マナがシンジとの接触が出来ずにいた頃、ネルフの発令所では、新たなる使徒を確認していた。
 
 また、同時刻、綾波レイはネルフ施設内において、零号機の再起動実験を行っていた。



REPEAT of EVANGELION 
                                                                     
  第9話 『トリオ再び』後編                       作『CYOUKAI』

  
 ネルフ、実験ケージ内。

 そこに、ゲンドウを始めとするネルフの要人が、固唾を呑んで零号機の再起動実験を見守っていた。

 「零号機、起動を確認。」

 モニターに現れる表示を見ながら、オペレーターが報告する。

 そして、これから起動実験をさらに進めようとした時、

 「司令、発令所からです。」

 一人のオペレーターがインターフォンの受話器をゲンドウに手渡す。

 「そうか、解った。」

 ゲンドウが、受話器を元に戻すと、管制室に静かに宣言する。

 「使徒が現れた、零号機の実験は中止だ。」

 ゲンドウの宣言によって、全ての実験が停止する。

 「レイ、実験は中止だ、。
  起動は成功した、問題は無い。」

 エントリープラグ内のレイにゲンドウが中止を告げると、零号機の電源が落とされた。






 同時刻、発令所。

 「目標を光学で確認。」
 
 モニターに写る映像を見ながら、オペレーターが報告をする。

 「前回は15年、今回は3週間ですか。
  かなり、自分勝手ですね。」

 オペレーターの日向マコトは、傍らに立つミサトに軽口を叩く。

 「そうね、女性には嫌われるわ。」

 マコトの軽口をこれまた軽口で返すミサト。

 彼女の表情はすぐに引き締まり、初号機で待機するシンジに目を向ける。

 「シンジ君、準備は良い?」

 「大丈夫です。」

 「すぐに、出てもらうから。」

 「はい。」

 モニター内に写るシンジの表情が柔らかい事に、彼女は安堵していた。

 その間にも、第3新東京市に向け侵攻してくる使徒。

 その姿は、エイのようにも見え、また、イカのようにも見える。

 臙脂色をした奇妙な形をしていた。





 
 丁度その頃、シェルター内に非難していたトウジとケンスケ。

 「なあ、ちょっと二人だけで話があるんだけど。」

 携帯TVに写る、放送停止の画面に渋い顔をしたケンスケが、隣に座るトウジに話しかける。

 「なんや?」

 「なあ、ちょっと付きあってくれ。」

 「ああ、ええでぇ。」

 二人は、おもむろに立ち上がると、委員長のヒカリの所へ行く。

 「委員長、ワイら二人、便所や。」

 トウジがそう告げると、ヒカリは少し怪訝そうな顔で、

 「もう、そう言うのは先に済ませておいてって言ってるでしょう。」
 
 と、不平を言う。

 「すまんな。」

 トウジがそう言うと、二人はシェルター内のトイレへ向かった。




 トイレの中で用を足しながら、ケンスケが一方的に話をする。

 「なぁ、外で何が起きてるか知りたくないか?」

 「はぁ、おまえ正気か?
  こんな時に外に出たら、死んでまうで。」

 「ここにいたって同じさ。
  だから、同じ死ぬなら見たい物見てからにしたいじゃないか。」

 「そやけど・・・・。」

 「それに、トウジは見届ける義務があるんじゃないか?」

 「何のことや?」

 「結局、前回の戦闘でもシンジが勝ったから、俺達は生きていられる。
  それを、たかが貯金箱ぐらいで殴ろうとした。
  今回だって、シンジが負ければ俺達もあの世行きだ。
  だから、お前にはシンジの戦いを見届ける義務がある。」

 ケンスケは真顔でトウジに言葉を投げかける。

 「全く、お前に屁理屈唱えさせたら、右に出る者はおらんなぁ。
  わかった、ワイも男や、付きおうたる。」

 トウジは、胸を張って答える。

 「ありがとうな、トウジ。」

 そうして、二人はシェルターを抜け出していた。







 「シンジ君、出撃よ!!」

 「了解。」

 シンジが、モニターに写るミサトに向かい、大きくうなづく。

 「エヴァ初号機、発進!!」

 ミサトの掛け声と同時に、初号機が打ち上げられる。

 ビルに偽装した発進口に上がる初号機。

 『前回は、煙で使徒を見失ったのが不味かったんだ。』

 シンジは、前回の記憶を呼び戻し、最良と思える方法を考える。

 『まず、軽く射撃して、注意をこちらに向ける。』

 「シンジ君、訓練どおりにやれば良いわ。」

 「はい、解ってます。」

 シンジはそう答えると、ビルの陰から初号機を使徒の背後へ向ける。



 ダダダダダダダダッ!!!


