エヴァンゲリオン−MPD−

CASE:00 -我はαなりΩなり-  by:羊をめぐる冒険

 赤い世界

 全てがLCLに取り込まれ、今この時を生きているのは僕、碇 シンジと、僕
の隣になって眠っている少女、惣流 アスカ ラングレー

 僕は彼女が好きだ。

 補完が成功してしまい、彼女に触れた。
 
 彼女の内面に触れた。

 そして恋した。 
いや、本当の所、僕は既に彼女に恋をしていたのだろう。ただ、補完をきっ
かけにその事実に気付いたというだけの事だ・・・。

 実際に、補完された成果は今僕の目の前に広がっているLCLの海。

 この中に全ての事実が詰まっている。

 僕はその断片、しかもEVAや補完計画に関する知識を補完された。

 その時の知識の中にアスカの母の情報があった。

 そしてアスカの情報があった。

 補完された知識は何もEVAだけでは無かった。

 人としての知識、人としての人格も補完された。

 嫌だ・・・・・。

 他人の人格で自分を補われた・・・。

 僕はなんて弱い人間なんだ。

 自分を悲観する・・・。

 でも・・・、今はこんな自分を嫌いにはなれない。

 嫌だけど、嫌いになれない・・・。

 アスカが僕の中にもいる・・・。

 それだけの事実が僕の心を安心される。

 僕を人間でいさせてくれる。

 (ありがとう・・、アスカ・・・。僕は君のことを愛してる・・・・。)
 
 変えられぬ事実、変える必要の無い事実。

 始めて会った頃は、我儘な女の子だなって思った。

 でも本当は違った。

 EVA以外自分には無いと思い込んでいるアスカ

 幼い頃のトラウマを隠し通そうと明るく強い女を演じていたアスカ

 自分自身を偽って苦しんでいるアスカ
 
 そしてそんな自分を非難するもうひとりのアスカ

 それらをひっくるめてアスカが好きになった。

 彼女を理解した。

 普通とは違い、補完という形で知ってしまった。

 失礼だと思う・・・・。

 本当なら、少しずつ彼女の口から語ってほしかった。

 でも、今更手遅れだ。

 そして、彼女に恋した。

 手遅れと知りつつ恋をした。

 全てをひとまとめにして、女の子-アスカ-が好きになった。

 揺るぎない想い、今更隠す必要の無い想い。

 しかし、

 (隠す相手がいなけりゃ虚しいだけだ・・・・。)

 胸中で呟く・・・・。

 (使徒としての力が有ったって、誰も居ないんだ・・・。誰も護れな
い・・・・。)

 自嘲気味になってきた。

 他人を恐れていた自分が、今思うと僕の勝手な思い込みだと知った。

 皆が僕のことを嫌いなんじゃないかと毎日心配だった。

 しかし、補完されてからというもの独りで考える時間が増えた為、僕は思い
込みが激しく、なんて身勝手なんだろうって・・・、改まって、痛感し
た・・・。

 (アスカを護れない・・・・・。)  

 でも今更こんなことを思っても無駄だ。

 彼女は目覚めない。

 彼女は二度と目覚めない・・・。

 僕が――殺してしまったんだ・・・・・・。

 あの日からすでに一週間程が過ぎようとしていた。

 実際は、何日か正確には分からない。

 日にちを数える行為自体、億劫になっていた。

 まるで、僕の時間さえもLCLに取り込まれたかのように・・・・

 僕は砂浜に横になって空を見上げている。

 目的もなく、ただ見上げていた。

 ふいに目頭が熱くなった。

 そして頬を涙が伝う・・・。

 (こんな世界を僕が望んだのか・・・・?)
 
 僕の中に何とも言えない焦燥感が湧き上がった。

 (僕のせいで、アスカは目覚めない・・・・・。)

 僕は首を傾けて彼女を見た。

 そこには、永遠に目覚めぬ眠り姫がいた。

 全身に赤いプラグスーツを着用し、しかし、体中包帯だらけの茶色の混じっ
た金髪の少女・・・。

 (ごめんね、アスカ・・・。ごめん・・・・・。)

 (君を・・・、護れなかった・・・・。)

 彼女に叱咤されるごとに、言っていた言葉を胸中で繰り返す。

 (こんな世界望んじゃいない・・・。望んじゃいなかった・・・・。)

 僕は再び視線を空に戻した。

 (アスカの声が聞こえない世界にいて、何になる?)

