これは、逆行者Sの続編です。


エヴァンゲリオン−P

時に西暦2015年。

シンジを我が物としようとする者たち。

すなわち「シンジくん手に入れちゃうぞ計画」が、本人の預かり知れぬところで続いていた。

だが、その全てを記すには、あまりにも作者の根気が足りない。

よって今は、頭文字”M”を持つ者たち。

彼女たちについて、語ることとする。



「逆行者M」


<CASE 1>










第1のキャラクター










伊吹マヤ、彼女の場合



「ああ、しんじく〜ん」
物陰からそっとシンジを見つめる1人の女性。
はっきり言ってストーカーだ。
シンジも何となく気付いているが、下手にかかわると怖いので、あえて無視していた。
しかし、日に日にエスカレートしていくように感じてきた。
最近では、更衣室でも視線を感じる。
(自意識過剰かな?)
そうも思えたのでこっそり苦笑する。

しかしそれは気のせいではなかった。
最初は監視カメラの映像で満足していたが、次第に生で見たくなり、シンジ以外、男子更衣室を使っていないのを良いことに、ロッカーの一部を改造して、そこに潜んでいた。
やっぱりストーカーだ。
「っと、早くしないとまたアスカが怒っちゃうな」
二人が付き合い始めたことはまだ誰にも言っていない。
特に隠しているつもりは無いが、アスカが皆のいる所ではそんなにべったりしてこないので、せいぜい犬猿の中から、気心の知れた友達になったのだろう、と言う位にしか思われていない。
が、二人きりになると、結構甘えてきてくれたりする。
そんな姿を自分にだけ見せてくれる、それがまた嬉しかったりする。

着替え終わったシンジが更衣室を出て行ったあと、改造ロッカーから彼女、伊吹マヤが出てきた。
「はぁ、シンジくん。いつ見ても、男に見えない華奢な体が、ス・テ・キ」
・・・はっきり言って怖い。
「それにしてもアスカ、今回もシンジくんを下僕のように扱う気かしら」
前回ではそろそろアスカが自分の当番をシンジに押し付け始めた頃。
今回もそうする気だろうか?
マヤはシンジの身を案じていた。
大きなお世話だったが。

実際は、家事の分担はほとんどやっていない。
だが、それは全てをシンジに押し付けているのではなく、二人いっしょにやっている為だ。
むしろ、アスカは料理を覚えるために積極的にキッチンに立っていた。
この時点でのシンジの料理に対するスキルはそんなに高くないため、二人一緒に覚えられるのでそれがまた楽しい。
そんな二人を、怪訝な目で見つめる人物が1人。










<CASE 2>










第2のキャラクター










葛城ミサト、彼女の場合。



(なんか妙に仲いいわね)
(でもまぁ、前回と同じくらいだし)
(問題ないかしら?)
今、3人はリビングで食事中。
ミサトの横にアスカ。
その正面にシンジが座っている。
「シンジ」
「ん」
アスカがシンジを呼ぶと、シンジが醤油を取って渡す。
「ありがと」
そう言って受け取る。
「シンちゃん、アスカの言いたい事わかるの?」
さすがに不思議に思い、聞いてみる。
「え?あぁ、ユニゾンの後遺症って言うのか、何となく解るんです」
(ちっ、まずったかしら)
(やっぱりアスカとレイを組ませるべきだったかしら)
少し後悔するが、まあ大丈夫だろうと思う。
レイやマヤに比べれば、アスカのシンジに対する態度はお世辞にも気を引こうというモノに見えない。
やっぱりアスカは時をさかのぼっていないか、シンジに興味ないのであろう。
ミサトは勝手にそう解釈した。
そしてそろそろ、本格的に行動を起こそうと考えた。
すでに手遅れとも知らずに。