 使徒の背後から、短時間の射撃。

 爆煙が上がる前に、後方へ移動。

 今まで、初号機のいた辺りに、光の鞭が襲いかかる。

 「もう一度!!」


 ダダダダダダダダッ!!


 再度、短時間の射撃。

 またもや、爆煙が上がる前に、後退。

 光の鞭は、またもや虚空と兵装ビルを切り刻む。

 
 シンジは、幾度か同じ行為を繰り返していた。





 「おい、逃げてばっかりやないか。」

 トウジは、初号機の動きを見て、そう言った。

 「何か、作戦が有るのかもしれないよ。」

 ケンスケが答える。

 ケンスケは、ビデオカメラを片手に、少し興奮した表情を浮かべていた。

 「なあ、ケンスケ。
  さっきから気になってたんやけど、あのロボットこっちに近づいてきてへんか?」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 トウジの問いに、ケンスケは答えない。

 なぜなら、彼はファインダー越しに状況を見ていたため、広い視野で状況を見てはいなかった。

 



 散発的な攻撃と後退を繰り返すシンジ。

 何度目かの後退を行おうとしたとき、背後の斜面に足を取られ、尻もちをついてしまう。

 「うわぁぁぁ!!」

 敵を目の前にしての失態。
 
 シンジの脳裏には、あの時の記憶がよみがえる。

 「まさか・・・・・・。」

 そう呟いて、おそるおそるエヴァの左手に目を向けると、そこにはトウジとケンスケが頭を抱えて

 うずくまっていた。

 「やっぱり・・・・・・。」

 
 その映像は、発令所でも確認された。

 すぐさま、ケンスケとトウジの資料がモニターに映し出される。

 「シンジ君のクラスメート?」

 ミサトはその資料を見て愕然としていた。

 『何で、一般人が居るのよぉ!!』

 状況が最悪の展開なのではと、ミサトは思った。

 その時シンジから、

 「ミサトさん、二人をプラグに乗せます!!」
 
 と、通信が入る。

 「解ったわ、仕方がないけど、そうしてちょうだい。
  シンジ君、二人を収容後、急いで戻ってきて!」

 「大丈夫です。
  二人を乗せてから使徒を殲滅します。」

 「何言ってんの!!」

 「早く、プラグを出してください!!」

 シンジの求めに応じて、ミサトが指示を出す。

 「初号機のエントリープラグを排出、急いで!!」

 それに答えるように、オペレーターが行動する。

 排出されるエントリープラグ。

 それと同時に、マイクに向かい叫ぶミサト。

 「二人とも急いで、コクピットに入って!!」

 その声を聞いた二人は足の震えを抑えながら、プラグ内に入る。

 二人を収容したシンジは、すぐに初号機のプログレッシブナイフを装備する。

 「プログレッシブナイフ装備を確認。」

 動きが止まった初号機に、使徒が鞭を振るって襲いかかる。

 「ウヲォォォォォォォォォォォ!!!!!」

 シンジは、プログレッシブナイフを振りかざし、使徒へと向かう。

 使徒まで後一歩と言う所で、二本の鞭が初号機の腹部に突き刺さる。

 「ぐわぁぁぁ!!」

 腹部に感じる痛みをこらえながら、シンジは初号機を前に進めた。

 そして、ナイフをむき出しのコアに突き立てる。

 「くぅぉのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
 
 火花を散らしながら、コアを切り裂くナイフ。

 その火花が、初号機に降り注いでいた。

 
 バキン!!

