それは雪の降る街。

 

街外れにある、小高い丘が全ての始まりだった。

 

丘には特に何も無く、冬でも青々とした草で覆われている場所だった。

唯一、変わった所があるとするならば、そこの最も高い場所に一本の木がある事だけ。

それ以外は、たいして変わった所はない。

 

ただ、その場所には古くから言い伝えられている物語がある。

 

紅茶色の鮮やかな毛皮とサファイアのように澄んだ青い瞳を持つ不思議な狐の物語。

 

不思議な力を持つ、妖狐たち。

妖狐は時に、人間を諌めに人里へと下りて来ると言う。

人に災いを齎さんがために………。

 

 

 

そして、これから語られるのは、その街と丘を舞台にして繰り広げられる物語。

 

一人の少年と、青い瞳の少女の物語。

 

優しく、悲しいお話。

 

そして、人の想いが起こす奇跡の物語………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Neon Genesis Evangelion

Another Story

 

The Fox Tail or The Beautiful Girl

prologue 『少年の帰還』

 

written by ディッチ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【雪の降りしきる駅前にあるベンチ】

そこには一人の少年。

全体的に長い黒髪を持つ少年である。

『六分儀シンジ』

それが、彼の名前であった。

 

「………さむい」

 

雪が降り積もる中、ずっとベンチに座っていれば当然である。

彼は、迎えに来る予定の妹を待っていた。

………二時間も。

 

「……ずっと昔だからな。自分だけで行くと迷子になりそうだ………」

 

彼が向かうのは、母と妹の住む家。

かつて、自分も住んでいた家。

楽しい思い出いっぱいの家。

悲しい思い出もいっぱいの家。

正直、彼自身もどちらが強いのか量りかねている。

ただ、母と妹に会うのは楽しみだ。

 

「………昔もこんなに寒かったかな……」

 

そうぼやきたくもなる。

約束の時間を二時間もオーバーしているのだ。

今、立てと言われても、立てないかもしれない。

そうしているうちに、近づいてくる足音が聞こえた。

 

「…………待った?」

「……………ああ」

 

彼は声を聞くと、顔も上げずに答える。

殆ど感情が感じられないこの声は、間違いない。

苦節二時間。

遂に、待ち人到着である。

 

「………これ」

「……缶コーヒー?」

「………嫌い?」

「……いや、そうじゃない」

「?」

 

シンジは寒さでかじかんだ手を無理矢理動かすようにして、頭を抱える。

少し忘れていたが、こいつはこういう奴だった。

一気に肩から力が抜けて、脱力する。

どうしてこんなのが自分の妹なのだろう、と。

 

「………まあ、いい」

「………そう、良かったわね」

「…………」

「……どうしたの?」

「いや……何で、遅れたんだ?」

「………忘れてた」

「さいですか………」

 

シンジは深い深い溜め息を一つ吐く。

いいかげん慣れよう。これが、俺の妹なのだから。

彼は渡された缶コーヒーを飲む。

冷え切った体には、格別な美味しさだった。

 

「……ねえ?」

「何だ?」

「……私の名前」

「はぁっ?」

「私の名前、覚えてる?」

「まったく、何を言い出すかと思ったら……。妹の名前を忘れる兄がどこにいる?」

「………私の目の前」

「信用無いな」

「……それなら言ってみて」

「分かった。言うぞ?」

「………ええ」

 

シンジは彼女の顔を見ると、ニヤリと笑う。

この顔は悪巧みをしている時の、彼の顔だ。

 

「花子」

「………違う」

 

周りの気温が、3度ほど下がったような気がした。

 

「太郎」

「………私、女の子」

 

シンジは立ち上がると、てくてくと歩き始める。

そのままどこへ行くのかと思ったら、ロータリーをクルクルと回り始めた。

顎のところに手を当てて、考えている『フリ』をしているようだ。

 

「………」

「………」

「………」

「………」

 

ぐるぐるぐるぐる

シンジは青みがかった銀髪の少女を伴い、ロータリーを回り続ける。

その間にも、雪は彼らの上に降り積もって行く。

 

「さすがに、ここを何十周もしたくはないな………」

「………」

 

少女は表面上は無表情であったが、兄であるシンジには拗ねているように感じた。

普段は物静かだが、怒らせると恐い事を、彼は知っている。

 

「行くぞ、『レイ』!」

「………ええ、お兄ちゃん」

 

シンジは振り返って、後ろについて歩いていたレイに笑いかける。

レイはそれに、静かに微笑み返すのだった。

 

 

 

 

 

かくして少年は、懐かしき記憶の眠る土地に帰還した。

懐かしさ。

嬉しさ。

そして、ほんの少しだけ心の痛みを抱えて…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TO BE CONTINUED…………

 

 

 

 

 

【後書きplusα】

えへへ、何でしょうね、これは?

大丈夫なんでしょうか、連載始めちゃって。

お馬鹿なディッチです。

The Fox Tail or The Beautiful Girl

prologue 『少年の帰還』 お送りしました。

 

これを読んで、ピンと来る人は来るでしょう。

もろパクリなんです、このプロローグ。

これからも、そのお話が元になってる以上、被った場面が多く出てくると思います。

ただ、色々と変えて行くつもりなので、お許しを。

どうしても何か言ってやりたいっ!とお思いならば、メールをば。

その時は、低姿勢でペコペコ謝らせていただきます。

そうでなければ、読んでいただけると嬉しいです。

 

次ではあの人が登場します。

彼女がどんな役回りか、その目でご確認を。

それではディッチ史上初、次回予告行ってみましょうっ!!

 

 

 

懐かしいはずの風景。

楽しい思い出があったはずの場所。

けれど、シンジはどうしても馴染めないでいた。

その時、彼の前には少女がいた。

少女の瞳は、サファイアのようなブルー………。

 

The Fox Tail or The Beautiful Girl

次回、第1話 『見知らぬ、再会』

「やっと見付けた………」

 

予告は大幅に変わる事もあるでしょうねぇ………。

 


マナ:な、なんだか、神秘的な雰囲気の話ね。

アスカ:シンジとファーストが兄妹なんて、いい感じねぇ。

マナ:この綾波さん。独特の雰囲気ね。

アスカ:ファーストが変なのは、いつものことよ。

マナ:シンジは普通の男の子っぽいわね。

アスカ:そう?

マナ:そう思わない?

アスカ:なんだか、シンジも怪しい雰囲気持ってるわよ。

マナ:ま、まだプロローグだからね。続きを読んでみなくちゃ。
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