――――――――――



――――――




――――ピクッ


ドクン、ドクン、ドクン



「あ・・・・」


ドクン、ドクン


「う、あ・・」


ドクッ、ドクッ


「あ・・・・・・」



ドクン――――――




「こ、こは・・・」





見渡せば、そこには海がありました

すべての生き物を育むはずの海が


そして今、すべての生き物を無に返した海が、あったんです



「死・・・ねなかったんだ・・・あれだけ、やっても・・・・・」



手は紅く染まっていた

この海のように深い紅色で、染まってた


「は、はは・・・・なに、それ・・結局、僕はもう」



―――――――――――死ぬことも許されない身体



「そんなの、ないよ。だって、ここには誰一人だって、いないのに」



――――――取り残された自分



「あんまりだよ・・・あんまりだ、僕が、何をしたって言うんだよ」



―――手首に残る傷跡



「いやだ、嫌なんだ・・・いやだっ!なんで僕がっ」



僕は立ちあがった

捜したかった、誰でもいいから

傍にいてほしかったんです



「独りは嫌だ、誰か、誰かいないの・・・?」



手首からは依然として血が流れていました

砂浜を真っ赤に染め上げて

本当ならすぐに多量出血で死んでしまえるはずなのに



「あ、あぁ・・・・ぁ・・・・・」



砂の丘を超えるとそこには街がありました

誰も乗っていない車、食べかけの料理、そしてそこにはあつらえたかのように
紅い染みが広がっていたんです


「やだ、やだよ。やだやだやだ・・・・」



ドクッ、ドクッ、ドクッ



「嘘でしょ・・・はは、みんな、からかってるんだ・・・・」


      じゃなきゃ夢だ

ドクッ、ドクッ


「現実にこんなことが、あるはずないじゃないか」



     でも、それがありえてしまったら・・?


不安で胸が張り裂けそうでした

寂しい?
それよりも、こんなに広大な世界にたったひとり、自分しかいないなんて

心細いという表現が一番あってると思うんです


「・・・・嘘だっ! 隠れてるんだ、こんな手の込んだ冗談なんて・・・・」


    ―――――ちがう、そんなことがあるはずがない


知ってますか
小さなハチドリは、長い間放って置くと死んでしまうんです

餌がないから?
違うんです

あまりの孤独に、その小さな胸は耐えられないんです


「誰かっ!いるんでしょ、出てきてよ・・・ねぇっ!」


身体が震え出すのがわかりました

怖かった、すごく
まさかこのまま、誰もいないなんて

でも一番怖かったのは
自分の想像が本当であると悟ってしまうことでした


「やめてよ・・・そんな、じゃあ・・・・」


一番近くにある民家を覗いて

誰か見知らぬ人がいたとしたら
それでも僕はとても安らぎを得ることができたはずなのに


「―――――――僕が、みんなを 殺してしまったって、ことなんです・・か・・・?」


ゆっくりと、足から力が抜けていって

膝から倒れこんでしまって

涙が溢れ出してしまうことに抗うこともできなかった


「うぁ・・ひっく・・・・あぁぁ・・・・・ぁぁ―――――






わぁぁぁあああああああぁぁあーーーーっ!!!!」







―――――― 身体が冷え込む感覚

手首にはリストカットの痛み

恨めしいほど確かに伝わる、僕が生きているという証の、鼓動


それだけが真実だったんです




                                ―――――神様




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