作者注&謝罪(笑):プロローグにおいて、『碇ケンジ』君が母アスカを『五十過ぎ』と口にしていますが、
          『四十過ぎ』の誤りです。
          ここに訂正をしてお詫びをさせて頂きます。
          それでは、本編をどうぞ。
  


 「ねえねえ、その『霧島マナ』って言う人、私と同じ名前だよねぇ。どう言う事?」
 「まあまあ焦らずに、話の先を聞けば解るからさ。」
 「じゃあ、パパ、早く先に進めてよ。」
 「解った。ところでどこまで話したかなぁ?」
 「だから、その霧島さんが後2週間の命ってところまでだよ。」
 「そうか。そう、あの時マナはハッキリそう言ったんだ。」









 第3話  死。胸に秘めた思いとともに。


 「一人にしないで。私、あと2週間しか生きていられないの!!」
 その言葉は、衝撃的だった。
 “あと2週間だって、どういうことなんだ?”
 僕の思考は停止寸前だった。

 僕はマナを落ち着かせると、ゆっくりと優しく彼女に話しかけた。

 「後2週間って、どう言う事?」
 涙で腫らした目をこすりながら、マナは小さな声で話し始めた。
 サードインパクトの後、気が付くと戦自の少年兵専用女子寮に居た事。
 その後、基地内の探索をしている際に、訓練用で廃棄処分を待っていた科学兵器が何者かの手によって
流失させられたこと。
 それが、狂気に狂った戦自の司令官によって引き起こされたこと。
 基地外への流出を防ぐために、防護服も着ないまま作業に当たっていた事。
 そして、そこに居た全員が不治の死病の罹っていたこと。
 今までに多くの仲間が死んで言った事。
 そして昨日、偶然にも自分の余命を聞いてしまった事。
 マナは、途切れ途切れに僕に話してくれた。
 さっき聞いた事と微妙にニュアンスが変わっていた。
 おそらく、こちらが真実であろう。
 「だから、私に最後の思いでを頂戴。それと、嘘を付いてゴメン。一応私にも守秘義務があるから。」
 最後にそう言って、マナは話を締めくくった。
 そこまで聞いて、僕は自分の思考を整理しきれなくなっていた。
 「何で、マナが?」
 おそらく僕達チルドレンより厳しい環境で生活していたであろうマナたち少年兵。
 そして、その多くが大人達のエゴの産物によって死に追いやられている。
 僕は抑えようの無い怒を覚えていた。
 「ねぇ、一緒に居てくれるよね。」
 それは、おそらく彼女最後の願いだろう。
 僕はアスカへの思いとの間で葛藤を続けていた。
 しばしの沈黙。
 僕はおもむろに立ち上がると、受話器を取った。
 「どこへ電話するの?」
 「ミサトさんに。」
 そう言いながら、僕はボタンを押していた。












 ピピピピピピッ、ピピピピピピッ、ピピピピピピッ。
 
 車の中で寝入ってしまったミサトは、自分の携帯が鳴る音で目を覚ましていた。
 
 ピピピピピピッ、ピピピピピピッ、ピピピピピピッ、ポチッ。
 
 「はい、葛城です。あっ、シンジ君?」
 ミサトは、数時間前に「しばらく考えさせてくれ」と言ったシンジの電話に、
少し驚いていた。
 「で、考えはまとまったの?」
 自分でも驚くほどに優しい口調で尋ねている事に、ミサトは少し戸惑った。
 「えっ?3週間待ってくれ?それってどう言う事なの!!」
 ミサトは自分が今聞いた事が信じられないと言うように、声を荒らげ体を起こす。
 彼女の読みでは、誤解が解ければシンジは帰って来るはずであった。
 
 「・・・・・・・・・・・・」
 「うん・・・・、うん・・・・、解ったわ。」
 しばらくの会話の後に、彼女はそう言った。
 「シンジ君にも何か考えがあるんだろうから・・・・・・。
 でもね、アスカがさびしい思いをしている事は、忘れちゃダメよ。それと、体には気をつけてね。」
 そう言う彼女の顔は、聖母のように優しかった。








