全ての終わり、新たなる始まり。








































新世紀エヴァンゲリオン灼熱の炎《京都編》

第一部完結
第二十話「さようなら」

by.イフリート


月光に照らされる、立ちつくす二人の人間と、横たわる一人の人間・・・

月明かりが、赤く地面を照らす物は・・・・血

真っ赤な血・・・

止めどなく、横たわる人間から流れている。

横たわりし人間の腹部から、天に向かいそびえ立つ物は・・・妖々しく黒く輝きのある刀・・・・・

碇シンジ

人斬り火龍と呼ばれ、濛々しく、天すら切りさかんと歌われた一人の少年の人斬り。

父に捨てられ、恋人を殺され、悲しみと絶望の中、復讐鬼と化した・・・悲しき少年の人斬り。

彼は今まさに、命、つきようとしていた・・・・









「いやっ!! いやよっ!! 何でよ!! 起きてよシンジ!!」

「駄目だアスカちゃん!! 動かすな!!」



錯乱状態に陥るアスカ。

アスカはシンジを抱き起こそうと近づくが、後ろから祐一に止められる。

下手な動かすことが出来ないと考慮した行動であろう。

アスカは祐一をふりほどこうとするが、完全に羽交い締めされているため、少しからだが動くくらいだ。



「放して!! 放しなさいよ祐一!!」

「駄目だ、今動かしたらそれこそまずい。」

「そうだ、ミサ・・・ミサなら何とかなるかも!!」



アスカがそう思っていると、空から月明かりに照らされた人物が舞い降りた。

空色の髪と純白の着物を着た少女、ミサだ。

アスカの悲鳴が彼女の耳に届いたのだろう。

地上に降りたミサの視界には、直ぐシンジの変わり果てた姿が映った。



「・・・えっ、シンジさん・・・・・・・冗談でしょ?・・・・・・・・・・何をこんな所で寝ているのですか・・・・さあ、帰りましょうよ・・・ね。」



ミサはシンジを抱き起こす。

しかしシンジはそれに答えることなく、首と手が力無く横たわった。

純白の着物は、シンジの血によって赤く色を変え始めていた。



「いやっ・・・・・・・・・いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」



ミサはシンジに突き刺さる八乙女を抜くと、混乱しながらも治癒能力を使い傷口をふさぐ。

傷口自体は塞がる物の、バケツをひっくり返したくらいの血を流してしまっている為、意識は戻らずにいた。 

顔色もまた、死人のように色を失っている。

ミサの治癒能力では、傷はふさげても、血は元に戻せない。

一刻を争った。 幸い、微弱だが心音は聞こえる。



「ミサちゃん!!アスカちゃん!! 泣いてる場合じゃない!! 直ぐにシンジを病院へ!!」



その言葉に我に返る二人。

ミサはシンジを背負うと、急上昇して近くの病院へと向かう。

アスカと祐一は、いったん家へと戻り、そこにいる全ての人物に経緯を話した。

そして全員で山を下り、病院へと向かった。







シンジは闇の中にいた。

無の世界。

冷たく閉ざされた・・・無の世界。

その漆黒の闇の中、シンジは辺りを見回す。

しかしやはり無と闇の世界しか存在していなかった。



「ふっ・・・これが地獄・・・か。」



お解き話などで出てくる地獄では無かった。

血の池も、針の山もない、そこにあるのは漆黒の闇。



「俺が・・・・ナミの所へ行けるはずも・・・・・ないよな。
・・・・・・光にさえ愛想を尽かされた、こんな結末が・・・・俺には似合いだな。」



その時、シンジの目の前に輝かしい光が訪れる。

光は具現化し、光を纏った一人の女性へと姿を変えた。

シンジは目を見張る。

そこにいたのは、空色の髪の、純白の着物を着た女性。

彼が二度と会えないと思っていた、最愛の女性。



「な・・・み・・・・」

「・・・シンジ様」



シンジはナミへと抱き付く。

しかし、触れることは叶わなかった・・・



「えっ・・・な・・・ぜ・・・ナミ・・・・ナミ!!」

「ごめんなさいシンジ様・・・・ここはあなたの心の中・・・私はただの思念体。
魂だけがあなたの中に入り込んだだけですわ。 こめんなさい・・・私もあなたとふれ合いたい。」

