思いは永久に…。                      作.CYOUKAI
 
第1話 勘違いと思い込み


 西暦2017年『使徒』と呼ばれる未知の敵との最後の戦いから
1年と言う時間が経っていた。
 サードインパクトの際、その中心にいたシンジは、アスカ達との共存を望み、
再構築された世界は、シンジの望む理想の世界になっていた。
 ネルフは人類の危機を救った救世主となっていたし、当然シンジ達パイロットも
英雄のように扱われていた。
 学校は程なく再開され、僕達も無事に進級していた。
 一年遅れだったけどね。
 そして、卒業も押し迫った2月に、シンジは自分でも信じられない行動を採る事になった。
 その日の朝も、いつもと変わりなく始った。







 「よしっと。」
 僕は、弁当箱に最後のおかずをいれて、そう呟いた。
 「朝食の準備もよしっと。」
 キッチンから出てテーブルの上を確認すると、僕は時計を見た。
 「時間は七時、そろそろアスカを起こさなくちゃな。」
 あれ以来、僕はずっとアスカを見ていた。
 本当はずっと前からアスカの事を考えると、胸が苦しくなって眠っかったんだ。
 ユニゾンの練習のときもそうだったし、アスカがシャワーからあがって薄着のときなんか、
本当に夜が寝苦しかったんだよ。
 「アスカ〜。もうそろそろ起きないと、遅刻しちゃうよ。」
 「・・・・・・・・・・・・・・・。」
 部屋の中からは返答が無い。
 いつものことだけどね。
 だから、もう一度、今度は少し大きめの声で、
 「アスカ〜!お風呂にも入るんでしょ〜!早く起きてよ〜!」
 すると中から
 「うぅぅぅぅん、今起きるわ〜。」
 と、返事が聞こえる。
 これで、起きるとしたら今日は傘が必要になるな、なんて考えながら3分ほど待つ。
 起きてこない・・・。
 「はぁぁぁ。アスカ。入るよ。」
 ため息が出た。
 これは、ほぼ毎日の行事みたいなものなんだけど、アスカは部屋の外から声を掛けても
ほとんど起きない。
 だから、毎朝僕は部屋の中に入って行くんだ。
 そうしないと起きないから。
 「アスカ、朝だよ。起きてよ。遅刻するよ。」
 アスカの肩をゆすりながら僕は声を掛ける。
 「うぅぅぅぅん。もう朝・・・・・って、なんでアンタがここにいるのよ。」
 「なんでって、アスカが起きないからだろ。」
 と言いつつ、アスカの寝姿に視線をおろすと、
 「キャー、エッチ・痴漢・変態・信じらんない!!」
 天まで届きそうな大きな声と
 『バチ〜ン』
 と言うビンタの音。
 毎朝これじゃたまんないよな。
 僕だって男なんだから、そりゃぁ興味はあるし・・・・。
 なんて事を考える暇は無い。
 早く退散せねば、もっと大変な事になるからね。
 「早く、お風呂には言って、ご飯食べてよね。」
 それだけ言い残すと僕はアスカの部屋を出た。
 それからしばらくして、アスカが風呂へ入り、僕は一人で朝食を採り始めた。
 「全く、デリカシーってものが無いのよアンタは!」
 テーブルに着いたアスカの第一声はこれである。
 “そんなことなら、自分で早く起きればいいのに”とは、心で思っても口にはしない。
 今日は、あまりアスカの機嫌を損ねたくないんだ。
 僕は、一生で一度きりになるかもしれない大事業を果たさなければならないから。
 だから
 「ごめん。」
 と、一言あやまる。
 「わかればいいのよ、わかれば。」
 そう言ってふんぞり返るアスカを見ながら、僕はキッチンへ食器をさげた。
 結局、また今朝も遅刻ぎりぎり、走って登校する羽目になった。
 「なにやってんよ!バカシンジ!!」
 走りながら、アスカはいつも僕にそう言う。
 「アンタがグズグズしてるから、こんな事になるんでしょ!」
 「わかったから、待ってよアスカ〜」
 走りながらそう答えたけど、僕の頭の中は今日の事でいっぱい。
 なんたって僕は、アスカに今日『告白』使用と思っているから。




