2nd Time The Outside Story 〜大空に羽ばたく翼〜 Vol.2

 エリア88指揮官室

「さてリョウジ、どういうことか説明してもらおうか?」

サキが尋ねる。

「まあまあそんなにせかすなよ、こっちは長旅して来たんだぜ?少しはゆっくりさせてほしいな。」

お世辞にも冷えてるとはいえないコーラを片手に加持が返事をする。

シンジといえば加持の横にちょこんと行儀良く座っている。

「相変わらずだなお前は…このクソ忙しいときに…」

サキは苦笑する。

「それじゃあ何から説明しようか?」

「まずその子供とお前の関係について知りたいな、その年で飛行機を操縦できるのは驚かん、

 うちにも似たようなのがいるからな。なぜお前がこの子を俺に預かるように頼むんだ?」

サキは腕を組みかえる。サキの発言に対し加持は少し怒った様子で答える。

「サキ、さっきシンジ君が自己紹介しただろ?いくらお前とはいえ俺の雇い主にその子供って言い方は無いんじゃないか?」

「何!!…その子供…いや失礼…いかり…シンジ君がお前の雇い主だというのか?」

「ああ…そうだ、俺のスポンサーでもある。ついでに言うと表にある機体な、あれシンジ君の設計だぜ。」

「!!!・・・」

今度こそ本当に絶句する。しばらく無言だったサキだがシガレットケースから1本抜くと火をつけゆっくりと紫煙をはく。

そしておもむろにシンジの方へ向き問いかける。

「失礼だが碇シンジ君、君は何歳になる?」

「戸籍上、肉体的な年齢で言えば11になります。」

「どういうことだ?」

「そこからは俺が話した方がいいかなシンジ君?」

「そうですねえ…いきなりこんな話をしても信じてもらえるかどうかですが…」

「そういう訳だサキ、俺も最初聞いたときは信じられなかった。いや今でも信じられないかもしれない。

 それにどこまでがホントでどこまでが嘘かもわからない。多分に真実半分嘘半分てとこだろうがね。

 そうじゃないかいシンジ君?」

意地悪い笑顔をシンジに向ける。

「否定も肯定もしませんよ加持さん。」

シンジもまた意地悪い笑顔で返す。加持はサキの方へ振り向き

「サキ、ゼーレって知っているか?」

「ああ、ヨーロッパの黒い世界の話だと聞いている。ヨーロッパではどうか知らんが中東までは影響ないさ。」

「P4のバックがゼーレだとしても?」

「根拠は?」

「お前達の敵対する国のシステムはどうだ?どこぞやのおせっかいな国が言いがかりで戦争を仕掛け

 傀儡政権を作り上げ、自分達のシステムを無理強いしてないか?土着の信仰を無視してまで、

 それこそがこの今の中東の混乱の原因じゃないのか?奴らは自分のやってることが正しいと思ってやがるからな。」

「確かに状況としては考えられよう、ただそれだけでは根拠には乏しいんじゃないか?

 優秀なお前にしては少し説得力が足りないぜ。」

たっぷりの皮肉をこめて加持をにらみつける。

「まあ確かにね…これだけでお前を説得できるとは思っていないさ…質問を変えよう。

 セカンドインパクトとはなんだ?」

「今更歴史のおさらいか?南極に高速の数パーセントの速さで物体が衝突、それにより地軸の傾き等、

 全世界的な破壊が起こった。…それが何か今の話に関係があるのか?」

「そいつもゼーレの仕業としたら?」

不敵な笑みをサキに送る加持。

「だからどうしたというんだ!!こっちは目の前の敵を叩くので精一杯なんでね、いくら古い知り合いとはいえ

 そんな与太話に付き合っている暇は無い!!大体その子があの機体を設計したって言う証拠も何も無いじゃないか

 せいぜいF-14に子供じみた改造を加えただけの機体だろ?つまらない話をするなら帰ってくれ!!」

机をバン!!と叩いて激昂するサキ、

「おいサキ!!…」

加持とサキの間に不穏な空気が流れる。

「待って下さい…サキ殿下、貴方には聴く義務があります。P4と戦うものとして、そして人として」

シンジの年不相応の低い声が二人の間の空気を一瞬で落ち着かせる。

シンジの表情に殺気を感じたのだろうか、サキも加持もソファーに身を沈める。

「加持さん、無駄話はそれくらいにして続けてください。」

「ああ…すまん…サキ、さっきも言ったが今から俺がする話、未だに俺でも半信半疑なところがある。だが聞いてくれ。」

「すまないシンジ君私も少しいらいらしてるようだ。」

「気になさらないで下さいサキ殿下。状況が状況ですから。」

にっこりと微笑むシンジ。先ほどの殺気とは遠くかけ離れた雰囲気である。サキも思わずつられて笑顔をこぼす。

落ち着いた頃合を見計らい加持が話し出す。

「シンジ君はな、未来を経験したというんだ。それもサードインパクトという最悪の未来をな。」

「未来?…ますますオカルトじみてきたな…」

「俺だってにわかには信じられなかったさ…しかも最初のコンタクトが仰天だぜ、特秘回線の逆探知で

 報告の電話を終えた瞬間にかかって来たんだ。『真実を教えます』ってな、」

そこで加持は一息入れる。

「それで?」

「始めてあったときはそれこそ今のお前と同じさ、こんな年端も行かない子供が何を言ってるのかってね、

 だがシンジ君の話した内容ってのがどれもこれも俺の追ってた事の答えだったんでね、

 要約するとな、人間は神様を見つけそれを手に入れようとしたが失敗。それがセカンドインパクト。

 そしてサードインパクトとは…」

加持の話は続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「話はわかった。シンジ君はゼーレの企みを阻止したい。そして我々はP4を倒したい。

