目の前で硬く閉ざされている扉の前に私は今立っている。
 その扉が開くのを心待ちにしながら。
 
 

  Waiting for you......(Ver.MANA)              
                                               作:CYOUKAI

 
 今日は、私の人生でも最も重要日。
 


 ゼーレとの戦いを終え、帰還した私達。
 初恋の相手には振られちゃったけど、今の私にはもう昔の事。

 いつも、一人でいた私を、優しく見守ってくれていた彼。
 そう、今日、霧島マナは相田ケンスケの妻になる。


 昨夜、独身最後の夜を一人で過ごした私は、ホテルのモーニングコールで目を覚ました。

 それから、結婚式のための準備。

 メイクさんにお化粧をしてもらい、その後ドレスを着せてもらった。
 
 「式が始まるまで、少し一人になりたいから。」
 と、ホテルの中をドレス姿で散策。

 この結婚に、何の迷いもない。
 でも、心のどこかで初恋の彼が私を奪いに来てくれないかと、実現不可能な妄想を浮かべる。

 「彼が私を奪いに来たら、ついて行くんだけどなぁ。」
 ケンスケには聞かせられない独り言。
 
 式場の庭で、今日の晴れ渡った空を見上げながら考える。

 初恋の彼と、そしてケンスケとの出会いを・・・・・・・・・。










 まだ、使徒戦が激しかった頃、私はある組織のスパイとして彼らのいる第3新東京市に来ていた。
 目的は、“チルドレンの情報を得る事”
 
 当時、チルドレンはEva同様、最重要目標だった。
 Evaはチルドレンがいなければ動かず、チルドレンはEvaがなければ戦えない。
 ガードの固いEvaの情報は得られないが、中学生として学校へ通っているチルドレンに接触する事は、
そんなに難しい事ではなかった。

 そして、例に漏れず私は、彼らのいる中学校へと転入する。

 そこで出会った、少し気の弱い、でもとても優しい少年、碇シンジに私は一目惚れをしてしまった。
 本来は、任務として近づく予定であったが、彼に触れる度に、私は惹かれていった。

 その彼の周りには、無口な少女と気が荒く自分の気持ちに素直になれない少女がいた。
 彼女達は、私とシンジが接近するたびに不快感を隠そうとはしなかった。

 この時、私はシンジと相思相愛とまでは行かなかったが、思いを通じ合っていた。
 彼も私と好きだと言ってくれていた。
 束の間の幸福。
 しかし、それを私の任務が引き裂いた。
 


 最初から暴かれていたのか、それとも徐々に暴かれて行ったのか、今となってはわからないが、私の正体が
露見してしまったのだ。

 
 一時は、命の危険さえあった。
 しかし、それは一人のスパイによって助けられる。 
 そして私は、シンジの前から姿を消した。
 さらに日本からその存在を消した。
 
 そう、書類上“霧島マナ”は死亡した事になっていた。



 それから、彼らと再会するまでの話は、特に話すようなことは無い。
 一言で言えば、逃亡生活だったから・・・・・。



 そして、ゼーレとの戦いに勝ち、また平和な世界へと戻ってきた時、相田ケンスケとも再会した。


 私は、彼の優しさに触れて行くうちに、初恋の傷を癒して行った。
 彼は、いつも私を励ましてくれていた。
 
 
 そんな彼に心を奪われるのは、当然の事と言える。



 そして今、私は彼の妻となるべく、この扉の前で待っている。

 
 私がドレス姿で扉が開くのを待っていたその時、どこからか懐かしい彼の声がした。

 「マナ!!
  そこへ入っちゃダメだ!!」
 視線をその方向へ向ける私。
 そこに立っていたのは、初恋の彼、碇シンジ。
 「シンジ君?」
 戸惑う私の元へ彼が駆け寄る。
 「マナ、ダメだ!
  そこに入っちゃいけない!!
  僕と一緒に来るんだ!!」
 彼は、私の手をつかむと、そう言って私を連れ出した。