「それにしてもミサト、その格好どうにかなんないの?」
アスカがあきれたように言う。
ミサトはいつものようにタンクトップにショートパンツ。
しかもそれに加えてノーブラだ。
さすがにこれならシンジも気になって仕方がないだろうとミサトは考える。
「あらぁ、ここには私たちしかいないんだから良いじゃない。ねぇ、シンジくん」
そう言ってシンジを流し見る。
「何言ってんのよっ。そのシンジがいるから駄目なんでしょうがっ」
いい加減、これではシンジもいつ間違いを起こすか解らない。
ミサトもそれを狙っているのだろう。
まあ、実際はシンジの気持ちはしっかりしていて、いまやアスカ以外に興味がわかなくなっているが。
と言うか、逆に引いてるんだって。
ライバルが多いためにアスカ以外の女性陣はお互い自分をアピールするためにどんどんエスカレートしていっている。
最初から暴走気味だったのに。
それゆえに、シンジは彼女たちの誘惑に対して欲情するどころか、どんどん冷めていく。
しかし、それでもアスカにしてみれば、シンジが自分以外の女の肌を見ているのは面白くない。
そんな訳でそろそろ潮時かと考えた。
今までは、ミサトにばれたら邪魔されるだろうと読んでいた。
シンジはともかく、アスカは二人の関係を隠しているつもりだった。
(そろそろアタシたちの関係を大々的に公表したほうがいいかしら)
(きっかけさえあれば言いやすいんだけど・・・)


(もうそろそろ、良いおねいさんを演じるのも潮時ね)
(くくく、今夜、かねてよりの計画、実行するわ)
その時、ミサトはあることを決意していた。
って言うか、良いお姉さんのつもりだったのか?


そして夜。
「抜き足、差し足、忍び足・・・ケケケ、シンジくーん、待っててね。今おねいさんが美味しく頂いてあげちゃうわぁ、じゅるり」
ミサト暴走。

こっそりとシンジの部屋までやってくるミサト。
その身には下着しか身に着けていない。
「ふふふ、シンジくんにも脱がす楽しみを取っておいてあげないとね」
そう言って、スー、とふすまを空ける。
「ふふふ、よく寝てるわね。かわいい寝顔しちゃって。でもごめんね。今から大事なことのために起きてもらわなきゃ」
そう言って、シンジの布団をめくる。
「・・・・・・・・・」
少しフリーズするミサト。
彼女の視線の先には相変わらず気持ちよさげに眠るシンジと・・・
そのシンジの胸に、顔をうずめるように、やはり気持ちよさそうに眠る・・・アスカ。
ちなみに二人ともちゃんとパジャマは着ている。



そして



10秒



30秒



1分



「な、な、な、何でアスカがここで寝てんのよ〜〜〜〜!?」
ミサトの叫びがかなり遅れて響いた。

「うーん」
「うぅ、何騒いでんのよ、こんな夜中にぃ」
ミサトの叫びに目を覚ます二人。
「あー、あれ、ミサトさん?おはようごじゃいますぅ」
まだ寝ぼけてるシンジ。
「おはようじゃ無いっ、これはどう言う事なの!?」
そう言って同じく寝ぼけてるアスカを指差す。
その指を追って、シンジもアスカを見る。
「・・・アスカですね」
「アスカですね、ってシンジくん。はっ、まさか!?」
(もしや、やはりシンジくんを狙っていたアスカがこっそり我が物とせんと、シンジくんのベッドにもぐりこんだのではっ。くぅ、なんて卑怯な!!)
自分のことを完全に棚上げするミサト。
「アスカ!あんた、なんて事を!!」
「うぇ?ミサト?」
やっと覚醒したアスカ。
「って、ミサト!あんたなんてカッコしてんの!!」
「私の事なんてどーでもいいの!アスカっ、あんた何シンジくんに夜這いかけてんのよ!!」
「よ、よばっ!?あ、あ、あんた何言ってんのよ!?」
「何じゃないわよ、あんた。現にシンジくんのベッドに潜り込んでんじゃない!」
「あんたバカぁ!?潜り込んだんじゃなくて、ちゃんと了解取ったわよっ!」
「なっ?どう言う事よ、シンジくんっ!?」
ミサトはシンジのほうに向き直る。
シンジはミサトの格好に、さすがに目をそらしながら
「えっと、実は僕たち、付き合ってるんです、てへへ」
テレながら衝撃の告白。
誰も気付いてくれないことに不満があって、実は結構言いたかったようだ。

