「シンジ君、使徒殲滅の為に新しい作戦の説明をするのでワタシの家で待機していて頂戴。」
 
 ミサトのこの言葉を聞いた時、シンジはこれから始まるアスカとの同居に心を高揚させていた。

 シンジは、その場でミサトの部屋の鍵を預かるとネルフを出る。

 しかし、ミサトの部屋に着くと、既に鍵が開いていた。

 『アスカ、もう来てるんだ・・・。』

 シンジは、思わず顔を綻ばせてしまうのだった。


 
 REPEAT of EVANGELION
  第14話 『パーフェクトユニゾン』                     作『CYOUKAI』 

 

 シンジは玄関で靴を脱ぐと、リビングへと向かうとそこには、タンクトップにショートパンツ姿の

 アスカが居た。
 
 「おかえり、シンジ。」

 「ただいま、アスカ。」

 見詰め合う二人が、抱き合おうとしたその時。

 「ただいまぁ〜。」

 玄関から、ミサトの声がした。

 慌てて離れるシンジとアスカ。

 「まだ、喧嘩してんの?」

 顔を赤くして背を向けあっている二人に、ミサトは声をかける。

 「け、喧嘩じゃないわよ!!」

 「そうですよ、意見の交換による結果です!!」

 「それを、喧嘩って言うんじゃないの?」

 あまりにも支離滅裂な発言をミサトに指摘され、二人は思わず見詰め合ってしまう。

 「それより、この状況を説明して下さい、ミサトさん。」

 これ以上突っ込まれることを警戒したシンジが、話題を変える。

 それに乗じて、アスカも首を縦に振る。

 「え〜と、今日から1週間、二人には此処で生活してもらいます。」

 そう宣言するミサト。

 『やった〜。シンジと同居だ!!』

 『アスカと一緒に暮らせる!!』

 二人は、この状況に喜びを覚えていたが、それとは正反対の発言をする。

 「なに考えてんのよ!!
  昔から、男女七歳にして同衾せずって言うでしょ!!」
 
 「アスカ・・・難しい日本語知ってるのね。」

 「あったり前でしょ!!アタシは天才なんだから・・・・・ってそう言う事じゃなくて!!」

 「コレは命令です、拒否は認めません。」

 「アタシにナンカあったらどうすんのよ!!」

 『ホントは何時でも良いんだけどね』

 「ナンカってな〜に?」
 
 「だから、その・・・・・・シンジに襲われるとか・・・・・。」

 「だ〜いじょうぶ、シンジ君にそんな勇気無いから。」

 『ナンカ、酷い事言われてるよ・・・僕・・・。』

 「シンジ君も、そんな事しないわよねぇ?」

 「あ、あ、当たり前じゃないですか!!」

 「あら〜、顔を赤くしちゃってカワイイ〜。
  まあ、我慢できなくなったらワタシに言って頂戴。
  一肌脱ぐから。」

 そう言って、ウインクするミサトを見たアスカが怒りに顔を赤くした。

 「ミサト!!何言っての!!
  あんたがシンジに手を出したら犯罪よ!!!」

 「アスカぁ、もしかしてジェラシー?」

 「そ、そ、そんな事無いわよ!!」

 更に顔を赤くしたアスカはそう言うと俯いてしまった。

 「まあ、良いわ。
  シンジ君の部屋とこの部屋を今日中に繋ぐから、そのつもりでいてね。」

 「繋ぐって・・・・。」

 シンジは、自分の部屋とミサトの部屋が繋がる事に不安を感じていた。

 「ミサトさん、ちょっと良いですか?」

 「なに、シンジ君。」

 真剣な眼差しでミサトに話しかけるシンジ。

 「突然で申し訳ないんですけど、父さんに連絡を入れて貰えませんか?
  僕が話したいと言って。」

 「なぜ?」
 
 「ちょっと、父さんに話が有るんです。」

 「解ったわ。」

 ミサトはそう言うと、受話器を取る。

 『何を話すか知らないけど、うまく行けば私の疑問に答えが出るかも知れないわね。』

 呼び出し音を聞きながら、ミサトは自分の疑問を解くヒントを得られれば良いと考えていた。

 「あ、私です、葛城ミサトです。至急お話があるので、碇司令に繋いでください。
  はい、はい、そうです。」

 暫くの沈黙。

 「あ、葛城です。司令にシンジ君がお話があるみたいなので。
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
  はい、代わります。」

 ミサトはそう言うと、受話器をシンジに差し出す。

 「ありがとうございます。」

 そう言って受話器を受け取ったシンジは、電話に向かって話し始める。

 「あっ、父さん?僕だよ。実はお願いが有るんだけど。
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
  良いのかな、そんな事を言って。母さん怒ると思うけどなぁ。
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
  解ってくれたみたいだね、じゃあ、話すけど。ミサトさんと僕の部屋を繋げるって聞いたんだけど。
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
  うん、それ自体に文句は無いんだけど、その繋げた所にドアを着けて欲しいんだ、頑丈なヤツをね。
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
  そう、それで良いから・・・、じゃあ頼んだよ!!」

 シンジは話し終えると、受話器をミサトの返す。

 「ミサトさん、父さんが話が有るそうです。」

 「なんだろぅ?」

 少し怪訝そうな顔をしたミサトだったが、すぐに受話器を受け取る。

 「代わりました、葛城です。
  ・・・・・・・・・・・・・・・。
  はい、それは構いませんが。
  ・・・・・・・・・・・・・・・。
  解りました、そうします。では、失礼します。」

