言って、あたしの後ろの席を指さした。 こんなところに机があったのは、転校生のだったのね。 「よろしくね!」 転校生―――霧島マナ―――は、あたしにそう声をかけると後ろの席に座った。 その後、先生のつまらない話でHRは終わり、霧島さんの周りにみんな集まってきた。 前の席のあたしはたまったもんじゃない。 逃げるようにして自分の席を後にした。 「みんなすごいわね。」 その人だかりに入らなかった、ヒカリがそばに来た。 「まったく、そんなに転校生が珍しいのかしら?」 「いいじゃない。みんな仲良くなろうとしているのよ。」 「だからって、あそこまで集まらなくても・・・」 教室を見てみると、あそこにいないのはあたしとヒカリ、 そしていつもだったら我先に入っていくレイが自分の席にいた。 「珍しいわね。レイが声をかけに行かないなんて。」 レイは眠いのか机に突っ伏している。 「いいの。もうたくさん、お話したから。」 「え?レイって霧島さんのこと知ってるの?」 「うん、幼馴染みっていうのかな?小さい頃、少し遊んだだけなんだけどね。 夏休みにたまたま街で会ったんだけど、びっくりしちゃった。」 ふ〜ん、レイの幼馴染みか。じゃあ、仲良くしてあげなきゃね。 そう思い、霧島さんのほうを見てみる。 機関銃のごとく浴びせられるみんなの質問をにこにこしながら答えている。 あたしだったら5秒とかからず切れてるわね。 「そういえばさ。」 う、レイ不気味よ。だって、突っ伏したまま顔だけ横に向けてニヤニヤしてるんだもの。 「 朝の話の続きをねぇ・・・ヒカリ?」 あぁ、鈴原のことか。あたしも興味あるわね。 「え?べ、別にいいじゃない。た、ただプールに行っただけよ。」 「ほほぅ、ごまかすというのね。最初から最後まできっちり吐いてもらうわよ。」 「さ、最初から最後って?」 「どうして誘ったか、どうやって誘ったか、どこに行ったか、何をしたか、 5M1Hを教えてもらわなきゃ。」 それを言うなら「5W1H]でしょ! そんなんだからレイの成績は散々なのね。 「そ、そ、そんな、べ、別にわたしと鈴原が何してたっていいじゃない。 どうしてそんなことを・・・・」 「なんや、わしがどうかしたんか?」 ヒカリったら、いきなり後ろに鈴原が現れたから固まっちゃってるわ。 「別に何でも無いよ。女の子だけの秘密のお話。 それより鈴原君は、マナのところ行かないの?」 「もう、質問は終わりや。ケンスケの写真撮影もOKもろたからな。 なんや、綾波は霧島と知り合いなんか?」 「うん、幼馴染みなんだ。」 「さよか。なら、仲良うせんといかんな。」 「す、すずはら!」 お、ヒカリ復活。 「ま、まだ女の子の写真なんか売ってるの? い、いきなり霧島さんに失礼なんじゃないの?」 どもりながら説教してもねぇ。いつもの迫力が無いわ。 「うん?まぁ、本人がええと言ってくれたさかいな。 別にええんとちゃうか?」 悪びれもせず、鈴原はけらけら笑ってる。 「そ、そういう問題じゃなくて、わ、わたしは常識的な話を・・・」 「ま、いいんちょに迷惑はかけんから。 ほな、わしは帰るさかい。」 そう言って鈴原は自分の机からカバンを取ると、相田と教室を出ていった。 「・・・ヒカリも大変ねぇ。」 「い、いいのよ。わ、わたしは委員長として当たり前のことを言ってるだけだから。」 「よくそんなんで、プールに誘えたね。」 レイが話をぶり返す。 「ね、ね、どうやって誘ったの?そこだけでもいいから教えて〜。」 「そ、そうね。そのくらいなら・・・」 あまりのレイのしつこさに、ヒカリ陥落。 抵抗するのはあきらめたらしい。 「で、どうやったの?」 先を促すレイ。 「え、えっとね。夏休みだから宿題があるでしょ。 それで、鈴原がちゃんと宿題やるように家まで教えに行ってたの。」 