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名前:  アスカ
From  a_souryu@daiichi.jh.jp
To    s_ikari@nerv.com

ねぇ、シンジがあのネルフの社長なの?
それがほんとなら14歳で社長なんてすごいじゃない。
しかも大学に通ってるんでしょ?あたしにはとても真似できないわ。
でもさ、そんなに若くて仕事なんてできるの?


・・・なんであたしみたいなのとメル友になったの?

お願い、正直に答えて・・・

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その後、彼から・・・「シンジ」から返事がこなくなった。





Mail Friend 第五話 作:ちょ〜さん
彼にあのメールを送ってから一週間。 「アスカ・・・返事、来た?」 ヒカリが心配そうに声をかけてきた。 「ううん・・・」 あたしはそう答えるのが精一杯だった。 「そう・・・」 ヒカリだけでなく、クラスのみんなが心配そうにこちらを見ているのがわかる。 以前のあたしなら、みんなにこれだけ心配さえれば表向きだけでも元気に振舞っていただろう。 だけど、今のあたしはそんな余裕がないほど落ち込んでいた。 ・・・どうして?どうして彼は返事をくれないの? あたし、何か悪いこと書いたのかしら? ・・・嫌われた? 心の中にどす黒いものが渦巻いていく。 彼からの返事が来なくなって、今までの不安が漠然としたものになった。 今まで自分がどれだけ彼に惹かれていたか・・・ こんなになるまで気づかないなんて・・・ でも彼は・・・ 返事が来ないことで、あの質問の答えが肯定と思えた。 だから・・・これでいいのかもしれない。 所詮、世界が違うのよ。どんなに彼のことを好きになったとしても。 あたしは自分の片思いが終わったと感じた。 だが一方で諦めきれない自分がいる。 せめて、一度くらいは会いたかった。 この会いたいという気持ちは本当。 それは彼が好きだから? ・・・そう、彼のこと好きなのよ。 会ったこともない人なのに? ・・・あのメールだけで十分だわ。彼はあたしに優しいもの・・・ 「ねぇ・・・」 「なに?」 「ヒカリには・・・返事・・・来た?」 「え?・・・ううん、わたしのところにも来てないわ。」 「そう・・・」 あたしのところだけではなく、ヒカリのところにも返事が来ていない、か。 そのことはあたしにわずかな希望を与えてくれた。 そうよ・・・もしかしたら何か理由があって返事を書けないだけかも。 もしこれでヒカリのところだけに返事が来ていたら、あたしは狂っていたかもしれない。 それだけ彼とのメール交換はあたしの心の大半を占めていたから。 だから毎日メールを送っている。 暇ができたら返事くださいって。 こんな終わり方は嫌だから・・・ ・・・優しくするなら、最後まで責任とりなさいよ。 「おっはよ〜!」 レイとマナが教室に入ってきた。 このレイの元気さが恨めしく思う。 「おはよう、アスカ、ヒカリ。」 「おはよう。」 「おはよ・・・」 まだ落ち込んでいるあたしを見て、マナがひとつため息をつく。 「アスカ、いつまで落ち込んでるのよ?」 「べつにいいでしょ・・・」 「あのね、単なるメル友でしょ?そんなに気にすることないじゃない?」 「別に気にしてなんか無いわよ。」 「ほぉ〜、そこまであからさまに落ち込んでおいて、いまさら「気にしてない」なんて説得力無いわよ。」 今日のマナ、なんか冷たい・・・ 「・・・何よ、なにが言いたいのよ?」 「所詮、メル友なんてそんなもんよ。 飽きたら次のメル友を探す、アスカの「シンジ」君もそうなんじゃないの?」 「な、彼はそんなんじゃないわよ!」 「だったら、なんだっていうの?」 「あんた、彼の何を知ってるっていうのよ!知らないくせにそんな無責任なこと言わないでよ!」 