 ミサトは会話を終えると、受話器を戻した。

 



 丁度同じ頃、ネルフの司令室で受話器を置いたゲンドウは震えていた。

 『シンジとユイのペアには勝てん。
  私の若い頃の生態を知っているユイを味方に着けられては・・・・・・。』

 その様子を、ゲンドウの隣で聞いていた冬月は、笑いを堪えていた。

 『碇よ、そんなの息子が怖いのか?
  ぷぷぷッ・・・・何があったか知らんが、弱みを握られたようだな。
  今のお前の顔は、今まで見た中で一番笑えるぞ・・・。』
 
 未だに、シンジが初号機の中でユイと再会している事を知らない冬月では有ったが、ゲンドウの姿から

 シンジに何か弱みを握られている事だけは理解できた。

 『手遅れにならんうちに、息子と和解したほうが良いのでは無いか・・・・・・碇?』

 怯えたようなゲンドウの姿に、冬月はシンジが何を掴んでいるのか今度聞いてみようと思っていた。




 
 再び葛城家。

 「え〜と・・・シンジ君とワタシの部屋の間にはドアが付きます。
  まあ、プライバシーの保護と言ったところかしら・・・。」

 「で、同居は変更無しなのね?」
 
 「それは、変わらないわ。」

 「まあ、良いわ。
  アタシ、我慢するから。」

 「そう、そうしてくれるとありがたいわね。」

 飛び跳ねたい気持ちなのにそれとは逆の行動を取らなければいけない事に、アスカはほとほと疲れていた。

 だが、確実に言える事は、

 『『これで、また一緒に暮らせる』』
 
 という事だった。

 こうして、シンジとアスカのユニゾン訓練が始まった・・・・・のだが。

 始まって見ると、ミサトには驚きの連続だった。

 なんと言っても、初回からパーフェクト。

 更に難易度を上げても、暫くすればピッタリと合ってしまう。

 しかも、日常生活までもがユニゾンし、ミサトを悩ませてしまう。

 その一例を挙げてみよう。

 
 




 ユニゾン訓練の初日。

 早朝、シンジが葛城家と繋がれたドアから入ってくる。

 ミサトはまだ起きていない。

 同時にアスカが部屋から出てくる。

 「「・・・・・・・・・・・・・。」」

 無言では有るが、互いに微笑み合う。

 そのままシンジがキッチンへと向かい、朝食の準備をする。

 その間に、アスカが風呂を炊きミサトを起こす。

 「あ、おはようございます、ミサトさん。」

 「ええ、おはようシンジ君。」

 「ちょっと待っててくださいね、朝ご飯、すぐできますから。」

 「りょ〜かい。」
 
 一通り朝の挨拶を交わすと、シンジは再び料理に取り掛かる。

 そこへ、風呂に入る用意をしたアスカが来て、

 「ミサト、ビールばっかり飲んでると太るわよ!!」
 
 と、既にビールを飲んでいるミサトに声をかける。

 「大丈夫よ、ワタシにとってビールと水は同じような物だから。」

 「なら良いけどね・・・あとで泣きを見るのはアンタだからね!」

 「はいはい。」

 ミサトは、「早く風呂に入ってきなさい」と言うように、手を振る。

 そんな二人の会話に気が付いたシンジが、ミサトの分の朝食を持って、リビングにやってくる。

 「はい、ミサトさん。」

 「ありがと〜シンジ君。」

 テーブルの上に置かれた皿を見て、ミサトはお礼を言う。

 「ねぇ、アスカの分は?」
 
 置かれた皿が二人分なのに気が付いたミサト。

 質問を受けたシンジが、アスカの方を向くと暫くの沈黙。

 そして、

 「いつも通りよ。」

 「解ったよ。」

 微笑んだアスカにシンジが頷く。

 「20分位で、上がるみたいですから、その後です。」

 「???????」

 『なに、今のは?
  まるで、アスカと以前から一緒に居たみたいだわ。
  この前逢ったばかりなのに、なぜいつも通りだけで解るの?
  あの短い会話の中で何か合図があったみたいだわ。』

