エヴァンゲリオン−P

「失礼。便乗ついでに、ここ、よろしいですか?」
うなずくゲンドウ。
ここは、ネルフ保有のSSTOの中。
ゲンドウに話し掛けたのは中国人男性だ。
「サンプル回収の修正予算、あっさりと通りましたね」
男はゲンドウの隣に座りながら更に話し掛ける。
「委員会も自分が生き残ることだけを考えている。そのための金は惜しむまい」
「使徒はもう現れない、と言うのが彼らの論拠でしたからね。もう一つ朗報です。アメリカを除くすべての理事国が、エヴァ6号機の予算を承認しました。アメリカも時間の問題でしょう。失業者アレルギーですからね、あの国」
「君の国は?」
「8号機から建造に参加します」


エヴァ8号機。
これが後に最凶のエヴァと呼ばれるようになるとは、このとき誰も予想していなかった。



「先を行く者」


時はうつろい、現在ネルフ本部は戦略自衛隊の襲撃を受けていた。
それを単身迎え撃つエヴァ弐号機。
その圧倒的な力で、次々と戦自の戦力を殺ぎ落としていった。

「やはり毒は、毒をもって制すべきか」

来襲する9機の巨人輸送機。
そこより解き放たれる白い巨人たち。
それらは翼を開きつつ、大きく旋回しながら天井に大穴の空いてしまった、もはやジオフロントとは呼べないそれに舞い降りてきた。

「エヴァシリーズ・・・完成していたの?」
弐号機内のアスカのつぶやき。
その視線の先には8機+αのエヴァが優雅に飛んでいる。
その中のαのみ、自由落下してきているが。
しかしアスカはあえてそれは無視して、他の8機を睨みつけた。
だが、その事が、後に彼女自身を苦しめる事となるのだが、今はまだ何人も知る由も無い。

『いい?アスカ、エヴァシリーズはすべて破壊するのよ』
無線より聞こえるミサトの声。
『シンジくんもすぐに上げるわ』
「ミサトも病み上がりに無茶言ってくれて」
そう言いながらも不敵に笑うアスカ。
そして弐号機による、エヴァシリーズの虐殺が始まった。


「これでラストーーーーーっ!!」
叫びながら最後のエヴァのコアを握り潰しにかかる。
だがその時、予期せぬ方向から、別の攻撃がとんできた。
とっさにATフィールドで受け止める弐号機。
しかし次の瞬間、アスカの表情が変わった。

「イヤーーーーーーーっ!?」




『シンジくん!?アスカが、アスカがぁ!!』
マヤの声が初号機のケイジ内に響く。
しかしシンジはその時、斧を振り上げ、硬化テクタイト、もとい、ベークライトと格闘していた。
「だって乗れないんだーーーっ」
シンジのあせりの絶叫がケイジ内にこだまする。
その悲痛な叫びに答えるかのように動き出す初号機。
やっとの思いで初号機に乗り込み、シンジはアスカの待つジオフロントへと向かった。

そして、そこでシンジが見たモノは・・・
無残な姿をさらす8機のエヴァシリーズ、それから赤子のようにうずくまり、震えながらもかろうじてATフィールドで身を守る弐号機。
そして・・・
シンジの視線の先に、見るもオゾマシイモノガ・・・

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

シンジの心は一瞬にして壊れる直前まで追い込まれた。



20世紀末。
セカンドインパクト直前の中国で、とある画期的なものが開発されていた。
後に彼らはそれを人造人間のプロトタイプと呼んだ。
しかし、セカンドインパクトにより開発は中断。
そのままそれは、日の目を見ずに終わろうとしていた。
だが、エヴァシリーズ、その8号機の建造を中国が委託されたとき、彼らは15年前の遺産を思い出した。
彼らは、その技術をエヴァに組み込むことで、他国が建造するそれよりも、1歩も2歩も先を行くモノにしようと考えた。
そしてそれを実行。
完成した8号機は、確かに他のものとは一味も二味も違うモノになっていた。
それが、アスカが最初に無視した、自由落下していたエヴァ・・・エヴァなのか?・・・エヴァ・・・エヴァ・・・・・・
まあ、エヴァだ、エヴァ8号機。
それであった。

それは今尚、不気味な動きを続ける。
連続でしこを踏むかのように足をばたつかせる。
そして今度はコマネチ。
最後に腰を前後に振りながら、ビームを打ってきた。
半狂乱になりながらもATフィールドを張り、攻撃を耐える初号機。
そう、初号機がだ。
シンジではなく。
シンジの意思とは別に、初号機自身も拒絶していた。
エヴァ8号機を。

「ああああああああ」
シンジは今にも壊れそうだった。
しかし、その耳に、彼を正気に戻す声が聞こえてきた。
「うぅ、汚された、目が汚されちゃったよう。どうしよう、しんじぃ、汚されちゃったよぅ・・・」
それを聞いた瞬間、シンジは怒りのあまり我に帰った。

「よくもアスカをぉぉぉぉっ!!」

叫びながら8号機に襲い掛かる。
そしてそれはやけにあっさり、破壊された。


こうしてエヴァシリーズとの戦いは幕を閉じた。
エヴァシリーズはその他に類を見ない再生能力で再起動したのだが、8号機による無差別に放たれたキャノン砲により、ダミープラグを破壊され、二度と復活することは無かった。
見る者に与える心理的影響までも考慮されて再設計されたエヴァ8号機。
まさに最凶の名に相応しいエヴァであった・・・って言うかエヴァって呼びたくない。


おわり

あとがき

やっちまった。
何がって、「〜〜者」シリーズ。
やらないって言ったのに。
でも「〜〜者」と言えばやっぱりアレかな、と思ったら書かずにいられなくなりました。
で、エヴァ8号機。
見た目は当然アレです。
もはやエヴァじゃありません。
でも、一切アレの名前は本編に出さず終いですけど、知らない人には何がなにやらわかりませんね。
まぁ、解る人だけ解ってください。
解らない人は、人に聞くか、メールを下されば返事書きます。
でも大概の人、知ってますよね?ね?

2002/10/8 著者 ダイス


アスカ:エヴァ8号機って、なんだったのかしら?

マナ:見たくないものってのは、確かみたいね。

アスカ:はっ! マナの顔っ!(@@)

マナ:コロスわよっ!(ーー#
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