(ちゃーんす)
待ちに待ったきっかけがバカなことをしようとしたミサトと、シンジによってもたらされた。
「そう言うことよっ!だからアンタもそんな格好でシンジの前に現れるんじゃないわよっ・・・って、ほんとにそんなカッコでなんでシンジの部屋にいるのよ」
ホントは大体ミサトのつもりは解っているが。
が、ミサトはその質問には答えず
「な、何で?あんたたち仲悪かったんじゃないの?」
「・・・アスカ、僕たちって仲悪かったの?」
「え?ううん、そんなこと無いと思うけどぉ」
と、少し甘えた口調でシンジに答える。

「くぅーっ、アスカ、たばかってたわねぇっ」


その後もアスカとミサトの言い合いは続き、ついにミサトが最終兵器を持ち出した。
「仕方ないわね。こうなってしまった以上、保護者として二人の関係がこれ以上エスカレートするのを止めるためにも同居を解消させてもらうわ。悪いけどアスカ、明日にでもここを出て行って頂戴」
「って、アタシだけかいっ」
「元々あなたはユニゾン訓練のために一時的に同居しただけだもの。その後もここにいることのほうが不自然なの。悪いけど解って頂戴」
(ふん、ミサトの考えは良くわかったわ)
(なら、こっちにだって策があるんだから)
と、アスカは時計に目をやる。
すでに6時半。
4時間以上も言い合いしていたようだ。
(この時間なら大丈夫か)
「シンジ、携帯貸して」
「うん、はい」
アスカはシンジに携帯を借りるとどこかにかけ始めた。
そして、
「もしもし?あ、こんな朝早くから申し訳ありません。アスカです。いえ、そんなことありませんよ。はい、はい。あの、それで実はこの間ご相談した件なんですけど。ハイ、新居のことで。実は葛城家を出ることになりまして、少し予定が早くなりました。はい、それで。え?それじゃあ、すぐにでも越せるんですか?ありがとうございます。はい。約束の件は間違い無く。それとシンジくんとの間に子供が出来ましたら、真っ先に抱かせて差し上げますわ。あら、そんな、御礼なんて、気が早いですよ。ええ。それでは、お願いします。はい、朝早くから失礼しました。はい、それでは」
ピッ
携帯を切るアスカ。
「・・・アスカ、どこにかけてたの?」
ミサトが聞く。
「どこって、碇指令のところよ」
「ええーっ!?」
「と言うわけで、あたしとシンジはここを出て行かせていただきます。短い間でしたけどありがとうございました」
と、ミサトに宣言。
「言っとくけど、シンジの真の保護者である指令が賛成してくれてるんだからね。アンタがとやかく言ってもアタシとシンジの二人で同居、続けるわよ」
そしてシンジのほうに向き直り
「てことなんだけどいい?」
「僕はアスカと一緒ならどこでも良いよ」
「ごめんね、事後承諾になっちゃって」
「いいってば」
もう二人の世界を作ってる。
ミサトは呆然とするばかりだった。


こうしてミサトの邪な恋は終わった。
って、恋だったのか?



ちなみにアスカがゲンドウと交わした約束とは、シンジとの仲直りを協力すること。
それはしっかり果たされた。

そして新たに交わされた初孫を抱かせる約束は約2年後に果たされることとなる。










<CASE 3>









第3のキャラクター










山岸マユミ、彼女の場合



「私たち、似ていたのかもしれませんね」
そう言って、シンジ、アスカ、トウジとケンスケに見送られ、新しい土地へと旅発っていった。









失礼、彼女は逆行していなかったようです。










<CASE 4>










第4のキャラクター










霧島マナ、彼女の場合



「ついに還ってきたわ、シンジ」
一人の少女が第三新東京市に降り立った。
その少女とは、かつて霧島マナと呼ばれたもの・・・いや、今でもか。
そう、彼女は還ってきた。
サードインパクト後の世界から。
根性で(笑)

彼女は任務のためにこの街にやってきた。
が、今やそんなこと知ったこっちゃなかった。

「霧島マナです。よろしく」
「はい、よろしゅう」

あははははは

トウジの返事で笑いが起きる教室内。
が、笑えない生徒が一人。
我らがアスカ嬢である。

(つっ、ついに来た)
(ある意味において、最大のライバル)
(かつて、シンジがはじめて好きになった女)

