意識が戻った時、シンジは『先生』の家のベッドに横たわっていた。

 ふと視線を動かし、カレンダーを見る。

 「今日か・・・・・・。」
 部屋を見回すと、自分の少ない荷物がまとめられていた。
 
 

REPEAT of EVANGELION 
                                                                     
 第3話 帰還。(前)                                  作『CYOUKAI』
 




 目にするのは2回目。
 
 父ゲンドウからの「来い」と言う手紙。
 
 それを手にして、シンジは列車へと乗り込んだ。

 「また、あの街へ行く。
  そして、使徒と戦う・・・・・今度は失敗しない。」

 シンジの目には決意の色が浮かんでいた・・・・。


 
 
 シンジが待ち合わせの場所に着くと、そこは何やら喧騒に包まれていた。
 「特別非常事態宣言が発令されました、住民の皆さんは所定のシェルターに・・・・・・」
 
 指示にあった、待ち合わせの場所に向かうが、例のごとくまだ来ていない。
 
 公衆電話で連絡をしてみるが、
 「現在非常事態宣言の発令により、通常回線・・・・・・・」
 テープの声にその行為が無駄だと知らされる。
  「やっぱり繋がらないか。」
 辺りを見回すと、陽炎の中に一人の少女が立っていた。
 「綾波?」
 シンジがその少女から目を離すことなく見ていると、少女が手を上げる。
 『そうか、綾波も戻ってきたんだ。』
 そしてシンジが大きくうなずくと、すでに少女の影は消えていた。  

 「ミサトさんが来るんだよなぁ。
  そして、あの車に乗って。
  あっ、そうだ、年の事とか余計な事言わないようにしなきゃ。」
 
 シンジは独白の途中で、物陰に身を潜める事にした。

 『あの時、爆風が起きて、あの山の向こうから使徒が出てきたんだっけ。』
  
 そう思ったとたんに、爆風がシンジの身体を襲う。
 その爆風が収まるのを待って、ゆっくりと視線を山の稜線へと向ける。
 「やっぱり・・・・・。」
 そこには、国連軍のVTOLに包囲されながら、奇怪な格好の巨大な人形が現れた。
 「使徒だ・・・・・。
  と言う事は、そろそろミサトさんが来るなぁ。」
 シンジの記憶と寸分たがわず、一機のVTOLが使徒の攻撃で墜とされ目の前に落ちてきた。
 「うあ!」
 今にもそれが爆発しようかと言うとき、青いスポーツカーがシンジの目の前に滑り込む。
 『やっぱり・・・』
 そして、開かれるドア。
 そこには、サングラスをかけた女性がいた。
 「お待たせ。」
 あの時、自分を護るために死んでいった、ミサト。
 その彼女にまた会えた事にシンジは涙ぐんでいた。
 「あら〜、怖かった?」
 「そんな事はありません、目にホコリが入っただけです。」
 「そう、じゃ乗って。」
 「はい。」
 そう言ってシンジは、ミサトの愛車に乗り込んだ。
 
 その直後、使徒の足が頭上に迫った。
 「っっっ!」
 「うっ!」
 ミサトは激しくシフトを操作すると、車を操りそれを回避した。
 
 




 その頃、ネルフ指揮所では。

 「目標、依然健在。
  現在も第3新東京市に向け依然進行中。」
 「航空隊の戦力では足止め出来ません!」
 オペレーター達が芳しく無い戦況を告げていた。
 
 見るからに軍の上層部と言える制服を纏った将校が、それを聞いて焦りを隠せないでいた。
 「総力戦だ!
  厚木と入間も全部出せ。」
 「出し惜しみは無しだ!
  なんとしても目標をつぶせ!!」
 一人の将校は持っていた鉛筆を思わず折っていた。

 その少し後ろに座る、特徴のある髭面にサングラスをかけた男。 
 そして彼の後ろに立つ、白髪の混ざった初老の男。
 彼らは、その将校達をあざけるような視線で見ていた。


 「なぜだ!!」
 一人の将校が机を叩きつけ叫ぶ。
 「砲爆撃も精密誘導兵器も全く役に立たん。」
 「この程度の火力では無理だ!!」
 完全に取り乱す将校達。
 その後ろの二人は、
 「やはりA.T.フィールドか?」
 「ああ、通常兵器では使徒に対して役に立たんよ。」

 ピピピ、ピピピ、ピピピ。
 その時一本の電話が鳴る。
 その電話を採った将校が、
 「はい、わかりました。
  予定どうり作戦を発動します。」
 と言って、受話器を置いた。