 「解ってます。はい、じゃあよろしくお願いします。」
 僕はそう言うと受話器を下ろした。
 「マナ、もう少し僕に時間をくれるって。」
 「?」
 「もうしばらく僕は自由の身だと言うことだよ。」
 僕がそう言うと、マナの表情に笑顔が戻った。
 「じゃあ私、朝ごはんの準備をしてくるね。」
 「うん、よろしく。」
 そう言いながら、“誰かが作ってくれる朝ごはんってしばらくぶりだなぁ”と、思っていた。
 しかし、そう思うと次に出てくるのは、“アスカとミサトさん大丈夫かなぁ”と言う不安だった。
 30分ほどして、マナが朝ごはんを運んできた。
 軽めの食事を期待していた僕は、その手の込んだ料理に驚いていた。
 焼き魚をメインに、おひたし、お新香、納豆、味噌汁。
 とても短時間でこなすのは難しい。
 それを二人分、30分でこなしてしまった彼女は、意外に家事の才能が有るのかもしれないと思った。
 「ねぇ、シンジ君。私のお願い聞いてくれる?」
 マナは恥ずかしそうに手にした箸でご飯をつつきながら、そう聞いてきた。
 「何をして欲しいの?」
 僕は、彼女の最後になるであろう願いを聞いてあげようと思った。
 「うん。かりそめでも良いの、同情でも良いの、私を恋人にしてくれないかなぁ。」
 思わず、ドキッとした。
 当然だ。
 予想していなかった事だったから。
 「・・・・・・・・・・・・・・・。」
 僕は思わず沈黙してしまった。
 「ダメかなぁ。」
 いつの間にか僕を見つめていたマナが悲しそうな目をした。
 その目を見てしまった僕は、
 「いいよ、そうしてあげる。」 
 と言っていた。
 心の中で、“アスカ、ゴメン”と謝罪しながら。
 「アリガト。」
 そういったマナの目は優しかった。
 そんな経緯で僕とマナの共同生活が始まった。












 あれから4日、シンジは帰ってこない。
 学校へはミサトが、
 「ネルフで、どうしても外せない実験があるので3週間ほど休みます。」 
 と、連絡していた。
 シンジが休んでいるだけで、後は変わらない学校生活。
 3バカの二人も、
 「なんや、センセも大変やな。」
 とか、
 「俺も公務で休んで見たいよ。」
 とか言っていた。
 事実を知らないのだから責めてもしょうがない。
 ただ、ヒカリだけが、
 「碇君、どうしたの?恋人が寂しい思いをしているのに。」
 と、あたしの事を気遣ってくれていた。
 アタシにとって、シンジが居なければ何も意味を持たない授業。
 一日が終わる。
 途中までヒカリと一緒だったが、今は別れて一人で歩いている。
 「あ〜あ。やっとシンジが告白してくれたのに、アタシは何をやっているんだろう。」
 独白だ。
 こんな時、自分の臆病さがイヤになる。
 何でもっと素直になれなかったのだろう。
 何であんな事をしたのだろう。
 後悔後に立たずって所か。
 そんな事を考えながらさびしく歩く私の後ろから、
 「惣流、ちょっといいか。」
 と、相田が声を掛けてきた。
 アタシは少し驚いた。
 考え事をしていて、コイツの接近を感知できなかったなんて、不覚だわ。
 「何よ!」
 「まぁまぁ。実はこの写真を見てくれ。」
 そう言って差し出した写真には、
 「コレって、シンジ?」
 「そう見えるだろ。それと、この隣の女の子。見覚え無いか?」
 そう言って指差すところには、栗色のショートカットの娘が写っていた。
 「コレは・・・・・霧島マナ?」
 アタシは愕然としていた。
 そこに写って居たのは、シンジと腕を組みジュースを飲んでいるマナの姿があった。
 「アンタ、コレどこで撮ったのよ!!」
 そう言ってアタシは相田に詰め寄った。
 「お、おい。怖い顔するなよ。」
 「いいからさっさと答える!!」
 「ああ。これ、昨日第3新東京の外れにある公園で撮ったんだ。」
 「何でアンタがそこに居たのよ!」
 「実はこの前、新しいカメラを買ったから慣らし運転ってわけで、昨日の放課後そこへ行ったんだ。」
 「それで?」
 「偶然、いい感じのカップルが居たからカメラを向けたら、シンジとこの子だったんだ。」
 “なんで、コイツがシンジと一緒に居るのよ”
 “シンジと腕を組むのはあたしじゃないの?”
 “浮気・・・・・、とは違うか。シンジにアタシの気持ちはまだ伝わっていないんだから”
 「おい、惣流。大丈夫か?」
 顔を上げると視界が歪んでいた。
 “あれ、アタシ泣いてるの?”
 そう思うと、相田から写真を奪い取り、アタシは家に向かって走り出していた。
 家に付くと、アタシはすぐに部屋へ駆け込みベッドに体を投げ出した。
 頭の中では“どうして?”と言う言葉と“シンジはもうアタシを見てくれないんだ”と言う絶望が駆け巡っていた。