が、今はあの、素直でなかった頃とは違う。
シンジとも気持ちを通じ合わせた。

(そっ、そうよ。いまさら何を恐れる必要があるってぇの?)
そう思いつつも、恐怖心が沸いた。



「あなた、お名前は?」
マナがシンジの横に立って声をかける。
「え?ああ、僕は碇シンジだよ」
シンジは笑顔で答える。
(く〜〜〜〜。これよ、この笑顔のために私は還ってきたのよぅ)
マナは感動している。
そして
「私霧島マナは、本日午前六時におきて、シンジくんの為にこの制服を着てまいりました〜。どう、似合う?」
「は?ああ、まあ」
(あれ?シンジの反応がおかしい)

二人のやり取りを複雑な表情で見つめる(睨みつける)アスカ。
「アスカ、いいの?」
と聞いてきたのはヒカリ。
彼女はアスカの気持ちに気付いている。
が、さすがに付き合っている事までは気付いていない。
(そうだ、今のうちにヒカリを味方に引き入れておこう)
「ヒカリ?」
「ん?何、アスカ」
「実は後で報告したい事が有るの、昼休みが終わる頃にはネルフに行かなきゃいけないから、お弁当のときに」
「うん、解った」


「ええっ?もう付き合ってる!?」
裏庭で、お弁当を食べながら、アスカはシンジとのことをヒカリに打ち明けていた。
「ごめんね、黙ってるつもり無かったんだけど、誰も気付いてくれないから、このまま誰が最初に気づくかなぁと思って」
「で、結局黙ってたわけね」
「ホントにゴメン」
「あはは、まあいいわ。結局報告してくれたんだし」
「うん、学校で最初に話したのはヒカリよ」
「でも、だとすると、やっぱり霧島さん、気になるわね」
「そうなのよぅ。シンジのことは信用してるんだけど、あの女は何するかわかんないから」
「いや、さすがに初対面でそこまで疑うのは・・・」
前回を知らないヒカリはさすがにそこまでは警戒しなくてもいいのでは、と思う。
「牽制程度でいいんじゃない?」
「いいえ!あの女は放って置くと必ずシンジを傷つけるわ!!その前に何とかしないと」
(何でそこまで思い込めるんだろう?)
逆行の事情を知らないヒカリには謎だった。



「シンジ!そろそろネルフに・・・って、あれ居ない?」
教室に戻り、シンジを誘おうと声をかけるアスカだったが、当の本人はそこに居なかった。
「あれ?先に行っちゃったのかな・・・って、そんな訳ないか。じゃあどこに・・・ってまさか!?」
アスカの脳裏にマナの顔が浮かんだ。



アスカが教室に戻る少し前。
マナはアスカとレイが居ないのを確認すると、トウジたちとお弁当を食べ終わり談笑しているシンジに近づいた。
「シンジくん」
すでにファーストネームで呼ぶマナ。(本人不認可)
「あれ、霧島さん。何か用事?」
が、とりあえず気にしないで置くシンジ。
(でも呼び捨てになんかだったりしたら、アスカ怒るだろうなぁ)
今現在、シンジを呼び捨てに出来る女の子はアスカだけだ。
まあ、この年頃の女の子が、彼氏でもない男の子を呼び捨てになどしづらいだろうが。
ならその呼び捨ての行為を違和感無くやっているアスカがクラスにどう思われているかというと・・・
女子は、アスカがシンジを密かに想っている、と思っている。
男子は、アスカは欧米の人だから、自然にそう呼んでいるのだろう、と思っていた。
アスカが男の子でファーストネームを呼ぶのはシンジだけなのにね。

「うん、実はまだ来たばかりだから、学校を案内してほしいんだけど」
「え、僕が?」
シンジは「他に居ないのかな?」と思って教室内を見渡すが、こういう時率先して案内するであろう委員長はアスカと共に裏庭へ行った。
他の女子はこちらを見ていない。
さすがにこちらから声をかけるのは、基本的に内気なシンジにはまだ出来ない。
最も女子達はシンジが自分達に振りたがっているのに気付いているが、ことの成り行きに興味津々のため、あえて声はかけない。
(はぁ。仕方ないか)
「わかった、いいよ。じゃあ、トウジたちも・・・」
とトウジとケンスケも誘おうとするが
「あ、俺たちトイレ行くから」
と、ケンスケがトウジを強引に引っ張っていった。
ちなみにケンスケはマナに買収されている。
報酬はマナの水着写真撮影権。
(もっとも、ホントには撮らせてあげないけどね〜)
マナは心の中で舌を出した。


