目の前に広がる紅い海。

 巨大なオブジェのような人面。

 足元を見ると、そこは砂浜。

 そして、そこに横たわる少年。

 そう、碇シンジが安らかな寝息で横たわる。



REPEAT of EVANGELION 
                                         作『CYOUKAI』
 第2話 再会そして・・・・。




 「シンジ、起きなさい。」
 アスカは優しくシンジの身体を揺らす。
 「ス〜、ス〜、ス〜・・・・・・・・・・・・・。」
 安心しきった面持ちで眠るシンジをアスカはいとおしいと思った。
 「しょうがないなぁ、もぉ。」
 シンジの頭を自分の膝の上に乗せるアスカ。
 このとき初めて、自分がプラグスーツを身に纏っている事に気がついた。
 自分の頬や手を見ると、今までより痩せていて、そして若かった。
 「アタシも夢を見てたのかなぁ。」
 アスカは、消え行くレイが言っていた、
 「この世界は彼の夢。」
 と言う言葉を思い出してみる。
 「大体、アタシがジャージに抱かれるなんて考えられないわ。
  全くコイツはどういう思考をしたんだか。」
 アスカはシンジの安らかな寝顔を見ながら、彼の髪を撫でていた。





 アスカがシンジの傍に来て1時間ほどが過ぎただろうか。



 「アスカ・・・・・?」
 膝の上のシンジの頭が、もぞもぞと動き顔を上に向けた。
 「シンジ、おはよ。」
 アスカは、笑みを浮かべていた。
 「気がついちゃったんだね。
  あの世界が、僕の夢だって事に・・・・・。」
 「ええ、レイが教えてくれたわ。」
 「レイが?」
 「そう、全部。
  それから・・・・・・・・・ゴメンね。」
 「何のこと?」 
 アスカの言葉がシンジにはわからなかった。
 「あの時・・・・・、アタシが心の中を覗かれていた時、
  アンタは助けてくれようとしてたんだよね。
  そんなアンタをアタシは拒絶した・・・・・・・・。
  だから・・・ゴメンなさい。」
 そう言ってアスカは、シンジの髪を優しく撫でた。
 「良いって、そんな事。
  それに誤るなら僕の方だよ。
  アスカが苦しんでる時に、何もして上げられなかった・・・・・。
    アスカの意識が無い時にあんな事をしてしまった・・・・・。
  そして、アスカの首を絞めて殺そうとしてしまった・・・・・・・。
  だから・・・・・・・・。」
 「だから?」
 アスカは髪を撫でながらシンジの顔を覗きこむ。
 「だから、僕が居ない世界の方が幸せになれると思った・・・・・・・。
  そして綾波にその世界を作る手助けをしてもらった・・・・・・・。」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
 「僕の夢。
  その中にアスカを閉じ込めて、幸せな時間を生きてもらう・・・・。
  僕は夢を見続けるために、罪を背負う・・・・・・・・。
  そう、世界中のみんなの罪を・・・・・・・・。
  悠久の時間の中で・・・・・・・・・。
  僕をみんなが忘れても、僕はみんなを覚えているから・・・・・・・。」
 一言一言ゆっくりと語るシンジは、涙を流していた。
 アスカにはその涙が、どういう意味なのかわからない。
 「なぜ泣くの?」
 「ゴメン。」
 「あやまらないで・・・・・・・・。」
 アスカはシンジの髪から手を離すと、そっと頬を撫でた。
 「シンジ、アンタは悪くない。
  アタシがそう言うんだから間違いない・・・・・・・・。」
 いつの間にかアスカの頬を伝っていた涙が、シンジの頬に雫を落としていた・・・・・・・・・。







 それから、何時間たっただろう。
 シンジは身体を起こすと、アスカの前に座っていた。



 「ファーストがね、あたしに言ったの。
  アタシがシンジを思い出せれば、もう一度世界をやりなおせるって。」
 「・・・・・・・・・・・・・・・。」
 「シンジは知ってたの?」
 「ウン。」
 「そう・・・・・・・・・。」


 しばらく続く沈黙。

 波の音だけが聞こえる・・・・・・・・・。


 「アスカ・・・・・。」
 先に沈黙を破ったのはシンジ。
 「なに?」
 「僕は、だらしが無くて、バカで、鈍感で、弱虫で、暗くて・・・・・・・・。
  そんな僕だけど、これだけは言える。
  僕は、アスカが好きだ!
  できることなら、ずっとアスカと共に生きて行きたい!
  ずっとアスカの隣で君を護っていたい!!」
 「シンジ・・・・・・・・・・。」
 アスカは、シンジの胸へと抱き付いた。
 「シンジ、アタシもアンタが好き!
  アタシの全てをアンタの物にして欲しい!!
  アンタがいない世界は、平和だった。
  でも、つまんなかった。 
  何でつまんないのか、わからなかった。
  でも、今なら言える・・・・・・・・。
  シンジがいるから楽しいの。
  シンジがいるからうれしいの。
  シンジがいるからアタシがいるのよ!!」
 「アスカ・・・・・・・・・・。」
 「だから、アタシだけを見て!
  アタシだけを好きでいて!!
  アタシだけ愛して!!!」
 シンジはそっとアスカの背中に手をまわすと、力いっぱい抱きしめた。
 「アスカ・・・・・・・・・・。」
 「シンジ・・・・・・・・・・。」
 ゆっくりと身体を離す二人。