「・・・・そ・・・んな・・・そんなのって・・・・折角・・・折角会えたのに・・・・」

「シンジ様・・・」



ナミはシンジを包み込むようにする。

触れあえるわけではない。

だが、シンジはナミに包まれているような感覚に陥る。

長年忘れていた何かをシンジは思い出してきた。



「シンジ様・・・生きて下さい。 あなたを必要とする人は沢山居ますわ。」

「・・・しかし俺が居ると皆、不幸になる。 俺はみんなの幸せを壊したくない。
俺が居るだけで危険が付きまとう・・・・・俺なんて居ない方が良いのさ。」

「シンジ様・・・誰一人として、あなたが居なくなるのを望んではいません。 これをご覧下さい。」



ナミが何もない漆黒の闇へと手をのばす。

その先には、円形のモニターの様な物が浮かび上がる。

そして更にその先には、自分の知っている人が浮かび上がった。


大粒の涙を流して、死ぬなんて許さないと言いながら、すがりつくアスカ

やはり涙を流しながら、必死に全能力で治療するミサ

この世の終わりとばかりに、茫然自失となっているレイ

ネルフに必死の形相で連絡を取る加持

俯いて動かないケンスケ

私との勝負がまだ付いて無いじゃないと、怒鳴りながら泣くマナ

火龍がこの程度で死ぬはずがないと、床に拳をたたきつけるマユミ

馬鹿野郎と繰り返しながら、後ろ向きで表情は見えないが、震えている祐一

天使の人形にすがりつき、シンジ君を連れていかないでと繰り返すあゆ



「・・・みんな。」

「これを見ても自分は居ない方が良いと思いますか? 
シンジ様・・・自分らしく生きて下さい。 私達・・・私やミサさんを救ってくれたときのように。
この通り、あなたはまだ死んではいけない人ですわ。」

「自分らしく?」

「そう、自分らしく。 私のことを思ってくれるのは嬉しい・・・けど、それが重荷になるのはそれ以上に辛い。」

「けど、俺はナミのことだけじゃない。 殺しすぎたんだ・・・人を。
その罰も受けなければ・・・」

「それならなおさら生きて下さい。 シンジ様の命は、多くの犠牲のもとに成り立ってるのです。
殺めてしまったひと達のためと思うのならば、生きてその罪を償いべきです。
シンジ様が生きていくことこそが、殺めてしまった人達への謝罪ですわ。」

「そうだな・・・その通りかもしれん。」

「それに殺めてしまった人達の事は、シンジ様自身の判断でやった結果なんですよ。
それを悔やんではいけません。 後悔をしてはいけません。」

「ナミの言うとおりだな・・・感情で死のうとするとは俺らしくないな。」



次第に漆黒の闇だった辺りが晴れ始める。

意識が回復し始めているのだろうか。

ただ、辺りが明るくなり始める。

それと同時に、ナミの姿が薄く消えかかっていく。

キラキラと何かを身体から発して、徐々に薄くなっていく。



「・・・そろそろ戻らなければなりません。」

「そんな、ナミ・・・」

「シンジ様、最後に言っておきますわ。 本当の自分の心に素直になって下さい。
私のことは気にしなくて良いです。 お願いです・・・幸せになって下さい。」

「素直に?」

「そうですわ。 アスカさんのことです。 知らない内に、あなたの心の中にはアスカさんで覆われてます。
楽しく出かけたり、からかっていたり、一緒に笑って怒って・・・ミサさんやレイさんへの気持ちとは大きく違いますわ。
だけどそれを、私という存在のためにかき消そうとしている・・・それは辛いことです。」