そしてシンジはマナに連れられて屋上に来ていた。
(・・・・・・って、何で僕のほうが案内されてんだよ?)
当然な疑問をもつシンジ。
「きれいねぇ」
手すりに手をおき遠くの山々を見ながらマナ。
「ああ、そうだね。でもあれはここを守るための兵装ビルだから」
シンジも手すりに手をかける。
もっとも、マナとは微妙に距離はとっているが。
「ううん、違う。あの山のことよ」
と言いつつ、距離を詰めるマナ。
「え?ああ、そうだね」
ススっ、とはなれるシンジ。
「行ってみたいなぁ」
再び、今度は一気に距離を詰める。
そしてマナがシンジの手に自分のそれを重ねる・・・直前

ゾッ

シンジは背に悪寒が走り、思わず跳びのく。
「え?」
きょとんとするマナ。
「あ?ああ、ごめん。なんでもないんだ」
(な、何だろう、今の危機感は)
(まるでネルフの女の人たちに感じるようなそんな気配が)
(ま、まさかね、霧島さんは今日初対面なんだし)

野生の勘(?)でマナの邪気を感じるシンジ。

「シンジっ!」
そこへアスカ登場。
(ちっ)
マナは心の中で舌打ちする。

「ネルフに行く時間よ!」
「あ、アスカ迎えに来てくれたんだ、今行くよ。あ、ゴメン霧島さん、僕これから用事があって早退するから今日はもう案内できないんだ。じゃあね」
そう言うと早々にアスカの元へ走っていった。

「・・・・・・」
呆然とそれを見送るマナ。
「なんかシンジが冷たい」



ネルフ本部に向かうモノレールの中。
「何、話してたのよ」
「え?」
「霧島さんとよ」
「ああ、山がきれいだね、とか」
「それで?」
「それだけだよ」
「ほんとに?」
「本当だよ・・・・・・もしかして妬いてくれてる?」
意地悪い笑いをして、シンジはアスカに聞く。
「!!そっ、そうよ!悪いっ!?」
真っ赤になるアスカ。
「ごめん、ちっとも悪くないよ。というか、なんか嬉しいなぁ」
意地悪な笑いを引っ込め、本当に嬉しそうな(アスカの好きな)笑顔になる。
アスカは更に赤くなる。
「と、とにかく!!霧島さんにはあまり近づかないこと!!」
「わかったよ。でもどうして?」
「あの娘は・・・」
スパイだから、シンジにちょっかいをかけようとするから・・・
どう説明すればいいのか、悩む。
それを見たシンジは、単純に彼女の焼き餅だろう、と思った。
まあ、あながち間違いでもないが。

その時、隣の車両からマナが現れた。
そしてシンジたちの前まで来て
「えへ、来ちゃった」
「・・・来ちゃったって」
少しあきれるシンジ。
今回はマナはシンジに、彼がエヴァパイロットだと知っていることを伝えていない。
だから事情も解らず自分達についてきたマナにシンジは少し疑問を持った。
が、根がお人よしのシンジはあまり気にしないことにした。
「学校サボるのは良くないよ」
とりあえず無難なことを言っておく。
「まあ、いいじゃない。だって、シンジくんのいない学校なんて詰まんないんだもん」
「はあ」
マナは告白の複線のつもりだが、シンジは良くわかっていない。
「あんたねぇ」
「何かしら、惣硫酸?」
「誰が硫酸かぁっ!」
なぜ解る?
「ところでシンジくん、となりいいかしら」
と、言いつつ、アスカとシンジの間に強引に座ろうとする。
「他にも空いてんでしょうがっ!!」
怒鳴るアスカ。
実際1時過ぎの電車内などガラガラである。
「だーってシンジくんの隣がいいんだもーん」
「反対側にすわりゃ、いいでしょうがっ!!」
ちなみにアスカが電車の長いすの一番はしに座り、その隣にシンジ、そしてその横はレイ。
・・・って、居たのかレイ。
レイは三人のやり取りを我関せず、と言った感じで黙々と本を読んでいる。
レイがシンジの隣に座ることに関しては、アスカは特に何も言わない。
レイがアスカとシンジの仲を特に割こうとしたりしないからだ。
夜はわら人形打ってるけど。

