紅い海の砂浜に横たわるアスカとシンジ。
 シンジが人の気配に気が付き、視線をそちらへ向けると、そこには綾波レイが立っていた。
 もう一度目を凝らすシンジ。
 しかし、そこにはすでにレイの姿は無かった。




 痛々しい姿で横たわるアスカ。
 シンジはそのアスカに跨ると、ゆっくりと首をしめはじめる。
 「クッ・・・・・・。」
 手に力を入れる。
 「ククッ・・・・・・。」
 シンジが渾身の力でアスカの首を絞めようとしたその時・・・・。
 アスカの手がシンジの頬を優しく撫でた。
 「エグッ・・エグッ・・・・・エグッ・・・・・」
 シンジの嗚咽にも似た泣き声。 
 そして、アスカの頬に滴る涙。
 シンジはアスカの胸に臥して泣いていた。

 「キモチワルイ・・・・・・・。」
 

 彼女の拒絶とも思える言葉。
 その言葉を聞いた時、碇シンジは彼女の生存を喜んでいた。
 そして、再度の拒絶に苦しんでいた。



 惣流・アスカ・ラングレーが目を覚ましたとき、彼女は自分の一番嫌う少年が自分の身体に跨っていることに
気がついた。
 彼が、自分の首を絞めながら泣いている。
 しかもその彼の涙が、自分の頬に垂れている。
 だから、
 「キモチワルイ・・・・・・・・。」
 のである。
 

 そして、その彼女の言葉を聞いた時、彼は自分が彼女を苦しめる存在である事を改めて実感していた。
 だから・・・・・・・・・・・・・・。



 彼女はその言葉を口にしたとき、何の迷いも無かった。
 後悔もしなかった。
 なぜなら・・・・・・・。
 
 

 全て自分の物になら無いとイヤだったから。
 自分が苦しんでいるときに抱きしめてくれなかったから。
 そして、自分の自信を奪う憎いヤツだったから・・・・・・・・・。



 アスカが我に返ったとき、すでに彼の姿は無かった。
 アスカが我に返ったとき、シンジはそこにいなかった。




  REPEAT of EVANGELION

                                             作.CYOUKAI

                  
 プロローグ  
 



 シンジはアスカから遠く離れた崖っぷちで、一人泣いていた。
 

 「アスカを苦しめたのは僕だ。
  そして、また彼女を殺そうとした。」
 あのLCLの海の中で、自分を唯一拒絶した存在。
 アスカ。
 しかし彼は彼女を愛していた・・・・・。
 だから、彼は彼女をこれ以上苦しめないために、姿を消した。
 そして、自らが生み出したこの世界を再構築した。



 そう、シンジのいない世界を・・・・・・・・・。


 彼は思った。
 『僕がいなければアスカは幸せになれる。
  だから、もう彼女を苦しめないために、僕は消えよう』と・・・・・。



 「それが、貴方の望む世界なの?
  貴方はそれで後悔しないの?」
 シンジに語りかける声。
 その声は、レイの声だった・・・・・。
 「悔しいさ、僕だってアスカと暮らしたい。
  アスカの傍にいたい。
  でも、僕が傍にいると彼女が苦しむ・・・。
  だから・・・・・・・・・・。」
 「アスカを苦しめないために貴方のいない世界を作るの?
  アスカを苦しめないために貴方がこの世界の業を背負うの?」
 「そうだよ!!
  ソレでアスカが幸せになれるなら・・・・・・・・。
  そう、僕は永遠に苦しんでもカマワナイ。」
 「そう、ならそうしなさい。
  でもね、貴方にはもう世界を完全に構築しなおす力は無いわ。
  不完全な世界しか作れないわ。
  だから、私の力を貸してあげる。」
 「綾波の力?」
 「そう、リリスの力。
  でもそれには条件があるわ。」
 「条件?」
 「そう、条件。」
 「どんな?」
 「それはね、もしアスカが貴方のことを思い出してしまったら、貴方と彼女は今の記憶を持ったまま、
  過去へ戻ってしまう。
  あの、つらい戦いの中へ。
  それでも良い?」
 「良いよ。
  アスカが僕を思い出すとは思えない・・・・。
  だから、そうしてくれ。」
 「わかったわ。
    じゃあ碇君、貴方に罰としての苦しみを与えてあげる。
  安心して、罰を受けたその時から、万が一アスカが思い出してしまうまで、貴方とこの紅い世界の時間は
  停止するわ。
  そして、アスカが貴方を思い出した時、貴方の時間はまた動きだす。
  そして、あの時の第3新東京市に戻るわ。
  今の記憶を持ったまま・・・・・・・・・・。」
 そう言うとレイは、手のひらから真紅の槍を取り出す。
 そして・・・・・・・・・・。
 「ウグッ!!」
 ゆっくりとシンジの胸へ突き刺した。
 「大丈夫、死にはしないわ。
  時間を遡るまで苦しむだけよ。」
 シンジに語りかけるレイ。
 それは、2人目のレイだったことにこの時のシンジは気がつかなかった。
 



 シンジの時間が完全に止まる寸前。
 レイはシンジに口づけると、
 「私は碇君が永遠に苦しむところを見たく無い。
  だから、貴方のいない世界のアスカに貴方のことを思い出させて見せる。」
 「・・・・・・・・・・・・・・・。」
 もうすでに時間が止まっていたシンジは、何も答えなかった。




 突如、シンジが磔にされた崖から光が広がり始める。
 そこにはかつてと変わらない町並み。
 かつてと変わらない人たち。
 そして、塗り替えられた記憶を持つ人々が、平和に暮らす世界が広がっていた・・・・・・・・・・。









 次回予告:記憶を塗り替えられた人々が、何気なく暮らす世界。
      アスカも全てを忘れ、塗り替えられた記憶の人生を信じ生きていた。
      そして、彼女が見る夢に、いつも現れる少女。
      その少女が語る事とは?
      次回、夢幻。
      

      真の補完は未だ終わらない・・・・・・・・・。











 あとがき:
     連載、また書き始めてしまいました。
     CYOUKAIです。
     今回DVDボックスを手に入れた小生は、
     エヴァの魅力、アスカの魅力に再度触れ、感動しています。
     それで、この話を思いつきました。
     結構長くなると思います。
     気長にお付き合いください。
     よろしくお願いいたします。


マナ:シンジのいない世界なんて・・・。

アスカ:アノバカ。何か勘違いしてるわね。

マナ:ほんと。そんなことで幸せになる人なんていないのにね。

アスカ:だいたいアタシが、シンジのこと忘れるわけないじゃん。

マナ:別にあなたが忘れるのはいいわよ?

アスカ:アンタのことなら、今すぐにでも忘れられるけど?

マナ:わたしだって。あれ? あなた誰だっけ?

アスカ:アンタこそ誰よ?

マナ:・・・・・・わざとらしー。バカみたい。

アスカ:アンタが言い始めたんじゃないのっ!!!(ーー#
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