目の前で硬く閉ざされている扉の前に私は今立っている。
 その扉が開くのを心待ちにしながら。
 
 「アスカ、緊張しているのかい?」
 「大丈夫、緊張なんかして無いわ。
  だって、とてもうれしいから・・・・。」

 私は今扉の前に立っている。
 この扉が開かれたとき、私と彼の絆はより深い物になるから。
 彼と私の愛がより大きくなるから。

 だから、私は待っている。
 目の前にある荘厳な木製の扉が開かれるのを・・・・・・・・。


  Waiting for you......(after)              
                                               作:CYOUKAI

 今から丁度1年前、彼は、碇シンジは、私の元に帰って来てくれた。
 約束通り、私と子供達の元へ帰って来てくれた。


 シンジが帰ってきた日。
 その日、世界で数々の奇跡が起きていた。

 あの、紅い海から帰還してこなかった人々が帰ってきた。
 世界中がその奇跡に驚き、また感謝した。
 
 ある、宗教家は行った。
 「それは、神の思し召しだ。」と。
 また、ある詩人は自分の手帳にこう書いた。
 「まるで、世界中が一つのシンフォニーを奏でているようだ」と・・・・。


 あの、サード・インパクトの真実を知る物は数少ない。
 私、惣流・アスカ・ラングレーもその一人。
 
 
 私の周りでも小さな奇跡が起きていた。

 碇シンジの父、ゲンドウ。
 ネルフ副司令、冬月コウゾウ。
 私とシンジの保護者、葛城ミサトとその伴侶加持リョウジ。
 私の為に私生活をなげうってくれた、伊吹マヤの敬愛する赤木律子。
 私とシンジの戦友であり親友である、綾波レイ。
 シンジの初恋の相手、霧島マナ。


 そう、あの月夜の晩に再会した彼らが帰還した。

 シンジと再会した後マンションに戻ると、リツコにすがりつき涙で目を紅くしたマヤの姿があった。


 それだけでは無かった。

 
 あの日、紅い海に溶け込んでいたネルフの職員達。
 その彼らも帰還していたのだ。


 しかし、私達を驚かせそして喜ばせたのは、
 私のママ、惣流・キョウコ・ツェッペリンと、
 そして、シンジのママ、碇ユイの帰還であった。



 彼らが帰還した後、彼は私に真実を語ってくれた。

 「アスカのママと僕の母さんが、Evaの中にいた事は知っているよね。
  僕の母さんが初号機に取り込まれたとき、丁度僕が初号機に取り込まれた時と同じように、
  サルベージしようとしたんだって。
  でもね、母さんはそれを拒絶した。
  だから、その時は帰ってこなかった。
  でね、ゼーレの人々の魂を昇華させる戦いの中で、母さんと父さんは和解したんだ。
  詳しい事は知らないけど、レイの中から母さんが出てきたらしいよ。
  僕達はその時、精神体だけになって戦ってたからね。」
 「精神体?」
 「そう、有態に言えば魂。」
 「魂かぁ。」
 「だから、母さんの魂も僕達と一緒に戦ってたんだ。
  そして、キョウコさんもね。」
 「ママも?」
 「そうだよ。
  でも、びっくりしたのはキョウコさんが僕達と合流した時だよ。」
 「?」
 「突然出てきてね。
  いきなり僕に、娘をよろしくお願いしますって言ったんだ。」
 「それっていつの事?」
 「一回目の旅の時さ。」
 「でも、何でイブの夜にはいなかったの?」
 「ああ、それはね。」
 「それは?」
 「身体が無かったから。」
 「え?」
 「魂だけの存在だったからね。
  あの時、あそこにはいたんだよ。
  ただ、アスカには見えなかっただけ。」
 「なぁんだ。」
 

 子供達を寝かせた後、ベッドの上で彼はそう教えてくれた。



 本来なら、彼が帰ってきた直後に私達は式を上げるつもりだった。
 しかし、ミサトと加持さんに拝み倒され、一年先延ばしにした。
 彼ら曰く
 「アスカより後に結婚するのは、面子が立たない」
 と言う事らしい。
 ただ、子供がいたため、彼が帰還した翌日には入籍を済ませてはいたが・・・・。