「うっ」
アスカに言われ、シンジの隣を見ると、レイ。
相変わらず、何考えているかわからない。
読んでいる本を見ると、はやりのギャグ漫画なのに先ほどから表情一つ変えないし。
「なに?」
見られていることに気付いたレイが聞く。
「あ、いえ、なんでもないの。おほほほほ」

「やっぱりこっちがいい」
とまたしてもアスカとの間に割り込もうとする。
シンジとアスカとの間はぴったりくっついていて、人一人入る余裕なんて無いが。
「あ、もうすぐ着くよ」
シンジは何事も無かったように、アスカの手をとって席を立つ。
実際は後2分ほどあるのだが、今の状況に耐えられなくなったのだ。
あまり近づかないと約束したばかりだし。
(それにしても何で二人、仲悪そうなんだろう?)
ニブっ。

とりあえずゲート前に着く4人。
「ちょっとあんた!一体いつまで着いてくるつもりよっ!?」
「え〜、いいじゃない」
「あ、霧島さん、これ以上は関係者以外は入れないんだ」
「それなら大丈夫(はあと)」
そう言ってシンジの背中に。
くあっ、と怒りを爆発寸前のアスカ。
が。
再び悪寒が走ったシンジは猛烈な勢いで飛びずさった。
手が空を切り、躓いてこけそうになるマナ。
あまりのシンジの反応に呆然となるアスカ。
やはり無関心のレイ。
だが、シンジ自身が己の行動に一番驚いていた。
(まただ。なんでだろう?)
「ああああ、あのホントに駄目だから。じゃっ」
そう言って、アスカすら置き去りにゲートをくぐる。
「・・・あっ、待ちなさいよシンジっ」
慌ててアスカも後を追う。
「じゃ、また」
レイもマナに一言残してさっさとゲートへと向かった。

「やっぱりシンジが冷たい」




そして翌日から。

学校にて再びマナの攻勢。
はぐらかして逃げるシンジ。
怒るアスカ。
やっぱり無関心のレイ。

昼休み。 トウジとケンスケはパンを買いに。
それに付き合うシンジ。
「何や、シンジも難儀なこっちゃのう」
「まったく。でもああも言い寄られたら悪い気はしないだろ?」
「ははは・・・、はぁ」
トウジに同情され、ケンスケに冷やかされ、力ない笑いを浮かべるシンジ。
さすがにマナのつもりは解ってきた。
「ま、センセもいい加減本命を決めい、っちゅうこっちゃ」
「いや、本命ならとっくに居るんだけど」
「「な、なにーーーーー!?」」
「う、うらぎりもーん」
「いや〜んなかんじぃ」
「で、誰やねん?やっぱり綾波かぁ?」
「さあ、吐け。吐いて楽になれっ!」
「えーと、アスカなんだけど」
「「はあ?」」
「アカンアカン、あれは脈ないて」
「そうそう、男なんて相手にしてないって感じだよな」
「ナンボシンジがおんなじエヴァのパイロットやゆうても落とせへんわ、あれは」
「あきらめたまえ」
シンジの片思いであろうと思い込む二人。
そして教室の扉をくぐる。
「いや、だから」
「なに?何の話?」
そこへマナ登場。
「オウ、霧島。聞いたってくれ。シンジの本命は惣流やて」
あっさり、それもシンジに気のある女の子にばらす無神経トウジ。
「ええ?またまたぁ」
が、さらっと受け流すマナ。
自分に都合の悪いことは信じないようだ。
と、そこへ
「シンジ、お弁当」
とアスカ登場。
「何や、まだシンジに作らしとんのかいな」
あきれるトウジ。