「じゃあ、アスカはいつまでもうじうじ落ち込んでるっていうの? だいたい、ただのメル友にそこまでのめりこむ理由なんてないんじゃない?」 「彼は・・・彼は、ただのメル友なんかじゃない!」 「メールで相手のことなんかわかりっこないじゃない? 結局、メル友なんて遊びでしょう?」 「あ、遊びなんかじゃないわよ!」 「じゃあ、なんだっていうのよ? 親友? 相談相手? 気の合った仲間?」 「違う、違う、違う! そんなんじゃないのよ・・・でも、でも・・・ 彼は・・・あたしは・・・あたしは、彼のことが好きなのよ!!」 「「「「「えぇぇぇぇぇ〜〜?!」」」」」 「「「「「何ぃぃぃぃぃ〜〜?!」」」」」 教室が絶叫に包まれる。 その声であたしは我にかえった。 目の前には・・・レイよろしく、にやり顔のマナ。 ・・・今、あたしなんて?・・・あ、あ、あたしってば、なんてことを〜?! 「ア、ア、アスカ、好きな人がいるの〜?」 「どんな人?今度紹介してよ〜。」 「なんだって〜?!あの惣流に好きな人〜?」 「うぉ〜!どこのどいつだ!そんな・・・うらやましいー!!」 「えいどりあ〜ん!」 ちょ、ちょっと違うこと叫んでる奴もいるけど、と、ともかくこれはまずい! あたしは今まで、外見だけで寄ってくる男どもの告白、その他を全て突っぱねてきたから浮いた噂がなかった。 男嫌いでは、とも言われている。 そんなあたしが、あんなことを叫んでしまったのだ。 みんなが黙っているわけがない。 もう落ち込んでる場合じゃない。 ・・・まずい。この展開は、まず過ぎるわ。・・・顔、赤くなってないかしら? 「・・・ちょっとはすっきりした?」 そんなあたしの気持ちを知ってか知らずか、マナがにこり。 そう、あたしが元気になるためにあんなことを・・・でもね。 「もうちょっと違うやり方があったんじゃない?」 心の中で礼を言いつつ、マナに答えた。 あたしのまわりには血に飢えた・・・もとい、ゴシップに目をらんらんとさせたクラスメイト。 「こ、ここまでとは・・・」 マナも自分が間違ったやり方をしたことに気づいたらしい。顔が引き攣っている。 「はぁ〜い、情報が欲しい人はこちらだよ〜。」 レイが自分の机をバンバン叩いて、商売をはじめている。 な、メール交換の記録なんていつの間にとってたのよ! 「愛の交換日記一ページにつき、餡蜜一個で〜す。」 な、な、な、な、あ、あ、あたしと彼のメールが餡蜜、一個ぅ?! 「な、ちょ、レイ!やっすい商売してるんじゃないわよ! 餡蜜一個?百個はかたいわよ!」 「・・・という、本人の許可も出ましたので、一行ごとのばら売りといたしま〜す!」 ななななななにぃ〜〜〜?! そして教室は喧騒に包まれた。 あたしに質問に来る者、レイから情報を聞き出そうとする者。 大きな肉団子がふたつ、中心のあたしたち。 「ちょ、ちょっと!あたしには、あんたたちに話す事なんて一つもないんだからね!」 「ほ〜い、きちんと一列に並んで〜。順番、順番!」 「・・・なんかすごいわね。」 「はははは・・・なんだっていうのよ、このクラスは・・・」 ヒカリにマナ!傍観してないで助けなさいよ! 「みなさん!静かに!HR始めますよ!」 あっちゃ〜、先生が来ちゃった。これはあとで呼び出されそうね・・・ 先生が来たというのにみんな席につく気配はない。 一応ヒカリも委員長としてみんなを落ち着かせようとしているが、 ここまでの騒ぎだと、その鶴の一声効果も余り意味が無かった。 「すまんね、来た早々こんな状況で。ちょっと待っててくれるかな。」 「いえ、いいですよ。活気があって、面白いクラスじゃないですか。」 先生と話す、聞きなれない声。 その声に、騒いでいた声がすっと消えた。 そして先生の隣にみんなの視線が集まった。 そこには見慣れない生徒。 背が高く、中性的な顔立ち。 ただ、なんか冷たい感じがする・・・ 「やっと静かになりましたか。さぁ、転校生を紹介するので席についてください。」 