エピローグ:思いは永久に・・・・・。

 




 それから40年。
 今日は2089年6月6日。
 碇シンジは、85歳になっていた。
 半年前、最愛の妻アスカを失ってから、シンジはアルバムを見ることが日課となっていた。
 遅い朝食を済ませ、居間のテーブルに何冊ものアルバムを重ねる。
 それは、アスカと出会ってからの記録と言っても過言ではなかった。
 


 あのゲンドウの告別式から半年後。
 喪に服す必要は無いと言うシンジの言葉に後押しされて、
 ケンジとリョウコは結婚した。
 



 それから2年後、碇マナは加持リョウタと結婚。
 同年4月6日に碇リョウコ男児を出産。
 名前は自由に生きて欲しいと言う願いから『碇アスマ』とシンジが命名。
 翌年今度はマナが女児を出産。
 アスカの母、キョウコの名前を受け継いだ。
 その後、ケンジ、リョウコ夫妻は、もう一人男児を設ける。
 彼の名は『碇カズマ』
 マナにいたってはキョウコの後に年子で3人。
 名前は『加持ケント』『加持ハツミ』『加持ミサ』である。
 
 シンジは、ケンジとリョウタに『人類安全・平和保障理事会』を任せると、隠居生活に入った。
 もう、20年も前の事である。
 責任のある立場に立たされた、かつてのプレイボーイ、リョウタは人が変わったように
 家庭の人となった。
 それは、シンジが、
 「家庭を平和に出来無いものが、世界をそして人類を平和には出来ない。」
 と言ったからに他ならなかった。





 


 
 初夏の日差しが差し込む部屋の中でシンジは写真を見ながら、
 「アスカ、今日はね、マナが僕の誕生日を祝うために来てくれるんだって。
  孫のミサも一緒に来てくれるって言ってたよ。」
 そんな風に語りかけていた。

 実は、このところ何かと理由をつけては、マナやケンジが孫達と顔を見せるようになっていた。
 マナに言わせると、
 「ママが亡くなってからパパの様子が心配で、お兄ちゃんと相談して週に一度顔を出すようにした。」
 そうである。

 そして、今日はシンジの誕生日と言う事もあってお昼過ぎにはシンジの家へマナが来る事になっていた。
 
 シンジはそれから2時間近くアルバムの中のアスカと会話をしていた。
 「アスカ、僕を置いて行っちゃうなんてひどいよ。」
 シンジは涙を流しながら何度もアスカの写真にそう言ったが、当然のごとく写真からは返事が帰ってくる事は無かった。
 







 そうこうしているうちに、玄関の鍵が外から開けられ、
 「パパ、こんにちは〜。」
 「おじいちゃん、元気にしてた〜。」
 と、マナとミサが入ってきた。
 シンジはあわてて涙をぬぐうと、
 「おぉ。いらっしゃい。」
 と、優しい笑顔で答えた。
 「やだぁ、パパ。
  またアルバムを見てたの?」
 「ああ、そうだよ。
  アスカがいた頃の思い出を振り返っていたんだ。」
 そう言ってまたシンジがアルバムに目を戻すと、
 「おじいちゃん、今日はシュウも来てるんだよ。」
 そう言って、シュウがミサの後ろから顔を出す。
 このシュウはミサの子供で、8歳になる男の子である。
 つまり、シンジのひ孫にあたる。
 「そうか、シュウも来ていたのか。
  どれシュウ、こっちへおいで。」
 そう言ってシンジはシュウを縁側へと連れて行く。
 その手には、中学時代の写真を収めたアルバムが握られていた。
 「ねえ、ママ。
  おじいちゃんたら、シュウにまでおばあちゃんの自慢するつもりだよ。」
 「いいんじゃない、パパにとってママは自慢の妻だったんだから。」
 「でもねぇ。
  ひ孫にまで自慢し無くったって良いんじゃ無いかなぁ?」
 「まあ、シュウが全部理解できるとは思わないし、好きにさせて上げなさい。」
 「はぁ〜い。」

 台所で、マナとミサがそんな話をしている頃。
 「シュウ、見てごらん、コレがお前のひいおばあちゃんの、若い頃の写真だよ。」
 「うん、ひいばあちゃんだ。」
 「綺麗だろ。」
 「綺麗だね。」
 シュウはシンジのひざの上で、楽しそうにアルバムを見つめていた。




 1時間ほどして、シュウがシンジのひざの上から降りてマナたちのところへやってきた。
 「あら、シュウ。どうしたの?」
 「うん、あのね、ひいじいちゃん寝ちゃった。」
 「そう。ちょっと、ミサ。おじいちゃんに何かかけて上げて。」
 「はぁ〜い。」
 風呂の掃除をしていたミサが、縁側ですやすやと眠るシンジに大き目のバスタオルをかけた。
 「ミサ、おじいちゃんどうだった?」
 「気持ちよさそうに寝てたわよん。」
 「そう。」
 「なんか、寝言みたいなこと言ってた。
  アスカとかマナとか。
  きっと夢でも見てるんじゃ無い。」
 ミサは、もう一度暖かな日差しの中で居眠りをするシンジを見るとキッチンへと入って行った。








