Vol.6



「あの〜ここ通りませんでしたか?」

ミサトに案内されたシンジはかれこれ30分ほど歩いていた。

「え?そうかしら?」

ミサトはいかにも通った事が無いように答える。

(大体複雑すぎるのよね、本部の中って…)

「はあ…そうですか…」

答えつつシンジは相変わらずのずぼらさに腹を立てる。

(周りが見えてないんだよね、人の事気にかけているようで実のところ考えていない。)

などと考えながらミサトの後ろを歩いていると正面のエレベーターから

金髪の女性が歩み出てきた。赤木リツコだ。

「ちょっといつまで遊んでいるの!!」

「ごみ〜ん、ちょっち迷っちゃって…」

「いい加減覚えなさい、で、この子がサードチルドレン?」

そういってシンジの方を見やる。

「すみませんが人の事を者のように見るのはやめていただけませんか?

 ましてや初対面の人にそんな顔で見られたらこれからもずっとあなたに対する態度が

 おのずと決まってしまいますが…」

シンジは不快感を隠さずにリツコに行った。

「ごめんなさい、碇シンジ君。今のは私が悪かったわ、私は赤木リツコ。

 リツコと呼んでもらっていいわ。」

「こちらこそ生意気な事を言って申し訳ございません。リツコさん。

 僕の事もシンジって呼んでください。」

シンジはあらためて自己紹介をした。

「あら、私はシンジ君って呼んじゃあだめなのかしら?」

甘ったるい声でミサトが茶々を入れてくる。

「もちろんいいですよ、ミサトさん。」

「ところでリツコさん、これから父のところへ行くんですか?」

シンジはリツコに向き直ってそう問いかける。

「ええ、でもその前にちょっとついてきて欲しいところがあるの」

告げたリツコに促されて、後を着いていく。



広々とした空間だろうか?音の反響が遅い。

真っ暗の闇の中に突然スポットライトが照らされた。

浮かび上がる巨人。禍々しい顔をした紫の巨人が静かにたたずんでいる。

(2度と同じ間違い、苦しみをするものか!!)

シンジはエヴァンゲリオン初号機を見上げ顔をしかめる。

リツコはそんなシンジを見て予想外の出来事に言葉を失っているものだと思った。

「驚いた?シンジ君、これは人造人間エ…」

「キカイダー!!」

リツコの説明を途中でさえぎるように意味不明の単語を叫ぶシンジ。

「すごいや!!父さんはこんなおもちゃを作っていたんですね、リツコさん。

 いやあ、かっこいいなあ!!でもなんでこんなにおっきいんだろう?」

ちょっとからかってみようかな?あんまり退屈だからそんな事を考えたのだろう。

継ぎ早にしゃべるシンジに当惑の顔を見せるリツコ。

「ち…違うのよシンジ君。これは対使徒戦用に創られた決戦兵器。

 人造人間エヴァンゲリオン。我々ネルフの切り札よ。」

「そうだシンジ!!」

頭の上から声がする。シンジはしぶしぶと見上げるとやっぱりいた。

シンジの知っている登場の仕方とまったく一緒だ。

(これ以外の登場の仕方が無いものかなあ…)

相変わらず緊張感の無い事を考えるシンジ。

「父さん・・・」

「ふっ…出撃!!」

片手でメガネをずり上げてそう告げるゲンドウ。

「ちょっと待ってください!!」

そう叫びながらミサトが駆け寄ってくる。

「とても了承できません。今日着いたばかりの子がシンクロするなんて無茶です。

 レイでさえ何ヶ月もかかったのに…作戦部として到底賛成できません。」

「問題ない、座っていればよい。多くは望まん。今は使徒殲滅が最優先だ。」

「しかし…」

「くどい!!」

ゲンドウに一喝されておとなしく引っ込むミサト。

(引っ込むぐらいなら最初から出てこなければいいのにさ)

そんなミサトの態度にまたも腹を立てる。

「シンジ、エヴァについて詳しくは赤木博士から聞け!!出撃!!」

そう告げてきびすを返すゲンドウ。

「さあ、シンジ君こっちへ来て…」

なにやら説明しようとするリツコ。

そしてシンジは口を開く。

「父さん…」

「なんだ!!」

「頼むから主語と主役を省略した話し方はやめてくれない?話がさっぱりわからないよ。

 要はこれに乗って外で暴れている使徒とか言うのと戦えって言うんでしょ?