「あぁ、ありがとう、アスカ」
と言って、アスカから受け取るシンジ。
「「「えっ!?」」」
「な、な、な、そ、それ惣流がつくったんかいなっ?」
「そうよ?」
「「「えーーーーーーーーーーっ??????」」」
「三人ともうるさいわよ。シンジ、こんな連中ほっといて、あっちで食べましょ?」
「え?ああ、うん」
固まっている三人をちら、と見て頷くシンジ。
そして二人はヒカリの待つ席へ。


この事態に至る経緯。
アスカがヒカリに相談した結果
「ならお弁当でも作ってあげれば恋人らしく見えるんじゃない?」
との一言でお弁当を作ることに。
夕飯は二人一緒に作っているが、アスカは朝が弱いのでお弁当だけはシンジ一人で作っていた。
だが今日は何とか早起きし、一人でお弁当を作った。

「美味しいよ、アスカ」
「と、と、当然よ!アリガト




放課後

「事の真相、確かめねば」
「せやな」
「シンジ、まさかホントに惣流さんと?」
ケンスケ、トウジにマナを加え、シンジたちの後をつける。

今日はネルフには行かないとの情報。
ならばこの後、二人で出かけるのでは?と思い、尾行することとなった。
だが二人はそのままスーパーへ。
「何や、買い物やったらこの後、どこにも行かへんわな」
「そうだな。あ、出てきたぞ」
だが、二人が歩き出した先。
それは葛城家のある方角ではなかった。
「どこ行くんだ?」
「ワイには解らん」

そして二人がたどり着いた場所。
それはまだ真新しいマンションだった。
「何や、ミサトさん、引っ越したんかいな?」
「そんな情報、つかんでないんだけどなぁ」

そして二人はマンションに入っていった。
「入ってもうたな」
「そうだな」
「・・・・・・」
さっきから無言のマナ。
一人、さっとマンションの入り口へ。
そして一階ロビーに入り、郵便受けを確認。
そこには『碇』『惣流』とあった。
「いーーーやーーーーーーーーー」
「うわっ!?」
「何や霧島っ、なんかあったんか!?」
そして二人も郵便受けを確認。
「「・・・・・・」」
「これって同棲ってやつちゃうか?」
「そ、そうだな」
「なんや」
「「いや〜んな感じ」」

(うっ、ウソよ。なんかの間違いよ!?)
(シンジが私を裏切って惣流さんなんかと!?)
注:この世界のシンジはマナとは何でも有りません。

そしてマナは郵便受け横にあるインターホンのスイッチを連打。
しかしその行為が自分にとどめを刺すかもしれないと気付き、逃げ出したくなったが、それでは「ピンポンダッシュ」だと思い、根性すえることにした。
『はーい』
インターホンから流れてきたのはアスカの声。
だがマナは何もいえない。
『なに、いたずら?まったくどこのドイツよ!?』
慌てて後ろにいたケンスケがマナに替わって返事をする。
「あ、そ、惣流。俺、相田だけど。後トウジと霧島」
『相田?・・・なんか用?』
「いや、シンジにちょっと」
『シンジに?・・・・・・解った、エレベーター開けるわ』
どうやら結構なセキュリティのようだ。
そして三人はエレベーターに。



(来たわね、霧島マナ)
いよいよ正面対決か、と意気込むアスカ。
(それに相田と鈴原か。これで明日にでもシンジとの関係が学校中に広まるわね)
実は三人の尾行には気付いていたのだが、あえて何も言わず、そのままにしておいた。


そして三人が、いよいよ部屋の扉の前にやってきた。

プシューっ

圧搾空気の音と共にドアがスライドする。
そして出てくるアスカとシンジ。
「あれ?良くここがわかったね。今度改めて招待しようと思ってたのに」
シンジが笑顔で言う。
「シ、シンジ、ミサトさんは一緒じゃないのか?」
ケンスケが最後の足掻きとばかりに聞いてくる。
「ミサトさん?いや、僕とアスカだけだよ」
「てぇことは?」
「やっぱり?」
「「同棲かぁ!?」」
「改めて、裏切りもーん」
「再びいやーんな感じ」
「あ、あの、ということはお二人は・・・」
トウジ、ケンスケがお約束なポーズをとっている後ろから、マナが恐る恐る聞いてきた。
「ああ、うん」
少しシンジが言いにくそうにしているのを察知したアスカが
「当然付き合ってるわよ、それも結婚を前提としてね」
と答えた。
マナは驚いてアスカを見、そしてシンジのほうへ否定の言葉を期待して目を向けた。
だが
「あぁ、実はそうなんだ」
と照れくさそうに答えた。