 

































・・・・



































・・・・・・・


































 ・・・・・・・・・・・・・・・・・



































 (そうか・・・・・)

 










僕は力無く立ち上がり赤い海に横たわっているリリスを見た。

 (戻れば良いんだ・・・・。)

 僕は歩き出した。海に向かって一歩一歩・・・・。

 足取りは遅かったが確実に海に向かっていた。

 (こんな世界にしない為に、僕は・・・)

 「俺は・・・、時を巻き戻せば良いんだ・・・・。」

 傍目から見れば、馬鹿げた事を俺は口走っていた。しかし、俺には出来るの
だ。使徒−リリン−の力の最も重要度を締める能力・・・・、時空転移能力。

 それはリリンであれば、誰しも出来ることである。もっとも・・・・、

 (リリンとして目覚めることが出来たのは俺だけだが・・・・・・・)

 思えばこの時、俺は、自分では気付いていなかったが、一人称が僕から俺に
変わっていた。

 当然なのかもしれない。肉体こそ碇 シンジではあるが、人格は様々な人に
より補完されている。つまり、俺はもう碇 シンジではないのだ。

 (俺は既に・・・、碇 シンジという、ひ弱な鳥ではない・・・・・・。)

 俺の足は既に海の中だった。しかし足は止まる様子はなかった。

 (獲物を狩りし、猛禽だ・・・!!)

 次第に俺の周りに金色の光が現れた。その光は霧の様だったが、霧よりも存
在感が明白で、俺の周りを包み込んでいた。

 次の瞬間俺は跳んだ。

 過去に向けて、アスカをこんな目に逢わせない為に・・・・そして・・・

 (あの男を殺す為に・・・・)

 俺の意識はそこで暗転し、そして世界は歪曲を開始した。

 
 
 



























あとがき(かもしれない・・・)  


 LAVIEさんのShinji IS God?が閉鎖となってしまったため、こちらのサイトに無遠慮ながら送りつけた羊をめぐる冒険、略して羊です。
 ちなみに、このSSは断罪物ではありません。ええ、違います。
 さて、ここで作者の簡単な自己プロフィールを!!
 年齢:内緒
 身長:170くらい
 体重:60,0くらい(多分)
 座高:企業秘密
 好きな漫画:多重人格探偵サイコ
 好きな小説:上遠野 浩平先生の作品
 ↑↑↑↑
  こんなんが、僕の簡単なプロフィールです。僕の生い立ちから没落まで簡略化してお届けしております。まさに波乱万丈な人生と比喩するに相応しい人生ですね。僕って凄い。ではさような「うりゃあ!!」
 どすっ
 げぺっ
 「タームさんのサイトで、またシリアス街道ぶらり旅〜夏の果物編〜を再開するつもりなの?」
 ↑ちなみにこれユイさんね
 なんですか?その正気を疑うタイトルは?
 「一々気にしてたら――――を喰らわせるわよ(笑顔)」
 あれを喰らった次の日から約一週間、二日酔いみたいな状態になります。ですから嫌です。気にしません。
 「結構。あんた最近要領を得てきたわねぇ・・・」
 でしょ?人間は常日頃から進化を繰り返している生き物です。意味の無い一日など存在しないのですよ。
 「一時期進行がもの凄く遅くて、それを毎回あとがきのネタに使ってたあんたの台詞とは思えなわね・・・」
 それは言いっこ無しですぜ姉御・・・
 「姉御かどうかはさて置いて」
 じゃあ女王様。
 「またそのネタ?Shinji IS God?に行った事が無い人に理解できないネタを使うなっての」
 それはそうと、ユイさん、僕達って此処に居て良いんですかね?
 「どゆこと?」
 ほら、↓でキャラコメってしてるでしょ?だから後書きでこんな事して良いのかなぁ・・・・って思って・・・
 「そこらへんは国家権力でなんとでもなるわ」
 あぁユイさん(無視)そろそろあとがきで2ページ分つかってしまいます!!えらいこっちゃえらいこっちゃ!!
 「あら?じゃあそろそろ退散しようかしら?」
 それでは皆様!!感想、アドバイス、お待ちしてます。遠慮なくコメントしてください!!ではでは!!!
      (ぎりぎり2ページ分であとがきを終えた羊をめぐる冒険でした


マナ:羊をめぐる冒険さん、投稿ありがとーっ!\(^^)/

アスカ:やっぱり、シンジはアタシのことが好きなのね(*^^*)

マナ:時を遡ったら、次はどーなるかわかんないよ。

アスカ:何度繰り返しても、アタシの魅力の前に、シンジは無力だもん。

マナ:魅力じゃなくて、迫力の間違いでしょ。
作者"羊をめぐる冒険"様へのメール/小説の感想はこちら。
yukorika@hotmail.com

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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