 ちなみにシンジとアスカにとっては特別な会話では無い。

 前世の記憶からいつも通りが20分位と言う事を割り出して、シンジが同意しただけである。

 ただ、事情を知らない物から見れば、異様としか言い様が無いのだが・・・・・・・。

 「さあ、ミサトさん先に食べてください。
  アスカは、スクランブルエッグじゃなくて、目玉焼きが良いみたいですから。」

 「え・・・ええ、じゃあ、先に頂くわね。」

 「はい、めしあがれ。」

 こうして、ミサトが食事をしていると、きっかり20分してアスカが風呂から出てくる。

 何も言わずに冷蔵庫の中から牛乳を取り出し、そのまま飲もうとするとシンジの視線に気が付いたのか、
 
 アスカがシンジの方を向く。
 
 「いつも言ってるだろ?」

 「あ、そうね。」

 今度は、シンジが微笑みアスカが頷く。

 そして、飲もうとしていたアスカがそれを止めると、食器棚まで歩いて行きコップを取り出し

 そこへ牛乳を注ぐ。

 コップ一杯に牛乳を注ぐとそれを一気に飲み干した後、キッチンへ行きそれを水に浸す。

 そして、自分とアスカの分の朝食を持ったシンジと共にリビングへと戻ってくる。

 「「いただきま〜す。」」

 二人は声を揃えると、食事を始めた。

 その様子を伺っていたミサトの目の前で、更に信じられない光景が続く。

 アスカがシンジの方を向き、

 「シンジ。」

 名前を呼ぶ。

 「はい。」

 シンジが小さく頷き、ソースを手に取ってアスカへ渡す。

 「アスカ。」

 今度はシンジだ。

 「うん・・・・はい。」

 アスカはシンジに醤油を渡した。

 『何よコレ・・・二人の間に会話は要らないの?』

 暫くして、二人は同時に食事を終える。

 「「ご馳走様。」」

 二人並んでキッチンへ行き、使った皿を洗っている。

 「シンジ・・・・今日はアタシが・・・・・。」

 「そう、アスカが作ってくれるの?」

 「うん、ハンバーグ。」

 そして、見詰め合って微笑むと、シンジが口を開く。
 
 「ミサトさん、今日の晩ご飯は、アスカがハンバーグを作ってくれるそうですよ。」

 「え?」

 「ですから、アスカがハンバーグを作ってくれるをそうですよ。」

 「ねぇ、シンジ君。
  今の短い会話の中で、何でアスカがそうしたいって解ったの?」

 「え、あ、そう言えば何ででしょうね?
  ただ、アスカの顔を見ていたらそう言いたいのではと思っただけです。
  それに、アスカも同意してくれてますし。」

 「そう。」

 「何か、変ですか?」
 
 「別にそう言うわけじゃ無いんだけどね・・・・・・。」

 『自分の殻に入り易くて、他人とのコミュニケーションが旨く無いって、報告書には書いてあったわよね?
  全然違うじゃない!!  
  今だって、平然とアスカを呼び捨てにしてるし・・・・。
  本当に何か有るんじゃないかしら?』

 ミサトは、シンジの行動を見て、以前から持っていた疑問が膨らんでいた。
 
 ミサトは柄にも無く考え込んでいたせいで、料理が冷えてしまった事に気がつかない。

 その内、何時までたっても食事を終えないミサトに、アスカが怒りを露にする。

 「ミサト!!早く食べちゃって!!全く、片付かないじゃない!!」

 「あ・・・ええ、解ってるわよ!」

 「ホントに解ってるの?
  アンタ、早くしないとネルフに遅刻するわよ!!」

 そう言って、時計を指差すアスカ。

 時間は、9時を少し回った辺り。

 「ああっ、いけない!!」

 「ほら、見なさい!!
  遅刻して、リツコにお小言を言われても知らないから!!」
 
 「じゃあ、ワタシは出かけるから、二人とも、ちゃんと訓練するのよ!!」

 「「解ってるわよ(ますよ)!!」」

 「それじゃ、いってきま〜す!!」

 「「いってらっしゃい!!」」

 出て行くミサトを送る二人。

 出がけの挨拶まで、綺麗にユニゾンしていた。



 と、言う様に、万事がこの調子なのである。

 その後、ミサトはその奇妙な二人に気まずくなったのか、それとも二人の事を誰かに相談していたのか、

 一日おきに家を開ける様になった。  



 そんな訳で、シンジとアスカは一日一時間だけユニゾンの訓練をすると、後は自由時間。

 シンジの部屋で彼のチェロを聴いたり、二人で出かけたりしていた。

 それでも、学校はネルフの任務と言う事で休んでいたので、暇な時間が増えると、その分二人の間は

 急接近して行く
 
 二人は暇さえあればキスの嵐。

 アスカはシンジに甘えっぱなし。

 シンジも、そんなアスカを優しく抱き止める。

 家にいたペンペンが、その度に自室である冷蔵庫に缶詰めになっていた。

 二人が学校を休む様になってから、三日が過ぎたある日。

 トウジとケンスケ、それにヒカリは、担任の頼みでそれぞれがシンジとアスカの許を訪問する予定だったのだが、

 トウジ達とヒカリが、エレベーターの出口で出会ってしまう。

 「なんで、アンタ達が此処にいるのよ?」

 アスカの分のプリントを届ける様に頼まれたヒカリが、怪訝そうな顔で、トウジとケンスケに尋ねる。

 「ワイらは、シンジの所へプリントを届けに来たんや。
  それより委員長は、なしてこんな所におるんや?」

 自分達の目的を説明したトウジが、逆にヒカリに聞き返す。

 「私は、アスカさんにプリントを届ける様に頼まれて、先生に住所を聞いてきたのよ。」

 「そうか・・・・・・。」

 理由を聞いたトウジ達は、シンジの部屋へと向かって歩き出す。

 そして、シンジの部屋の前に立つ、トウジとケンスケ。

 さらに、その二人の横にヒカリが立つ。

 「「なんで、アンタ達(委員長)がココでとまるのよ(んや)?」」  
 
 同じ部屋の前に立つ三人。

 トウジとヒカリに構わず、ケンスケがインターフォンのボタンを押す。

 “ぴ〜んぽ〜ん”