その直後
「いぃぃぃやぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!?」

ものすごい音量の悲鳴を上げて、マナが走っていってしまった。
後には耳がキーンとなってしまった四人が残された。


そして翌日には二人が付き合っているという事実は、瞬く間に学校中に知れ渡り、一部では同棲していると噂された。
事実だが。



一方マナはその後、脱走していたムサシから戦自のロボットを奪った挙句、三日三晩暴れまくった。
そして、ようやく停止したロボットに戦時が乗り込むも、そこはマナもムサシもすでに逃走した後だった。
二人がその後、どうしているかは未だに解っていない。



おしまい









おまけ


<CASE 5>










第1のキャラクター










伊吹マヤ、彼女の場合



パート2



「はぁ」
今日も今日とて彼女はチルドレン用男子更衣室に忍び込む。
そして改造ロッカーへ。
「ああ、シンジくん。あなたはホントにアスカのものになってしまったの?」
なにやら嘆いている。
「ああ、それでも諦めきれない、私ってけなげ」
そんなことをほざいていると、なにやら人の気配が。
(シンジくんかしら?)
だが入ってきたのは一般職員数人だった。
「オウ、これだこれだ」
「これ運びだしゃ良いんですね」
と、マヤの入っている改造ロッカーを持ち上げた。
(きゃー!?)
「なんかやけに重いな」
「人でも入ってんじゃないですか?」
(ドキっ)
「ははは、んなあほな」
「しっかし、確かにシンジくん一人のロッカールームにこのロッカーの数は多すぎですね」
「ああ、たとえ男のチルドレンが後五人増えたとしてもこの数はいらんな」
「ま、だから移動させろなんて指示が出たんでしょうけど」
(いっ、移動?このロッカーが!?)
そうこうする間に運び出されるマヤ入りロッカー。
そして運び込まれた場所は、一般職員用の更衣室だった。
そして、適当に設置した後、運んできた職員達は立ち去っていった。
(い、今のうちに)
と、ロッカーを出ようとしたが、再び人の気配が。
どうやら着替えに来たようだ。
そして入ってきた職員。
それはマッチョな二人組みだった。

そして
「おおう、兄キッ!」
「うぉっスっ!!」


(いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?)
マヤは心の中で絶叫をあげた。
果たして彼女はなにを見たのであろう?

解っているのはこの後、より一層マヤの潔癖症がひどくなった事と、同性愛に走ったことだ。



さて、実は余分なロッカーを一般職員用に回そうと上に進言したのは、アスカであった。
彼女はマヤの奇行に気付いて進言したのであろうか?
それは定かではない。










「ニヤリ」<アスカ


今度こそおしまい


あとがき

うあ、結構時間かかった。
20日くらいかかっちゃいましたよ。
まあ、他のも同時進行で書いてましたけど。
今も書きかけが3本ほど(汗)
いずれも短編ですが、ちょっと長い目です。
出来上がりはいつになることやら。

さて、本作は以前書いた「逆行者S」の続編でした。
今回はひねくれずにイニシャルの「M」。
ただし4人ほど。
結構多いですね、「M」の人。
女性キャラに拘らなければ日向さんもだし。

さて、次回のエヴァPは
「行き過ぎた者」です。
って、結局「〜者シリーズ」?

2002/10/30 著者 ダイス


マナ:お、おもいっきし振られてるじゃないっ!

アスカ:ふはははははは。勝利っ!

マナ:逆行までして、こーんなに頑張ったのにぃっ!

アスカ:変に色目使うから、こういうことになるのよっ!

マナ:全ては先に色目を使った、葛城さん達の悪影響よっ!

アスカ:ま、アンタのおかげで、アタシとシンジは公認の仲になれて良かったわっ!

マナ:キーーーーーーーーーーーーっ!!(ーー#

アスカ:シンジと同棲もスタートしたし、マヤも排除したし、アタシの天下よっ!

マナ:伊吹さんと葛城さんと組んで、絶対アスカを排除してやるぅぅっ!
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