新世紀エヴァンゲリオン灼熱の炎

第十一話「瞬間、心、重ねて、後編」

by、イフリート


シンジ達はマンションへ戻り部屋の扉を開けると、ある異変に気づく。

「なんじゃこりゃ!!」

そう、リビングはダンボールの箱、箱、箱で埋め尽くされていた。
シンジはアスカ達を部屋から出すと、一つの箱を開け、中を確認する。
もしかしたらチルドレンや司令であるユイを狙う奴らからのプレゼントかもしれないからだ。
しかしシンジの思った様な物は入っていなかった。(例えば爆弾とか)
入っていたのは女物の服だった。

「あぁぁぁ!!それあたしの!!」

いつの間にか部屋へ入ってきたアスカが大声を上げてシンジから服をひったくる。

「アスカ!!何故部屋へ入ってきた!!危ないだろ!!」

「何がよ!!」

「もしこの箱が爆弾だったりしたら、どうなるかわかってるだろ!!
その為にアスカ達には外にいてもらったんだぞ!!」

「それはあんただって一緒でしょ、これが爆弾だったらあんた死んでるのよ
なんでいちいちあんたが確認するのよ」

「それは、僕がアスカやレイのガード役だからな。
それに僕は爆弾程度じゃ死なんよ。」

アスカとシンジが言い争っていると、レイとミサも部屋へと入ってきた。

「まあまあシンジさん、それよりアスカさん、何故アスカさんの荷物が家に在るのですかね」

これはもっともな意見だ。

「知らないわよ、あたしが聞きたいわ」

「それはわたしが答えるわ」

声の方を振り向くと、今まで出張に行っていたユイがいた。

「母さん、これどう言うこと?」

「アスカちゃんも、家に住んでもらうことになりました。」

「「えぇぇぇぇぇぇぇ!!」」

アスカとシンジはいきなりの事にびっくりする。

「そうなのですか、アスカさんは明るい人なので楽しくなりそうですね」

お気楽なミサ

「・・・部屋が無いわ」

ぼそっと言うレイ
レイの言う通り、碇家には部屋が余っていない。
三部屋しかないので以前シンジの使っていた部屋はユイに渡し、シンジは
物置部屋へうつっていた。
ミサとレイは二人で一つの部屋を使っている。

「そうだよ母さん、部屋が余っていないよ」

「それなら心配ないわ、隣の部屋とくっつけるから。」

「隣の部屋ってミサトさんの部屋のこと?」

「いいえ、逆の部屋よ、ミサトちゃんがこの部屋へ自由に出入り出来たら
とんでも無く部屋を散らかされるから」

「そりゃそうだ、でも何でアスカの荷物がこっちに在るの?」

「それは引っ越し屋さんが間違えたのよ。」

「なんだ、そうだったのか」

「っと言うことで、シンジこの壁斬って隣とつなげてね」

「そんなんで良いの、扉とかは」

「いらないでしょ別に」

「じゃあやるよ」

シンジは刀を抜くと、壁を斬りつけた。

ジャキィィィィィン!!

大きな音と共に壁が斬られた。
斬鉄の出来る(刀で鉄を斬ること)シンジにとって、コンクリートを斬るくらい大したことはない。
斬られた壁の余り、コンクリートの塊はシンジが持ち上げ外へ投げ捨てた。

マンションの十階から捨てられたコンクリートの塊は下へ落下していき
先ほどの事でシンジとアスカに誤りに来て、マンションの外にいたゲンドウの頭に直撃したのはまた別の話だ。






「っで、何でアスカも一緒に住むことになったの?」

「そうですよ司令」

シンジとアスカがユイに聞く。
ユイは真剣な顔になる。

「これはあの使徒を倒すための作戦です。
あの使徒は二人で一人みたいな物なので、倒すには二つの核に対して
二点同時荷重攻撃しかないの
エヴァ二体によるタイミングを完璧に合わせた攻撃よ。
その為にはあなた達の協調、完璧なユニゾンが必要だわ。」