「・・・まさか、毎日行ってたの?」 あたしは素朴な疑問をぶつけてみた。 「う、うん。だ、だって、鈴原ったら進みがすごく遅いのよ。 ほぼ毎日やって、やっと終わったって感じだったし。」 「それってさぁ、「通い妻」って言うんじゃないの?」 レイ、またも爆弾投下。 「つ、妻って・・・そ、そんな・・・ で、でも、わたしはべつにいいかなって・・・ あ、でも、まだ中学生だし、そういうのはまだ・・・」 ヒカリの妄想スイッチON!って感じかしら。 これで10分くらいは帰ってこないわね。 「レイ〜、言いすぎよ。ヒカリがいっちゃったじゃない。」 「えぇ〜、レイちゃんは素直な感想を述べただけで・・・」 「何々?何の話してるの?」 声のしたほうを見ると、いつのまにか霧島さんがいた。 どうやらみんなの質問攻めは終わったらしい。 「もう終わったの?」 「うん、でもみんなすごいね。いくら私でもあそこまで来ると大変だったわ。」 霧島さんは肩をぽんぽんと叩いている。 「まぁ、嫌な気はしないけどね。すぐ仲良くなれそう。」 「そう、よかったね!」 レイはにっぱり笑っている。ほんとに嬉しそうだ。 そういえば自己紹介まだだったわ。 「霧島さん、あたしは惣流アスカ。よろしくね!」 そう言って、霧島さんに手を差し出した。 「惣流さんね。よろしく。私のことはマナでいいわ。」 「うん、あたしのこともアスカでいいわよ。」 霧島さん・・・マナは握手に応じてくれた。 「それと、そこで別の世界にいっちゃってるのが洞木ヒカリ。 一応、学級委員長だから困ったことがあったら彼女に聞くといいわ。」 「アスカぁ〜、自分が聞いてあげるつもりは無いの?」 「いいのよ。ヒカリの仕事を取っちゃ悪いじゃない?」 「・・・”協力”って言葉、知ってる?」 「このあたしに勉強で勝負しようっていうの?」 「ふふふ、あなたたちって面白いわね。」 やば、第一印象が・・・このままではレイと一緒に見られちゃうじゃない! 「そ、それよりさっさとヒカリをサルベージして帰るわよ!」 「・・・?・・・アスカ、サルベージって何?」 そういえばなんだったかしら? 「べ、別に何でもいいのよ!さっさと帰りましょ!」 「ヒっカリぃー、帰るよ〜。」 レイがヒカリの肩を揺するが、なかなかこちらに帰ってこようとしない。 仕方が無いので、あたしたちはそのままヒカリを引きずるようにして帰っていった。 下校途中。 「アスカ、今日はメールしていかないんだ?」 レイったら、よ、余計なこと言わないでよ。 「もうメールしてないの?」 「い、いいじゃないの。あたしがメールしようがしまいが、あんたには関係無いでしょ。」 まさか、あんなメールみんなの前で出来るわけ無いじゃない! あたしは自分でも驚くほど「シンジ」に「普通」に会話をしている。 そう、あたしが「普通」に話すのだ。 普段のあたしにしてみれば他人、ましてや男相手に「普通」に話すなんて考えられない。 だいたいは暴言を吐き、最終段階までいくと手か足が出る。 だが、「シンジ」へのメールはそんなことが嘘のような「普通の女の子」のメールになっている。 後で読み返してみて、自分でも恥ずかしくなるような内容だ。 みんなの、ましてやレイの前であんなメール書いたら後でどんなに冷かされることやら。 そんなメールをレイは学校で書けと言うの? 「だぁってさ〜、一学期のときはあれだけ毎日メールしてたじゃない? 急にどうしたのかなぁ〜、と思って。」 ま、毎日って言ったって、ほとんどあいつに無理難題を送ってただけじゃない! 「ねぇねぇ、どうなったの〜?」 「それ、なんの話?」 ぐっ、マナまで話に入ってきちゃったわ。 「えとね〜、アスカには”らぶらぶ”なメル友がいるって話。」 レイ!