 P4を倒す事によりゼーレのシナリオを狂わせるという点で我々の利害は一致する。

 というわけだな?」

「そういうことです。ですから僕は貴方達を支援したいと思ったわけです。」

「見返りはなんだ?」

サキがシンジに問いかける。

「そうですねえ…ここでの戦いが終わった後、今度は僕に協力していただきたい。」

「…具体的には?」

「そのときになったらお教えしますよ。」

「我々を信用してるとでも?」

「ええ…少なくともそこにいる加持さんよりは…」

そういってシンジは最大級の意地悪い笑顔を加持に向ける。

「二重だか三重だかものアルバイトをこなしている人ですからねえ…僕の情報もどこで漏れているやら…ハァ…」

大げさに肩をすくめる。

「おいおいシンジ君、そりゃ無いぜ…」

加持は苦笑する。

「まあお互い利用してるだけですからねえ…」

シンジもふざけてつぶやく。

「まあ。冗談はこれくらいにして」

「ほんとに冗談なのか?」

加持が茶々を入れる。

「そういうわけでサキ殿下、どうかご協力をお願い致します。」

シンジが深々と頭を下げる。

「こちらこそこの状況だ、支援していただけるのは非常にありがたい。」

「そういっていただけるとこちらとしても嬉しいです。僕の方からは燃料、弾薬食料のほか、

 今載ってきた機体、プラス艦載機20機、そして新鋭空母。以上の提供を考えています。

 あ…後ひとつ忘れていました。パイロットとしての僕です。一騎当千といわれる88の方々なら

 これだけあれば十分だと思いますが…」

まっすぐに見つめてくるシンジを険しい目で見つめ返すサキ。

「空母まで提供してもらえるとは…作戦に大幅な余裕が出来る。申し出ありがたく頂こう。

 ただひとつ、シンジ君、君を疑うわけではないが君の設計した機体と君のパイロットとしての腕、

 それは私の目で確かめさせてもらいたい。かまわないかね?」

「ええ…指揮官の立場としては当然のことと思います。僕がサキ殿下の立場でもこんな子供が何を…

 って思うでしょうからね、それでご確認の方法ですがやっぱり模擬戦でも?」

「ああ…ウチの若手とやってもらおう。」

そういってサキは手元のインターホンのボタンを押した。

「キムを呼んでくれ。」







 
「キム・アパ入ります。」

見事な敬礼と共に褐色の肌を持つ小柄な少年が入ってきた。

「紹介しよう、キム・アパ、ウチの最年少だ。キム、こちらは加持リョウジ氏と碇シンジ君。」

「キム・アパです。以後お見知りおきを」

またもや見事な敬礼を加持とシンジに向ける。

「早速だがキム、今からシンジ君と模擬戦をしてもらう。10分後にあがれる用意をしておけ。」

「えっ…?この子と模擬戦ですか?」

「命令の復唱は!!」

サキの激しい声に前のめりになっていた体をピッと伸ばし

「ハッ!!キム・アパ、碇シンジ君との模擬戦の為10分後出撃準備完了いたします!!」

「よしいけ!!」

さっときびすを返すとキムは出て行った。

(何であんな子供と模擬戦なんかやるんだろう?)

疑問を最大限感じながら…

「これでいいか?」

「ハイ、結構です。それでは僕も準備にかかります。」

「しっかりなシンジ君。」

加持の声を背中に受けヘルメットを片手に抱えながらシンジも出て行った。

「いいのかリョウジ?子供とはいえキムは曲りなりにもここで生き残った男だぞ?

 並みのパイロットとは腕が違う。大丈夫なのか?」

サキが心配そうに尋ねる。

「シンジ君はな…姿かたちこそあの通りだが少なくとも俺達の何十倍もの時を生きているはずだ。

 さっきも言ったとおり俺にも本当のところはどうだかわからん。ただ信頼できるところは信頼し、

 利用できるところはお互いに利用している間柄に過ぎん。だがな…あの知識と技術だけは本物だぜ。」

「現実主義者のお前がそういうなら本当だろう。せいぜい楽しみに見せてもらうよ。」

そういってサキは椅子から立ち上がった。

「さあリョウジ、俺達も見物と行こうじゃないか。」



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お久しぶりのGOです。実はシンジ君は加持さんのことをあんまり信用してないということが暴露されてしまいました。

それはそうとシンジ君設計の機体どんな特殊能力があるのやら…

ATフィールドで敵の弾を防いでみたりシンクロして第一宇宙速度をこえてみたり・・・(そんなわけ無いか・・・)

次回手に汗握ってすべる空中戦が始まるかも?


マナ:なんだか、模擬戦とか始まちゃったわよ?

アスカ:シンジ、大丈夫かしら?

マナ:加持さんのお墨付きだから、大丈夫なんじゃない?

アスカ:ここで、信頼を勝ち得たら、ゼーレ戦に有利にはなるわね。

マナ:怪我だけはしなけりゃいいけど。
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