「って事はまさか・・・」

「多分シンジの考えてる通りよ」

「何よシンジ、解っているなら教えなさいよ」

「・・・多分よりいっそう完璧なユニゾンを目指すために、僕とアスカ二人で一緒に隣の部屋に住むことになるんだと思うよ。」

「ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
シンジと二人っきりぃぃぃぃぃ!!」

ユイはシンジの答えに満足したのか、ニッコリと微笑んだ。

「ご名答、さすがはシンジね」

「ちょっと司令!!それは・・・」

「何?アスカちゃん」

「いえ・・だから・・・その・・」

さすがにシンジの母親であるユイの前では、もしかしたらシンジが襲ってくるかも何て事は言い難いのだろう。

「心配する必要は無いですよアスカさん、シンジさんにそんな度胸ありませんから」

「非道い言いようだなミサ、何でそう思うんだ。」

「わたしとの旅の最中にわたしを襲おうとした事あります?」

「無い」

一瞬で答えるシンジ

「何故?」

そうミサに聞かれると、シンジはどよ〜んと顔を暗くさせ、ブツブツと答え始める。

「それはな、それは・・・ナミが怒るんだ・・・旅の最中、ミサと部屋が同じだけで枕元に立つんだ
・・・ボンテージ風レザーな服着て、鞭持って枕元に立つんだ・・・怖い・・・いやだ!!
お仕置きはイヤァァァァァァァァァァァァ!!」

ブツブツと言っていると思いきや、いきなり怯え始め、大声を上げながらベランダに向かい走り出した。
そして飛び降りる。
先ほども言ったようにこの部屋は十階だ。

「ね♪アスカさん、こうなる訳です。
もしシンジさんがアスカさんを襲おうとしても、姉様の幻影が止めてくれますよ。」

「まさか本当にシンジの枕元にあんたのお姉さんは立つの?」

「そんな訳無いです、幻でも見ているのでしょう。
もし本当に枕元に立っていたらわたしも気づきますよ、一応わたし妖怪なんですから。」

「それもそうね、それより大丈夫なのシンジの奴、こんなとっから飛び降りて・・・」

「大丈夫ですよ、こんなギャグシーンで主人公が死ぬわけ無いのですから。」

なんていい加減な答えなのだろうか・・・
まあその通りなんだがな。

「それもそうね」

納得するなよアスカ(^_^;)
まあこの様にしてアスカとシンジの同居生活が始まる。
同居と言っても、隣の部屋にはみんな居るのだが。






その頃、ベランダから飛び降りたシンジは・・・

「お仕置きはイヤァァァァァァァァァァァァ!!」

っと言う言葉を叫びながら下へと急降下していた。

その時、先ほどシンジが外へ投げ捨てたコンクリートの塊が直撃したゲンドウが立ち上がろうとしていた。

「痛いではないか、こんな物を喰らったら普通死ぬぞ」

粉々になったコンクリートの塊を見ながらゲンドウはさも当たり前のように言う。
自分がそれを喰らっていてそれだけ言えるのだから大した物である。

その時、ゲンドウの耳に声が聞こえた。
上からである。
上を向くゲンドウ
そこで彼が見た物は・・・

「あ、足の裏!!」

そう、彼が見た物は自分の顔の目の前に迫ったシンジの足の裏だった。

シンジは、マンションの十階から飛び降りた。
そして地球の重力により落下
そのシンジの足の裏がゲンドウの顔の目の前に来ている。
これがどう言う事になるか

結果・・・

ドコォォォォォォォォォン!!

顔を思いっきり地面とシンジの足の裏にサンドイッチされるゲンドウの出来上がりである。

辺りには、ゲンドウの頭から咲いたと思われる赤い花が咲いた。
そしてシンジは・・・

「お仕置きはイヤァァァァァァァァァァァァァ!!」

っと、叫びながら自分の足の裏にあるピクピクと痙攣している物体Aを掴み上げる。
半狂乱シンジはその物体Aがゲンドウとは気づいていない。
その物体Aゲンドウを掴んだシンジは・・・

「イヤァァァァァァァァァァ!!」

ドコ、メキャ、ゴキ、ドバ、メチャ、グシャ

ストレス発散のため、殴りまくった。
ゲンドウは悲鳴も既に出ない。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ドグシャッ!!

最後にシンジは最大の力で、刀の峰で峰打ちをした。

ドキューーーーーン  ドコーン!!ドコーン!!ドコーン!! キラーン☆

峰打ちされたゲンドウは、凄い勢いで飛んでいく。
もはやそのスピードは音速を遙かに超えていた。
そのスピードで飛んでいくゲンドウは、近くのビルを三つほど貫通して
一番星となった。

「はあはあはあ・・・ん?何で僕はこんなに疲れているんだ?
それにここはマンションの外じゃないか、リビングに居たはず・・・何でこんな所に?
まっいいか」

そう言ってシンジは家へと戻って行った。

飛んでいったゲンドウは・・・

「何故私がこんな目にぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

海まで飛ばされ、海水に突っ込んだと同時に復活して
鮫と一緒に水泳を楽しんでいた。
この回復力は今回の使徒の分裂君並である。
もはや人とは絶対に言えない。
こいつを殺すのは絶対不可能である。