 

 そして、アタシはまた心を閉ざした。
 





 あれから一週間。
 僕達は、いろんな所へ遊びに出かけた。
 公園、遊園地、動物園、海、山。
 おそらく、周りから見ても僕達は恋人同士に見えただろう。
 楽しく無いと言ったら嘘になる。
 事実、楽しかった。
 しかし、どこへ言っても付いて回る“アスカと一緒だったらもっと楽しいだろうなぁ”と言う思い。
 それを、顔に出してマナに気づかれないようにするのが大変だった。
 そして、今日も一日が終わり、僕とマナは布団に入った。
 同じ布団と言うわけでは無い。
 僕は初日からずっと、ソファーで寝ていた。
 マナは、
 「恋人同士なんだから、一緒に寝よう。」
 と言ってくれたが、アスカの事を考えるとそれは出来なかった。
 そして、それは突然訪れた。
 マナの様子を気にしながら、なんとなく寝付けなかった。
 僕はまだ、夢と現実の狭間に居た。
 不意にマナが体を起こしたようだった。
 そして、部屋を出た。
 “トイレかな?”
 しばらくして、玄関のドアが開く音が
 カチャ。
 と、聞こえた。
 “こんな時間にどこへ行くのだろう?”
 そう、思って僕は体を起こした。

 
 リビングへ行くと、やはりマナは外出したようだった。
 しばらく、ボーっとしていると、外の廊下を走る、
 バタバタバタバタ。
 と言う音が聞こえてきた。
 そして、無造作に開くドアの音。
 そこには息を切らせたマナが立っていた。
 肩で息をしながらマナは、
 「シンジ君、逃げて!!」
 と言った。
 僕は意味がわからなかった。
 「何で?」
 とぼけた答え方をする。
 「いいから、こっちに来て。」
 言われるがまま、玄関に向かうと、
 「戦自が、シンジ君を拉致しようとしているの、だから逃げて!!」
 と、マナが話した。
 「でも、マナはどうするの?」
 「私は、残ってここで奴等を足止めするから。」
 そう言うマナの顔は、心なしか青ざめていた。
 病気のマナを残して逃げる事は僕には出来なかった。
 だから、
 「だめだ!!一緒に逃げよう!!」
 そう言って、マナの手を取ると走り出した。



 シンジ達が逃げ去り、もぬけのからとなった部屋に上がりこんできた男が
 「おい、サードチルドレンが逃げたぞ!霧島が裏切った!!」
 背後にいた黒い特殊部隊用の服を着た男達にそう叫んでいた。
 「そう遠くへは言って居ないはずだ、周辺を捜索しろ。」 
 「霧島は射殺してもかまわん。」
 「サードには手を出すな。ネルフへの人質となる。」
 男達はそう言って部屋を後にした。