 何とか遅刻せずに教室に滑り込んだ僕は、早速自分の机の上の端末からアスカに、
 『今日のお昼休みに、体育館の裏に来てください。大事なお話があります。シンジ』
 ってメールを送った。
 まだ、委員長と話しているアスカは気がつかないけど、一時間目には気がつくはずだ。
 朝のホームルームが終わり、一時間目の授業が始まると、アスカはすぐにメールに気がついたようで、
僕の方に目を向けてきた。
 どうやら、大丈夫みたいだ。
 それからの授業は、なにをやったのか覚えていない。
 それぐらい僕は緊張した。
 「受けてもらえなかったらどうしよう。」
 そんな不安が無かったわけでもないけど、ここは気合をいれなければ。
 休み時間になると親友のケンスケとトウジが話しかけてきたけど、そんな事も上の空だった。
 「何や、センセ、ワシらの話聞いとるんか?」
 「え?何だっけ。」
 「はぁ、聞いてないよ。だから、シンジと惣流が同じ高校に合格したからいいけど、俺達卒業したら別々に
なるんだよな。って話をしてたんだよ。」
 「あ、ああ。そうだったね。でも、同じ町に住んでるんだし、いずれ別れ別れになるんだし、
気にする事無いんじゃないの。それに、離れ離れになっても、僕達友達だろ。」
 「ようゆうた、それでこそセンセや。」
 「それよりシンジ、さっきから惣流の方をちらちら見てたけど、また喧嘩でもしたのか。」
 「え?」
 「そりゃアカン、夫婦喧嘩もほどほどにせんとな。」
 「そ、そんなんじゃないよ。」
 「そうか?」
 「それならいいけどな。」
 二人とも変な顔して僕を見てる。
 きっと、また顔が赤くなってるんじゃないかな。
 「とにかく、なんでもないって。」
 僕がそういったとき、ちょうどチャイムが鳴った。
 二時間目、三時間目も身が入らず、四時間目なんてずっと窓の外を見てたら先生に指されて大変だった。
 四時間目の終了のチャイムが鳴ると、すぐに二人が
 「センセ、いつものところでメシにしよか。」
 って来たんだけど、
 「ごめん、今日は大事な用事があるから。先に行ってて。」
 と言い、僕は教室を出た。
 目指すは体育館裏、アスカにこの思いをしっかり伝えるんだ。
 そう思うと、なぜか足早になってた。
 体育館裏につくと、アスカはもう待ってた。
 「なによ、アンタが呼び出すなんて」
 「ウン、ごめんね。」 
 「いいから、早くその大事な用事とやらを言いなさいよ。ヒカリたちが待ってるんだから。」
 「ウン。」
 「で、何なの。」
 「あのね、アスカ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
 「何よ!!」
 「僕、ずっと言いたい事があったんだ。」
 「だから何なの。」
 「僕は。僕は。・・・・・・」
 はぁぁ、やっぱり緊張するよ。
 「早くしなさい、男でしょ!!」
 「僕は、惣流・アスカ・レングレーをはじめて逢ったあのときから大好きになっていました。
 僕と付き合ってください。」
 「な、な、な、な、何をいきなり言い出すの!!」
 「だ、だめかな。」
 やっぱりだめなんだ、アスカは加持さんみたいな、大人じゃないと。
 僕見たな優柔不断な男じゃだめなんだ。
 「即答しかねるわ、今日の放課後四時に此処に来なさい。それまでに考えて置くわ。」
 アスカは、顔を赤くしながらそう言った。
 怒ってるのかなぁ。
 やっぱり、僕みたいのじゃだめだよね。
 「アタシ、もう行くわよ。」
 「ウン。」
 そう言って戻りかけたアスカが、また振り向いて、
 「今日の四時よ!忘れないでね!!」
 と念を押して戻って行った。
 それからしばらくは気が重くて、教室に戻ってからトウジたちのところには行かなかった。
 だから、午後の授業は午前中以上に身が入らなかったんだ。