「ナミが何故それを・・・」

「ここはシンジ様の中ですよ。 シンジ様の事はよく見えてきますわ。」

「そうなのか・・・」



ナミの身体がほとんど消えて無くなる。

蛍のような光が徐々に増え、拡散していく。

その光景はまるで、光が天に昇って行くかのように美しい光景だった。



「これが本当の最後です・・・・シンジ様・・・・お話しできて・・・よかっ・・・た・・・で・・・・す・・・・・・・わ。」



その言葉を最後に、ナミの姿は完全に消えた。

そして明るくなってきた辺りは、その光の強さを増し、シンジの意識もそれと同時に引き戻されることとなる。

ナミの事を心に止めて・・・・



「俺も話せて良かったよ・・・ナミ」







この後が大変だったと、シンジは語る。


意識が回復して、突然行きおい良く起きあがると、近くに居たアスカとミサを巻き込んで押し倒す形になる。

あまつさえ、ミサには唇に唇を押しあてているは、アスカの胸は揉んでるは・・・

意識が回復したのを皆は喜ぶどころか、皆はそんな事を忘れ、まずミサは悲鳴を上げて思いっきりビンタ。

吹っ飛んだシンジをアスカが踵落とし。

頭が下がったところを、ケンスケがあごを前蹴り。

とどめと言わんばかりに、レイがATフィールト。

後は皆で袋叩きであった。

碇シンジ享年14歳・・・異界へと逆戻り。

その異界で、またもやナミと再開、今度はお仕置きされ、死んでるのに、死にものぐるいで現世へ帰還(離脱)。

腹に刺した刀傷より、皆にやられた傷の方が重傷だったとかなんとか・・・

その後はミサの看病と、病院の処置により、次の日には退院。

普通なら生き返ったときに起こる、感動的シーンは何処へやら。

自業自得、自分でやって、自分が損したである。


取り敢えずは家へと戻ると、そこで今後の相談をし、第三新東京市に帰る前に京都見物と言う事になった。

コンビは次の通り

アスカとシンジ、ミサとケンスケ、加持とマナ、レイとマユミ、祐一とあゆである。

では全員と行動を見てみよう。



《加持、マナの場合》


そこら辺の道ばたにて・・・


「何でこうなるのよ!!」

「有名というのも辛いな、マナちゃん。」

「折角京都を満喫しようとしていたのに、ど畜生!!」



裏の世界で少し名の売れた人物に絡まれていた・・・



《祐一、あゆの場合》



「うぐぅ!! 祐一君早く!!」

「こんな所まできて、たい焼きを食い逃げするな!!」

「仕方ないよ、美味しそうだったんだから。」

「金払え!! 馬鹿!!」



たい焼き屋の親父遠いかけっこしていた。

何処でも変わらない奴らである。



《レイ、マユミの場合》


土産物屋にて・・・


「もぐもぐ・・・八つ橋美味しい。」

「あの・・・レイさん」

「・・・何?」

「その両手いっぱいの八つ橋は・・・」

「・・・家で食べるの。」

(しかしこれだけ食べて太らないのは、うらやましい限りですね。)