 
 
 部屋を逃げた僕達は、近くの公園の茂みの中に居た。
 「しばらくここで様子を見よう。」
 そう言ってここには言ったのは、今考えると間違いだったのかも知れ無い。
 「この公園の中も捜索しろ!!」
 近くで、そんな声がした。
 ここまで走ってきた僕達の息は荒かった。
 人の気配が近くに来ていた。
 「ハァ、ハァ、ハァ。」
 マナの息が荒い。
 さらに、その顔を見ると、とてもつらそうだった。
 僕は、自分の元気を少しでも与えようと咄嗟に、彼女の唇を自分の唇で覆った。
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ」
 その行為が、マナに小さな呻き声を上げさせた。
 「誰か居るのか!!」
 僕達の隠れる茂みの中へ、銃を持った男が入ってきた。
 「クッ!」
 僕は、腹に力を入れると、そいつに脚払いを食らわせた。
 突然の事で無警戒だったその男は脚をすくわれ、地面に倒れた。
 直後。
 「マナ、走って!!」
 そう言って僕達は立ち上がり駆けだした。
 「居たぞ!!」
 男はそう叫んで仲間を呼び寄せた。
 「かまわん、撃て!!ただし、サードは殺すな!!」
 背後から容赦なく注がれる銃弾。
 僕達は、ジグザグに走りながらその照準を逸らした。
 そして、公園の出口まで後一歩と言うところで、
 「きゃぁぁぁぁ!!」
 マナの体が突然倒れた。
 その背中を見ると、わき腹の当たりから血が吹き出ていた。
 「シン・・ジ・・くん。にげて・・・・・。」
 そう言ってマナは動かなくなった。
 「マナ?返事をしてよ。マナァァァァァ!!」
 マナを抱き上げ絶叫する僕のもとへ、男達が集まってきた。
 「君個人にはうらみは無いが、おとなしくして貰おう。」
 「貴様、よくもマナを!!」
 僕は、目の前にいた男に殴りかかった。
 しかし、その手は届くことなく、僕の意識は途絶えた。





 目を覚ましたとき、僕は病院らしい所のベッドに寝ていた。
 その傍らには、綾波とアスカが居た。
 「目を覚ましたのね。」
 綾波が、そう言った。
 「僕はどうしてここに?」
 「諜報部の人が間一髪の所であなたを助け出したの。」
 「そうなんだ・・・・・・・・。あっ、マナは?マナはどうしたの?」
 「あの娘なら、隣の部屋に居るわ。」
 このとき僕は、マナの事でいっぱいで、アスカの以上に気が付かなかった。
 「生きてるんだ。」
 「そうよ、だからあなたは休んで。早く回復して。」
 そう言う綾波の言葉は、悲しみを押し殺すというか、そんな感じがした。
 

 それから2日後、僕に退院許可が下りた。
 その僕を迎えに来たミサトさんから、
 「シンジ君、無事で良かったわ。でもね、アスカが・・・・・・。」
 そこで、ミサトさんは言葉を切った。
 「ミサトさん。アスカがどうしたんです?」
 そう言う僕に、ミサトさんは悲しそうな目をして、
 「アスカがまた心を閉ざしてしまったわ・・・・・・。」
 と言った。
 原因はすぐにわかった。
 “僕のせいだ”
 「家に帰ったら、話をしてみます。きっと、ちゃんと話せばアスカだって解ってくれます。」






