六分儀シンジ・・・同じ”シンジ”でも、彼とは大違いだわ!






Mail Friend 第六話 作:ちょ〜さん
昼休み。 あたしたちはいつものように、机をくっつけてお弁当を食べようとした。 「ね、ね、せっかくだからさ、シンちゃんたちと食べようよ?」 レイの提案。 あたし的には却下。 だが・・・ 「そうね、まだ友達もいないでしょうから・・・」 マナが六分儀のほうを向くと、一人でお弁当をひろげていた。 「ね?いいでしょ?」 う〜ん、まぁ、あたしも鬼じゃないからね。 そこまで言われたら、断れないじゃない。 「いいんじゃない?」 ヒカリからはOKがでたようだ。 「ま、しょうがないわね。」 あたしが答えると、レイは喜んで六分儀を呼びに行った。 「いいの?一緒に食べさせてもらって。」 「いいの、いいの!みんな大歓迎だよ!」 大歓迎とまでは・・・ 「あんた、女の中に男が一人で恥ずかしくないの?」 「そんな・・・小学生じゃあるまいし。僕は、気にしないよ。」 「ま、これだけの美少女に囲まれて嬉しいでしょうけど、勘違いはしないでよね。」 「何を勘違いするのさ・・・」 そうこうしている間に、レイたちが机を一つ足して六分儀が座る場所を作る。 「ささ、どうぞ、どうぞ!」 レイが丁寧にも椅子を引いて、六分儀を促す。 普通、逆じゃないかしら。 「なんや、シンジ。いいんちょたちと一緒かいな?」 購買組の鈴原と相田が戻ってきた。 「うん、誘われたんでね。そうだ、トウジとケンスケも一緒でいいかな?」 六分儀はあたしたちに聞いてくる。 いつの間にか名前で呼び合うほど仲良くなったらしい。 「べ、べ、べ、別にいいんじゃないかしら?」 ・・・やばいわ、ヒカリがあっちの世界一歩手前。 そりゃ、鈴原と一緒にお弁当食べれるなんて願ってもないことだからね。 「いいんじゃない?」 「私も別に構わないけど。」 そして、あたしにみんなの視線が集まる。 「そんな目で見られたら、反対できるわけないでしょ。」 「ありがとう、惣流さん。」 「べ、別にお礼言われることじゃないわよ。」 「そうか、そうだね。」 うーん、なんか朝よりも柔らかい感じね。 やっぱり、転校したてで緊張してたのかしら? 「でもさ、惣流さんなら「なんであんたたちと一緒なのよ!」とか言いそうだったからさ。」 むっ・・・やっぱ、嫌な奴だわ。 またもや他のところから机を持ってきて、みんなが座れる席を作る。 あたし、ヒカリ、鈴原、相田、六分儀、レイ、マナの順番に席につく。 「さ、飯や、飯や!いただくでぇ〜!」 鈴原は両手で抱えるほどパンを買ってきていた。 よくそんなに食べられるわね。 「そういえばさ、シンジと綾波ってどういう仲なんだ?」 相田が自分のパンにかぶりつきながら話し始める。 「どういうって・・・幼馴染みだよ。」 六分儀も自分のお弁当をつつきながら答える。 「いや、俺が見た限りじゃそれ以上とみたが?」 パンを口にくわえたまま、にやりと笑う相田。 ちょっと不気味。 「どうして?」 「綾波のシンジを見る目がなんか違うからさ。」 あたしもそれは思った。 今もレイは顔を赤らめて、ちろちろと横目で六分儀を見ている。 横にいることがとても嬉しいようだ。 「まぁ、随分久しぶりだからね。戸惑ってるんでしょ?」 六分儀は横にいるレイを見た。 戸惑ってる・・・ねぇ。 隣のヒカリも余りレイと変わらないことをしている。 視線の先は、横にいるジャージに向いてるが。 このことから導き出される答えは・・・ 「レイちゃんはシンジのことが好きなんだよね。」 「ちょ、ちょっとマナちゃん・・・」 マナにご飯粒を飛ばすレイ。 「嘘じゃないもんね〜。」 「そ、そうかもしれなけど・・・」 「はは、嬉しいよ、レイ。」 ぷしゅ〜っと音が聞こえそうなほど顔を真っ赤にして、レイは俯いてしまった。 それでも箸が止まらないのがレイらしい。・・・というか、スピードアップしている。 「そっかぁ、そういうことか。」 「なんや、どういうことや?」 食欲魔人ジャージバカは食事に夢中で聞いてなかったらしい。 「六分儀とレイはラブラブって事よ。」 「な、なに?そうなんか?こ、この裏切りも〜ん!」 「ちょ、トウジ、裏切りもんて・・・」 女子四人は揃ってため息をつく。 あんたはそばにいる女の子に気づいてないだけじゃない。 