「・・・マユミさんも沢山食べないと、胸、大きくならないわ。 マナさんより小さいのだから。」

「・・・・・・ビックなお世話です。」



ほのぼのとした二人である。



《ミサ、ケンスケの場合》



シンジ、ナミの告白の場、桜なびきの下にて・・・



「うわっ、サクラが咲いてる。」

「ここは日本唯一サクラの咲いている場所なのです。 そしてシンジさんと姉様が結ばれた場所・・・」

「そうなんだ。」

「奇麗な場所でしょ?」

「ああ・・・凄く良いところだ。 カメラ持ってくれば良かったよ。」

「ふふっ、そうですね。」



風が吹き、サクラ吹雪に囲まれる。

微笑みながら、長い空色の長髪を靡かせ、サクラ吹雪の中に立つ少女。

サクラの木の隙間から漏れる太陽の光が、その美しさを更に引き立たせる。

その幻想的な光景に目を奪われるケンスケ。 ミサの美しさは、妖星や精霊を思い浮かばせる。

ケンスケは知らない内に、ミサを背後から抱きしめていた。



「えっ? ケンスケさん・・・何を・・・・」

「ミサちゃん・・・俺は、君が・・・好きだ。 いつかミサちゃんを守れるくらいになる・・・だから俺と・・・・」

「・・・・・・・・」



抱きしめられている手を、優しく抜けるミサ。

そしてケンスケの方に振り向く。

しかしケンスケには、俯いて前髪で顔が隠れているミサの表情は伺えない。

しばし沈黙のつづく中、ミサが口を開く。



「・・・判っているのですか、私は人ではないのですよ? 忌み嫌われ恐れられる、妖怪雪女。」

「雪女と言う事も知ってるし、ミサちゃんを忌み嫌う人なんて居ないよ・・・居たら俺が許さない。」

「・・・六百歳ですよ、私。」

「気にしないよ、全然。」

「人も沢山殺してます・・・そしてこれからも・・・・」

「殺された人には殺されるだけの理由があったんだ。 ミサちゃんが悔やむ必要はないよ。」

「私、嫉妬深いですよ・・・もの凄く。 縛り付けてしまいますよ。」

「嬉しいよ。」

「・・・・・本当に・・・・・・本当に私で良いのですか?」

「ミサちゃんじゃないとイヤだ・・・・」

「有り難う・・・ケンスケさん。 私も貴方のことが・・・好きです。」

「ミサちゃん・・・」

「・・・ミサと呼んで下さい。」

「・・・・判ったよ・・・ミサ。」



二人はサクラの木の下で強く抱き合った。

サクラ吹雪が二人を祝福する。

ミサはこの六百年という長い年月の中で、一番の宝物を手に入れたのかも知れない。

姉が羨ましかった・・・

シンジが羨ましかった・・・

しかしミサも、こうして手に入れることが出来た・・・大切な人を。

これから埋めていきたいと思う・・・

これまで辛かったことを、楽しいことに変えて・・・



《アスカ、シンジの場合》


清水寺で・・・


「オラッ!! 清水の舞台から飛び降りるぜ!!」

「アンタじゃ当たり前に何時もやってるような事ね。」

「そんなハッキリ言われると、僕が奇人見たいぢゃないか・・・」

「奇人でしょ。」

「うぐぅ」


茶屋にて・・・


「うぇっ、苦いわね、このお茶。」

「本来抹茶は苦いの。 この抹茶と団子を一緒に食べると美味いぞ。」

「あっ、ホントだ。」

「ほれ、ところてんも食いなせえ。」

「・・・おじん臭いわよ。」


川の横の料亭にて・・・


「何この膜みたいなのは?」

「それは湯葉だよ。 美味いぞ。」

「もぐもぐ・・・うぇっ、だめ、アタシには合わない。」

「なら僕が食うよ、もぐもぐ・・・やっぱり美味い。」


尼寺にて・・・(普通は男は入れん!!ってか、あるのか尼寺!?)


「イヤァァァァァァァァッ!! お仕置きはイヤァァァァァァッ!!」

「なっ、何言ってるのよシンジ。」

「こんな沢山の蝋燭はイヤァァァァァァッ!! 蝋燭熱い、垂らさないでぇぇぇぇっ!!」

「・・・蝋燭持った女も駄目なのこいつ。」

「えへっ・・・・えへへへへっ・・・」

「壊れるんじゃなぁぁぁぁぁぁい!!」


とある川の畔にて・・・


「楽しかったなアスカ。」

「そうね・・・でも、アンタを見てるのが一番楽しかったわ。」

「何だよそれ。」

「言葉通りよ。 まあ良いわ、また来たいわね。」

「そうだな、今度は仕事とか抜きにして遊びにだけ来たいよ。」

「今度は二人で来たいわね。」

「そうだな・・・・って、えっ!?