 ホームルームが終わり、僕は足取りも重く体育館裏へと向かった。
 体育館裏に出ようとした時、人の気配を感じて思わず物陰に隠れてしまった。
 「あっ、アスカだ。一緒にいるのは誰だろう。」
 そう言って様子を伺っていると、
 「ハイ、これ受け取ってくれるわよね。」
 良く聞こえないけど、あれはラブレターじゃない?
 そうか、アスカはこれを見せたかったんだ。
 僕にあきらめろと暗に言ってるんだね。
 わかったよ、アスカ。
 君の気持ちが。
 そして、僕はその場を立ち去った。








 午後四時、体育館裏でシンジを待つアスカがいる。
 「おっそーい。シンジのやつ何やってんのよ。」
 さっき、後輩を使って返事の手紙を渡す練習も終わったし、アタシの準備は完璧よ。
 これを、シンジに渡して、すぐに読ませるのよ。
 そして
 「これが、アタシの気持ち。」
 そうすると、それを読んだシンジが、
 「アスカ、うれしいよ。」
 って言ってアタシを抱きしめるの。
 そこで、駄目押し、
 「アンタの言葉を待ってたんだから。」
 って少し涙目でシンジに言うの、
 そうしたら、
 「アスカ、愛してるよ」
 なんて言って、そのあと二人は・・・・・・・・・。
 「キャー!恥ずかしいわ。」
 一人顔を赤くしたり白くしたり(?)しているアスカ。
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 「それにしても遅いわ。何やってんのよ!!」
 アタシを待たせるなんて上等じゃない。
 「バカシンジ!!早く来〜い!!」
 





 それから、一時間待ったがシンジは来なかった。
 校門の前でレイとあったアスカが、
 「ファースト、シンジ見なかった。」
 「見たわ。」 
 「いつ、どこで。」 
 「さっき、泣きながら走って行った。」
 「なんで!!」
 「知らないわ。」
 「あ、あ、あいつ、アタシを待ちぼうけさせて、何様のつもりなの!!」
 「あなた、碇君をいじめたのね。」
 「そんな事するわけないでしょ。」
 「でも、思いつめてた。」
 ちょうどその時、シンジとアスカの保護者でもある葛城ミサトから電話が入った。
 「ミサト、どうしたの?悪いけどアタシ、今アンタの相手してる場合じゃないのよ。」
 そう言って携帯を切ろうとしたとき、
 「アスカ、大変!シンジ君がいなくなった。」
 「えぇぇぇぇぇぇ〜!!」
 どういうことよ。
 「詳しくは本部で聞くから、とりあえずはこっちに来て。」
 「わかったわ。」
 「それと、レイも一緒に来てもらって。」
 「だ、そうよ。ファースト、急いで本部へ行くわよ!!」
 「碇君に何かあったの?」
 「いいから、来る!!」
 そう言ってアスカは掛けだしていた。














 アスカの告白(?)を目撃したシンジは、その時第三新東京市の外れにいた。
 「はぁ、アスカに好きな人がいたなんて。」
 もともとマイナス思考が激しいシンジである、そこへ衝撃的なシーンを見てしまったのだから、
思考はダークになるばかり。
 「もう、家へは帰れないな。」
 いつかのように、逃避行へと進んで行った。





 僕は、命を掛けて告白したんだ。
 もともと内向的な僕が、アスカと出会って人との絆の大切さを知った。
 そして、好意から恋へ変わったこの気持ちを、アスカに伝えようよ思ったんだ。
 でも、
 「直接断られるより、効いたな。」
 どこか遠くへ行きたい。
 人のいないところへ。
 


