「ふう…」

シンジは帰ってきてんだと実感した。

あの時がくるまで時間はあるようでないにも等しい。

今の自分は頭でっかちの非力な少年に過ぎないのだから…



「綾波も帰ってきているのかな?早く会えるといいけど…」 

「私のことは心配ないわ・・・」
 
頭の中に響いてくる声(電波)がする。

「そうだね、綾波なら大丈夫だよね、後はアスカと……やっぱり会えるのはあそこになるかな?」

独り言のようにつぶやいたシンジは、まず自分のやるべきことをやることを考え

早速行動に移った。



まず、養父たちに対して最新かつ高性能のコンピューターをねだった。

シンジと一緒に引き受けた多大な資産がそれを可能にしたといっても良い。

一介の少年が持つ持ち物にしては高価すぎる持ち物であったが、

シンジの事を疎ましく思っている養父達としては離れ小屋とコンピューターを与えて

少しでも厄介ごとを減らしたかったのかもしれない。

それを手に入れたシンジが一番最初にやった事が、資金を調達する事であった。

肉体的には非力な少年であっても、精神世界(多次元世界)を旅したシンジの知識は、

この世の誰よりも優れているといっても良かった。



無論彼の知識、能力からすれば資金など無くても十分に世界を動かす事が出来るのであるが

「金」があるという事は物事をスムーズに動かす事の出来る「道具」を手にいれた事になる。

3ヶ月もすると投資や株によって相当の資金を手に入れる事が出来た。

当然金融界ではこの投資家についての情報を手に入れようと躍起になった。

しかしスーパーコンピューターをも苦とせず使うシンジにとって身元を隠す事など

朝飯前の出来事である。よもや小学生(表面上)がこの投資家だとは誰も思うまい。



潤沢な資金を手に入れたシンジは次いで自分自身の手駒となる人材を集めた。

情報、諜報、金融、開発等様々な分野のエキスパートたちが彼の元へと集うようになった。

シンジは彼らと会うのに非常に慎重な態度をとり続けた。決して表に出ず、

ある人物を介してそれらを行ったのである。そう、あのすべてを知りたがる男である。

まずシンジは彼に連絡を取った。そして彼に情報を与えるのと引き換えに

シンジの代理として動かしたのである。

こうして1年もするとシンジを中心として巨大な組織網が出来上がったのである。

シンジは自分の知識を惜しげもなく与えた。現在の科学力を超えた超科学、

セカンドインパクトの真相、人類補完計画について…

眉唾物だと顔をしかめるものも当初はいたのだがシンジの知識や能力を間接的にせよ知るにつれ、

そのような声も上がらなくなった。と同時に来るべきサードインパクトは起こさせない、

という共通の認識が彼らの間に生まれるようになった。

シンジの組織網はありとあらゆるところに広がった。決して大人数の所帯ではなかったが

その事が逆に行動の自由を生む事になった。



そしてすべての下準備を整えたシンジは、忽然と養父達の前から姿を消した。

それはどこの監視網にもかかることなくある日突然いなくなったのである。

当然この事は碇ゲンドウにも伝えられたのであるが、彼にしても

シンジの居所はつかめなかったのである。






知識はあっても肉体的にはなんら同年代の少年と変わらない。

ましてやレイの様に特殊な力を使えるわけでもない。

そう自覚しているからこそシンジは肉体を鍛える必要があった。

それも生と死のぎりぎりの狭間で鍛えなければならない。

生き残るためには…そして自分の為すべき事を成功させるためには…

当然シンジの組織網の中には格闘技に長けた者、銃器に長けた者、諜報に長けた者

それぞれのエキスパートが存在し、シンジを鍛え上げた。

非凡な力をつけたシンジではあったが、所詮実戦ではない。

シンジがこれから生きていこうとする世界は練習の為の練習で生きていけるほど

甘い世界ではない。必ず生死というのがついて回る世界なのだ。

だとしたらその生き死にの世界を自ら経験していなければ、渡っていくことは出来ない。

もしそこで死んでしまったら其処までの男だったという事だ。

多次元を経験した(正確には覗いた)シンジの生死観はとてもシンプルだった。

「人間死ぬときは何をやっても死ぬ」と、彼曰く

「普通に道を歩いていても車に跳ねられたり上から物が落ちてきて死ぬ事もある。

 逆に飛行機事故で空から落ちても生き延びるときは生き延びる。

 死んでしまうのは避けようが無い。どうせ一回は死ねるのだから…」

などと自分が一回死んだことは棚に上げてそうのたまっている。

だからといって死ぬ事を待っているのではない。死ぬ事を回避する努力は最大限する。

その為には自分に生き延びるための能力がいる。

それはここでは習得できない。だから習得できるところへ赴く。

それがシンジの考えた事であった。

ここでモニター相手に状況を見守っているだけではいけないのだ。

より能動的に行動しなくては…






シンジは確かに存在した。この世の地獄と呼ばれる場所をさまよっていた。

あの男の手引きで、戦場から戦場へと渡り歩く「ワイルドギース」として…






そして運命の刻は近づく・・・・

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何とか3話です。ようやく固有名詞が出てきましたが…

シンジの行動原理なんですが非常に端寄ってます。

ここを書いてしまうと本来の話(第3使徒が来る話)に行く前にものすごく時間がかかるので

アスカ激ラブの話が書きたいのに(LASな人間ですので…)アスカ登場が遅くなってしまいます。

そんな訳で少々判り辛い部分があるかと思いますがご容赦ください。(基本的にLASな話なので…)

このあたりの所は外伝で補完する予定です。

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マナ:知識も体力も財力も権力も・・・もう完璧ねっ!

アスカ:そこまでしなきゃ、サードインパクトは阻止できないのよ。

マナ:こんなに力を付けたんだし、もう大丈夫よね。

アスカ:きっと、これだけのことをできたシンジがいたら、アタシも危険な想いをしなくて済みそう。(はーと)

マナ:あなたと会うとシンジの方が危険よ。

アスカ:わっけわかんないこというわねぇ。とてもおしとやかなアタシに向かって。

マナ:よく、そんな口がきけるわね。(ーー)
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