みんな転校生のほうに興味がいったらしく、黙って席につく。 ふぅ、これで一安心だわ。転校生様々ね。 ん?マナとレイが固まってるわ。どうしたのかしら? 「シンジ・・・」 マナがポツリと漏らす。 ・・・シンジ? 「やぁ、マナ、レイ。同じクラスだったんだ。」 親しげに話しかける転校生。 ・・・こいつがレイとマナの言ってた、シンジ? 「はじめまして・・・六分儀シンジです。」 そう言うと彼は軽くおじぎをした。 「それでは席ですが・・・霧島さんの隣が空いてますね。 二人とも知り合いみたいですから、ちょうどよかったですね。」 マナの隣ということは、あたしの斜め後ろか。 転校生―――六分儀シンジは、先生に言われた通りマナの隣の席についた。 「シンジ・・・どうして?」 未だ信じられないような顔をしたまま、マナも席につく。 「いや、どうしてって・・・僕が学校に来ちゃ悪いの?」 「そうじゃなくって・・・だって、シンジは・・・」 「転入したら同じクラスだった。それでいいじゃない?」 「でも・・・」 六分儀の答えに、マナは納得しきれていないようだ。 レイはというと・・・ポカンと口を開けたまま立ち尽くしている。 ・・・そんなに驚くことなのかしら? そうこうしている内にHRは終わり、恒例の転校生質問攻めが始まった。 どうしていっつもあたしの席のそばなのよ! ま、今回は真後ろじゃないから逃げ出すほどでもないけど。 「六分儀君って、どこから来たの?」 「ねぇねぇ、霧島さんとはどういう関係?」 「彼女とかいるの?」 「わたし、ファンクラブ作るけどいい?」 「・・・写真撮ってもいいか?」 前言撤回・・・なんでクラス中の女子が集まってくるのよ? どさくさにまぎれて、相田までいるし。 「遠いところから。」 「幼馴染みだよ。」 「さぁね。」 「・・・なんで?」 なんか、妙にあっさりした奴ね。 なんていうのか・・・大人ぶってるって感じがするわ。 しっかし、ちょっと集まり過ぎじゃないの? 男子まで寄って来てるもの。これってほぼクラス全員だわ。 やっぱり退避ね・・・そうだ、レイのところにでも行こうかしら? ヒカリも同じことを考えたらしく、レイの横にいた。 「レイ、よだれ垂れそうよ。いいかげん、口閉じたら?」 レイのそばに来ると、あごを下から叩いてやった。 「ふぎゃ?!・・・いはいよ、あふか・・・」 「まったく、乙女がダラ〜ンと口開けてるからいけないのよ。 ちょっとは女のたしなみってやつを覚えたら?」 「それは君にも言えるんじゃない?」 誰よ、あたしに歯向かおうとするのは! 声の主を見るべく振り返ると、そこには例の転校生、六分儀。 どうやら、質問攻めはあっけなく終わったらしい。 「なに、あんた。あたしに喧嘩売ってんの?」 「事実を述べたまでだよ。」 そう言うと、六分儀はレイの方へ向き直る。 「久しぶりだね、レイ。」 「あ、うん・・・」 六分儀の挨拶に、レイはもじもじしている。 少し顔も赤いわ・・・何、照れてるのよ? 「あ、え、えっとぉ〜・・・」 「昔みたいに、シンちゃんでいいよ。」 「あ、うん。・・・シン・・・・ちゃん・・・」 う、なんか違う世界が出来そうな気配ね。 でもねレイ、あんたには似合わないって。 「さっき殴られたところは大丈夫?」 むかっ! 殴ったんじゃないわよ。ちょっと触っただけじゃない。 「アスカは乱暴だから・・・」 マナまでなんてこと言うのよ! 「だ、大丈夫だから。こんなのいつものことだし。」 いつも?そんなことないわよ! 「いつも・・・レイも大変だね。」 「大変って、あんた、転校生だからって容赦しないわよ?」 「駄目よ、六分儀君、アスカを怒らせると本当に怖いんだから。」 ・・・ヒカリまで・・・あたしをかばおうって奴はいないの? 「そうや、転校生。惣流をからかっちゃあかんて。」 「そうそう、このクラスの十戒の一つだもんな。」 鈴原・・・相田・・・あとで覚えてらっしゃい! 「惣流・・・アスカ?」 「そうよ、あたしが惣流アスカ。