 「シンジ、起きなさい。」
 「シンジ君、起きて。」
 縁側で眠るシンジをはさむようにアスカとマナが座り、シンジを起こそうとしていた。
 「・・・・?あぁ、アスカ、それにマナ。どうしたんだい?」
 寝ぼけている目をこすりながら、シンジはそう言った。
 「どうしたじゃな〜い。アンタを迎えに来たのよ。」
 「そうなの、シンジ君を迎えに来たの。」
 「どうして?」
 まだ事態が飲み込めないシンジ。
 「あのね、今日はアンタの誕生日でしょ。
  みんながパーティの準備をして待っているのよ!」
 「そう、だから早く着替えて。」
 「着替えるって何に?」
 「アンタ、まだ解らないの。
  ほら、そこにある制服に着替えて。」
 そう言うアスカを見て初めて、彼女が中学の制服を着ている事に気が付いた。
 「ミサトを待たせると大変よ。」
 「そうだね、暴れたら大変だもんね。」
 「そうよ、だからさっさと着替える。」
 「わかったよ。今着替えるから待ってて。」
 「じゃあ、早くしてね。」
 いそいそと制服に着替えるシンジ。
 「おまたせ。」
 「ホントに待ったわよ。
  全く、こんなカワイイ私達を待たせるなんていい度胸だわ。」
 「そうね。」
 「アスカ、マナ。
  待っててくれてありがとう。」
 「「じゃあ、行くわよ。」」
 アスカとマナのユニゾン。
 その顔は満面の笑みで包まれていた。
 「ちょっと待って。二人とも、聞いて欲しいんだ。」
 「なによ改まって。」
 「ウン。
  僕は昔、人と関わりあうのが怖かった。
  どうせいつか他人は僕を裏切るから。
  でも君達と出会って、人と関わりあうことの大切さ。
  他人を信じる事の大切さを知ったんだ。
  だから、聞いて欲しい。
  僕の思いは僕達の子供や孫達によって世界中の人々に伝わると思う。
  そして、その思いは永遠に人類に継がれて行くと思う。
  そう、僕達の思いは永久に残るんだ。
  そして、僕を愛し、僕が愛した君達は僕にとって永遠の宝物になるだろう。
  だから言わせて欲しい。アスカ、マナ、愛してるよ。」
 「なぁに言ってんの、そんなのとっくの昔に知ってたわよ。」
 「私も知ってた。シンジ君がアスカさんと同じくらい私を愛してくれていた事を。
  その形は友愛だったとしても、私はうれしかった。」
 「「ねぇ、シンジ(君)?アタシ(私)達と出会えて幸せだった?」」
 「決まってるじゃないか。
  僕は、君達と出会えて幸せだったよ。」
 「「良かった。」」
 「じゃあ、行こうか。」
 「そうね。行きましょ。」
 「ミサトさん達待ちくたびれてるわよ。」
 「そうかもしれない。
  じゃあ、今日はエビチュ飲み放題で勘弁してもらおうよ。」
 「「そうしましょ。」」
 そうして、三人は手を取り合いながら光に包まれて行った。





 「シンちゃん遅い!!」
 「シンジ君、遅いわよ。」
 「碇君、遅い。」
 「センセ、遅いがな。」
 「フッ、問題ない。予定に2%の遅れも出て無い。」
 「シンジ君、やっと来たね。まったく恥をかかせおって。」
 「シンジ君、遅いぞ。」
 「「「皆さんお待たせしました。」」」
 「「「「「「「「シンジ(君)おめでとー」」」」」」」」
 「ありがとう。」
 シンジは暖かい光の中、最高の幸せを感じていた。