「あっ!? 何言ってるんだろアタシ・・・」



真っ赤な顔になるアスカ。

自分自身本音が無意識にでてしまったのだろう。

それを聞いたシンジも顔が紅い。

気まずい雰囲気が流れる・・・

アスカはシンジをちらりと見ては更に赤くなり俯く。

だが俯きながらもシンジに話しかける。



「ねえ、シンジ・・・」

「あっ・・・なっ、なんだ?」

「もう・・・・もう、死のうと何て考えないよね。」



俯いていたアスカは、顔を上げ、シンジの瞳を見ながら言う。

その真剣さは、痛いほどシンジに伝わってくる。

シンジはそれを聞くと、少し表情をゆるめて言う。



「ああ、もう馬鹿な真似はしないよ。 ナミに怒られちまったよ。 もう二度と・・・」

「・・・約束して。」

「わかった、約束だ。」

「・・・・・後、もう一つ。」

「んっ?」



また紅くなってしまうアスカ。

今度はもじもじしている。

出会った頃の強気のアスカの面影が無いように感じられる。

しかしこれが普通だと思う。



「アタシのこと・・・・どう思ってるの? 友達? 戦友? それとも・・・一人の女の子?」

「・・・・・・・・・・・・・」



黙ってしまうシンジ・・・

実際どう思っているのか自分でも理解をしていない。

確かに夢の中でナミに言われた。

アスカのことを。

だが果たして本当に自分はアスカのことを・・・・

判らない。

確かにアスカと居るのは楽しい。

レイやミサと居るときの感情とは違う。

レイと居るときは、妹としての愛情、戦友としての気持ち・・・

ミサと居るときは、やはり義妹の感情と、背を任せられる戦友・・・

ではマナは・・・・ライバル。 これが一番当てはまる。

アスカは素敵だと思う・・・気は強いけど、本当は寂しがりや。

守って上げたいと思う。

だけど自分は未だにナミのことを思っている。 この気持ちがある限り、女性と付き合う資格は自分にはないと思う。

それはナミに対して裏切りになるから。

けれどアスカに引かれていることは確かだと思う。

だからこそ判らない・・・・



「アスカ、僕は・・・・」

「・・・良いの、ご免変なこと聞いて。」

「えっ?」



アスカは立ち上がると、走ってシンジから離れていく・・・



「待ってアスカ!!」



その後を直ぐに追いかけ、アスカを捕まえる。



「イヤッ!! 放して!!」



シンジを振り払おうとするアスカ。

それに対して、掴んだ肩を放そうとしないシンジ。

アスカの暴れる中、涙を流していたのか、涙が辺りに飛ぶ。



「聞いてくれアスカ。」

「イヤッ!! 聞きたくない!!」

「頼むアスカ・・・聞いてくれ。」



辛そうなシンジの声に、アスカは大人しくなる。

涙を流したままシンジの方を振り返る。



「・・・・・・・」

「・・・アスカ僕は、君のことをどう思っているのかハッキリ判らない。 友達としてはもっと違う感情がある。
好きなのかも知れない・・・けど僕の中・・・・俺の中にはまだナミが居る。 だからこそ判らないんだ。
君を好きになる、しかしそれはナミを裏切ることになる。 ナミを好きだった気持ちが嘘になってしまう。」