勝手に話を大きくしてるんじゃないわよ! 「「シンジ」っていうんだよ。」 にやけ顔全開でレイが続ける。 そこまでいうこと無いじゃない! 「「シンジ」?」 「そ、「シンジ」」 もう、こういうときに止めに入ってくれるヒカリは今だあっちの世界にいってるし。 さっさと帰ってきなさいよ! 「それって、あの「シンジ」のこと?」 ・・・マナ、知ってるの? 「「シンジ」のこと知ってるの?」 「知ってるも何も、ねぇ、レイちゃん。」 な、レイも「シンジ」のこと知ってる?! 「あ、マナちゃん、えっと〜、それは〜・・・」 そういえば、「シンジ」からのメールが初めて来たとき、妙に焦ってたわね・・・。 「ちょっとレイ、あんたも知ってるの?」 「いや、その、知ってる、と言えば知ってるし、知らない、と言えば知らないし・・・あうあう・・・」 「何言ってるの、「シンジ」はレイちゃんの・・・」 「わぁ〜!待って!マナちゃん!ストップ!」 慌ててマナの口を押さえるレイ。 なに?そんなに隠したいことなの? 「(もご、もご)・・・ぷはぁ〜、レイちゃん、私を殺す気?」 「あ、ごめん。でもね、マナちゃんの知ってる「シンジ」ではないよ。」 「そうなの?」 「うん、だって、アドレスが違ったもん。」 ・・・なんだ、同名だっただけなのね。せっかく会えるかと思ったのに・・・ ・・・って、何でがっかりしてるのあたしは! 気が付けば、そんなあたしを見つめる二対の瞳。 「そんなにがっかりして、どうしたのかなぁ?」 「な、何でもないわよ。」 うっ、マナまで顔が変わってきたわ。まるでレイが二人。 「もしかして、ちょっと期待したのかな?」 「な、な、何に期待するっていうのよ!べ、別に会えるかな、とか思ってないわよ!」 「そっかぁ、会えるかと思ったんだ。」 ・・・し、しまったぁ〜!あ、あたしとしたことが・・ なんかこれじゃ、ヒカリみたいだわ。う〜ん、墓穴掘る癖がうつったのかしら? 「ごめんね、期待させて。でもさ、いつかは会えるんじゃない?」 そんな、にやけた顔して両手合わせても説得力がないわよ、マナ。 「ま、でもあれだけ喧嘩してるんじゃ会ってくれないかもね。」 ちくっ。 レイの何気ない一言があたしの胸に刺さる。 「そんなにすごかったの?」 「すごいなんて物じゃなかったよ。メールでここまでするかって感じだったし。」 ・・・そう、あたしは忘れていた。 彼との最初のやり取りは最悪だったんだ・・・ 彼はあたしのことを見てくれている。 でも、それはメールという「言葉」の中でだけだ。 もし実際に会ったとしたら・・・その後もあたしを見ていてくれるのだろうか? そもそもあたしは、彼を前にして「自分」を隠さずにいられるだろうか? いつもの自分を出してしまうのでは? 酷いことを言ってしまうのでは? 酷いことをしてしまうのでは? ・・・でも、あたしは彼に、「シンジ」に会いたいと思う。 ・・・どうして会いたいと思うの? 「・・・はっ、なんで、わたしここにいるの? ・・・ここはだれ?わたしはヒカリ。」 やっとヒカリが戻ってきたようだ。自分で何言ってるのかわかってるのかしら? 「ヒカリ、帰ってきたんだ・・・15分39秒、記録更新だね。」 どこから取り出したのか、ストップウォッチを見ながらメモするレイ。 「いつもこうなの?」 そうか、マナは今日来たばっかだもんね。 「そう、いつものこと。だから気にしちゃ駄目よ。」 まだハテナマークを頭に飛ばしてるヒカリを見ながら言う。 「・・・ここは・・・帰り道?わたしは家に向かってるの? あれ?今日はメールしなかったんだ。」 ・・・戻ってきた早々、何言ってるのよ! 「そうなんだよ。メールしなかったんだよ。」 「そう。アスカはいいの?」 どうしてあたしに振ってくるかなぁ。 「い、いいのよ!