出会いが有れば、別れもある・・・

沢山の人達と出会えば、それだけ多くの別れもある。

俺は、どれだけの人達と出会い、そしてどれだけの人達と別れてきたのだろう。

その中には、俺自ら手を下し、死という言葉で別れを告げてきた人間も少なくない。

しかし、やはり親しい人達との別れは辛い・・・

友達、戦友、家族、そして恋人・・・

人にはそれぞれ、親しい人達は沢山居るだろう。

俺にも最愛の人が居た。

・・・・・ナミ

君はどうして先に行ってしまったの・・・

君の居ない世界は、辛く、そして悲しい・・・

君を殺した男は、この手で殺した。

今頃、君の前で土下座をしているだろう。

なあ、ナミ・・・・もう良いだろ・・・・

俺はもう、疲れた・・・

全てに・・・・・何より・・・・・生きる事に・・・・





新世紀エヴァンゲリオン灼熱の炎《京都編》

第十九話「残されし物」

by.イフリート


塔を出る、シンジ達一行。
マユミも回復して、シンジ達と一緒にいる。
そして塔を見渡す。
復讐の舞台となった塔を・・・


「・・・破壊する。」

「それが良いと思うわ」


シンジの一言に、マナが同意する。
二人は、高々と舞い上がり
そして・・・


「紅蓮の炎をつかさどりし鳳凰よ、その偉大なる力を我に!!」

「五亡星よ、五方より交わりて、刃を纏わん!!」


シンジの頭上には、超巨大な紅蓮の火球・・・
全てを焼き尽くさんばかりの、生き物の様にうねる火球・・・

マナの前には、光り輝く美しい五亡星
そして五方から中心に交わり結晶に変わる、よりいっそう輝きを増す光の結晶・・・


「ファイヤーボール!!!」

「刃成る蛇!!!」


シンジはそれを投げつけ
マナは結晶を光の剣で斬りつける。

超巨大な紅蓮の火球と、刃を無数に纏った巨大な蛇が塔にあたる。
その瞬間、塔は何も残さずにこの世から消えた。
その場に新たに出来た物と言えば・・・・

巨大なクレーターだった。


「みんな・・・家へ、帰るか。」


それだけ言うと、シンジの後を追い
一行は、消えていった。


シンジ達は、街を離れ、山奥の自宅へと戻ってきた。
もう、辺りは暗くなっている。
そして、突然の大雨。
雷が鳴り、木々が蠢く。
直ぐさまみんなは部屋へとはいる。


「やんなっちゃうわね、突然」


アスカは悪態をつきながら、居間へと入った。
それにつられ、皆も入って行く。
ミサが洗面所から全員の分のタオルを持ってきて手渡す。
それぞれ体を拭き、床に座る。


「お風呂の用意をしてきます。」


ミサはそう言うと、居間を放れ風呂場へと向かう。
そして風呂の用意が出来ると、それぞれ順番に風呂へと入った。
皆が風呂で体を温めると、食事をとり
いつの間にやら、宴会が始まっていた。

それもこの席で、お酒が出ている。

お酒が飲める年の人間は、ミサと加持くらいである。 ミサは妖怪だけど。
しかし、そんな事はお構いなしに、全員お酒を飲んでいた。


「シンジ〜 飲んでるぅ〜」

「・・・・ああ」


お酒でハイテンションのアスカに対して、何やら考え事をしていたのか
生返事を返すシンジ


「何くらい顔してんのよ、ほら、飲みなさい」


アスカはシンジの開いたコップに、日本酒をつぎ込む。


「有り難う。」


シンジはそれだけ言うと、一口だけお酒をあおる。
そして大雨の降っている外を、窓越しから見つめた。


「何ラブラブしてるの、憎いよ、ご両人♪」


そんな二人のやり取りに、茶々を入れるマナ


「だっ、誰がラブラブしてんのよ!!」

「きゃー♪アスカが怒った♪怒っちゃイヤ〜ン♪」


アスカがマナを追い回す。
シンジはその光景を優しい笑顔で見つめると、再び雨の降っている外を見つめた。
そんなシンジの側に、祐一がお酒を持って来た。


「どうしたんだシンジ、お前らしくないぞ。」

「・・・・ねえ、祐一さん」

「んっ、何だ。」

「僕って・・・いや良いです。」

「・・・そうか。 あまり考えすぎるなよ。
俺達は仲間なんだから、何かあったら相談しろよ。」

「有り難うございます。 祐一さん。」


それだけ言うと祐一は、あゆの所へ行く。
つくと同時にあゆの口の中に一升瓶を突っ込んで飲ませていた。

宴会も大詰めになってくる。
皆はそれぞれ酔いもいい具合に回ってきていた。
そんな中シンジは、刀を腰に差し、皆にばれないよう気配を消して外へ出ていった。
この大雨の中を・・・