 呼び鈴の音の後、中からシンジの声がした。
 
 「は〜い、どちらさま・・・・・。」

 ドアを開けると同時に、シンジが現われる。

 そして、その後について来たアスカがシンジの後ろから、顔を出した。

 「な、な、なんやぁ〜?」

 トウジは、シンジの部屋にアスカが居る事に驚き。
 
 「お前ら、何て格好を・・・・・。」

 ケンスケは、シンジとアスカが着ている、お揃いの衣装に驚く。
 
 「二人とも・・・・・・不潔よぉぉぉ!!!!」

 更に、二人の格好から良からぬ想像をしたヒカリが、大声で叫ぶ。
 
 「「誤解よ(だよ)!!」」

 「五回も六回も無いわ!!」

 「「お前ら、なんて恥ずかしい格好を・・・・イヤ〜んな感じ!!」

 玄関前で、五人がそれぞれに口を開く。

 その騒ぎを聞きつけたミサトが、自分の部屋からシンジの部屋を通り抜け、玄関へ現われた。
 
 「何を、騒いでいるのよ!
  みんな、中に入りなさい!!」

 ミサトの指示で、シンジの家の中に入るトウジ達三人。

 そこで、ミサトから事情を説明され、とりあえず納得した三人は、リビングの正面で訓練に励むシンジと

 アスカに目を向ける。

 「で、葛城一尉、どうなんですか二人は?」

 ケンスケが、ミサトにそう尋ねると、ミサトは口にしていたエビチュの缶をテーブルに置き、

 シンジ達を指差す。

 「どおって、ごらんの通りよ・・・・。」

 ミサトがそう言った時、丁度シンジとアスカがフィニッショを決めていた。
 
 そして、彼らの背後にある電光掲示板に得点ならぬユニゾン率が現われる。

 “100%”

 その数値に、トウジ達三人は言葉を失う。

 「シンジ、ここまでにしましょう。」

 「そうだね、アスカ。」
 
 二人はそう言うと、手を繋ぎながら、みんなの方へ歩み寄る。

 「お前ら、手なんか繋ぎおって!」

 「そう言う関係だったのか?」

 そう言うと、トウジとケンスケは互いに抱きしめ合い、本日二度目のセリフを吐き出す。

 「「イヤ〜んな感じ!!」」

 そして、ヒカリが真っ赤に染めた顔を上げると、こちらもまた本日二度目のセリフ。

 「あ、貴方達・・・不潔よぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 良く通る声が部屋中に響き渡り、近くに居たトウジとケンスケがひっくり返る。

 テーブルの上のコップにヒビがはいる。

 ミサトの化粧にもヒビが(バキッ!!)「アタシは厚化粧じゃ無いわよ!!」

 も、もとい、ミサトが耳を塞ぐ。

 しかし、当の本人達は気にする素振りも無く。

 「アタシ達は、心を重ねる訓練をしているの。
  コレ位のスキンシップは当たり前だわ!!!」

 「そうだよ、委員長。
  僕達は、使徒を倒すために、全てのタイミングを合わせる必要があるんだよ。
  そのためには、多少のスキンシップもかまわないと思ってる。
  そうしないと、心を重ねる事なんか出来ないからね。」