シンジ達が訓練のため学校を休んで三日が過ぎた。

トウジ、ケンスケはこの前の戦いでシンジたちが怪我をしたと思いこみ
お見舞いにやってきた。
マンションのエレベーターの前でトウジ達はヒカリと会った。

「お、委員長、どないしたんや?」

「わたしは、アスカのお見舞いに・・・鈴原たちは?」

「わいらも、シンジのお見舞いや、惣硫もここにすんどったけ」

「先生はそう言ってたわ」

「じゃあシンジ達の隣かいな?」

「多分」

「ほら二人とも、そんな所で話していないでさっさと行こうぜ」

ケンスケの一言で二人は話を止め、エレベーターへ乗った。

「じゃあ俺達はシンジの方をお見舞いに行くから」

「わたしはアスカの方へ行くわ、後で碇君の方にも顔を出すわ」

「ああ、ほな後でな」

「ええ」

そう言っているのに何故かトウジ達とヒカリは同じ所へ向かい、同じ所で止まった。

「「「何でここで止まるんだ」」」

三人が一緒にベルのボタンを押した。

ピンポ〜ン♪

「「は〜い」」

中からアスカとシンジの声がした。
三人とも、え!?っと言う顔になる。

ガチャッ

ドアが開くとシンジとアスカは同じレオタードを着て、三人の前に現れた。

「う、裏切りもん」

「今時ペアルック、イヤ〜ンな感じ」

「ふ、二人とも不潔よ!!」

それを聞いたアスカは誤解を解こうとする。

「な、何言ってんのよ!!誤解よ!!」

「誤解も六回もないわ」

イヤンイヤンしながら言うヒカリ

シンジはと言うと・・・

「う〜ん、ペアルックか・・・
どうせならもっと良い服でペアルックしたかったな。」

誤解を招きまくっていた。

「しっ、シンジ!!何言ってんのよ!!」

「不潔、不潔よぉぉぉぉぉ〜〜〜」

「あら、いらっしゃい」

ユイがシンジ達の後ろからヒカリ達三人に声をかけた。

「これはどう言うことか説明して貰えまっか」







「なんだ、そうだったのか」

どうやら三人はユイから説明を受けて納得したようだ。

「それでユニゾンの方はどうですか。」

ケンスケがユイに聞いた。

「まあ見てなさい、シンジ、アスカちゃん準備は良い」

「いいよ母さん」

「はい!!」

「それじゃミュージックスタート」

合図と共に音楽が流れ出す。
それに会わせて踊る二人
しかしシンジの動きが少しおかしい、音楽にもアスカにも少し後れをとっている。
通常の人間には解らない程度だが、ミサや加持には解っていた。

そして音楽が終わり、踊りもおわる。

「上手いもんやな」

「アスカ、碇君すごい」

「凄いぞシンジ、惣硫」

通常の人間が見るとこうなる。

「当然よ!!なんたってアタシが踊ってるんですから。
シンジ、もっと練習して、上手くなるわよ!!」

そう言ってアスカはシンジの方に振り向いた。
しかしシンジは何やら納得のいかない顔をしている。

「なによシンジ・・・今の踊りが納得行かないの?」

「ああ、そうだ」

シンジはアスカにハッキリと言った。

「何処がよ!!完璧じゃない!!」

「あれが完璧?ふっ、笑わせるなよアスカ・・・
ミサや加持さんには解るでしょ、僕の言いたいことが」

「ああ、そうだな」

「ええ、解りますよ」

加持とミサはアスカの方を見た。

「なっ、何よ・・・どう言う事よ」

濁るアスカ

「アスカさん・・・シンジさんに合わせて踊ってますか?」

「何でアタシがシンジに合わせて踊らなきゃいけないのよ!!」

「シンジさんに合わせて踊らなければ、ユニゾンにならないのじゃありませんか。
アスカさんの場合、シンジさんではなく音楽に合わせています。
それではいくらシンジさんがアスカさんに合わせても上手くいくはずありません。」

