2nd Time Vol.10


「ここを御覧下さい」

半壊しかけた秘密施設の一室で、キーボードを操るめがねの男の後ろに

痛々しい姿をした女性二人が画面を覗き込んでいる。

「消えた・・・?」

「はい、通常の映像ではこのように景色がゆがんだ後に、忽然と姿を消しています。」

「信じられない・・・」

今3人が見ている映像は、カヲルが搭乗していた機体をサーチした映像である。

ジオフロント内で派手なビームで本部内をむちゃくちゃにした後、

どこをどうやったのか地上にたたずんでいたのを偶然監視カメラが捕らえたものである。

「ちょっと巻き戻して…そこ!!拡大して!!」

金髪の女性の指示でめがね男がキーボードを操作する。

「機体から降りていますね、ここで。でもこの風はなんでしょう?

 少年の髪がかなりはためいていますね。感じからするとヘリかV-TOL機の着陸するときの

 巻き上げ風のように感じますが・・・」

「・・・」

3人を沈黙が支配する。

「・・・おそらくだけど・・・ECSね」

金髪の女性、赤木リツコが言う。

「いーしーえす?」

ミサトが尋ねる。

「そう、簡単に言うと不可視モードのことね、理論的に説明すると軽く1日はかかるけど聞く気ある?」

「え…遠慮しとくわ・・・」

うんざりした顔をしてリツコに返事をする。

「それにしても…ECSなんてまだ実用化されていないはずなのに…

 恐るべき事だわ、NERVよりも進んだ技術力を持ってるって言うの?」








同時刻 駿河沖100キロの海上

「お待ちしておりました、お帰りなさいませ!!」

奇妙な形の船、空母とも戦艦とも違う異形な船の甲板にいっきのヘリが降り立った。

ヘリから降りてくるのは少年2人と少女1人、いわずと知れたあの3人組だ。

それを出迎えるのはカーキ色の軍服に身を包んだこれまた若い少女だ。

アッシュブロンドで、三つ編みにした髪の毛が印象的だ。

「お帰りなさいといわれても・・・この船は君が艦長なんだから」

シンジは苦笑して答える。

「あら、この艦の実質的な責任者はどなたでしたっけ?

 私は一時的にお預かりしているに過ぎませんわ」

「そうだよシンジ君、彼女の言う通りさ。ね、テッサ?」

カヲルの言葉にむむぅと唸りながらも

「かといって僕達は軍隊でもなんでもないんだよカヲル君?」

「ある程度の形式は必要だよシンジ君」

「そうですわ、司令官閣下」

少女はいたずらそうな目をシンジに向ける。そしておもむろに姿勢を正すと、

「強襲揚陸艦トゥアハー・デ・ダナン、艦長テレサ・テスタロッサ以下216名

 碇シンジ司令官閣下の到着をお待ちいたしておりました!!」

少女の後ろに控えていた数名のお供と主にピッと敬礼をする。

シンジは困ったような顔をしながらも敬礼を返し、

「出迎え感謝する」

と恥ずかしげにいった。

「こういうの苦手なんだよね…あ、そういえば綾波は初めてだったよね、紹介するよ。

 この少しぼけっとした子がこの船の艦長、テレサ・テスタロッサ大佐、」

そして振り返り

「テッサ、僕のパートナーの一人綾波レイ」

お互いに紹介する。

「始めまして綾波レイさん、テレサ・テスタロッサです。お噂はかねがねお聞きしています。

 私のことはどうぞテッサと呼んでください。」

「綾波レイ、レイと呼んで」

ぎこちないながらもお互い握手を交わす。

「よろしくおねがいするわ、テッサ」

「こちらこそ・・・レイ」

(なんだかよからぬ火花が飛び散ってるような気がする・・・)