別に毎日しなきゃいけないってもんでもないでしょ!」 ついつい大声を出してしまう。まったく、これじゃヒカリと変わらないわ。 そんなあたしにため息をつきながらレイが聞く。 「ヒカリはメールしないの?」 「え?わたしは家に帰ってからでもいいし。 それに今は「シンジ」君の返事待ってるしね。」 ちくっ。 そうよね・・・ヒカリも彼とメールしてる。 でも、それは鈴原のことを相談してるだけ。 そう、それだけ。 なのに。 胸に小さな痛み。 寂しい。 どうして? 彼はただのメル友。言葉だけの相手。 ただそれだけのはずなのに。 何が不安なの? あたしたち以外とメール交換してるかもしれないじゃない。 彼が誰とメールしてようが構わないじゃない。 ・・・違う。嫌なんだ。 あたし以外の人とメールしてるのが。 嫉妬? どうして? どうして、あんな奴に・・・ううん、あんな奴じゃない。 「あたし」を見てくれる人。隠さない「あたし」を。 ・・・でも、あたしだけを見てくれてるわけじゃない。 ヒカリとメールしているように、他の人としているのかもしれない。 その中には、あたしと同じようにやり取りしてる人もいるかもしれない。 ・・・なんか一人で舞い上がってた。 あの夏休みのやり取りが夢のように思えてくる。 「・・スカ、アスカ、どうしたの?」 ヒカリがあたしの顔を覗き込んでいる。 どうやら考えに没頭していたらしい。 「大丈夫?なんか、ぼぅっとしてたけど。」 「ん、大丈夫。ちょっと考え事してただけだから。」 「そう?それならいいんだけど。レイとマナも心配してたわよ?」 そういえば、レイとマナの姿がない。 「二人はどうしたの?」 「買い物してから帰るって。駅のほうに行ったわ。」 「ふ〜ん。」 「それじゃ、わたしはここで。また明日ね!。」 「うん、それじゃ。」 ヒカリとわかれて、一人で歩く。 先ほどの考えが頭にちらついて離れない。 足が段々と早くなる。 気がつくとあたしは走っていた。 心に芽生えた、寂しさと不安に追いつかれないように・・・ <続> ======================================== あとがき ども、ちょ〜さんです。 元々、このSSは2〜3話で終わる予定だったのに・・・ まだ終わりそうにありません。(^^; マナちゃんとレイちゃんの隠し事・・・ 話が進めば、明らかになってくるのかな? 実は作者もわからなかったりして・・・ (げしっ!)はう!な、なんだ?この大岩は?あぁ〜、血が、血が〜〜! ・・・なんかこのSSのレイちゃんって妙に馬鹿っぽいかも。 これにも裏がありそうですが・・・(にやり) ではでは、続きでまたお会いしましょう。 ========================================


マナ:全然ラブラブになりそうにないじゃない。(^^v

アスカ:次よ次っ! 見てなさいよっ!

マナ:わたしがなんかシンジに関係ありそうだしぃ。

アスカ:人違いって言ってるじゃない。

マナ:だが、しかーしっ! 実はマナちゃんの婚約者だったぁっ! って結末だったりしてぇ。

アスカ:それは絶対無いわ。

マナ:どうして言いきれるのよ。

アスカ:婚約者いるのに、シンジが他の女の子にメール送ると思うぅ??

マナ:うっ・・・。すばらしい推理で・・・。(ーー;;;;

アスカ:でもなーんか、アンタとレイの隠し事が気になるわよねぇ。

マナ:話が進めばわかってくるみたいよ?

アスカ:作者もわからなかったり・・・とかなんとか書いてあるけど?

マナ:実は、本当に他人だったり・・・なんてことはないわよねぇ。(ーー;;;;
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