辛そうなシンジの表情。

アスカは心が痛かった。 それと同時に、死んでもなお、ここまで思われているナミが妬ましかった。

そしてアスカはシンジが、どれだけナミの事を愛していたか改めて判った気がした。



「シンジのことは良く解ったわ。 けどアタシはハッキリ言っておく・・・・
アタシ、惣硫・アスカ・ラングレーは、碇シンジが・・・・好きよ。」

「・・・有り難う、こんな大馬鹿野郎を好きになってくれて。」

「これがアタシの気持ちだから。」



この後は何も話さずに、二人は山にある家へと帰っていった。

色々なおもいを胸に秘めて・・・







第三新東京市に帰る日がやってきた。

朝食をミサとマユミで作り、それを皆で食べる。

皆は各自の荷物をまとめ、時間まで思い思いの時を過ごす。

ミサとケンスケは、やはり昨日の今日言う事もあり、まだ慣れないのか、目が合えば顔を紅くしていたりする。

そんな状況を皆はほほえましく見守っていた。

そんな中、ふと気づくとアスカの姿がない。

そしてシンジの姿も・・・

しかし気にする人は居なかった。

各自お喋りなどをしていた。

その頃、居ない二人は・・・



《ナミの墓前》



アスカは一人、ミサの墓前の前に立っていた。

手には摘んできたと思われる花と、仏壇から持ち出したと思われるお線香。

アスカは中腰になると、花を添え、線香を立てて、目を瞑りながら手を合わせる。

少し時間がたつと、目を開け、お墓に向かい喋りだした。





その少し前・・・

シンジは最後に挨拶をするために、ナミのお墓へと向かっていた。

ナミの好きだった日本酒と、花を手に。

墓の近くへ来ると、自分より先に先客が居た。

アスカだ。

シンジは何故か近くの大木にとっさに身を隠してしまう。

シンジは昨日の出来事から、アスカと会話をしていない。

気まずいというか、何となく会話が出来なかったのだ。

好きと言ってくれたアスカ、心みだれている自分。

アスカのことは好きだと思う、でも心の中にはまだナミが居る。

どうすればいい、どうしたら良いのか、そんな事ばかりが心に過ぎり、頭に浮かぶ。

そんな中、アスカの声が唐突に、シンジの耳に届く。



「・・・ハッキリ言って、アンタが妬ましいわ。 いくらシンジがアンタの敵をとったところで、アンタがあいつの心から消える事はない。」



そこで一息つくアスカ。

空を見上げ、大きく息を吐き出す。

そして再び、ナミの墓前に向かい合った。

少し苦笑いを浮かべながら。



「妬ましいとか、消えないとか・・・そんなんじゃ無いわね。 アンタはもう、シンジの一部・・・
初めてあいつと出会った時から、あいつの中にアンタが居て、そんなあいつを、あたしは好きになった・・・・
だから・・・アンタをひっくるめて、シンジと付き合いたいと思う。」



唐突に強い風が吹く・・・

木々がざわめき、何かメロディーを醸し出しているようにも思えた。

シンジは知らぬ内に、涙を流していた。

嬉しかった・・・ここまで自分のことを思っていることと、ナミの存在を否定せず、一緒に受け入れてくれることに。

満たされていくシンジの心。

こんなにも素晴らしい女性・・・

アスカの言葉を聞き、シンジの心は晴れ渡っていった。

そして何もかもに、決心が付いた。

シンジはアスカに近寄ると、アスカを背後から抱きしめた。



「えっ? シンジ、何時の間に。」

「・・・ありがとう・・・ありがとうアスカ・・・・」

「・・・泣いてるの?」

「嬉し泣きだ。 君みたいな素敵な人に会えたことに・・・アスカの言葉、本当に嬉しかった。」

「聞いてたのね、まあ良いわ、あれがアタシの本心だから。」

「本当にありがとう。」



それだけ言うとシンジはアスカから離れ、ナミの墓前の前に座る。

持っていた日本酒をお墓にかけ、花を添える。



「なあナミ、アスカに会えたこと・・・喜んでくれるか? アスカとだったら、一緒に歩んでいけると思う。
ナミのことは生涯忘れない、けどそんな俺と一緒にいてくれると言う。 夢の中でナミにも言われたけど、どうやら俺はアスカが好きらしい。」

「じゃあシンジ・・・」

「今度は俺から言わせてくれアスカ・・・俺、碇シンジは、惣硫・アスカ・ラングレーが好きだ。
こんな大馬鹿で、人殺しを職業として、尚かつ全てに不器用で、アスカを泣かせることもあると思う・・・
こんな俺だが、付き合ってくれないか。」

「・・・そんな事、OKに決まってるわよ。 アンタじゃなきゃイヤよ。」

「・・・ありがとう。」



二人は抱き合う。

その時、空から白の結晶が降り注ぐ。

雪だ・・・

この真夏のつづく日本に雪が降り注ぐ。

ナミの最後の贈り物のように・・・

その中二人は見つめ合う。

アスカは目を瞑り、そんなアスカにシンジの顔が近づく。

そして・・・お互いの唇が触れ合った。



(今までありがとう、ナミ・・・・そして、さようなら)






