〜The last power〜
     作:daiki

「精神的ショック、ストレスによる失明ね」
リツコはそう言った。
LCLになった人達は再び実体化し、なぜか、あの事件より前に死んだ人も実体化した。だから、この世界には葛城ミサトも赤木リツコも加持リョウジも存在する。ただ碇ゲンドウ、綾波レイを除いては・・・
総司令の居なくなったネルフは即解散となりゼーレも消滅した。
「回復するの?」
私はリツコに聞いた。
「今の段階ではわからないわ、今シンジ君は心を病んでいるから一生治らないかもしれないし、突然治ることもあるわ」
リツコはそう言い返した。
「そう、ありがとう」
私はそう言ってリツコの診察室から立ち去った。
リツコはあの事件の後、医者になった。もともと医者になるのが夢だったらしい。


ミサトと加持さんは結婚し、加持さんは数学の教師になり、ミサトは毎日を家事で費やしている二児の母親である。私も時々遊びに行く。あの頃のミサトとは違い炊事、洗濯、掃除などかなり上手く、毎日ちゃんと洗濯もしているし、部屋もきれいにしている、料理などお世辞抜きに美味しい。
十年ぶりにシンジと合ったミサトは、謝罪した。
「シンジ君それとアスカ、あなた達につらい思いをさせたわね、ごめんなさい」
するとシンジは
「頭を上げてください、もう終わったことです、気にしていません」
「ところで、父さんはどうなったのですか?」
「碇司令とレイは戻ってきていないの」
「・・・そうですか」
シンジは思いつめたような声でそう言った。


 私はシンジの目を治すのに最善の手を尽くした。でもシンジの目は治ることは無かった。 
 シンジは「別に良いよ」と言っているが、やはり生活するにも不便だし、それに早く今の私を見てほしい。

 シンジの目は一向に治らず、一ヶ月が過ぎた。私は「もしかしたら、このまま…」と、無意識のうちに思ってしまう。『このまま、治らなかったら』私はシンジを見ていけるだろうか? シンジを見捨てないだろうか?そんな不安が押し寄せてくる。
「どうしたの?アスカ」
「えっ!?何でも無いわよ」
「大丈夫?ぼーとしていたよ。疲れてんじゃない?」
 私はシンジと散歩中だったのを忘れていた。
「あんたが心配しなくても大丈夫よ」
「ほら着いたわよ」
ここは第三新東京市が一望できるあの場所。
私は夕日を浴びながら、兵装ビルが立ち並ぶ第三新東京市を見つめた。
シンジの顔はオレンジ色に染まり、凛々しく寂しく見えた。
私は決意した。シンジをもう一人にしない、と
 
「シンジ・・・」
「なに?アス」 
 私は、シンジが振り向いた瞬間、シンジに抱きついた。

「・・・・・・」

「・・・・・・」 
 
抱擁、そっとお互いの体を離す。
「・・・シンジ、よく聞きなさい」
「・・・何?」
「・・・あんたの目が、もし、一生治らなくても」
「・・・」
「わっ私はシンジのこと見捨てないからね」
「!!!!!!」
「・・・十年前、僕はアスカの前から消えてしまった最低な男だけど、アスカ、君を愛している」
 嬉しかった。嬉しくて涙が出そうだった。
そして、二つの影は重なった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
長いキスをし、お互いの唇が離れる。
「・・・・・・」
「・・・アスカ、綺麗になったね」
「えっ!!もしかして」
「うん、ハッキリと見えるよ、アスカの顔が」
「シンジ」
 私はシンジに泣きついた。
「僕には、勿体無いくらいだ」
「・・・馬鹿」
「うん、わかっている」
「全然わかってないわよ」
「・・・アスカ」
二つの影はまた重なった。

〜fin〜


ザザーン  ザザーン  ザザーン
薄暗い海岸のほとりに青年が立っている。
「・・・・・・ふう」
青年はため息をついた。すると、黒髪だった髪が銀髪になり、黒だった瞳も血のように赤い瞳に変わった。
「使徒の力も使い果たしたか・・・」
「シンジ君、僕は君に巡り会えて良かった気がするよ。この言葉を君に言えないのは残念だけど、さよならシンジ君お幸せに」
カヲルの体が光り、消え始めた。
「やあ、迎えに来てくれたのかい?レイ」


〜あとがき〜
ども〜daikiです。
さてThe last powerはどうでしょう?
途中全く進まず困りましたが・・・
なんとか完成しました。
駄作ながら読んでいただけると幸いです。


マナ:目が見えなくなるなんて、辛いことよね。

アスカ:そうなったら、アタシがシンジの目になってあげるもんっ!

マナ:アスカの目は歪んでるからなぁ。

アスカ:この澄んだ青い瞳のどこが歪んでるのよ。

マナ:じゃ、もし目の前を綾波さんが通りかかったら? ちゃんとシンジに報告する?

アスカ:そういうのは、アタシの目は見えないのよ。

マナ:それを歪んでるって言うのよっ!
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