2人の対面を見ていたシンジは直感的にそう思った。

「しょうがないよシンジ君。」

シンジの表情から読み取ったのだろう、カヲルがシンジに小さな声で告げる。

「お互いキャラがかぶってないかどうかが心配なのさ・・・」

「・・・!!?」

よくわかったようなわからないようなカヲルの言葉にシンジは絶句した。

「さて、ではご案内いたします。」

奇妙な雰囲気を打ち破ったのは、テッサの後ろに控えていた中年痩身の男だった。






「それで、この間の結果はどうだった?」

シンジがテッサに問いかける。

「ええ、ECSの運用も問題ないことがわかりましたし、メガ粒子砲も出力は安定しています。

 ただ機体の方はまだまだ改良の余地はあるかと思います。」

「操縦の感触はどうだったカヲル君?」

「そうだねぇ…概ね良好なんだけれども、今一歩の反応ってが鈍くて…

 通常では問題ないだろうけど…出来ればもう少しシビアな反応をしてくれるといざというときに心強いんだけどねえ…」

「そうなんだ…」

シンジは少し考え込む。

「そういえばテッサ?時田さんのところに確か…マスク・マンだったっけ…」

「モスク・ハン博士の事ですか?」

「そうそう、そのモスク・ハンさんがあげてきた論文にカヲル君が言ったあたりの事を

 解決できそうな理論があったじゃない?」

「はい、マグネット・コーティング理論ですね?」

「一度彼を呼んで、対処してくれないかな?少しでも不安は無くしたいからね?」

「はい、解りました。渚さんもよろしいですか?」

「僕としてはシンジ君の意見に異議はないよ。それにレスポンスがあがる事はよいことだからね。」

「碇君・・・」

すっかり会話からはぐれてしまったレイが不安そうにシンジに声をかける。

「ああっ、ごめん、綾波。うっかりここへ着た本当の目的を忘れるところだったよ。」

両手を合わせてレイに向かい頭を下げる。

「テッサ、準備は出来てる?」

「ええ、完全に仕上がっています。碇さんがテストをしてくれた甲斐がありましたわ、」

そういってテッサは3人を格納庫の奥へと案内する。

「こちらです。」

テッサが示した先にはぴかぴかに磨かれた真新しい戦闘機がたたずんでいた。

「すごい・・・」

「これが綾波の機体だよ。綾波にはこれに乗って航空支援をやって欲しい。出来るね?」

「出来る・・・じゃあなくてやるわ。碇君のためだもの・・・」

2人の間にあま〜い空気が流れ始めようとする。

「シンジ君!!」

「オホン!!」

カヲルとテッサが同時に声をかける。

「ごめんごめん」

シンジは答える。レイは雰囲気を壊された事に少しお冠のようだ。

「えっとそれで・・・今後の戦闘スタイルなんだけれども、基本的にはさっき言ったとおり、

 綾波にはこの機体、VFタイプを使って上空からの支援をお願いする。

 カヲル君はMSによる中、長距離支援、そして僕が近接戦闘という形にしたい。」

「碇君はどの機体を使うの?」

「僕はね・・・やっぱりエヴァに乗るんだ。正確に言うとエヴァを基本にした機体なんだけどもね?

 どうしても使徒との格闘戦になるとね使徒と同じ位の大きさの機体が必要だし、限りなく人に近い動き

 あるいはそれ以上の動きをしなくちゃならない。」

「レイ、シンジ君は悩んで悩んで結局エヴァに乗ることにしたんだよ。」

カヲルがレイを諭す。

「そう考えたときにね、憎むべき機体ではあるんだけれども、エヴァが一番かなって・・・」

「それで碇君の機体はどこにあるの?」

「それはですね・・・」

レイの質問にテッサが答える。

「この船の一番底です。エヴァサイズになるとどうしても通常の格納庫では収まりきれませんからね。」










先日の戦闘で著しく破壊されたネルフ本部、その中の一室で幹部達による会議が行われていた。

「エヴァについては初号機、零号機とももはや使い物にはなりません。」

リツコが口火を切る。

「弐号機の手配をかけた、1週間後に到着予定だ。その件に関しての心配はない。」

ゲンドウが返答する。

「お言葉ですが、使徒という未知の敵に対するものとしてエヴァ一機では心もとないと思われますが…

 作戦部としては最低やはり後2機での運用が不可欠だと思われますが・・・」

「米国支部で建造中の3号機、4号機も2〜3日中に本部へ到着する。それで賄えるだろう・・・」

「しかしパイロットがいません。」

ゲンドウとミサトの会話に冬月が割り込む。

「パイロット候補者はすでに手配済みだ。こちらの資料を見たまえ・・・」

そういって冬月は資料をミサトに手渡す。

(あまりにも見つかるのが早すぎる・・・)