 みんなが帰還してからは、色々と忙しかった。
 ネルフを元に戻し、世界の平和と秩序の為の組織へと改変しなければならなかったからだ。
 世界中の人々が少しだけ優しくなった世界ではあったが、宗教間の争いや飢餓が消滅したわけでは無かった。
 そんな世界を国連中心にまとめるためには、ネルフの力が必要だった。
 Evaは、それまでのデータを元に再建された。
 それは、かつてのようなエントリープラグを必要としない機体となっていた
 今、シンジは唯一のパイロットとしてネルフに所属している。
 

 ネルフと言えば、マヤはそれまでの司令代行職を解かれ、元の畑にもどり、
 碇司令が、再度就任した。
 ミサトは、国連軍総司令部となった旧ネルフ作戦部の長に戻り。
 リツコは、技術部の長に。
 加持さんは、諜報部の長になっていた。
 ちなみに、シンジは総司令部付Eva専属パイロットとなり、私は総司令部付参与となっていた。
 私の場合は予備役扱いで、結婚と同時に退役する事になっている。
 これは、私が出した条件でもあった。
 私は、ママの様に仕事で子供を犠牲にしたくなかったから・・・・・・・。
 その件に関しては、シンジも賛成してくれた。
 彼もまた、自分と同じ境遇に子供達を置きたくなかったのだろう。



 ネルフ以外でも色々あった。
 ヒカリがあのジャージバカこと鈴原トウジと結婚する事になっていし、
 一番意外だったのは、あの霧島マナが事もあろうに相田ケンスケと婚約した事だ。
 彼女曰く
 「残り物には福があるって言うしね。
  それに、彼、意外に優しいんだよねぇ。」
 だそうである。
 まあ、みんなそれなりに幸せになったと言うことだ。


 そして、今日。
 再会から1年たったシンジの誕生日。
 私は、碇総司令が用意してくれた教会でシンジとの結婚式を執り行っている。
 横に立っているのは、私達のかつての保護者の夫、加持リョウジ。
 父親代わりをお願いすると、
 「俺で良ければ、何でも協力するよ。
  君達のおかげで今ここで幸せな時間を過ごせると言っても過言じゃ無いからな。」
 二つ返事で受けてくれた。




 「アスカ、時間だ。」
 加持さんがそう言うと、目の前で扉が開き始めた。
 「加持さん、ありがとう・・・・・・・。」
 私はそう言うと、真っ赤な絨毯の上をゆっくりと歩き始める。
 参列者の席にでは、みんなが私を祝福してくれていた。
 「アスカ〜。綺麗よ〜!!」
 そんな声に笑顔で答える私。
 ふと目を前に向けると、ネルフの濃紺の制服を来たシンジが私の方に顔を向け、優しく微笑んでいた。
 

 
 加持さんが私の手を引き、シンジの元に行く。
 そして、その私の手を、シンジに引き継ぐ。
 離れ際、
 「アスカ、シンジ君幸せになるんだよ。 
  君達にはその資格と権利がある。
  なんと言ってもこの世界を護ったのは君達なんだからな。」
 そう言って、席に戻って行った。
 

 加持さんが席に戻るのを二人で見送る。
 加持さんの横では、ミサトが、ママが、シンジの両親が、私達を見守ってくれていた。
 

 私は視線をシンジに移す。
 彼もまた私を見つめてくれている。
 今の私に不安は無かった。
 

 粛々と進められて行く中、私は今日までの人生を振り返る。
 幼い日に母を失った悲しさ。
 泣かないと心に決め、自分を偽っていた思春期。
 そんな時、なんとも頼りなさそうで、それでいて実は人一倍優しい彼に出会った。
 喧嘩もした。
 時には手も上げた。
 一度は拒絶した。
 でも、そんな私をエリートとしてではなく、一人の女の子として見てくれていた彼。
 それまでの人生で出会った事の無い、安心感を与えてくれた彼。
 彼になら自分をさらけ出すことができた。
 そして、これからも素直な気持ちで自分を見せる事ができるだろう。
 きっと、喧嘩もするだろう。
 時には手を上げるかもしれない。
 でも、彼はきっとそんなわがままな私を、その大きな愛情と優しさで包んでくれるはず。
 だから、これだけは確信を持って言える。
 「シンジ、愛してるわ。
  この世界の誰よりも・・・・・。」