ま、鈍感バカにはしょうがないかもしれないけど。 「どうなんや、シンジ。説明せんかい!」 「いや、だから、別に彼女とかそういうことではないんだよ。」 「あらぁ〜、そんなことレイの前で言っていいのかなぁ?」 レイを見たら一目瞭然じゃない。 「さっきも「嬉しいよ」とか言ってたくせに。」 これで両想いじゃないなんて嘘よ。 「好かれるってことは嬉しいことじゃないか。だからってどうして恋人になるのさ?」 「好きって言われて、嬉しいなんて返したら、そういう風にしか考えられないじゃない?」 「そんな、子供っぽいこと言わないでよ。恋愛感情のない「好意」だってあるだろ?」 「だれが、子供っぽいですって?」 「そうやって、すぐに突っかかるところもだよ。」 むっかぁ〜! 「あんたが喧嘩売ってるんでしょうが!」 「僕は朝も言ったけど、事実を述べてるだけだよ。」 「どこが事実だって言うのよ!」 「そうやって怒るのは、図星さされてるからじゃないの?」 「な、な、どこが図星だって言うのよ!」 「ほら、今どもった。」 「くっ!」 きー!むかつく、むかつく、むかつくぅー! 「あんたにあたしのこと、とやかく言われたくないわよ!」 「もうちょっと、人の言うことは素直に聞いた方がいいんじゃないかな。」 「ふん、そんなの人の勝手でしょ!」 「はぁ、君ってほんと、強がりだねぇ。」 はぁ?! 「あ、あんたにあたしの何がわかるっていうのよ!」 「見たまんまじゃないかな?」 くぅ〜、なんかくやしい。 あたしって、やっぱりそう見えるのかしら? 「ちょっと、シンジ。言い過ぎよ。」 ふぅ、マナが助け舟を出してくれたわ。 六分儀シンジ、あなどれないわね。 でも、さっきの・・・懐かしい感じがした。 ・・・そうか、「シンジ」も同じこと言ってたな。 「シンジ」、どうしてるのかな・・・ 「ほら、アスカが落ち込んじゃったじゃないの!せっかく、元気になってたのに。」 マナ、ちょっと落ち込む理由が違うんだけどね。 「あぁ、ごめん。言い過ぎたよ。」 「べ、別に気にしてないわよ。」 そうやって素直に謝られると、困るじゃないのよ。 「ねぇ、アスカ。それよりも早くお弁当食べないと、時間ないわよ?」 「え?あぁ?!」 もうこんな時間? 六分儀のせいで時間、とり過ぎたわ! 「早食いすると太るよ?」 だから、あんたのせいでしょうが! キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン♪ ふぅ、間に合ったわ。 ・・・ヒカリ、いつまで鈴原の顔見てるの? 「ヒカリ!もう、昼休みは終わりよ!」 「・・・え?あ・・・ああ、もうこんな時間。」 はぁ、思い人が近くにいるってことは羨ましいわね。 「シンジ」・・・返事くれないかなぁ。 「ちょっとは元気が出たみたいね。」 放課後、ヒカリが学級委員の仕事を終えて、教室に戻ってきた。 レイとマナは、六分儀と一緒に帰っていった。 どこかに遊びに行くと言っていた。仲がおよろしいことで。 一人で帰るのもつまらないので、あたしはヒカリを待っていた。 「うん。落ち込んでても仕方ないし。」 「そう、そのほうがアスカらしいわ。」 あたしらしい、か。 「で、メール送るんでしょ?」 「あったりまえよ。あいつから返事が来るまで送りつづけてやるんだから。」 「「ふふふ・・・あははははは!」」 あたしとヒカリは顔を見合わせて笑った。 ひとしきり笑い終わると、二人で端末を取り出した。 お互い、見えないようにしてメールを書く。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 名前: アスカ From a_souryu@daiichi.jh.jp To s_ikari@nerv.com まだ、返事出せないの? あたしは・・・寂しいよ。前に言ったよね、「寂しいときは寂しいって言ったほう」がいいって。 素直に言うから。だからお願い、返事ちょうだい。 もし、前に聞いたことで気を悪くしたなら、謝る。ごめんなさい。 シンジがどんな人でもいいの。あたしは・・・あなたと話がしたい。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ピッ! 電子音が響き、メールが送信されていく。 学校でこんな恥ずかしいメール書くなんて・・・ きゃ〜! ちらりとヒカリのほうをうかがってみる。 ・・・こっちは見てないようね。 「返事来るかなぁ。」 「あいつは優しいもの。絶対、いつかは来るわよ。」 「ふふ、アスカったら「シンジ」君のことほんとに好きなのね。」 「そ、そういう意味で言ったわけじゃないわよ。ただ、あいつはそういう奴だから。」 「顔真っ赤にして言い訳しても無駄よ。素直にならなきゃ駄目ね。」 「あぁ〜うぅ〜。」 いつもだったら鈴原のことでヒカリを冷やかしてるのに、これじゃ立場逆転だわ。 「もう、隠さなくってもいいじゃない?今朝だってそう叫んでたんだし。わたしとアスカの仲でしょう?」 「う・・・・・うん・・・・・・」 あ、朝のことは・・・もう言わないでよ〜。 「「シンジ」君のこと好きなんでしょ?」 「うん・・・」 顔が熱い。まるで熱湯を頭からかぶったみたい。 「どういうとこが好きなの?」 「あいつね・・・あたしを見てくれるの、ほんとのあたしを。 わがまま言っても、甘えても、意地悪しても、 なんていうのかな、優しく包み込んでくれてる感じがするの。 メールでやり取りしてるだけなのに、おかしいよね。 でもね、あの言葉の中に彼の暖かさを感じるのよ。 あたしを素直にさせてくれて、落ち着かせてくれて、 あたしを心底、心配してくれて・・・励ましてくれたこともあったわ。 だから・・・だから・・・」 「だから?」 「だから・・・あたしは彼が・・・「シンジ」が好き。 あたしだけを見ていて欲しい。無理なことかもしれないけど。」 「どうして無理だって言うの?」 「だって・・・彼はあの大企業「ネルフ」の社長よ? あたしはただの中学生じゃない。身分が違いすぎるわ。」 「会いたいと思わないの?」 「会いたいわよ!でも・・・ あたしね、前に彼に聞いたの。「あなたがネルフの社長なの?」って。 それからよ、返事が来なくなったのは。 もしかしたら、彼はそれを知られたくなかったのかもしれない。 だけど、あたしは聞いてしまった。 もしかしたら・・・嫌な女と思われてるかもしれない。 ごめんね、ヒカリ。あなたのところにも返事が来なくなっちゃったんだもんね。 あたし・・・取り返しのつかないことしちゃったのかな?」 「ううん、わたしは別に気にしてないから大丈夫。 それよりもアスカ。あなたは身分が違うからって諦めちゃうの? それでいいの?」 「いいわけないじゃない! あたしも最初は諦めようかと思ったわよ。 でも・・でも・・・・諦められないわよ! だって、彼はあたしにとって・・・もう・・・大切な人だから・・・」 あたしはいつのまにか、涙を流していた。 ついさっきまで忘れていた、不安が心によみがえる。 あたしは返事が欲しいのよ! 話がしたいのよ! 彼に会いたいのよ! なのに、なのに・・・ あたしは俯いたまま涙を流した。 教室の床に小さな水溜りが出来ていく。 ヒカリはそんなあたしを、そっと抱きしめてこう言ってくれた。 「大丈夫よ、アスカ。 だって、アスカが好きになった人でしょ? だったら、とても素敵な人に違いないわ。 わたしの悩みも聞いてくれたしね。 ちゃんと返事は来るわ。 そうしたら・・・会ってもらえるよう、頼んでみたら?」 「・・・会ってくれるかな?」 「もちろんよ! アスカは、自分の好きな人を信用できないの?」 「そんなことはないけど・・・」 「それなら、ここで落ち込んでてもしょうがないでしょ? 「シンジ」君を信用して、返事を待ちましょう。」 ヒカリ・・・ 「・・・ありがとう。」 「ふふ、わたしたちは友達でしょ?困ったときはお互い様よ。」 あたしがここまで自分の話を他人にするのは初めてだったと思う。 「シンジ」、を除いて。 良かった。こんなにいい友達がいて。 そういえば、彼が言ってたな・・・”強がりすぎると友達なくす”って。 たまには、こういう風に友達に洗いざらい話すのも悪くないかも。 「ねぇ・・・ヒカリ。」 「なぁに?」 「・・・また、話、聞いてくれる?」 「もちろんよ。私も困ったときにはアスカに相談するから。」 「うん。」 なんかすっきりした。 心のもやもやが、少し晴れた気がする。 「一つ聞いてもいい?」 「いいわよ?」 「ヒカリもさ・・・鈴原のこと信用してるの?」 「そうね。彼も優しいし、いざっていうときには頼もしく感じるし。信用、してると思うわ。」 