 そのころネルフ司令室では、一部始終をモニタしていた。
 「碇、シンジ君は勘違いをした様だぞ。」
 「問題ない。」
 「碇、諜報部がシンジ君をロストしたようだ。」
 「問題ない。」
 “自分の息子が失踪したと言うのに、何だこの余裕は?”と冬月は思った。
 「恋愛には少々の障害があった方がいい。」
 おなじみの姿勢で、話すゲンドウ。
 「お前、諜報部にはロストしたふりをさせていると言うのか?」
 「そう言うことだ。」
 「それにしても、シンジ君も変わったな。」
 「人間は成長する。お前だってそうだろう・・・・。」
 「ああ、そうだな。」
 冬月は、チルドレン達を孫のように思っていた。
 それゆえ、シンジの成長がうれしかったのであろう。
 少々涙ぐんでいる。
 「お前も年だな。」
 「何を言う。それより碇、お前は成長したのか。」
 目を伏せるゲンドウに、冬月はたずねた。
 「ユイは諦めました。」
 「そうか。」
 二人は、遠くを見ていた。




 シンジ失踪から二時間、第二新東京駅でたたずむシンジに、声を掛ける娘がいた。
 「あれ〜?もしかして碇シンジ君?」


 

 不意に声を掛けるから、諜報部の人に見つかったと思ったら、
 そこには、
 「霧島さん?」
 がいた。
 「やっぱりそうだ。シンジ君だ。どうしたのこんな所で。」
 彼女は、サードインパクトの前に死んだはずの『霧島マナ』。
 このとき僕が彼女に出会ったのは、幸運以外の何者でもなかった。
 「ちょっとつらい事があってね。逃げてきたんだ。」
 「なんか込み入ってそうね。」
 そう言って彼女は、少し考えていた。
 きっと、このとき僕が霧島さんに会わなければ、昔の僕に戻ってしまっていた様な気がする。
 知らない街で彼女に出会ったのは、それくらい嬉しかった。
 「そうだ、私の家においでよ。そこでシンジ君の悩みを聞いてあげる。」
 「え?」
 「私、今一人暮らしをしているの。この近くよ。だから、そこへご招待してあげる。」
 僕は少し迷ったけど、誰かに話を聞いて欲しかったし、野宿する気も無かったから、その申し出を受ける事にした。
 「ありがとう。霧島さん。」
 「やだなぁ。そんな他人行儀にしないでよ。私の事はマナって呼んで。」
 「ありがとう。マナ。」
 「ウン。じゃあ行こうか。」
 こうして僕は、マナの家に行く事になった。




 





次回予告 
     なぜシンジが失踪したのか解らないアスカ。
     その時の自分の行動をミサトに語る。
     一方、一人で勘違いをする傷心のシンジは
     駅で出会ったマナにすべてを打ち明けるため
     彼女の家に行く事になったシンジ。
     二人はそこで一夜を過ごす。
     そこへ、なぜかかかって来る一本の電話
     なぜ、ここが知れたのか。
     戸惑う二人に電話の主が語った事とは、
     と言うわけで次回「誤解・氷解」
       ご期待ください。










あとがき  
   どうも『CYOUKAI』です。
   自分が考えるストーリーを一本の物語にするのは、
   本当に難しいです。
   全く、文章にまとまりがでませんねぇ。
   タームさん達諸先輩方は、凄い!!
   今回は、アスカさんが、シンジ君の告白の答えを
   練習した事が発端です。
   そこの描写が、全然うまくいってないです。
   今の私の作文能力ではこれぐらいだと思います。(もっと、勉強せねば。)
   次も、一生懸命書きますので、よろしくお願いします。


アスカ:いやぁぁっ! いきなり、大変なことになってるじゃない。

マナ:いい感じなんじゃない? 傷心のシンジを、わたしが慰めてあげるの。

アスカ:なにが傷心よ。おもいっきり誤解じゃないのっ!

マナ:五階も六階もないわっ!

アスカ:それ、アンタのネタじゃないでしょうがっ!

マナ:なんでもいいのっ! シンジは貰ったぁぁっ!

アスカ:やばいわっ! とっても、やばい展開だわぁぁぁぁっ!
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