「あれ、シンジが居ない。」


酔い任せに、マナの光の剣を発動させようと頑張っていたアスカが
シンジの居ないことに気づく。
光の剣の方は、勿論ピクリとも発動しなかった。


「マナ、シンジ知らない?」

「知らないわね。」

「レイは・・・」

「アハハハハハハハハッ」

「ダメだこりゃ。」


アスカは立ち上がると、他の部屋とかも見てみるが
何処にも居なかった。
鍵がかかっていて入れなかった部屋があったので、ミサにあけて貰った。
勿論鍵のかかっている部屋にシンジが居るはずがない。
ただ、そこで見た物は・・・


鞭がずらりとかけてあり

三角の馬が置いてあり

小さな水車も置いてあり

蝋燭なんかも置いてあり

ボンテージ風のレザーな服がズラリと並んでいた。


無言で扉を閉めるアスカ
その顔は引きつった笑いを浮かべていた。
先ほどは扉にかかっていたかけふだを見なかったが、よくよく見てみると


【お仕置き部屋♪】


などと書いてあった。


(これじゃあシンジが鞭に怯えるのも無理ないわね。)


そして最後に少し居間やミサの部屋から離れた部屋へと足を運んだ。
そして最後の一つの部屋を開けた。
しかしその部屋にはこれと言って無かった。
ただ一つの仏壇を除いて・・・

アスカは部屋の電気をつけて、仏壇へと近づく。
そして仏壇の中の一つの写真を見つめた。


(これは・・・)


その中に移っていたのは、優しそうな微笑みを浮かべる
自分より年上と思われる女性だった。
髪はミサと同じ奇麗な空色をしていた。


(この写真・・・シンジの)


そう、そこに写って居たのは、紛れもなく
死んだシンジの彼女、ナミの姿だった。


(奇麗・・・)


ナミの写真に見惚れるアスカ。
それと同時に胸には苦しみと痛みが走る。
紛れもなく嫉妬だ。


(そうか、シンジはこの人とミサと昔は三人で暮らしていたんだ。)

(そして、シンジと付き合って、キスして、抱き合って・・・)

(胸が苦しい・・・やっぱりアタシはシンジのこと・・・)


アスカはいたたまれない気持ちになる。
お線香を一本上げて、手を合わせると
この部屋を後にした。


「それにしてもシンジの奴・・・何処行ったのよ。」


居間に戻る前に玄関を見てみると、そこはシンジの靴がなかった。


「シンジの奴、まさかこの雨の中外に行ったの。」


アスカは居間に戻ると、未だにどんちゃん騒ぎをしている人達に目もくれず、ミサの所へ向かう。


「ミサ・・・傘貸してくれない。」

「良いですよ。 玄関の横にありますから好きなのを・・・って、この雨の中外へ何しに?」

「シンジが外へ行ったらしいのよ。 多分行き先は・・・」

「姉様のお墓ですね。」

「でしょうね。」

「解りました。 行ってらっしゃいアスカさん。」

「行ってくるわ。」


それだけ言うとアスカは一目散に玄関へと向かう。


「俺もついて行くよ。」


後ろから突然、祐一がアスカに話しかけてきた。


「流石にこの暗い中、女の子一人では危険だし、懐中電灯も持ってるからな。」

「わかったわ、お願いするわね祐一」

「りょ〜かい」


二人は靴を履くと、大雨の中、シンジの居ると思われるナミのお墓へと向かっていった。




丁度アスカがシンジの居ないことに気づいた時
シンジはアスカの思った通りナミのお墓へと来ていた。
傘などささず、雨に撃たれたまま・・・


「ナミ・・・敵はとったよ。 あの腐れ外道は、この世から跡形もなく消したよ。」


お墓に向かい、笑顔で話しかけるシンジ
しかし笑顔とは裏腹に、痛々しさが見受けられた。


「俺な、あいつを殺せば何かが見つけられると思ったんだ。 だけど実際はどうだ・・・虚しいだけだった。
あいつを殺したところで、何も残らなかった。 生きる糧を失った感じだよ。
俺・・・もう疲れたよ。 それに、今まで殺してきた人達への償いもしなければならない。
なあナミ・・・もう、そっちへ行っても良いだろ。
みんなもう、俺が居なくても大丈夫だろうし・・・
ミサも俺なんかと居るより、みんなと居た方が幸せになれる。
今から行くよ・・・ナミ」


それだけ言うとシンジは、腰の刀を手に取り抜く。


「さよなら、みんな」


そして・・・・・


グサッ!!