 使徒が、国連軍を全く障害とせずに進行する姿を、ミサトとシンジは車の中で見ていた。
 

 ミサトは、持参のスコープで使徒の後姿を追う。
 
 今まで使徒を取り巻いていた、国連軍のVTOLが、いっせいに離れた。
 「ちょっと、まさかN2地雷を使うつもり!!」
 ミサトが叫ぶと同時に、シンジは身を伏せていた。
 「伏せて!!」
 ミサトは、そう言いながらシンジの身体をかばう様に身体を重ねてた。
 
 
 地面が揺れる。
 そして、光柱が立つ。
 しばらくの間が開いた後、爆風と衝撃波がシンジ達を襲う。
 
 その衝撃はすさまじく、ミサトの愛車を意図も簡単に転がしていた。
 「うわぁ!」
 「グッ!」
 転がる車の中でシンジとミサトはうめいていた。

 


 
 「やった!!」
 ネルフの指揮所では、地雷によって使徒を殲滅したと信じる将校達が歓喜の声を上げていた。
 「残念ながら、君達の出番は無かったようだなぁ。」
 振り向いてそう言う将校。
 その後ろにいた二人は、あざけるような笑顔を浮かべていた。
 「衝撃波、来ます!!」
 直後、モニターが全て写らなくなる。
 砂嵐を写すモニターが、サングラスに怪しく写っていた。



 


 「大丈夫だったぁ?」
 不自然な形で安定している車の窓から顔を出す、シンジとミサト。
 「ええ、ちょっと口の中がじゃりじゃりしますけど大丈夫です。」
 「そいつは結構。」
 彼らは車から這い出すと、車を本来の向きに戻すことにした。
 「じゃ、いくわよ。
  せ〜の!!」
 「「んんんんんん!!」」
 何度か同じ行為を繰り返し、ミサトの愛車は本来あるべき形に戻った。
 「ふぅ、どうもありがとう。
  助かったわ。」
 「いえ、僕の方こそありがとうございます、葛城さん。」
 それを聞いたミサトはかけていたサングラスを外すと、
 「ミサト・・・で良いわよ。
  改めてよろしくね、碇シンジ君。」
 「ハイ。」
 『ミサトさん、貴女も僕達が救って見せます。』
 シンジは心の中でミサトにそう呟いていた。


 その後、ネルフ本部と連絡をミサトが取る。
 少しの会話の後、愛車の損傷にため息をつくミサトを、シンジは懐かしそうな目で見ていた。





 「その後の目標は?」
 「電波障害のため、依然感知出来ません。」
 「モニター回復します。」
 そこには、未だ使徒が健在である事を示す表示が現れていた。
 「目標、健在です。」
 「なんて事だ!」
 「我々の切り札が!」
 「化け物め!!」
 それぞれに落胆の色が隠せ無い将校達。
 数分後、彼らが口にした言葉は、
 「今から本作戦の指揮権は君に移った。」
 だった。
 その言葉は、先ほど彼らの後ろで状況を見ていた、サングラスの男に告げていた。
 「了解です。」
 「我々の所有する兵器では、全く歯が立たなかった。
  君達にはアレが倒せるのかね。
 「そのためのネルフです。」
 それを聞くと、彼らは指揮所から出て行った。
 「国連軍がお手上げか、どうするつもりだ?」
 「初号機を起動させる。」
 「初号機をか?
  しかし、パイロットがいないぞ。」 
 「問題ない、もう一人の予備がもうすぐ来る。」
 








 シンジは、ミサトの愛車で大きくネルフと書かれた扉の中へ入っていた。

 懐かしいジオフロントへ、今降りている。
 
 少し前、ミサトと話しているとき、シンジはこの後に起きるであろう事実を告げたかった。
 しかし、その事が歴史にどう変化を与えるのか解らない現在の状況で、彼女にそれを告げる事は出来なかった。
 ただ、ドイツにて今訓練に励んでいるであろうアスカの事だけを考えていた・・・・・・・。
 『アスカは、ちゃんと戻ってきているんだろうか?』
 それは、少し前地上で綾波レイを見ていた事で少しは安心できた。
 『綾波も、戻ってきている。
  アスカも大丈夫だよね。』