「ほうか?ワシが見る限り、せんせと惣硫はピッタリに見えたんじゃが・・・」

「それは普通の人が見ればそう見えますよ鈴原さん
わたしや加持さん、シンジさんから見れば、上手くいってないのが一目瞭然です。」

「ほうなのか」

「はい」

ここまで話を聞いていたアスカが怒りのあまりミサに怒鳴り始めた。

「いい加減にしなさいミサ!!アタシが悪いっていうの!!」

「悪いですけどそうなります。」

その怒鳴り声を出すアスカに平然と答えるミサ

「ぬぁんですって!!もういっぺん言ってみなさいよ!!」

「何度でも言って上げます、悪いのはアスカさんです。
ついでに言っておきますが、シンジさんが音楽に合わせて踊れば
アスカさん何かより数段上手く踊れますよ。
自惚れるのもいい加減にして下さい。」

「自惚れてるですって!!アタシは完璧な人間なの!!何でも一番なのよ!!これは自惚れ何かじゃない!!」

「そう言ってる次点で自惚れてるっていうのですよ
少しは自分の力量を把握したらどうなのですか
ハッキリ言ってみっともないです。」

ミサまで熱くなってきたのか、話が違う方向へとすすみ始めた。

「みっともないですって!!あんた何かにアタシの何が解るって言うの!!」

「完璧な人間という鎧を心にまとった哀れな女性と言う事がわかります」

「自惚れてるだの、みっともないだの、哀れだの・・・言いたいこと言ってンじゃないわよ!!」

アスカは遂に切れて、座っているミサに思いっきり蹴りを入れる。
しかし・・・

パシッ、ポイ、ドガン!!

「ギャッ!!」

アスカの蹴りは軽くミサに止められ、そのまま足を掴んで、壁に向かってアスカは投げられた。
壁に背中がぶつかり、受け身が出来なかったので意識がとうのきそうになるアスカ

それでもアスカは何とか立ち上がり、ミサの方を見た。
そこで見たのは、何時もの脳天気な感じのミサではなく、完全に戦闘態勢のミサだった。
いつもは黒い目が金色に輝き、冷気を身体から放出している。
たまに氷の粒がミサの体の回りに浮かんでいたりする。

「ひぃっ!!」

その光景を見てさすがのアスカも恐怖に狩られた。

「言って解らないのなら・・・その身を持って教えて上げます!!」

ミサの手刀がアスカの胸に向かって突き刺さろうとした。

ガシッ!!

しかしシンジがミサの手首を掴み、突き刺さる前に止めた。

「ミサ!!やりすぎだ!!少し落ち着け!!」

「放して下さい!!放して!!」

ジタバタ暴れるミサ

「いい加減にしろ!!」

パァァァァァァァン!!

シンジはミサの頬をビンタした。

頬をおさえてシンジを見るミサ

「・・・シンジさんが叩いた・・わたしは悪くないのに・・・本当のこと言っただけなのに・・・・・・うえぇぇぇぇん」

シンジをふりほどくとミサは泣きながら自分の部屋へと戻っていった。

「ケンスケ!!」

「な、何だよ」

いきなり話が自分の所に来たので驚くケンスケ

「ミサを頼む」

「・・・ああ」

ケンスケは少し考えると、ミサの部屋へ向かった。

「アスカ、大丈夫か?」

「・・・何でよ・・何でアタシばっかりこんな目にあわなきゃなんないのよ!!
アタシは間違ってない・・・間違ってないのよ!!」

そう言うとアスカは部屋を飛び出していった。

「アスカ!!」

シンジの呼び止めも虚しく、アスカは部屋から消えた。

「碇君追いかけて!!女の子を泣かしたのよ!!」

ヒカリがシンジに怒鳴る

「解ってるよ!!」

シンジは玄関へ行き、靴を持ち、部屋へ戻ってきて、ベランダへ向かう。
そして靴を履くとベランダから飛び降りた。

回りの人間はそれに驚きベランダから飛び降りたシンジを見た。
そこには地面に当たり前のように立っているシンジの姿があった。







その頃アスカは丁度エレベーターからおりてきた。

(何よ何よミサの奴!!言いたいこと言って!!アタシは間違ってない!!間違ってないのよ!!)

そんな事を考えながら、アスカはエレベーターから降りると
ダッシュしてマンションから飛び出した。
しかしその時・・・

ドンッ!!

