「キモチワルイ…。」

シンジは、今自分が何をしているのかも知って愕然となった。
しかし、悪い事だとは思わない、もうそんな感情は捨てたから。

限りなく続くであろう紅の海。これは、シンジが、世の人々が望んだ世界そのものだった。

Die

もう、コンフォート17も学校もネルフなかった。巨大なレイさえもいつのまにか無くなっていた。なにもない、無の世界。
それでも、赤いLCLを飲めば生き長らえるだろう。生命のスープなのだから。


シンジは、考える


僕は、死にたい? 

死ぬ為にこの世界を創ったのだろうか。
      
                                 ワカラナイ
アスカは、僕が死んだら死ぬのだろうか。
            
                                 ワカラナイ

そしたら、また地球は一からやり直すのだろうか。
                                 ワカラナイ

僕は、同じ運命をたどる為にまた生まれ、そしてこの紅い世界の中でまた死ぬのだろうか。
   
                                 ワカラ……

しかし、その思考はこの世でたったひとりの少女の声で呼び戻された。

「シンジ、あんた死ぬの?」
いつのまに起きていたのか、アスカはシンジの前にいた。彼の瞳を見据えて。

「アスカは?」
わからないから、自分で決められないから逃げる。シンジの悪い癖。
「アンタの事きいてんのよ。」
はぐらかされて、ムッとしたのかさっきよりいくらか強い調子だ。

「わからない。」
「そう。」
そこには、もう静けさしかなかった。

            風も吹かない、そんな空間


死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?
死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?
死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?
死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?
死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?
死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?
死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?死ぬ?死なない?


永遠に続く、思考のループ。さっきとなにも変わっていない。いいかげんシンジもアスカも疲れていた。


「死んだら、今度は使徒もエヴァも来ない世界で普通の人間として生きられるのかなあ。」
二人は、地面に体を倒していた。もう立つ気力など残っていない。

「死んだら、わかるわ。」
「そうだね。」
冷たい言葉。でも『きっとそうね。』などと言われるよりはずっとよかった。
確証のない言葉ほど、今の自分を辛くさせるものなどないに等しい。

空も赤い。でもアスカの赤とは違う。そんな事を考えていた。


時は、それでも流れる。


「もう、眠い……。」
もう、どれだけの時間が過ぎたのだろうか。
二人は、衰弱しきっていた。  

「アスカ、死ぬの?」
答えられない、でも今眠ってしまうのは、死であって死でないとアスカは思った。
「でもね、僕も眠いよ。」

全身の感覚がない、ただだるい。


「アスカ、最期に一つだけお願いしてもいい?」
痛い、肺が。
「な・・に?」
もう、目が虚ろなのはしょうがない。
「最期、僕が死ぬ時まで君を抱きしめても、いい?」
「い……い。」

苦しい、体よりなにより心が。このちっぽけな心が。

               「アスカ。」

それが、この世で人間がはっした最後の言葉だった。
愛しているかもしれない、ただつらかっただけかもしれない、それでもこの言葉には
人間が今まで求めていたものがみえたような気がした。

シンジは、本能だけで、抱きしめるという動作には程遠い、ただ手をアスカの背中に回しただけの行為をやってのけた。

そして、二人は同時に心臓の鼓動を止める。





これが、死ぬというもの。死であって死でないもの





でも地球はまた生まれ変わるかもしれない…………………


マナ:葉月さん、ご投稿ありがとうございました。

アスカ:EOEからのストーリーねぇ。

マナ:みんな死んじゃったのね。

アスカ:死であって死でないもの・・・きっとみんな生まれ変わるのね。

マナ:人類補完計画っていうんだから、みんな永遠の命を手に入れるんでしょ?

アスカ:LCLの中で1つになってね。

マナ:だったら、わたしもアスカもみんな1つになったのね。

アスカ:うーん・・・なんかそういうの嫌ねぇ。

マナ:みんながそういう意識を持ち出したら、この世に還元して来るんじゃないかしら。

アスカ:その時は、もっと幸せな世界になってたらいいわね。

マナ:そうなるわよ。きっと。

アスカ:人は、変わることができるんだものね。
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