 自信満々の態度でヒカリに話すアスカと、優しく微笑みながらヒカリに説明するシンジ。

 二人の真剣な眼差しに、ヒカリは批難した事を恥ずかしく思っていた。

 「ごめんなさい、貴方達がそんなに真剣だとは知らなかったから・・・。」

 「わかってくれれば良いわよ。」

 「そうだよ、洞木さん、僕達は真剣なんだよ。」

 自分達の想いが伝わった事を確認した二人は、謝罪するヒカリにそう言った。

 その後、自由時間となったシンジとアスカを交えて、5人は楽しい一時を過ごす。

 しかし、楽しい時間は瞬く間に過ぎて・・・・・。

 「「じゃあ、ワイ(俺)らは帰るわぁ〜。」」

 そう言って、立ち上がるトウジとケンスケにあわせて、ヒカリも立ち上がり、

 「じゃあね、アスカ、碇君。
  二人とも頑張ってね。」

 と言って、玄関に向かう。

 「鈴原、ヒカリをちゃんと家まで送るのよ!!」

 「わかっとるわ!!
  ほな、ケンスケ、委員長、行くでぇ〜。」

 「みんな、気を付けて帰ってね。」

 シンジとアスカは3人を見送ると、リビングへと戻る。

 当然のごとく手を繋いで・・・・。

 その様子をエビチュを飲みながら見ていたミサト。

 『やっぱりこの2人、何かおかしいわ・・・・・。』

 共同生活が始まってから、ずっとミサトの頭の中に有った疑問。

 ユニゾンの訓練初日で、100%を叩きだす2人。

 共同生活で、体内時計を合わせる必要も無い程完璧であった。

 更に、ミサトを驚かせたのがアスカの変化。

 ドイツに居た頃のアスカは、家事全般に興味を示す事は無かった。

 それが今では、シンジと並んでキッチンに立ったり、2人で洗濯物を干したりと、ミサトの知る

 アスカ像とはかけ離れた行動を取っていた。

 『まさか、ドイツで何か有ったのかしら?』

 洗脳とまでは行かないまでも、何か操作を受けたのでは無いかと思ってしまうほどのアスカの変化。

 そして、そのアスカに引けを取らないほどの違和感を持つシンジ。

 彼は、人との一時的接触を恐れる様子も無く、アスカともスキンシップを取っている。

 一日の訓練が終わると、アスカと一緒に買い物に出かけたりする。

 他人から見れば、デートにしか見えない。

 ネルフから帰ると、アスカの部屋で二人の笑い声が聞こえる事もある。

 『シンジ君も何かおかしいわ。』

 ミサトは、言い知れぬ違和感に包まれて行くのを感じていた。




 ミサトが、そんな違和感を持っているとは露知らず。

 シンジとアスカは、夕飯までの二人だけの時間を楽しんでいた。

 「ねぇ、シンジぃ〜。」

 「なに?」

 「分裂君を倒したらさぁ〜、ピクニックに行こうよ〜。」

 「え〜!学校があるよ?」

 「良いじゃない、そんなの一日位休んだってさ〜。」

 「あのねぇ〜、アスカ。
  僕は、君と違って大学も出てないし、学校の成績だってそんなに良くないんだよ?」

 「でも〜、シンジとピクニック行きたい〜。」

 「もう、我侭言わないでよ〜。」

 「行きたい、行きたい、行きたい〜!!」

 「だから、僕は勉強しなくちゃいけないんだってばぁ。」

 アスカは、シンジとピクニックに行きたいのだが、シンジは学業を優先したかった。

 『何とかして、シンジとピクニックにいける時間を作らなくちゃ!
  休日だと、何処もかしこも混んでてイヤになるから、平日がいいのよ。
  でも、シンジは勉強の事が心配みたいだし・・・・・・・そうだ!!』

 その、明晰な頭脳で何かを思いついたアスカ。
 
 緩んでいた表情を、更に緩めると、

 「じゃあさ、こうしましょうよ!」

 と、提案する。

 「どうするの?」

 その提案が気になるシンジは、内容を聞く。

 「まずね、分裂君を倒したら、ピクニックに行く事は決定!!」

 「それで?」

 「学校の勉強は、アタシが教えてあげるわ!」

 「アスカが?」

 「そう、アタシがシンジの解らない所を教えてあげる。
  それなら、シンジの勉強も遅れない、アタシ達はピクニックに行ける、と言うわけで、
  万事解決よ!!」

 「そうか、アスカに僕の勉強を見てもらえば良いんだ!!」

 「そうよ!!」

 「じゃあ、分裂君を倒したら、一緒にピクニックに行こうね。」

 「ウン!!」
 
 シンジの了承を得たアスカは、満面の笑みを浮かべる。

 そんなアスカが可愛くて、シンジは思わず抱きしめてしまった。

 「あん・・・・シンジぃぃ。」

 「アスカ、可愛いね。」

 「アリガト、シンジ。
  アタシはね、シンジにそう言ってもらうのが一番嬉しいんだよ?」

 「じゃあ、もっともっと言ってあげなくちゃね。」
 
 「そうよ。
  もっともっともっと、シンジの愛を感じさせて。
  まだ、大人の関係にはなれないけど、全てが終わったら・・・・ね?」

 「そうだね、全てが終わったらアスカと一つに・・・・。」

 「そうと決まったら、今日は早くご飯を食べて、寝ましょう。」

 「うん、そうだね。」

 「そう言えば、今晩ミサトは?」

 「帰って来るみたいだよ、だからご飯の準備をそろそろしなくちゃ。」

 「今日は、アタシが作るから、シンジはお手伝いね。」

 「わかってるよ。
  それより、何を作るの?」

 「そんなの決まってるじゃない!
  カレーよ!!!」

 「カレーかぁ。」

 ちょっと不満そうなシンジの顔に気が付いたアスカ。

 彼女も、不機嫌そうな顔をする。

 「何よ、ナンカ文句あるの?」
 
 シンジに詰め寄るアスカ。

 「文句じゃなくて・・・・・。」

 「じゃあ、なんなのよ!」

 「せっかくアスカが美味しく作ってくれても、ミサトさんはすぐに味付けを変えようとするから、
  それがね・・・・。」

 「大丈夫よ、それなら対策を練ってあるわ!」

 自身満々にそう言うアスカ。

 「対策って?」

 一縷の望みを掛けるシンジ。

 「ミサトの分は別に作るのよ!
  それを、鍋ごとミサトに渡すの。
  アタシ達は、今晩食べたら明日の朝は食べない様にする。
  これなら、夜中にミサトがいたずらしても、アタシ達に被害は無いわ!!」