「祐一さん、あゆ、またそっちに遊びに行くから。」

「おう、いつでも来いよ。」

「うん、待ってるね、シンジ君。」

「祐一、世話になったわね。」

「こっちこそ世話になったよ、それに良かったなアスカちゃん、想いがが届いて。」

「ええ、ありがと。」



祐一達はシンジ達とは反対方向に向かう電車へと乗り込む。

皆に見送られ、最後の挨拶をすませた。



「それじゃ、みんな元気で。」

「うぐぅ、本当ボクのせいで迷惑かけてごめんなさい。 それとありがとう。」



それだけすますと、祐一達の乗る電車の扉は閉まる。

そして、二人の街へと向い、走り出した。



「ふぅ、行っちゃったな。 そう言えば黒天女、お前はこれからどうする?」

「そうですね、旅するのも飽きましたから、火龍のいる第三新東京市にでも行くことにしますよ。」

「げっ、マジか?」

「げって何ですか、失礼な。 逃がしはしませんよ、あなたを倒すのは私なんだから・・・近くにいた方が楽です。」

「何言ってるの黒天女、シンジを倒すのはこの、わ・た・し・よ。 シンジと戦いたいのならばまず私を倒す事ね。」

「二人とも何を言っているのですか? シンジさんは私の獲物です。 私より無い乳の人達に取られてたまりますか。」

「「胸は関係ない!!(でしょ!!)」」

「・・・もてもてね、シンジ。」

「勘弁してくれよ。 こんなもて方したくないよ。 ってかマナ・・・お前は帰るんだろ戦自に。」

「戦自は辞めるわ、あんた達と学校通うのも良いかな〜とか思ったりしてるし。」

「・・・良いのかよそんな簡単に。」

「戦自に私を止められる人なんて、いやしないわよ。」

「確かに・・・おっ、電車が来たぞ。」



全員は電車へと乗り込んだ。

今回の京都で、色々なことが変わった。

そんな事を皆は心の中に止め、舞台となった京都を後にする。

ナミの眠る京都を後に・・・・・


















(ありがとうシンジ様・・・そして、お幸せに)
















【第一部・完】


後書き

一年以上空いてしまいました。 誠に申し訳御座いません。
取り敢えず、ここで第一部を完結とします。
ここまで読んで下さった方々、本当にありがとう御座いました。
そしてこれからもよろしくお願いします。

判る人には判ると思いますけど、アスカのお墓での話し・・・あれは、あるマンガで使われた物です。
絶対に使いたかったのですよ、あの場面。

まあそれより次回予告を・・・




「怪しげな実験をするリツコ、そのお陰で停電になるネルフ
そんな中、運悪く鍋蜘蛛君の襲来
ネルフの中を迷うシンジ達
しかしそんな事よりも不運がまき起こった。
鍋蜘蛛君の壊したガソリンスタンドが爆発し、辺り一面爆風が起こる。
飛んでくる一斗缶、顔に直撃する○○、そして・・・」

次回、新世紀エヴァンゲリオン灼熱の炎

第二部スタート
第二十一話「静止させた闇の中で、・・・


?「フフフ・・・ハハハ・・・ヒャーッヒャッヒャッヒャッ!! アタシの美しい顔に、何をした!!」


次回は怖いね・・・・ははっ(^^;)
まあ、やっとギャグに戻れますね。
アスカ×シンジ&ミサ×ケンスケも上手く書いていきたいです。

それでは失礼します。


マナ:ほんと、全てが終わったって感じ。

アスカ:やっとシンジにとって、過去の清算ができたのよ。

マナ:でも、ナミさんのことはまだ残ってるわよ。

アスカ:ナミさんも一緒にシンジをアタシが貰うことにしたんだから、いいの。

マナ:はぁ・・・。わたしは、最後まで凶暴女のままだったわ。(・;)

アスカ:せいぜい、第二部で精進することね。

マナ:かーいい娘になれるかしら?

アスカ:アンタの顔じゃ無理!

マナ:顔はじゅーぶん、かーいいでしょうがっ!!
作者"イフリート"様へのメール/小説の感想はこちら。
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ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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