何かにぶつかった。

「あんた!!何処見て歩いて・・・・ってシンジ何でここに!!」

「アスカを追ってきたんだよ・・・ベランダから飛び降りて。」

「あんたね・・・まあいいわ、何のよう?」

「少し話さないか・・・ここでは何だから、場所を移動しよう」

「・・・わかったわ」

そう言ってシンジ達はどこかへと向かった。


シンジ達は小さな公園にいた。
滑り台とブランコしかない小さな公園
アスカとシンジはブランコに乗っていた。

「・・なあアスカ」

「何よ・・・」

「肩の力・・・もっと抜けよ」

それを聞くとアスカはブランコからガシャーン!!っと立ち上がりシンジを睨んだ。

「何よ偉そうに!!アタシに指図する気!!」

「別にそんなつもりはないけど、疲れるだろ・・・そう言う生き方は」

「あんたなんかに何が解るのよ!!」

シンジはそれを聞くと、ブランコに乗ったまま上を向き、空を見ながら呟き始める。

「昔の僕なら解らなかったかもしれないが、今の僕なら解るさ
自分の弱さを隠して生きていく・・・それがどれだけ辛いかくらい
誰にも甘えず、自分一人で生きていく・・・それが本当に辛いことくらい」

それを聞くと先ほどよりも鋭い視線でシンジを睨むアスカ

「・・・アスカには悪いと思ったが、アスカの過去、調べさせてもらったよ。」

「な!?何でそんなことすんのよ!!」

「勝手に調べたことに関しては謝るよ
だけど、調べて一つ思った事がある」

「何よ、思った事って」

「もう良いんじゃないか・・・一人で頑張らなくても
今のアスカには仲間が居る、僕やレイ、ミサ、ミサトさん、加持さん、委員長、トウジ、ケンスケ、リツコさん、母さん
こんなにいっぱい仲間がいるじゃないか、もう一人で生きて行こうなんて考えなくても・・・
そろそろ過去のことを振り替えらず生きたらいいって、これだけは僕が言えた義理じゃないか。
僕も過去を思いっきり引きずって生きてるもんな」

「そうよ、それだけはあんたに言われたか無いわ」

「だけどアスカだけでも過去には振り回されないで欲しい
僕のようになって欲しくないからな。
僕にはまだ無理だけど・・・どうしてもやらなきゃいけない事があるから
でもアスカはもう良いだろ」

「アタシの事とやかく言う前に何であんたは過去を清算出来ないのよ。
いっぱい人を殺したから?」

「それも少しある・・・確かに僕は人を殺しすぎたからな
もう四行は行ってるよ、殺した人間の数は・・・
でもそれは悔やんでいない、やったことも間違っているとは思わない。
彼奴らを野放しにしておく方がとんでも無いことになるから・・・」

「じゃあ何よ、あんたの過去で引きずっているって物は?
アタシの過去を勝手に調べたんだから教えなさいよ」

それを聞くとシンジは下を向き、喋り始める。

「前に・・・三、四日前に屋上でご飯を食べているとき少し話した事があったと思うが
ナミの事だよ。」

「ナミってミサのお姉さんで、あんたの恋人のこと?」

「ああそうだ・・・あの時は死んだって言ったけど・・・殺されたんだ、僕とミサの目の前で・・・」

「・・・えっ」

「そいつがナミを殺した理由・・・何だと思う?」

「・・・恨まれてたとか」

「違う・・・暇つぶしだと」

それを聞くとアスカは流石に驚く

「何ですって!?」

「なあアスカ・・・許せると思うか?
この世界で一番たいせつだったナミを・・・ナミを・・・暇つぶしに殺した何て理由を言われて許せると思うか!!」

「許せる分けないでしょ!!」

「彼奴をいたぶり殺すまでは僕の過去は清算できん」

「・・・そう」

「だけどアスカは違う、恨む相手なんかいないし
何より仲間が居る、アスカはエヴァに乗れなければ誰も見てくれない何て思っているみたいだが
そんな事無いぞ、少なくとも僕はセカンドチルドレンのアスカじゃなく
か弱い女の子のアスカを見てきたつもりだ。
今アスカが持っている全ての肩書きなんか関係ない、女の子としてのアスカを見てきたつもりだ
多分ミサもそうだと思う、熱くなってさっきはあんな非道いことを言っていたけどな」

アスカの心が何かで満たされていく・・・
自分にこんな事を言ってくれた人が今までにいただろうか・・・
エヴァが全ての自分に・・・


こいつは普通のアタシを見てくれる・・・
セカンドチルドレンとしてのアタシでは無く・・・
普通のアタシを見てくれる・・・


生意気な・・・
でもイヤじゃない・・・
むしろ嬉しい・・・


これが他のケンスケやトウジが同じ事をアタシに言っていたらどうだろう。
多分アタシは受け入れられない
平凡な生活をしてきた奴らにアタシの気持ちが解るはずが無いと馬鹿にしただろう。
しかしこいつは違う・・・
アタシなんかより比べ物にならない位の苦労をしてきたと思う。
だからこいつの事は馬鹿に出来ない。
言われた事も素直にとまでは行かないが、聞く事が出来る。