 アスカの言葉に感心するシンジは、その後、アスカによって作られるミサト専用カレーを見て、

 笑いがこらえきれなかった。

 シンジと並んでご機嫌な顔で料理を始めるアスカ。

 まな板の上で材料を切り、鍋の中に入れて行く。

 最初は大きな鍋で、たまねぎ、肉、ジャガイモ、ニンジン等を炒め、程よく火が入った所で、コンソメを

 溶かしたお湯を入れる。

 そして、用意してあった、少し小さめの鍋に具以外の物、つまり唯のスープを移すとそこへインスタントの

 ルーを入れる。

 「コレが溶ければ、ミサトの分は出来上がりネ。」

 シンジの方を見て、微笑むアスカ。

 それとは対照的に、不思議そうな顔をするシンジ。

 「ねぇ、アスカ?」

 「なに?」

 「いくらなんでも、これじゃあミサトさんだって気が付くよ。」

 「なんで?」

 「だって、具が無いから・・・・・。」
 
 「それなら大丈夫よ。
  ミサトには、良く煮込んだカレーだから、具が溶けちゃったって言うから。」

 「大丈夫かなぁ・・・それで・・・・。」

 「大丈夫よ。
  大体、激辛にして有るし、あの女の味覚はかなり変だから。」

 自信を持ってそう言うアスカに、シンジは言葉を返す事も忘れていた。

 「さて・・・・アタシ達の方は、そろそろルーを入れて、味を調えなくちゃ。」

 鍋をかき混ぜながらそう言うアスカの姿に、シンジは、

 「なんか、今のアスカの姿って新妻って感じだよね・・・・。」

 と、頭の中に浮かんだ言葉を口にしてしまう。

 「な、な、なに馬鹿な事言ってんのよ!!
  アタシは、最初ッからシンジの奥さんのつもりよ!!」
 
 「あ、ありがとう、アスカ。」

 「ほ〜ら、馬鹿な事言ってないで、お風呂にでも入って来て下さいな、ア・ナ・タ。」

 シンジをからかうようにそう言うアスカ。

 アスカの言葉を聞いて、顔を真っ赤にするシンジ。

 「こ、こら!
  なんで、そこでフリーズするのよ!」

 真っ赤になって固まるシンジを、そう言って正気に戻すと、アスカはシンジに軽くキスをした。

 「アタシ達が結婚出来る様になるまでに、もっともっとお料理の腕を上げてあげるからね。
  だから、シンジはアタシを残してどこかへ行ってしまわないで・・・・・。
  アンタ無しじゃ、生きていても意味が無いんだから・・・・・・。」

 「アスカ・・・・。
  僕達は、何時までも一緒だよ。
  だって、僕がアスカを離さないから・・・・。」

 「嬉しい・・・シンジ。」

 「じゃあ、僕はお風呂に入ってくるから。」

 「ええ、わかったわ。」

 再び、アスカが調理に戻るのを確認して、シンジは風呂場へと向かった。




 

 『アスカと結婚かぁ・・・・。』

 キッチンでエプロンを身に纏い料理をするアスカの姿を思い浮かべて、シンジは表情を緩ませる。

 『そうだよなぁ・・・。
  僕がちゃんと一人前になれたら、アスカと・・・・。』

 先ほど自分で言った事とは言え、その将来像を想像すると、顔がだらしなくなってしまう。

 『アスカが僕の奥さんで、仕事から帰るとアスカが晩御飯を準備して待っていてくれる。
  幸せな家庭で、僕とアスカと僕達の子供で楽しく生きて行く。
  そんな未来を掴むためにも、僕達は頑張って父さん達の計画を阻止しなければならないんだ・・・・。』

 風呂の天井を見つめながら考える、自分達の未来像。

 『でも、アスカが僕の奥さんだと言う事は・・・・・・。』

 何を想像したかは解らないが、シンジは顔を真っ赤にしてお湯の中に潜ってしまう。

 「ぷはぁぁっ!!」

 息の続かなくなったシンジが再び顔を上げると、その顔は、更に赤くなっていた。

 『しまった!!
  膨張してしまった・・・・・・・・。』

 浴槽から上がり、火照った自分の身体を低めの温度のシャワーで冷ますと、シンジは風呂場から出る。

 するとそこには、とても良いカレーの匂いがしていた。

 “ぐぅ〜〜”

 『美味しそうな匂いだなぁ・・・。』

 腹の虫の声を聞き、シンジはこれから食べるアスカのカレーに思いをはせていた。






 シンジが風呂から上がった事を確認すると、アスカはコンロの火を消してエプロンを外す。

 「シンジィ〜、よそうの手伝ってくれる〜?」

 頭をタオルで拭きながら冷蔵庫へ向かったシンジに、アスカは盛り付けを依頼する。

 「良いよ・・・。」

 出されていた皿を手に取り、炊飯器に向かうシンジ。

 「アスカは、どれくらいにする?」

 「普通で良いわ。」

 「わかった。」

 シンジは、アスカの皿に適量のご飯を盛ると、自分の皿には少し多めに盛り付け、アスカの許に向かう。

 「はい、ご飯を持ってきたよ。」

 「サンキュ〜、シンジ。」

 アスカは、シンジから皿を受け取ると、そこへルーを入れていく。

 「あ、僕は多めでお願いね。」

 「わかってるわよ。」

 「ありがとう。」
 
 シンジの皿に、ルーを入れ終えると、二人は並んで椅子に座る。

 テーブルの上に置かれたカレーライスとサラダを目の前に、シンジは思わず唾を飲み込む。

 「じゃあ、食べましょ。」

 「そうだね。」
 
 「「いただきまぁぁぁぁぁす!!」」

 いただきますまで、完璧なユニゾンをすろシンジとアスカ。

 飲み物の牛乳を飲みながら、カレーを食べ始める。

 「ねぇ、お味はどお?」

 不安そうにシンジを見つめるアスカ。

 カレーを飲み込むと、シンジはアスカに微笑む。
 
 「うん、とってもおいしいよ。」
 
 「やった〜。
  シンジ、沢山作ったから、どんどん食べてね。」

 「じゃあ、早速、おかわりを貰おうかな。」

 いつの間にか一杯目を食べ終わっていたシンジが、アスカに皿を渡す。

 それを受け取ったアスカは、そこへ、ご飯をよそう。

 「シンジ、これ位で良い?」

 「うん、それくらいで良いよ。」

 ご飯の量を確認したアスカは、キッチンへ行きルーを入れる。

 「さあ、めしあがれ。」

 優しく微笑みながらシンジの前に皿を置くアスカ。

 「ありがとう。」

 シンジは短くそう言うと、再び食事を始める。

 『なんか、本当に新婚家庭見たいだなぁ・・・。』

 『キャッ!なんだか、新婚さんみたいだわぁ。
  愛する人に、料理を食べてもらえる事がこんなに嬉しい事だとは思っても見なかった。
  コレが、本当に幸せの形。
  早くシンジと新婚家庭を持てる様に頑張らなくちゃ!!』