ヒカリはいつものようにどもらず、はっきりと答えていた。 ・・・いいな。 「ヒカリが羨ましい。鈴原は手の届くところにいるもんね。」 「手の届くところにいたって、何もしなければしょうがないわ。 あたしには、どうにかしようっていう、そんな勇気ないもの。」 勇気、か。 あたしにはあるのかな?そんな勇気。 ・・・駄目ね、今のままじゃ。 「ヒカリは・・・いつか鈴原に告白するの?」 「さぁ、それはわからないわ。 でもね、「シンジ」君がこう言ってくれたの。 ”強い想いは、必ず通じる。だから、その時まで今の気持ちを忘れないで。”って。 だから、今は待つことにする。いつか、鈴原が気づいてくれるまでね。」 「想いは通じる、か・・・」 いつも彼の言葉には感心しちゃうわ。 あたしの想いも届くかしら? 「ほら、顔を洗ってこないと目が真っ赤よ?」 うっ・・・なんか急に恥ずかしくなってきたわ。 人前で泣いたのなんて、何年ぶりかしら? 「かばんは私が持っていってあげる。昇降口で待ってるから。」 「うん。ありがとう。」 「くすくす、今日のアスカはなんか素直ね。」 「だ、だって・・・ヒカリが優しいのがいけないのよ。」 「はいはい、お世辞を言っても何も出てこないわよ。さ、行きましょう?」 ヒカリに促されて、教室から出て行く。 あたしは洗面所で顔を洗い、その後はいつものようにくだらない話をして家路についた。 はぁ〜、ヒカリには恥ずかしいところ見せちゃったわね。 でも、ほんとすっきりしたわ。ヒカリに大感謝って感じね。 そんなことを考えながら、もはや習慣化してしまったメールの確認をする。 ピッ! ・・・メールの着信音?! まさかと思い、震える指でメールを開く。 そこには・・・ −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 名前: シンジ From s_ikari@nerv.com To a_souryu@daiichi.jh.jp 返事、遅くなってごめん。 なんか寂しい想いをさせちゃったみたいだね。ほんとにごめん。 質問の答えだけど・・・・答えは「YES」。 どうせ、週刊誌か何かに載ってたんでしょ? そのおかげで、ちょっとごたごたに巻き込まれちゃったんだ。 それと、聞かれたことについては気にしてないから、謝らなくてもいいよ。 その代わり、この先、今まで通り返事をすぐ返せるかわからないんだ。 それと・・・あまり他人行儀なのはやめてくれないかな? 僕にはそれが一番辛いんだ。 どうか、いつまでも良きメル友でいてほしい。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 気がつけば、濡れている頬。 今日、二回目の涙は・・・・喜びの涙だった。 <続> ======================================== あとがき ども、ちょ〜さんです。 アスカの独白・・・書き終わったときには「ほぇ〜」となってしまいました。 しかも、今回は一切校正無し。(誤字・脱字も無かったと思う。) 自分でも「よく書けたなぁ。」と、誉めてしまいました。まさに、全力投球。 おかげで、次の日遅刻するし。(笑) 前に、「八話で終わる」とか言ってたのに、気づいてみたら、もう六話。 ・・・終わらんなぁ。(汗) あまり引っ張るのもなんですけど・・・最後まで読んでください。m(_ _)m ではでは、また続きでお会いしましょう! ========================================


アスカ:やったーーーーっ! シンジからメールが帰って来たわっ!

マナ:しばらくメールできないってどういうことかしら?

アスカ:きっと、忙しいのよ。こないだのメールで、嫌われたかと思ったもんねぇ。

マナ:あのメールで嫌われたわけないでしょ。

アスカ:そうよね。(^^v

マナ:最初っから、嫌われてるのよ。

アスカ:ぬわんですってーーーーーっ!!!(ーー#

マナ:でも、メールのシンジとなかなか出会えないわねぇ。

アスカ:そのうち、劇的な出会いを遂げるのよっ!

マナ:メールで?

アスカ:実際に会うに決まってんでしょうがっ!
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