 そうならそうとはっきり行ってくれないと訳わかんないよ。」

「そうだ、早くしろ!!、でなければ帰れ!!臆病者には用がない!!」

「指令!!」

たまりかねてリツコが叫ぶ。

(まだリツコさんには人としての呵責が少し残っているみたいだな)

考えているとまたも上から怒鳴り声が聞こえた。

「どうしたシンジ!!早くしないか!!でなければ帰れ!!」

相変わらずむちゃくちゃな事を言う男である。

シンジは少し考えた振りをした後こうはっきりと告げた。

「それじゃあ、帰ります」



「 「 「…!!…」 」 」

シンジのこの言葉に3人とも二の句が継げなかった。

「シンジ君!!」

かろうじてミサトが叫ぶ。

「だってそうじゃないですか、何年も音沙汰なしの父親からの手紙が来て

 謝罪の一言でも聞けると思って来てみたら、いきなり帰れですからねえ…

 そりゃあ帰りたくもなりますよ、ねえミサトさん?貴女が僕の立場ならどうします?」

「そ…そんな事言われても…」

ミサとは返答に詰まる。

(ほらね、他人のことなんかまったく考えていない。自分の基準でしか物事を考えられない)

「シンジ君…」

リツコが声をかける。

「お願い、あれに乗って戦って欲しいの、あれに乗れるのはシンジ君だけなの、

 全人類の存亡がかかってる戦いなの。」

「僕しか乗れない根拠は?もしそうならばなぜこんな土壇場になって僕を呼び寄せたんです?

 こんなもの操るにはそれ相応の訓練が必要じゃないんですか?

 いきなり乗れってのはいくらなんでも無理だと思いませんか?」

「そ・それは・・・」

シンジの容赦ない突っ込みにミサと同様返答に詰まるリツコ。

(可哀想に…あなたも結局利用されているだけなんですね…)

「もういい!!レイを起こせ!!」

たまりかねたようにゲンドウが命令を出す。

「しかしレイは!!」

ミサトが反論する。

「かまわん!!死んでいるわけではない。赤木博士、初号機のパーソナルパターンを

 レイに書き換えろ!!今すぐだ!!」

すぐにストレッチャーに乗った白い戦闘服姿の少女が運ばれてきた。

至る所に包帯を巻き、うっすらと血がにじんでいる。

シンジはその少女の姿を目で確認すると軽くウインクをその少女に送った。

そのシンジの合図を受け少女はわずかながら唇の端を緩めた。

「シンジ…お前には失望した。さっさと帰れ!!」

「いわれなくてもそうするよ・・・でもその前に・・・」

シンジは激痛に耐えながらであろう、必死に体を起こす少女、レイに目を向けた。

「シンジ君、あなたが乗らなければあの子が乗ることになるのよ、それでもいいの?」

ミサトだ。どうやら今度は情に訴える作戦に出たようだ。

「それならばミサトさんが乗ったらどうなんですか?あんな子を乗せる罪悪感があるならば」

「それが出来ればとうにやっているわよ!!ぐだぐだいわないで乗りなさい!!」

シンジの小ばかにしたような態度にとうとうキれた様だ。

(やっと地が出ましたね、ご心配なく、乗せて上げますよ、もっといい機械にね…)

シンジはそんなミサトの言葉もわれ関せずという感じでレイに近づく。

頭上からは腹のそこに響くような音が間断なく聞こえてくる。

心なしか地面(地下?)も揺れているようだ。シンジはそんな事には意も介せず

立ち上がろうと努力しているレイのそばに立つと

「綾波…役者だね…」

とレイに囁いた。

「ふふ…貴方もね…」

レイがシンジに助けをもらうような振りをして呟く。

「お帰り、綾波」

「ただいま、碇君」

あまりにも小さな会話だったので周りには聴こえない。だがこの2人には十分なようだ。

「そろそろまずいかな?」

ゆれと音が激しくなって来た。

「じゃあ、綾波、少しだけ気絶した振りをしてくれるかな?」

「ええ。」

そう答えるとレイはふっと気を失った。

「レイ!!」

ミサトとリツコがこちらに走り寄ってこようとするが、激しい揺れのため叶わない。

ようやく二人がレイの元にたどり着こうかというその時

一際大きな轟音が格納庫内に響くと同時に、多量の瓦礫が降って来た。

立ち上がる煙、あちこちを行きかう怒号。甲高い女の叫び声。




ようやく視界が確保されてきたミサトとリツコの前に信じられないものがそびえ立っていた。

それはネルフの存在理由、それは人類の敵、

「使徒…」

力なくミサトとリツコは同時に呟いた。    













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何てこったい、ほんとに話が進まない。

まあ、一話ずつの量が少ないからでしょうけど…

もうちょっと長くしてもいいかなあ?とは思うのですが、

なんせ文才の無さゆえにこれ以上長くしちゃうと読みにくくなっちゃうんじゃないかって…

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マナ:碇司令、相変わらず無茶苦茶言うわね。(ーー)

アスカ:まぁ、あの外道さがヒゲの専売特許だし。

マナ:でも、シンジが今回は毅然とした態度だったから、ちょっとはすっきりしたけど。

アスカ:ファーストも、痛々しさがなかったのは良かったけど、なんかちょっと仲良過ぎない?

マナ:ま、久し振りの再開だしさ。

アスカ:あのファーストが、あんなに演技ができるなんて思いもしなかったわ。

マナ:シンジと綾波さんがいれば、きっと大丈夫って感じね。

アスカ:そこにアタシが加われば、完璧よっ!

マナ:そうなった時がやっかいなのよねぇ。(ーー;
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