 同じような事を考え、同時に赤面する二人。

 でも、そこには気まずい雰囲気は無い。

 一口食べては見つめあい、顔を赤くしては一口食べる。

 繰り返し同じ事を行う二人は、普段以上に食事に時間が掛かってしまった。

 それでも、同時に食べ終わるところが、この二人の凄いところだが。

 シンジとアスカが食事を終え、二人で並んで後片付けをしていると、ミサトが帰宅する。

 「たっだいま〜!!」

 「「おかえり(なさい)〜、ミサト(さん)!!」」

 「あんら〜、二人仲良くキッチンに並んで・・・良い感じジャン!!」

 「ミサト!!そんな事言ってる暇があったら、さっさと席に着きなさいよ!!」

 「そうですよ、ミサトさん。
  今、カレーライス持って行きますから、おとなしく席に着いていてください。」

 「おっけ〜!それと、エビチュもお願いね〜!!」

 「わかってるわよ!!
  全く、いつもいつもお酒ばっか飲んで、アンタその内にビア樽になるわよ!!」

 「ビア樽って・・・・・。」

 「まあ良いわ、アタシには関係ない事だから。
  加持さんが、愛想尽かしても関係ないしねぇ。」

 「まあ、そんときはアスカにあげるわ。
  ワタシは、シンジ君を貰うから。」

 「いらないわよ、加持さんなんて。
  それに、アンタがシンジにちょっかい出したら、犯罪よ!」

 声を大きくして、ミサトに説教をするアスカ。
 
 そのアスカの後ろから、シンジがカレーライスを持って歩いて来る。

 「まあまあ、アスカ、それくらいにして置いてあげなよ。
  はい、ミサトさん。
  このカレーは、アスカがミサトさん用に僕達のとは別の鍋で作った一品ですから、心して食べてください。」

 シンジはそう言って、先ほど自分達とは別に作った具の無いカレーをミサトの前に置く。

 更に、鍋も置く。

 「あら〜、アスカ。
  嬉しい事してくれるじゃない。
  おね〜さん、感動だわ。」

 「アンタの分は別にコレだけ作ったから、たくさん食べてよね〜。」

 『アンタの為じゃなくて、アタシ達のためよ!!
  大体、アタシの手料理をシンジ以外の人間に振舞うわけ無いじゃない!!
  アンタには、その手抜きカレーで十分よ!!』

 内心、そう思いながら、ミサトがカレーを口にするのを待つ。
 
 「具が見えないって事は、良く煮込んでくれたのね。
  どれどれ・・・・・。」

 “パクッ!”

 「あら〜アスカ。
  美味しいじゃない!!」

 『ほら見なさい、やっぱりミサトは味がわからないのよ!!』

 アスカはシンジに視線を送ると、目でそう訴えかけた。

 『なるほどね。
  アスカの言う通りだ。』

 シンジはアスカの読みが当たっていた事に、心底感動していた。

 「じゃあ、ミサト。
  アタシ達は、部屋に戻るから食べ終わったら流しに下げといてね!!」

 「了解よ。」

 アスカはミサトにそう言うと、シンジの手を引っ張って自分の部屋に連れて行った。

 二人が部屋に入る瞬間、ミサトが「アンタ達、仲が良いのは良いけど、子供はまだ早いわよ!!」と

 冷やかしたが、アスカに「あのねぇ、ミサト。アタシ達を何だと思っているのよ!!だからアンタは

 嫁かず後家だって言われるのよ!!」と反論され、静かになってしまった。

 