「たくっ・・・生意気な事言ってくれるじゃない。」

「そうか?」

「そうよ・・・でも少し嬉しかったわ」

「止せやい、僕はけして褒められる人間じゃないんだ。」

「そんな事無いわよ、それより・・・ミサにも悪いことをしたわ、謝らないとね」

「まあ、あれはどっちもどっちだから、アスカが気にすること無いよ。」

「そうね、あんたなんかミサを叩いちゃったしね」

「うっ!!どうしよう・・・止めるためとは言え、じゃれあいや修行以外で
ミサを叩いたのは初めてだったんだ・・・まだ泣いてるかな・・・」

「大丈夫でしょ、その為に相田の奴にミサを任せたんでしょ
彼奴ら二人、結構気があってるみたいだし」

「そうだな・・・
気にしていても始まらない、戻ってユニゾンの練習をするか」

「そうね、戻りましょ」

その時だった。
近くの草むらで何かが光ったのをシンジは見た。

「!?、アスカ!!伏せろ!!」

「え?」

ダキューン!!

シンジの声と同時くらいで辺りに銃声が木霊した。

「ちぃ!!」

シンジはアスカに飛び付いた。
レオタード姿なので八乙女を持ち合わせていなかった。
持っていれば銃弾を跳ね返すことも簡単だったが
持っていないのでシンジはアスカに覆い被さり盾になった。
流石に火炎術を集中して守るほどの暇もなかった。

銃弾がシンジの背中にめり込む。

「ぐっ!!」

「シンジ!!」

シンジに銃弾が当たったのを見ると、草むらから一人の男が現れた。
しかし様子がおかしい・・・
目が虚ろで、焦点があっていなく、頬も痩けており、歩き方もふらふらしている。

「何よあんたは!!」

「ぐへ・・・ぐへへへへへへへへへ」

アスカの怒鳴り声など聞こえていないらしい。
ただ気持ち悪く笑うだけだ。
涎などもだらだら垂らしている。

「アスカ、大丈夫か?」

「何言ってンの!!アタシよりあんたがやばいでしょ!!」

「銃弾の一発くらい大した事はない・・・それより」

シンジは立ち上がると男を見た。

「!?・・・何てこった・・・あの状態は」

「何?どうしたの?」

「・・・アスカ、下がっていろ・・・あいつ、ブラックエンジェルに犯されてやがる」

「ブラックエンジェル!!・・・あの最強の麻薬の事!!」

「ああ、でも何故ブラックエンジェルの適用者がこんな所に・・・
まあ良い、お喋りはここまでだ!!アスカはちゃんと下がっていろよ」

そう言うとシンジは炎の刀をだす。
アスカは言われた通りシンジと男から距離を置いた。

「・・・悪く思うなよ。」

「ぐへへへへへへへへ」

男は再びシンジを撃ち殺すため銃をシンジに向かって乱射した。

ダキューン!!ダキューン!!ダキューン!!ダキューン!!ダキューン!!ダキューン!!

ジュワ!!ジュワ!!ジュワ!!ジュワ!!ジュワ!!ジュワ!!

しかし全ての銃弾がフレイムソードで斬られ蒸発していく。

シンジはアスカがいる前で殺すのは気が引けたが・・・

「・・・すまない」

っと呟くと相手に神速のスピードで近づき・・・

ズバッ!!

首を跳ね飛ばした。
その光景をアスカは見てしまった。
いくらシンジが人斬りをしていたのを知っているとは言え
やはり恐怖を憶えた。

「悪かったなアスカ・・・こんなシーンを見せてしまって・・・怖かったろ」

「・・・何で殺したの、そこまでしなくても」

「僕だって殺したくは無かったさ・・・けど、あの麻薬に身体を支配されると
殺す以外どうしようもないんだ・・・それも首をはねる以外に死なないと言うとこがまた厄介なんだ」