 シンジは、手にしたネルフ概要を眺めながら物思いにふけっていた。





 「ゴメンねぇ、まだ慣れてなくて・・・・。」
 「ミサトさん、ここさっきも通りましたよ。」
 「そうだっけ?」
 『やっぱり、迷うんだ・・・・・。』
 「ちょっとその地図見せてください。」
 シンジは、ミサトの持つ地図を覗きこむと、確認する。
 『本部施設の構造も変わって無いんだ。』
 「ミサトさん、たぶんですけど・・・・こっちです。」
 「え?解るのその地図。」
 「はい、なんとなく・・・・・。
  それに僕、地理得意ですから。」
 全くの嘘。
 本部施設の地図は日本地図と同じでは無い。
 本来なら、この国の最高レベルの大学を出ているミサトにも解りそうな物だが、
 迷った事の焦りのよって、その嘘に気がつくことは無かった。
 数分間歩くと、目的のエレベーターについた。
 「ミサトさんここじゃ無いですか?」
 「え?あ、ええ、ここよここ。」
 ミサトが中に入ると、シンジもそれに従った。
 エレベーターに乗っている間、シンジは先ほどミサトから渡されていたネルフの概要書を読む。
 しかし、それは全て知っている。
 初めて来た事を装うためのポーズである。
 しばらくに乗っていると、エレベーターが止まりドアが開く。
 『リツコさんが乗ってくるんだよね。』
 シンジの記憶どおり、開かれたドアの向こうには水着の上からパーカーを羽織ったリツコがいる。
 「あら、リツコ・・・・・・。」
 「人での足りないこんな時に、油を売ってる暇があるのかしら?」
 「ゴメン・・・・・。」
 おどけるように手を顔の前に置き拝むミサト。
 「ふぅ、まあ良いわ。
  それより、この子が?」
 「そう、マルドゥックにより確認された、サードチルドレン。
  碇シンジ君よ。」
 それを聞いたリツコが、視線をシンジに移し、
 「よろしくね。」 
 と、特に感情のこもらない声で挨拶をする。
 『父さんに利用され殺された、かわいそうな人なんだ。』
 「は、はい。」
 シンジは複雑な心境だった。





 「では、後を頼む。」
 そう言って、席を外すサングラスの男。
 「三年ぶりの対面か・・・・・。」
 初老の男が感慨深そうに呟いた。
 「副指令、目標が再び第3新東京市に向け移動を開始しました。」
 「よし、総員第一種戦闘配置。」
 その命令が、すぐさま施設内に発令された。



 「総員第一種戦闘配置、繰り返す総員第一種戦闘配置。」
 施設内の放送がそう告げる中、シンジ達はエレベーターに乗っていた。
 「ですって。」
 「これは一大事ね。」
 そんな、大人達の会話に耳も貸さず、シンジはこれから起こるであろう事態について考えていた。
 『これから、Evaに乗って、使徒と戦うんだよなぁ。
  今度はトウジの妹を怪我させないようにしないと・・・・・。
  でも、S2機関は早めに手に入れておいた方が良いし・・・・・。
  そうだ、Evaにいる母さんに頼んでみよう・・・・・。』
 シンジがそんな事を考えている間にエレベーターは目的地に着く。
 “ガコン”
 無愛想な音を立て止まるエレベーター。
 そこから降りると、今度はゴムボートで移動する。
 そして、ボートから降りると真っ暗な部屋の中へ・・・・・。
 『ここに、初号機と父さんがいる。』
 ドアがしまる。
 「真っ暗ですよ。」
 “カコン”
 照明の灯る音。
 目の前には懐かしい初号機の顔があった。
 『母さん、僕はまた戻ってきたよ。
  二度と過ちを繰り返さないために・・・・・。』









 次回予告:シンジが初号機と対面していたころ、
      アスカはドイツで使徒侵攻のニュースを聞いていた。
      モニターに写る使徒。
      彼女はそれを見て何を思うのか・・・。
      次回『帰還(後)』
      
 
 
      真の補完は未だ終わらない・・・・・・・・・。
 



 

 

 

 あとがき:ど〜も『CYOUKAI』です。
      またまたスミマセン。
      ほとんど一話です。
      まあ、導入部はオリジナルに出来ないんで・・・・・・。
      スミマセン、言い訳です。
      あと、予告したマナさん出てきませんでした。
      でもそのうち必ず出します。
      では、今回もこんな駄文を読んでいただいてありがとうございます。
      心より御礼申し上げます。
      でわまた。


マナ:葛城さんと会えて嬉しそうだったわね。

アスカ:シンジはミサトに懐いてたからね。

マナ:だいたい、始まりは前世と同じ感じ?

アスカ:ここからが、シンジの力の見せ所よ。

マナ:同じ過ちは、2度と繰り返したくないもん。

アスカ:そう! だからアタシは、今度はアンタとシンジは接触させないのっ!

マナ:わたしとシンジが会うのは、過ちじゃないでしょっ!!!
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