 そう言った僕には、言葉ほどの自信が無かった。

 家に帰ると、僕はアスカの部屋の前に立って今日までの事を全部話した。
 そして、アスカのために一生懸命に家事をした。
 外出にも誘った。
 しかし、2週間経ってもアスカは心を開いてくれなかった。
 “もう、アスカとは話が出来ないんじゃ無いか。”
 “アスカと喧嘩も出来なくなる。”
 “そんなのイヤだ!!”
 僕の頭の中にネガティブな考えが浮かんでいた。
 そして、卒業も押し迫ったあの日。
 僕は、耐えられなくなってミサトさんに
 「もう、アスカはもとに戻らないんでしょうか?」
 と、相談した。
 「そんなこと無いわ。アスカ、シンジ君が入院したって聞いた時、少しだけど動揺したの。
  だから、根気強くシンジ君が愛情を注げばきっともとのアスカに戻ってくれる。」
 「そうですね。」
 「そう。だから頑張って。」
 「ハイ。頑張ります。僕が一番愛しているアスカをもとに戻して見せます。」
 その言葉を聞くと、
 「あ〜らシンちゃん、一番愛してるアスかですって〜?おね〜さん、うれしいわ〜。」
 と、いつもの口調に戻っていた。
 だから僕もいつもの様に 
 「茶化さないで下さい!!」
 と、言った。 
 僕の心が晴れて行くのが解った。
 「そうだ、マナちゃんのお見舞いに行こうか?」
 そういったのは、ミサトさんだった。
 「はい、そうします。」
 僕は素直に従った。
 「じゃあ、いきましょうか。」
 ミサトさんに促され、僕とミサトさんはマンションを後にした。
 
 廊下を2ブロックほど歩くと、マナの病室があった。
 しかし、その病室の前では、医師や看護婦達が慌しく動いていた。
 僕とミサトさんが駆け寄り、
 「何かあったの!!」
 と、ミサトさんが尋ねると。
 「あっ、ミサト!!それに、シンジ君!!」
 病室から出てきたリツコさんがあわてた口調で声を掛けてきた。
 「どうしたんです!マナに何かあったんですか!!」
 僕が詰め寄ると、
 「今朝方、容態が急変したのよ。もう、長くは無いわ。」
 「!!」
 文字通り絶句する。
 「意識はまだあるし、シンジ君とアスカに話があるそうよ。最後になるかも知れ無いから、行ってあげて。」
 「じゃあ、ワタシはアスカを連れてくるわ!!」
 ミサトさんは言うが早いか駆け出していた。
 「それじゃあ、シンジ君は先に。」
 リツコさんはそう言うと、僕を部屋の中へ連れて行った。


 「マナ、聞こえる?」
 胸と腕にコードをつけられたマナの側に寄って、僕は声を掛けた。
 そっと目を開け、マナは、
 「シンジ君、今までありがとう。」
 と、弱々しく声を出した。
 「何を言ってるんだよ。あの時、駅で声を掛けてくれた時、僕はうれしかったんだよ。」
 「・・・・・・・・・・・・・・。」
 僕を見つめながら、頷くだけのマナ。
 “あの、元気だったマナがこんなに弱々しくなるなんて。”
 僕は、悲しみのあまり涙を流していた。
 「泣かないでシンジ君。
  私もうれしかった。
  シンジ君が側に居てくれて。
  いろんな所へ連れて言ってくれて。
  ホント、うれしかった。楽しかった。」
 「マナ・・・・・・・・・。」
 僕は、もう彼女の名前を呼ぶことしか出来なかった。
 