なんか文句あるの?」 「・・・いや、何でもないよ。よろしく、アスカさん。」 何よ、こいつ。馴れ馴れしいわね。 「気安く名前で呼ばないでくれる?」 「わかったよ、惣流さん。」 六分儀はしょうがないな、と体全体を使って表現した。 きー!なんか、妙に腹の立つ奴ね。 そんなあたしのイライラをよそに、六分儀はマナ、レイと話し始めていた。 ちょっと!話はまだ終わってないわよ! 「アスカ、六分儀君は転校したてで緊張してるのよ。」 ヒカリのフォローも今回ばかりはあまり説得力がない。 「緊張してるですって?ただ単に嫌な奴じゃない!」 「もう・・・アスカ、そういう風に決め付けるのはよくないわ。」 「あたしがそうだって言ったら、そうなのよ!」 「そんなこと言ってると、友達なくすよ?」 くっ、六分儀、口出してくるんじゃないわよ! 「あんたに何がわかるっていうのよ! この「天才美少女」アスカ様が言ってることに間違いはないのよ!」 「はぁ、普通、自分で「天才美少女」なんて言う? それって「自称、天才美少女」ってやつ?」 「違うわよ!みんながそう呼んでるのよ!」 「「・・・性格以外はな。」」 この2バカが!きっちり聞こえてんのよ! 「嘘だと思うならレイかマナにでも聞いてみるといいわ!」 「・・・それは困るよねぇ、マナちゃん。」 「・・・うん。」 こういうときは素直に「そうだよ」って言っておけばいいのよ! あんたたちには「友情」の二文字は無いの?! 「ま、君は「天才美少女」、そういうことにしとくよ。」 話は終わったといった感じで、六分儀は自分の席に戻っていった。 何よ!口を開けば、人に説教地味たこと言ってばかりじゃない! 鈴原と相田は仲良さそうにしてるわね。 まったく、あたしと対等にやりあったからって六分儀のこと誉めてるわ。 そうね、少なくともこのクラスにそんなバカはいないから。 決定!これからあんたたちは”3バカ”よ! 次は容赦しないんだから・・・覚えておきなさい! 「ねぇ、アスカ。シンちゃんと仲良くしてね。」 今まで、あたしと六分儀のやり取りを黙ってみていたレイは、困ってるみたい。 「向こうがそういう態度してきたら、考えるわ。」 そう答えて、あたしは六分儀を睨みつけた。 ・・・そうよ、あんなこと言われてたら、仲良くなんてしたくないわよ。 六分儀シンジ・・・同じ”シンジ”でも、彼とは大違いだわ! <続> ======================================== あとがき ども、ちょ〜さんです。 とうとうシンジ君、出てまいりました。 めがね君にもセリフがあったし、よかった、よかった。(笑) 読んでて「あれ?」って思った人、かなりいると思います。あまり深読みはしないように! おいら、困っちゃいますから。(汗) ・・・多分、みなさんのお考えどおりかも。(自爆) この物語も終盤戦へ・・・といったところです。 このまま「碇シンジ」とアスカはすれ違ってしまうのか? 六分儀シンジとレイ、マナの過去とは? ・・・どうなるのかな?(おいおい) ではでは、また続きでお会いしましょう! ========================================


アスカ:アンタが余計なこと言うから、大騒ぎになったじゃないっ!

マナ:あらぁ、ほいほい乗ってくるからでしょ?

アスカ:誘導尋問なんて汚いわよっ!

マナ:アスカも洞木さんのこと言えないわねぇ。

アスカ:当の本人が転校して来ちゃうし・・・。

マナ:アスカは、何もわかってないみたいだけどね。

アスカ:あそこ迄シンジがヒント出してるのに、どうしてわかんないんだろう・・・。

マナ:そりゃ、仕方ないわよ。

アスカ:どうしてよ?

マナ:アスカっておまぬけさんだもん。

アスカ:アンタに言われたかないわよっ!
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