 そして、式も最後の時を迎える。
 ここからが、私達の新たなる人生の旅立ち。
 私と彼の、そして子供達の新しい人生の第一歩。


 「それでは、皆さん、これより花嫁がブーケを投げますので、女性陣はもっと前の方へお進みください。」
 司会を引き受けてくれた日向さんがそう告げると、私は教会の階段の上から下を見た。
 ヒカリがいて、レイがいて、マナがいる。
 マヤは涙を拭きながら、私達を見ている。
 そのマヤに寄り添うように、優と愛香が立っている。
 碇司令の横にはシンジのママがいて、
 その横には私のママがいる。
 副司令は木陰でそっとこっちを見ている。
 
 みんなが私達を祝福してくれている。
 みんなが私達を見てくれている。
 
 私達はもう一人じゃない。
 

 「じゃあ、みんな行くわよ〜!
  ソレ〜〜〜〜〜〜!!」
  
 私が投げたブーケは天高く舞い、綺麗な放物線を描く。
 その放物線の行き着く先には・・・・・・・・・・・・・・・。



 「え?
  私ですか?
  センパイ、どうしましょう?」
 マヤがいた。



 「「マヤ(さん)今までありがとう(ございます)。
   今度は自分の幸せをつかんでね(下さいね)。」」


 私とシンジは、彼女の幸せを願った。
 彼女がいなければ、今の私達はいなかっただろう。
 自分の幸せと引き換えに私達を幸せにしてくれた。



 「シンジ君、アスカちゃん、ありがとう。
  私も頑張るね。」


 マヤはまた泣き出したようだ。
 




 蒼く澄み切った空に、白い鳩の群れが飛び去って行く。
 そして、そこには大きな虹のアーチ。


 「シンジ、アスカ君、私達からのプレゼントだ。」
 
 「お義父さま、お義母さま、そしてママ。
  ありがとうございます。」
 「父さん、母さん、そしてキョウコさん。
  ありがとうございます。」
 「「僕(私)達、ずっと幸せに生きていけそうです。
   死が二人を別つまで。
   いいえ、次の人生でもきっと・・・・・・・・・・」」




 そして、私達は生きて行く。
 色々な思い出を刻みながら精一杯・・・・・・・。



 「シンジ、私は今幸せよ。
  あなたはどう?」
 私は隣いる愛する人にそう告げる。
 「アスカ、僕もすごく幸せだよ。
  当たり前だろ。
  だって、アスカがここにいるんだから。」
 

 そして、二人は口づける。
 このときが永遠であるように。
 この気持ちが永遠であるように。


 たとえ、宇宙の果てまであなたがいくと言っても、私はついて行くだろう。
 なぜなら、もうあなたを待つのは耐えられないから・・・・。
 だからね、いつまでも一緒だよ。



 「シンジ!!」
 「なんだい、アスカ。」
 「だ〜い好き!!」



 そして、私達の頭上には、綺麗な虹がいつまでも輝いていた・・・・・・・・・・。

  

 




 あとがき
     また、しょうもない物を書いてしまいました。
     前回約束したWaiting for you......(after)です。
     どおでしたか?
     甘さが足りないことは十分承知しています。
     ごめんなさい。
     あと、ありきたりですけど、マナさんにはケンスケくんとくっついてもらいました。
     怒らないでくださいね。
     それでは、また・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


マナ:な、な、なんで、わたしが相田くんで、アスカがシンジぃぃっ!?(ーー#

アスカ:とーーぜんの結果じゃんっ!(^O^v

マナ:なんなのよっ! このバッドエンドはぁぁぁっ!!!(ーー#

アスカ:なにわめいてるのよ?? 最高のハッピーエンドでしょっ!

マナ:認めないっ! わたしは認めないわよっ!!(−−#

アスカ:あぁ、幸せっていいわねぇ。(*^^*)

マナ:燃えておしまいっ!(ーー#

アスカ:あんまりおいたすると、旦那様の相田にいいつけるわよっ?

マナ:だ、だんなさま・・・(フリーズ)
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