 しばらくして、ミサトさんがアスカを連れてきた。
 それに気が付いたマナが、
 「アスカさん、お久しぶり。元気だった?」
 と、話しかけたが、アスカはうつむいたまま黙っていた。
 「長い間、シンジ君を借りちゃってゴメンなさい。」
 マナの謝罪の声に、アスカが反応する。
 「アスカさん、こっちに来て。」
 もっと側に近づくようにマナが促す。
 それに従いアスカが、丁度僕の正面に来た。
 「アスカさん、シンジ君、私の手を握って。」
 それを聞いた僕もアスカもそれに従う。
 それぞれに、握られた手を、マナが自分の胸の上に寄せる。
 そして、僕とアスカの手を重ねた。
 「私のせいで、二人が不幸になるのは我慢できないの。
  だから、こうして二人手を取り合って仲直り。
  シンジ君にいろんな所へ連れて行ってもらったけど、いつもその顔は少しかげっていたわ。
  多分、アスカさんの事を思っていたんだと思う。
  少し妬けちゃった。
  だってアスカさんこんなにシンジ君に思ってもらえてるんだもの。
  だから、仲直り。
  そして、私の分まで幸せになってね。」
 「アンタ・・・・・・・・・・・。」
 「マナ・・・・・・・・・・・・。」
 僕達は、声をそろえていた。
 そして、アスカの目には一筋の涙がこぼれていた。
 「あぁ〜あ、短い一生だったなぁ。」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
 「ねぇ、シンジ君。私、死にたく無い。
  死にたく無いよぅ。」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
 僕は黙ってマナの手を握り締めた。
 マナの命が少しでもここにいられるように。
 「シンジ君・・・・・・・・・・。大好きだよ。」

 ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
 
 「マナ!!」
 「マナ!!」
 部屋に鳴り続く電子音。
 それは、マナがここから旅立った事を知らせていた。
 永遠の旅路へと・・・・・・・・・・。
 「マナ、起きて!起きてよ!!」
 僕が、マナの体を何度もゆすっていると、
 「シンジ君、彼女を楽にして上げましょ。」
 と、ミサトさんが言った。
 「アンタ・・・・・、言いたい事言って逃げるなんて卑怯よ。
  何でもいいから戻ってきなさい!!!」
 「アスカ・・・・・・・・・・・。」
 ミサトさんが後から話してくれたんだけど、この時アスカの目に光が戻ったらしい。
 “マナ、君の事は忘れない。”
 “僕とアスカの心の恩人だから。”
 “だから今はゆっくり御休み。”
 “僕がアスカの次に愛した、マナ。”
 “生まれ変わっても、僕達とまた出会えるといいね・・・・・・・・・・。”



 その日、ネルフは日本政府に圧力を掛け、戦略自衛隊解体し、その幹部を拘束した。










 次回予告  ついにケンジ達に明かされるプロポーズ。
       いよいよエピローグへ向け追い込み開始。
       そして話は過去から現在へ。
       次回、世界で一番の愛を伝えた言葉?
        ご期待ください。


 あとがき
    どーも『CYOUKAI』ですって、もう良いか。
    はぁ。疲れました。ホント。
    日暮れから書き始めて、もう日の出。
    確かにタイプが遅いのが原因なんですが・・・・とほほ。
    それにしても、マナさん死んじゃいました。
    ゴメンなさい。
    修羅場を書きたかったのですが・・・・・・・・・。
    次に書こうと思っているのと被るもんで。
    やっぱり、ショートカットの子が死ぬのはイヤなんですけど、先の事を考えるとどうしても一回あの世に行って頂かないと。
    ちなみにマナさん、もう一回出てきます。
    かなり重要?
    シンジの思い出ではなく現世に現れます。
    期待しないで待っててね。
    それから、次回はやっと綾波レイさん登場です。(現在にですけど。)
    ちゃんと伴侶がいます。
    誰でしょう。
    と言うわけで、おそらく後3話ぐらいになると思いますので、最後までお付き合いください。        


マナ:マ、マジぃぃっ!?(@@)

アスカ:アンタも、不幸な女だったわね。

マナ:ど、どういうことよっ! 説明してよっ!

アスカ:説明してあげるわ。アンタは死んじゃったのよ。

マナ:いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!

アスカ:アンタの分まで、幸せになってあげるからね。

マナ:いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!

アスカ:なにがイヤァよっ。(ーー)

マナ:呪ってやるるるるぅぅ。

アスカ:タチが悪いわねぇ。(ーー)
作者"CYOUKAI"様へのメール/小説の感想はこちら。
sige0317@ka2.koalanet.ne.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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