 私は、妄想が現実になった事に喜びを覚えていた。

 彼に手を引かれながら、エレベーターを待つ。

 なかなか到着しないエレベーター。

 急がないと、きっと誰かが気がついてしまう。

 彼もそれに気がついたのか、すぐ横にある非常階段へと向かう。

 狭い階段。
 
 彼は、一言「ゴメン」と言うと、私を抱き上げる。

 初恋の彼に抱き上げられ、私の胸ははちきれそうになる。

 『シンジ君が私を奪いに来てくれた!!』

 そのうれしさに、涙が止まらない。

 階段を駆け下りる彼には、かつての弱々しさが無かった。


 『彼は妻を捨て、私は婚約者を捨て、これから始まる愛の逃避行。』

 どこへ連れて行かれるのかはわからなかったが、私の心は期待でいっぱいだった。










 不意に彼が立ち止まる。

 見上げると、私が宿泊していたホテルと同系列の会社が経営する結婚式場。

 ついでに言うと、そのホテルのすぐ裏。

 庭は共有している事になる。

 「マナ、着いたよ。」

 彼に下ろされ、入り口を見ると、彼の妻アスカやその親友ヒカリなどがあきれた顔をしてる。

 「シンジ、何処にいたのマナは?」

 そう言うのはアスカ。
 
 「アスカ、君の言う通りだったよ。
  ホテルの方のローズマリーに居た。」
 「やっぱりね、庭をふらふら散歩してたから、入り口を勘違いしたのね。」
 
 アスカは、腰に手をやり、“やれやれ”と言った表情を浮かべていた。
 
 『何?
  何がどうなってるの?』


 私の疑問は、アスカによって答えられた。

 「マナ!!
  いくらなんでも、自分の結婚式場を間違えるなんて、普通しないわよ!!」

 「え?」

 私はまだ事態が飲み込めない。

 「だからね、マナ。
  君がいたのは、ホテルの方のローズマリー。
  式を挙げるのは、こっちの建物のローズマリー。
  きっと、庭を散歩してるときに、通用口を間違えたんだよ。」

 「え?え?」

 戸惑う私に、今度はアスカが大きなお腹を抱えながら、
 
 「まあ、時間には間に合ったから、早く中に入りなさいよ。」

 と、促がす。
 「全く、アンタは。
  妊婦が祝いに来てやってんのに、何やってんだか。」

 私は、結婚式場の階段をゆっくりと上って行く。

 途中、すれ違った人たちに、冷やかされながら・・・・・・・。











 私の勘違いで少しトラブルはあったけど、いよいよ結婚式本番。

 今、皆の祝福を受けながらバージンロードを歩く。

 その先には、メガネをかけ、少しカールした髪の彼が立っていた。

 「マナ、遅かったじゃないか。」
 
 「ケンスケ、ゴメン。」

 「まぁ、いいさ、多少の遅れはすぐに取り戻せるからな。」
 
 「アリガト。」



 式は滞りなく進み、私は彼の妻となった。






 「ケンスケ。
  私、今、幸せよ!」
 「それは、俺も同じさ。」

 
 並んで、立つ私達に、みんなが祝福の声をかけてくれる。

 「「「「「ケンスケ(相田)、マナ、おめでとう。」」」」」

 「「ありがとう。」」




 

 こうして、二人の余り者(笑)は、末永く幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし。















 あとがき:どーも『CYOUKAI』です。
      今回は、マナさんが幸せになる物語を書いて見ました。
      どうでしょう、マナさん幸せになれますかねぇ。
      きっと、ケンスケ君とだったら大丈夫だと思います。
      残るは、マヤ&リツコ、レイ&?、ですかねぇ。
      まあ、残るキャストに着いてもそのうち書きます。
      それと、今回もこんな駄文にお付き合いいただホントにありがとうございます。
      それでわ、また。
      
     


マナ:CYOUKAIさん?(▼▼#

アスカ:ま、まぁ、落ち着いて。(^^;

マナ:コロス!(▼▼#

アスカ:だ、誰にでも、入り口を間違えるなんて、よくあることよ。

マナ:そういう問題じゃないっ! 希望を与えて、更によくも落としてくれたわねっ!(▼▼#

アスカ:ちょ、ちょっと、火炎放射器は危ないって。(@@)

マナ:CYOUKAIさん、こんがえり燃えてね! 発射ーーーーーっ!(ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!)

アスカ:なむぅぅぅ。
作者"CYOUKAI"様へのメール/小説の感想はこちら。
sige0317@ka2.koalanet.ne.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

inserted by FC2 system