 食後に他愛も無い話をしてから、アスカが風呂に入る。

 その間にミサトが使った食器を洗い、シンジはリビングでジュースを飲む。

 暫くして、アスカが風呂から上がると、再びシンジを連れて部屋へ戻る。 

 就寝前の一時をアスカの部屋で過ごす二人。

 アスカのベッドに座るシンジの膝に、アスカが向かい合う形で座っている。

 「ねぇシンジ。」

 「なに、アスカ?」

 甘えた声で呼ばれたシンジが、アスカの蒼い瞳を見る。

 「あのね・・・・アタシ・・・・・全てが終わったら・・・・。」

 「うん、全てが終わったら?」

 「全てが終わったら・・・アタシ・・・シンジのお嫁さんになりたい・・・。」
 
 「うん、僕も、アスカにお嫁さんになって欲しい・・・。」

 「でね、アタシはシンジの子供をいっぱい産むの・・・・・。」

 「い、いっぱい?」

 「そう、いっぱい。
  だって、アタシもシンジも温かい家庭とは縁が無かったでしょ・・・・・・だから。」

 「そうだね、僕達は温かい家庭を築きたいね。」

 「うん、だから、子供はたくさんの方が良い・・・・。」

 そう言って、シンジの胸に顔を埋めるアスカ。

 そのアスカの髪を優しく撫でるシンジ。

 シャンプーの匂いが心地良い。

 「シンジ・・・・・アタシを置いて一人でどこかに行かないでね。」

 「わかってるよ、僕はアスカを一人にしない。
  いつまでも、いつまでも、僕はアスカの傍にいる。」

 「ありがとう、シンジ。」

 「だからさ、アスカも僕を置いてどこかへ行かないでね。」

 「うん、アタシもシンジの傍にいる・・・。
  アンタの魂だって一人にしない・・・・。」

 顔を上げたアスカが瞳を閉じる。

 シンジはアスカの顎に手を当て、少し持ち上げると桜色の唇を自分の唇で覆った。
 
 「「ん・・んぅん・・・。」」

 唇を重ね、二人は互いに抱きしめあう。

 暫くして二人が離れると、アスカは自分の唇に指を当て頬を赤く染める。

 今まで幾度と無く繰り返してきたキスではあったが、それらとは比べ物にならないほど

 心安らぐキス。

 シンジは立ち上がり、アスカをベッドに座らせると、もう一度キスをしてから、

 「オヤスミ、アスカ。」

 と言って部屋を出て行った。

 「オヤスミ、シンジ。」

 戸の向こうに消えて行こうとするシンジの背中に、静かにそう言って微笑むアスカ。

 それが、聞こえたのか、シンジがもう一度部屋の中に視線を移し、

 「オヤスミ。」

 と微笑む。

 アスカは微笑み返すとベッドの中に入るのだった。





 そんなこんなで、あっと言う間に決戦の日。

 完璧なまでにユニゾンを完成させた二人に、分裂使徒イスラフェルが敵うはずも無く。

 前世同様、62秒で殲滅される。

 そして、イスラフェルの爆炎の向こうから現われた初号機と弐号機。

 その姿は、見ていた人々を驚かせた。

 なぜなら、初号機が弐号機をお姫様ダッコしていたからである。

 「アスカ、怪我は無かった?」

 「ええ、大丈夫よ。
  それより、シンジは大丈夫だった?」

 「心配してくれてありがとう、僕は大丈夫だよ。」
 
 「良かった・・・・・。」

 エヴァの中でそんな会話をする二人。

 それを聞いていた大人達はと言うと・・・・・・。

 『ワタシも加持にお姫様ダッコして欲しい〜。』

 『シンジ君、俺には出来ない事だよ、それは・・・。
  いくら俺でも、重くなった葛城をお姫様ダッコする事はできないからな・・・・。』

 『私もいつか、碇司令に・・・・・。』

 『先輩に、あんな事されたら・・・・・・キャッ!』

 『フッ、問題な・・・・くもない。
  ユイが復活した暁には・・・・・・・。』

 『ユイ君をああやって、抱き上げたいものだな・・・・・。』

 『碇君・・・・。
  何、この気持ちは・・・・。
  私も、碇君に・・・・。
  そう、これがうらやましいと言う気持ちなのね・・・・。』

 『『どうせ、俺達には縁の無い話さ・・・・・。』』


 それぞれに、それぞれの想いがあるようで・・・・・。

 


 兎にも角にも、使徒を殲滅したシンジとアスカ。

 より深い絆で結ばれた二人は、この後ミサトが呼びかけても現世には復活せず、

 二人の世界に留まり続けた。

 「二人とも!!さっさと降りてキナサ〜イ!!
  全く、ワタシの小皺が増えたらどうしてくれるのよ〜!!」

 あっ、小皺があるって自覚があったのね。

 「なんですってぇぇぇl!!」(バキッ、ドカッ、グシャッ)

 す、すみません・・・・・ミサトさんには・・・・小皺なんて無いですよ・・・・ガクッ。

 




 結局、二人が強制的に外に連れ出されるまでミサトの苦悩は続いた。

 彼女の小皺が増えたのかそうで無いのかは、ミサト以外誰も知らない・・・・・。

 後日、ドモ○ルン・ナンタラに電話をしているミサトの姿が発令所で目撃ている事から、

 結果を察する事は出来るが・・・・。









 で、その頃、マナちゃんは・・・・・・。

 「Zzzzzz・・・・・・。」
 
 あの〜、出番ですよ〜!

 「Zzzzzz・・・・・・。」

 終わっちゃいますよ〜〜。

 「Zzzzzz・・・・・・。」

 良いんですか〜〜?終わりにしますよ〜〜〜?

 「Zzzzzz・・・・・・。」

 日ごろの労働の疲れが出たのか、シェルターの中で夢の中。
 
 唯一の出番も寝過ごしていた・・・・・。

 「シンジくぅぅぅん・・・・ムニャムニャ・・・・・。」

 あ〜あ、最後まで起きないよ、この娘は・・・・・・。

 

 

 






 


  次回予告:分裂君を倒したシンジとアスカ。
       アスカは、ミサトに一日の休暇を申し出る。
       そして、約束どおりピクニックへ出かけるのだが・・・・。

       次回「ピクニックへ行こう!!」
       

       真実の補完が今始まる・・・・・・。




 あとがき:どーも『CYOUKAI』です。
      今回は、考える時間があまり取れなくて大変でした。
      身近で色々有った物で、創作している時間が・・・・・。
      ユニゾンを書くのは大変でした。
      なんと言っても、逆行した二人にとって二度目のユニゾンですから・・・・・。
      きっと、一回目よりも心を重ねたのではないかと・・・・・。
      ちょっと、エスパーじみた事になってしまいましたが、パーフェクトなユニゾンを
      表現できていたでしょうか?
      もしも、できていたとしたら、コレ幸いです。
      次回は、閑話休題みたいな物にしたいと思います。
      では、今回も小生の駄文にお付き合いいただきありがとうございます。

      それでは、また。


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