 「パパ、そろそろ起きたら?」
 「・・・・・・・・・・・・・・・。」
 「パパったら、起きて。」 
 「・・・・・・・・・・・・・・・。」
 「パパ、嘘でしょ。
  起きてよ。」
 「・・・・・・・・・・・・・・・。」
 「ミサぁぁぁぁぁぁぁ!!
  ちょっと来てぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
 シンジを起こしに来たマナが、大声を上げる。
 「ママ!!
  どうしたの!!」
 「おばあちゃん、どうしたの?」
 その声に驚き、ミサとシュウが駆け寄る。
 「パパが、パパが。」
 「おじいちゃんがどうしたの?」
 そう言ってミサがシンジを見ると、体温を無くしたシンジが、優しい笑顔を浮かべながら永遠の眠りについていた。
 「ひいじいちゃん死んじゃったの?」
 「そうよ、ひいおじいちゃんは、ひいおばあちゃんの所へ行ったの。」
 微笑むミサの目からは一筋の涙が流れていた。
 「ママ、落ち着いて。
  コレを見てよ。」
 そう言ってミサがシンジのひざの上にあるアルバムを指差した。
 そこには、腕を組み幸せそうに微笑むシンジとアスカが写っていた。
 「ママ、きっとおばあちゃんが迎えに来たのよ。
  だって、それがおじいちゃんにとって最高の誕生日プレゼントだから。」
 落ち着きを取り戻したマナが、アルバムを見ながら
 「そうね、ママはそう言うところ鋭かったからね。
  パーティ大好きだった、と言うよりパパと一緒に思い出を作ることが好きだったから。」
 そう答えた。
 「だから、今頃雲の上でミサトおばあちゃん達と宴会をしているかもね。」
 「きっとそうよ。」
 二人が、涙を流しながら話していると。
 「ねぇ、ひいじいちゃん達雲の上でパーティしてるの。」
 そう言って空を見上げるといつの間にか星が出ていた。
 「そうよ、あのお星様のどれかでお誕生日パーティをしているのよ。」
 「そうか。」
 そう言ったシュウが、突然庭に出て、
 「ひいじいちゃぁぁぁぁん!!
  お誕生日おめでとぉぉぉぉぉぉ!!」
 と、叫んだ。
 「パパ、ママ。
  天国でも仲良くしててね。」
 「おじいちゃん、おばあちゃん。
  いつまでもなかよくね。」
 空を見上げながらミサとマナはそう呟いていた。
 



 この日の星空は、どこまでもどこまでも高く、そして澄みわたっていた。






















 あとがき
     ふぅ、やっと終わりました。
     それにしても、描写が下手です。
     それと、関西弁。
     難しいですね。
     あと、エピローグはシンジ君の誕生日記念でもあります。 
     間に合ったかなぁ? 
  さて、ここで天上界の人々について補足させて頂きます。
    日向(旧姓 綾波)レイ     :特異体質の影響でもともと寿命が短かったようで、それでも74歳で死亡
                     死因は老衰。
    日向 マコト          :赤木博士の実験に巻き込まれ死亡。享年80歳
    碇(旧姓 惣流)アスカラングレー:天寿を全うし、老衰で死亡。享年84歳
    鈴原 トウジ          :若い頃の暴飲暴食が祟ったのか、胃潰瘍で入院。
                     安静を言い渡された彼だったが愛妻弁当を入院中も食べ続け悪化。
                     胃に大きな穴を開けて死亡。享年82歳
    鈴原(旧姓 洞木)ヒカリ    :夫の死を受け後を追うように1年後に死亡。享年83歳
    加持(旧姓 葛城)ミサト    :若い頃から作り続けた殺人カレーに自らアタリ、食中毒で死亡。享年89歳
    加持 リョウジ         :ミサトカレーによる食中毒により死亡。享年89歳
    青葉 シゲル          :貸しスタジオの照明器具落下の直撃を受け、脳挫傷で死亡。享年70歳
    青葉(旧姓 伊吹)マヤ     :赤木博士の実験中に行方不明。一説によると人体実験のサンプルにされたとか
                     されなかったとか。享年65歳
    赤木 リツコ          :私設赤木リツコ研究所にて薬品実験の失敗により死亡。享年90歳
                     最後の一言、手元が狂ったわ。無様ね。
    相田 ケンスケ         :戦場カメラマンとして従軍中に流れ弾を避けようと隠れた民家が崩壊。
                     下敷きになって死亡。彼の最後の写真は世界各国でありとあらゆる賞を総なめ
                     現在では世界史の教科書にも載っている。
    冬月 コウゾウ         :碇ゲンドウの死の8年前、突然失踪。一説によるとゲンドウの管理に疲れたと
                     書置きがあったらしい。失踪の1年後京都で発見されるが死亡年月日は確認されず。
                     享年不明。
   
 てな所ですね。
   享年に付いては、あまり深く追求しないようにしてください。
   それでは長い間お付き合いくださりありがとうございます。 


アスカ:素敵なエンディングね。

マナ:綺麗な幕引きって感じ。みんな幸せそうだし。

アスカ:お星様の世界じゃ、きっとみんな幸せなのよ。

マナ:エビチュ大魔神は、健在みたいだけど。

アスカ:だけど、シンジはアタシのものよ。

マナ:わたしも復活したし、今度こそシンジはわたしのものなんだから。

アスカ:やるってーのっ!?(ーー)

マナ:シンジは渡さないわよーっ!!(ーー#
作者"CYOUKAI"様へのメール/小説の感想はこちら。
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