そんな不信感を抱きながらも、ミサトは答える。

「了解いたしました。近日中にパイロットとして招集をかけます。」

「よろしい。急ぎたまえ」

冬月の言葉が終わるのを待ち構えていたようにリツコが話し始める。

「予算の問題もあります。本部の修理、未完成のエヴァの建造。またその運用、

 予算的に配分が苦しいかと思われますが・・・」

「予算は何とでもなる。心配はするな。」

ゲンドウがいつものポーズを崩さず答える。

そこでミサトが思い出したように

「シンジ君、レイ、そして渚カヲルと名乗った少年達についてですが・・・」

「今のところ手出しする必要もなかろう。手段はどうあれ使途を撃退したのだからな。

 少なくとも使途を倒すという点では一致しておるのだろう。わざわざこちらから敵対する事もあるまい。」

冬月が答えるがミサトはまだ不満そうに

「ですが、レイまで・・・」

「問題ない。だが監視は怠るな。」

ゲンドウに一喝されて話が終わる。

「現状では今の通りだ、本部復旧等忙しいとは思うが各員がんばってくれたまえ。質問がなければこれで解散とする。」

冬月の締めの言葉に幹部連中が会議室をぞろぞろと出て行く。

「赤木博士は後ほど司令室に来るように・・・」

「解りました。」







「失礼します。お呼びでしょうか指令。」

広大な部屋の中にポツリと座るゲンドウの前に立ちリツコが問いかける。

「予備のレイを使う。」

相変わらず無愛想にしゃべる。

「魂はどう致しましょう?」

「MAGIに初号機のコアのバックアップデータがある。」

「・・・ユイさんのですね・・・」

皮肉を伴ったリツコの言葉に気づかないようにゲンドウは答える。

「これがそのデータへのアクセスコードだ。」

ゲンドウがリツコに一片の紙片を手渡す。

「解りました。ご用件はそれだけでしょうか?」

「地下にある廃棄されたエヴァの残骸・・・あれを使ってもう一度初号機を組上げてもらう。」

「!?」

あまりに唐突な言葉にリツコは言葉をなくす。

「ですがコアがありません」

「何のためにそのデータを渡した?」

「・・・っく・・・」

「期待している。」

ゲンドウはこれで話が終わりだといわんばかりに椅子を回転させ背を向けた。

リツコが司令室を出て行く。去り際、

「データだけあってもユイさんは戻りませんよ・・・」

そういい残して・・・


〜2nd Time first stage end to be continue second stage〜

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はい、御無沙汰してます。GOでございます。

ああぁぁぁぁぁぁ!!また余計なキャラを出してしもうた!!っていうか出したかったんです。

構想にも入ってましたんで・・・

何とかここまでやってまいりました。いよいよ次回アスカ様来日です。

っとその前に外伝を一本お届けしようかと考えております。

アスカファンの皆様!!もう少しお待ち下しませ!!




〜外伝予告〜

中東の戦場に降り立つ真新しい戦闘機。迎えるのは長髪で額に十字の傷がある男。

「久しぶりだな、リョウジ。わざわざこんな中東くんだりまで何のようだ?」

「ひとつお前さんに貸しを作っておこうと思ってな、この機体とこの子を預かって欲しい。」

「機体はありがたいが・・・こんな子供をよこしてどういうつもりだ?」







「よろこべキム!!お前より年下の坊やが来たぞ!!」

「碇シンジです。宜しくお願いします。」

「シンと名前がかぶってるなお前、こんがらがるんで呼び名は坊やでいいかい?」





中東の空で繰り広げられる鮮やかなドッグファイト。

染め上げる赤い血を求めて、新たな機体が投入される。

試作戦闘機YF-01 碇シンジ渾身の設計の機体は大空を羽ばたく事は出来るのだろうか?

2nd Time 外伝1 大空に羽ばたく翼    coming soon


マナ:綾波さん、エヴァ以外に戦闘機にも乗れるのね。

アスカ:さすが優等生よねぇ。

マナ:わたしもロボットなら乗れるわよ?

アスカ:アタシだって、メッサーシュミットならっ!

マナ:・・・・・・あなた、本当は何歳?(ーー;
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kato_go@k2.dion.ne.jp

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