 そっと目を瞑るアスカ。

 その目の端に浮かぶ涙を指で拭うシンジ。

 二人の距離が再び近づく。

 アスカはシンジの息遣いを感じていた。

 シンジはアスカの息遣いを感じていた。

 そして、重なる影。

 重なる唇。

 紅い海の浜辺で、二人の本当のファーストキス。

 心と心が重なるキス。


 シンジが、アスカの体重を支えながら、二人は砂の上に横たわる。

 アスカの体温を感じながら、シンジの体温を感じながら、二人は身体を重ねた・・・・・・・・・・・。



 浜辺に生まれたままの姿で横たわる二人。
 「つっ・・。」
 アスカはシンジの胸に抱かれながら、目を覚ました。
 結ばれた結果による、痛み。
 それは、シンジとの絆。
 アスカは、その痛みを不快に思わなかった。

 「この傷は・・・・・・・・?」
 シンジの胸に刻まれる未だ生々しい傷。
 「ああ、この傷は綾波が僕の時間を止めるためにやったんだ。
  僕にあの槍を刺して、僕の時間を止めた・・・・・・・。
  苦痛だけを残して・・・・・・・・。
  罰を受ける事。
  それが、僕の願いだったから・・・・・・・・・・・。」
 「痛く無いの?」
 アスカは、そう言って傷口にそっと指を這わせた。
 「すぐに消えるよ・・・・・・。」
 シンジは、アスカの指先をじっと見つめて、そう言った。



 「バカシンジ!!」
 アスカの怒りのこもる声。
 「アンタが全部背負い込むこと無いでしょ!!」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
 「アンタが・・・・・全部・・・・背負い込んで・・・・・どうするのよ・・・・。」
 驚いたシンジはアスカの声が涙声に変わってく事に気がつく。
 「アスカ・・・・・・・・・。」
 「もう、一人で傷つかないで・・・・・・・。
  シンジが傷つくなら、アタシも一緒に傷ついてあげるから・・・・。
  だから・・・・・・・だから・・・・・・・・・もう。」 
 それ以上アスカの口から言葉が紡ぎだされることは無かった。
 なぜなら、シンジの唇がそれを遮っていたから・・・・・・・・・。


 ゆっくりと唇を離すシンジ。
 そして、優しく微笑む。
 「大丈夫だよ、アスカ。
  僕はもう一人じゃ無い。
  アスカがいる。」
 「シンジぃぃぃぃぃぃ。」
 アスカはシンジの胸の中で再び泣き出していた。


 どれほどの時間が流れたのかわからない。
 アスカは、シンジの胸の中で落ち着きを取り戻していた。

 二人は立ち上がると、目の前に広がる紅い海を見ていた。
 
 しっかりと手を繋ぎながら・・・・・・・。



 生まれたままの姿で、紅い海を見る二人。

 その目の前に、青い髪と紅い瞳を持つ少女が立っていた。


 「「綾波(ファースト)。」」

 「心は繋がったのね。」
 
 「「ウン(ええ)。」」

 「じゃあ、行きましょ。」

 「「ウン(ええ)。」」

 二人の意思を確認すると、綾波レイは彼らの手を取った。

 「じゃあ、行くわ。」

 レイを中心に、光が広がる・・・・・・・・・。

  その光に包まれて行く二人。

 そして、彼らは緩やかに意識を失って行った・・・・。




 光が消えた時、そこには紅い海も赤い空も、奇妙なオブジェも無くなっていた・・・・・・・・。









 次回予告:過去へと戻るシンジとアスカ、そしてレイ。
      そして、歴史の改変が始まる・・・・・・・。
      次回『帰還(前)。』
      


           真の補完は未だ終わらない・・・・・・・・・。




          

 あとがき:やっとプロローグ的な物が終わりました。
      ホント、DVD‐ボックスかってから寝てません。
      一話一話見直していると、何でシンジはそこでアスカに声をかけないんだろうとか、
      アスカは何でこのときのシンジを認めて上げられなかったんだろうとか、
      ホント、まどろっこしいです。
      でもねぇ、本編見ててもそうですけど、シンジ君って逃げてばっかり。
      アスカさんは周りが見えて無さすぎ。
      まあ、中学生ですからねぇ。
      あと逆行モノですけどマナさん出てきます。
      結構いじりやすそうなキャラダと言う事が判明しましたので・・・・。
      でも、やっぱりスパイなんですかねぇ。
      加持なんかとつるむ女スパイになるのか、それとも・・・・・・・・・。
      予定では、シンジ君と接触する事が出来そうで出来ない見たいな感じにしようかなぁと思っています。
      あと、次回から少しシリアス路線を崩そうかなとも思っています。
      でわ、また。 『CYOUKAI』でした。


マナ:・・・なんか、ラブラブモードになってきたわね。(ーー)

アスカ:これが本筋ってやつよ。

マナ:でも、でも、マナちゃんも登場予定よっ。(^^v

アスカ:イジリやすいキャラとしてね。

マナ:変な設定は嫌だからねっ!

アスカ:シンジと接触できないスパイだって。

マナ:スパイはいいけど、どーしてシンジと会えないわけぇっ!?

アスカ:アタシが阻止するからに決まってるでしょっ。
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