アスカ達は、暗い闇の中、懐中電灯一つでナミのお墓へと向かっていた。
雨が強いのと、足場が雨で悪いせいか、前へ進むのがどうしても遅くなっていた。
取り敢えず二人はそれでも前に進む。

その時祐一がアスカに声をかけてきた。


「アスカちゃん」

「何よ。」

「アスカちゃんは、シンジのこと・・・好きなのか?」

「なっ、何言ってるの!? そっ、そんなんじゃ無いわよ!!」

「どもってるよ。」

「うっ」


暗くて表情は見えないが、祐一にはアスカが顔を紅くしているというのが何となく解った。


「好きじゃないの」


解っている癖に、意地の悪いことを聞いてくる祐一


「・・・多分、好きなんだと思う。」

「多分?」

「ええ、シンジの死んだ彼女の写真を見たときや、話を聞いたとき胸が苦しいし・・・」

「それって・・・好き以外の何者でもないぞ。」


呆れた口調で言う祐一


「そうかな・・・」

「そうだよ。 告白すれば?」

「でも・・・」


うなだれるアスカ
アスカが告白できない気持ちも祐一には分からなくもない。


「でもじゃない。 気持ちをうち明けないと、解らないことも有るぞ。
特にシンジは鈍いから。」

「だけどシンジの心の中には、未だに前の彼女のことが・・・」

「それは当たり前だぞ。 居ないはずがないからな。
忘れているような奴の方が信じられないな。 人間として。」

「そうね。」

「まあ、後は二人の問題だ。 俺がとやかく言う筋合いはないな。」

「少し考えてみる。 有り難う祐一。」

「お礼なんて良いさ。 あ〜あ、あのうぐぅも少しはアスカちゃんを見習って欲しいよ。」

「うぐぅって・・・アンタの彼女のあゆだっけ」

「そう、通称、たい焼き食い逃げうぐぅ。」

「あんたね・・・仮にも自分の彼女のことを。」

「まあ・・・あれはあれで良い所有るけどな。」

「惚気るんじゃないわよ。」

「惚気て何か・・・・って、おい。」

「どうしたのよ、突然怖い声を・・・」

「あそこ」


祐一は懐中電灯で自分の見た物を照らした。
それでもよく見えないが、誰かが倒れているようだ。
そしてアスカ達が居るのはナミのお墓の直ぐ近く。
イヤな気持ちに覆われる二人。

二人は傘を投げ捨て、走って人が倒れていると思われる所へと向かった。
途中アスカは足を滑らせ転びそうになるが、何とか体制を立て直し
人が倒れているところに到着する。
それでも雨と暗闇が邪魔をして、二人はよく見えない。

懐中電灯も、雨にやられたのか明かりが消えてしまった。
しかしそんな時、二人の思いが通じたのか
突然雨が止み、雲が晴れ、満月の月が顔を出した。
一気に辺りは明るくなる。
そしてそこで目にした物は・・・


「しっ・・・シンジ?」


恐怖に凍り付いたアスカの声
祐一に至っては声も出なかった。
何せそこには・・・

刀を腹から背中まで貫通させて、大量の血を流して蹲るシンジの姿があったからだ。


「嘘・・・どうして。」

「・・・マジかよ。」


その光景を、どうしても信じたくない二人。


「イヤァァァァァァァァァァッ!!!!」


アスカの悲痛な叫び声が、深い森の中まで響きわたっていった。

《つづく》


イフリート:本当に暗いぞ・・・

  ミサ :シンジさん、大丈夫でしょうか。

イフリート:次回解るよ。

  ミサ :ハッキリしませんね。

イフリート:さてと、次回予告を



『刀で自害したシンジを見つけたアスカと祐一
余りのことに取り乱さずに居られなかった。
アスカの叫び声が聞こえたのか、ミサが墓の前までやって来た。
直ぐに治療にはいるミサ
シンジはこの先どうなってしまうのか。
そしてシンジの姿を目の当たりにしてしまったアスカは・・・』



次回、新世紀エヴァンゲリオン灼熱の炎《京都編》

第一部完結
第二十話『さようなら』


次回もサービス♪サービス♪


マナ:せっかく無事解決したのにっ、シンジが大変よっ!

アスカ:まだ解決してなかったのよ。シンジの心が・・・。

マナ:あーん、シンジが死んじゃうよぉ。

アスカ:どうしよう。どうしよう。

マナ:ミサちゃんならなんとかしてくれるかも。

アスカ:ここにミサいないでしょ。

マナ:じゃー、いったいどうするのっ!?

アスカ:ひとまずアタシのあたたかい愛で暖めるしか・・・。

マナ:暖めたら、もっと血が出ちゃうじゃないっ!!!(ーー#
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