 
 そしてついに、コアへ亀裂が入りその輝きが無くなった。



 「目標、完全に沈黙。」

 モニターの様子を見ていたマコトが、戦闘の終了を報告する。

 「ふぃぃぃぃ。
  みんな、ご苦労様。
  それとシンジ君、その二人と一緒に、ゲージで待機しててちょうだい。」

 「了解です。」

 モニター内のシンジの顔が少し俯いていた。









 初号機がゲージ内に戻ると、すぐにミサトが降りてきた。

 「シンジ君、何であんな無茶を!!」

 「すみません、ミサトさん。
  でも、戻っている間に、使徒が暴れるんじゃないかって心配だったんです。」

 「そう・・・・・・。
  でもね、シンジ君にはワタシの命令を護る義務があるのよ。
  これからは、気を着けてね。
  それと、そこの二人!!!」
  
 ミサトは、シンジの後ろに隠れるようにしている、トウジとケンスケを指差し、声を

 大きくする。

 「あなた達、何で戦闘中にシェルターから出てるの!!
  今回は、シンジ君の機転で何とかなったけど、死んでも文句言えないのよ!!!」

 ミサトは整った顔を、怒りに歪め二人を怒鳴る。

 「「す、す、すみません!!!」」

 トウジとケンスケは、謝る以外に方法が無かった。

 その後、ミサトと入れ替わりにやってきた保安部の人間や彼らを引き取りに来た教員に

 こってりと絞られた二人は、二度とシェルターを抜け出す物かと、心に誓っていた。






 その後、ミサトから多少ではあるがお小言をもらったシンジは、シャワーを浴びてロッカールームで

 着替えていた。

 「シンジ君、入るわよ。」

 ドアの向こうから、ミサトが話しかける。

 「はい、どうぞ。」

 着替えを済ませていたシンジが、彼女の入室に同意する。

 「シンジ君、一つお願いが有るんだけどね。」

 「なんですか?」

 「この先、戦闘中にあなたが何かひらめいたとするでしょう。
  その時は、迷わずにワタシに言ってちょうだい。
  現場の判断を考慮して、指示を出すから。」

 「はい、これからはそうします。」

 「よろしい。
  ワタシとしても、あなた達チルドレンに死んで欲しくないのよ。
  わかるでしょ?」

 「はい、わかります。」

 「じゃあ、そう言う事で。」

 ミサトは、シンジに投げキッスをすると、部屋を出て行った。

 「さてと、トレーニングルームによって行くか。」

 ミサトが出て行くのを確認すると、シンジもロッカールームを出て行く。








 戦闘が終わり、街の中で後始末が始まる。

 戦闘によって破壊されたビルや、居住区の建物の残骸を片付けるのである。

 そんな中、一つの半壊したアパートの中で、身動きが取れずに居る少女が居た。

 彼女は、霧島マナ。

 体調不良で欠席し、さらに眠っている間に使徒襲来。

 避難勧告中も夢の中。

 気が付くと、瓦礫の中で右も左もわからない状態に置かれていた。

 「全く、どうなってんのよ?
  寝ている間に、アパートは壊れちゃうし、身動き取れないし。
  これじゃ、仕事に遅刻しちゃうわ。」

 この時点では、彼女は自分の状態を楽観視していた。

 しかし、事実は違っていた。

 彼女のアパート周辺の処理が終わったのは、翌日の13時50分。

 つまり、彼女は丸一日ホコリっぽい残骸の中で過ごしていたのである。
 
 しかも、常夏の第3新東京市。

 昼間は、その暑さで気を失うほど。

 なぜなら、残骸の中にはエアコンは無い。

 救助されたとき、マナの体重は数Kg落ちていたそうだ。

 「なんだって言うのよ。
  私だけに、こんなに不幸がやってくるなんて!!
  きっと、誰かが私を呪っているに違いないわ!!!
  体重が落ちたのは嬉しいけど、余計なところまで痩せて無いと良いなぁ。」

 ちなみに、彼女のスリーサイズが、救助前より2サイズ落ちていた事は、彼女と

 作者だけの、ヒ・ミ・ツ。







 
  次回予告:シンジが第3新東京で戦っている頃、  
       遠く離れたドイツの地では、アスカが訓練に励んでいた。
       そんな彼女が書き始めた日記。
       そこには、いったい何が書かれているのだろうか?
       次回『アスカの日記』
       お楽しみに。





 あとがき:どーも『CYOUKAI』です。
      後編が出来ました!!
      一つにまとめられなくて、前後編になってしまって、
      なんとも、自分の不甲斐なさにがっかりです。
      某E計画責任者が居たら、「無様ね」とはき捨てられてしまいそうです。
      まあ、これからも頑張って行こうと思いますので、よろしくお願いします。
      
      それでは、今回も小生の駄文にお付き合いいただきありがとうございます。

      それでは、また。


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