「・・・・・」

「軽蔑したか?」

「まさか、お礼を言うことはあっても・・・軽蔑なんて絶対しないわ」

「ありがと」

「そっ、そんな事よりあんた!!背中大丈夫なの!!」

「大丈夫、大丈夫、こんなの・・・ふんっ!!」

シンジは背中に力を入れると、撃たれた傷口から鈍り玉が出てきた。

「ね♪大丈夫でしょ♪」

「・・・呆れた」

「さて、今度こそ戻るか」

「そうね」

そう言ってシンジ達はマンションに戻っていった。

シンジに殺された男の死体は勿論ネルフによって処理された。
今、この男とブラックエンジェルの関係も捜査中である。


「「ただいま〜」」

シンジとアスカがユニゾンして言う。

「シンジさん!!アスカさん!!」

一番早くミサが二人の所へと現れた。

「ご免なさい、ご免なさい・・・うえぇぇぇぇぇん」

「ほら、もう良いわよ・・・蹴ったのはアタシだし自惚れていたのも確かなんだから
もう泣きやみなさいよミサ・・・ね♪」

アスカはミサの頭を撫でて言う。

「くすん・・・はい・・・シンジさんもご免なさい、やりすぎました・・・反省してます。」

「こっちこそご免、殴ったりして・・・痛かったろ?」

シンジは自分で叩いたミサの頬をそっと撫でながら、優しく言う。

「あっ・・・シンジさん、そんな優しく頬を撫でないで下さい・・・気持ち良すぎます」

何故か顔を赤くするミサ
そんな二人を見てむっとなるアスカとケンスケ

「シンジ!!さっさとユニゾンやるわよ!!」

「そうたぞシンジ!!とっとと練習しろ!!」

仕舞いには怒り出す二人。

「わ、わかったよ・・・・何怒ってんだアスカ・・・まあケンスケは解るけど」

その時、近くに来たレイがシンジの背中を見た。

「・・・お兄ちゃん、背中怪我してるわ・・・痛くない?」

「ああ・・・これね、さっきちょっと・・ピストルで撃た・・れて・・さ」

「・・・え!?お兄ちゃん平気なの!!」

「大した・・・こ・・とはな・・・・い」

ドサッ!!

そう言うとシンジは倒れ込んだ。

「お兄ちゃん!!しっかりして!!お兄ちゃん!!」

「シンジ!!・・・アタシを庇ったばっかりに」

「シンジさん!!フリーズヒール!!」

ミサのフリーズヒールで背中の傷口は塞がる。

「シンジ君をこっちへ」

加持がいつの間にかシンジの所にやってきていた。

「はい」

ミサはシンジを渡した。
加持はシンジの様子を見た。

「・・・ふむ、大した事はないな、ただ疲れて寝てるだけだ。
ユニゾンの訓練は明日からだな
後アスカ、何がどうしたのか詳しく教えてくれ」

「わかってるわ、加持さん」

「それじゃまずは、シンジ君を布団へ」

加持はシンジを布団へと運んでいった。






「そうか・・・ブラックエンジェルの適用者か・・・厄介だな」

アスカは加持に先ほどあったことを全て話した。

「そうですね、まさかあれがまた流失しているなんて・・・
でもおかしく有りませんか・・・あの麻薬を作っていた組織は根こそぎ
シンジさんと加持さんとマナさんとわたしで壊滅したじゃありませんか。
そこのボスだってシンジさんとマナさんで八つ裂きにしてましたし・・・」

「組織のボスの弟が居ただろ、彼奴には逃げられただろ確か・・・」

「逃げられたと言うより・・・居ませんでしたね、あの場所には」

「まあ良い、彼奴は俺が探して処理しておく
だからミサちゃんやシンジ君は手を出さなくて良い
シンジ君が起きたらそう伝えといてくれ」

「一人で大丈夫ですか?」

「なに、残った残党くらい俺一人でも大した事はないと思う
いざとなったら、マナちゃんにも手伝ってもらうさ」

「まあ加持さんくらいの凄腕の人なら大丈夫だとは思いますし
そこにマナさんが混じれば、絶対安心ですね・・・それではお任せします。」

「ああ」

そう言うと加持は立ち上がる。

「それじゃ早速調べてみるわ」

「お願いします」

そこにミサトが話しかけた。

「・・・加持君、本当に大丈夫なの?」

「心配するな葛城、俺の腕は知ってるだろ」

「そうだけど・・・無理しないでね」

「ああ、じゃあ行ってくる」

そして加持は部屋を後にしていった。

大人達とレイ以外の人間は今までの会話を聞いていて
やはりミサやシンジの裏の世界の顔に凄く驚いていた。
それはそうだろう、加持はともかくシンシはまだ14歳の子供だし
ミサだって見た目はシンジ達と変わらない様にしか見えないのだから
改めて子供達は、シンジとミサが昔、通常の世界の人間では無かったことを知った。


夜、シンジは目を覚ました。
隣の布団にはアスカが寝ている。
シンジはアスカを起こさないように布団から出てベランダへと向かった。

そしてシンジはタバコを取り出すと、火を付け吸い出す。

フーーーー

煙が夜空へと消えていく。

「ブラックエンジェルか・・・また厄介な代物が出てきたな
使徒との戦いもあるし、不味いな」

「あんたが気にすること無いわ、加持さんが調べるって言ってたし」

いつの間にかアスカがシンジの隣に立っていた。

「悪い、起こしちゃった?」

「眠りが浅かったから大丈夫よ」

「そうか・・・」

フーーーー

シンジは煙草を吸い煙を吐き出す。

「あんた、タバコ止めなさいよ、身体に悪いわよ
全然似合ってないし」

「そうか?ナミは格好いいって言ってくれたんだけどな」

ズキッ

それを聞いたアスカの胸に小さな痛みが走る。

(何よこの胸の痛みは・・・たたシンジが元彼女の話を少ししただけなのに・・・まさか嫉妬してるのかな
シンジの元彼女に・・・まさか・・・ね)

「どうしたんだアスカ、気分悪いのか?」

黙り込んでいるアスカを心配して話しかけるシンジ

「・・・何でもないわ」

「そうは見えないが」

「うっさいわね、それより明日も訓練が有るんだから寝るわよ」

「解ったよ」

シンジは吸っていた煙草を灰にする。

「ほら、さっさとする」

アスカはシンジの手を掴み引っ張っていく。

「お、おい、ちょっと待ってよ」

「ぐずぐずしない」

「・・・アスカって大胆だな」

「何が」

「だって、一緒に寝るのを誘っちゃったりして♪」

「・・・あっ」

自分のとんでも無い行動に気づいたアスカは顔を赤くした。

「じゃあ寝ようか」

シンジはアスカをお姫様抱っこする。
そしてアスカを布団へ下ろす。
シンジは顔をニヤリと笑わせながらアスカと同じ布団へ入る。
それを見てアスカは変な想像をしてしまう。

「やめて・・・冗談でしょシンジ」

「うん冗談・・・じゃあお休み」

シンジは自分の布団へ戻り寝た。
アスカはぷるぷると怒りで震え出す。

「・・・からかわれたのね・・・覚えておきなさいよシンジ」

しかし言葉と裏腹にアスカはほっとして、眠りについていった。






その後のユニゾンの訓練はシンジとアスカの息がピッタリと合い
一寸の狂いもなかった。

そして分裂君との二回目の戦闘は、予定の62秒でケリをつける筈だったが
あまりに二人の息が合っていたのと、元々エヴァの操縦が上手な事もあり
10秒でケリがついてしまった。
ハッキリ言って分裂君の立場がなかった。
死ぬ間際目から分裂君が“るるる〜”っと涙を流していたそうな。

《つづく》


あとがき

使徒戦・・・手抜き、はっはっは

本編をなぞっても仕方ないと思ったので。

それでは次回予告を・・・


『二人っきりで出かけるシンジとミサ
それを嫉妬したのか、隠れながら二人を追うアスカとケンスケ
そしてシンジ達二人の向かった先は・・・』


次回、《墓参り》

次回もサービス♪サービス♪


マナ:やーっぱり、アスカ。ユニゾン下手ぴだったわねぇ。

アスカ:ムゥ・・・。シンジに負けた。

マナ:でも、追いかけたシンジの言うこと、わりと素直に聞いたわね。

アスカ:いろいろと過去に苦労してきたシンジだからねぇ。説得力があるから。

マナ:シンジの苦労は、アスカどころじゃないもんねぇ。

アスカ:そうそう、またやっかいなのが出て来たわね。ブラックエンジェルとかなんとか。

マナ:使徒だけでもやっかいなのに、シンジの過去がこれから大きく絡んできそうね。

アスカ:アタシ達は、使徒戦で忙しいんだから、そっちはまかせるわよ。

マナ:加持さんが上手いことやってくれるだろうけど・・・。

アスカ:けど?

マナ:そうあっさりと、片付くと思う?

アスカ:思えないわねぇ。やっぱり。(ーー;;;

マナ:狙われない様に注意しなくちゃね。

アスカ:なんか、シンジ達強いから、アタシがヤバイわねぇ。(TT)

マナ:わたしもそう思うわ。(^^v

アスカ:最後の笑顔は何?(ーー)
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