エヴァンゲリオン-MPD-

CASE:01 覚醒、後に突発的行動 by:羊をめぐる冒険



 第三新東京市、そこに僕は呼び出された。
 
 呼び出したのは、僕の父 碇 ゲンドウだ。
 
 数年間音沙汰がなかった父から唐突に手紙が着た時はさすがに驚いた。
 
 手紙が着たと知った時は、何かしらの期待があったことを僕は否定する気に
なれない。

 しかし、結局その期待は簡単に、徹底的に、打ち砕かれた。
 
 文面には一言、

 
 来い ゲンドウ

 
 ふざけるな
 
 僕はやりきれない気持ちになった。
 
 (一応父親だろ?もっとマシな文章を書けないモンかねェ・・・。)
 
 僕は胸中で愚痴をこぼした。
 
 僕は第三新東京市のターミナルの近くにいた。

 モノレールが途中で緊急警報のため動かなくなり、ここで立ち往生していた。
  
 緊急警報が発令されているため、人っ子一人いない。
 
 僕はシェルターに行こうか、それともあと二駅分歩こうかどうか本気で迷っ
ていた。
  
 人が自分の周りにいないだけでこうも不安になるのかと、本気で思った。情
緒不安定もどきの状態になっていた。
 
 一応、シェルターにも行かず、かと言って何が出来る訳無いので突っ立って
いるだけ・・・・。何もする事が無かったから僕はズボンのポケットに入れて
いた封筒を取り出した。
 
 ゲンドウからの手紙だ。
 
 そして今度は、もう一通の封筒を取り出し、同封されている写真を取り出し
た。
 
 写っているのは二十代後半の女性。一昔前に流行った(?)だっちゅ−のの
ポーズで写真に写っている。胸元を完全に意識したポーズだ。左手はピースサ
イン。写真の胸元に矢印を向けて『ここに注目(はぁと)』

『私が迎えに行くから待っててね』
 
 などと書いている。馬鹿じゃないの。
 
 (この女、親父の何なの?)
 
 (親父の愛人?)
 
 (ひょっとして僕の将来の義母さん!?)
 
 真面目に心配(馬鹿)になってきた僕は辺りを一望した。

 (葛城ミサトって人らしいけど・・・・まだ来ないのか?)

 実際待ち合わせの時間にはまだある・・・。それ以前に待ち合わせ場所がこ
こではなく、さらに二駅分、街の中央に近づいたターミナルで待ち合わせのは
ずであった。しかし、諸々の事情により、今に至るわけである。

 「はぁ・・・・・・。」

 僕はとうとうその場に座り込んでしまった。

 待ち切れないのか、それともただ単に疲れただけなのか、自分でも分からな
い。

 「はぁ・・・・・・・。」

 そのときの僕はただ溜め息をつくしかなかった。



 不意に、僕の鼻の奥で血の焼けるような匂いが広がった。

 (鼻血?)

 僕は鼻に手をやってみたが手に血はついていなかった。

 (なん・・・だ・・・・?)

 続いて襲ってきたのは頭痛・・・・。これまで体験してきた痛みのどれとも
違う痛み。

 「がはっ・・・か・・・・」

 声にならない喘ぎが口から漏れる。

 激痛が頭の中を暴れまわっている。

 僕はいつの間にか立ち上がり、頭を抱えてふらふらと頼りなく歩いていた。
何を求めて歩いたのかは分からない、が、しかし、体は勝手に何かを求め、彷
徨い、必死に何かにしがみ付こうとしていた。

 「痛い・・・痛い・・・・!」

 普段する頭痛とはちがい、まるで頭の中に何かが入り込んでくる様な感じ
だ・・・。無理矢理、頭に何かを捻じ込んでいるような痛み。

 ダンッ!

 僕はとうとう痛みに耐えることが出来なくなり、地面に勢いよく膝を付いた。

 「うぅううぅ・・・」

 痛みは引くどころか更に痛みを増していく。

 「ぐがぁっ!があああああああああああ!!!!」

 僕は地面に倒れた。痛みは衰えることを知らないかのようにその強さを増大
させていく。そして意識を

失う間際に妙に聞きなれた声を聞いた。

 (帰ってきた・・・。俺は、帰ってきた・・・・。)

 (うう・・・・・、誰だ・・・・?)

 (随分遠回りをしてしまった・・・・。だが、これも目的の為・・・・・。)

 (お前・・・は・・・だれ・・・なんだ・・・・・)

 (・・・・・・・・・・・・・・やはり・・・、失敗か・・・・・。ここの
シンジと完全に同化出来ていない・・・・・)

 (だ・・・れ・・・・なん・・・だ・・・・・・・)

 僕の意識はそこで途切れた。

 (俺か?俺は・・・・・)



 
(・・・・ンジ・・ん・・・シ・・ジくん・・・・)

 誰だろう・・・。誰かが何かを言っている。

 (シンジ・・ん・・・・シンジくん・・・・)

 あぁ、僕の事を呼んでいるんだ。でも誰だろう?

 あっ、呼んでいるだけじゃない、僕の体を揺さぶっている。何だろ?せっか
く気持ちよく寝ているのに、

邪魔するなんて・・・。僕を呼んでいる人はかなり捻くれ者だぞ、きっと。

 (シンジくん・・・・シンジくん・・!シンジくん・・!)

 「うぅ〜〜ん、もう少し寝かせてよ・・・。」

 「シンジくん!!」

 「ほえあっ?」

 今まで以上に大きな声で、そして大きな力で揺さぶられ、僕は間の抜けた声
をあげてしまった。

 「シンジくん!大丈夫!?」

 心配そうに僕の顔を覗き込む女の人がいる。声には聞き覚えがなかった。し
かし、顔には見覚えがあった。

 「えっ、あっ・・・っと・・・葛城さん・・・ですか・・?」

 その人物は先程の写真の(馬鹿そうな)女の人だった。

 「ええ、そうよ。それより大丈夫?」

 「えぇ、なんでもありません・・・・・。」

 「そう・・・。それより急いで!早くここから離れなくちゃ!」

 「え?どうしてですか?」

 僕は葛城さんが唐突に言った言葉が理解出来なかった。しかし次の瞬間否応
なしに僕はその言葉の真意に気付く事になる。

 

 ズズゥーーン・・・


 
 ふいに、地響きが辺りに響いた。

 「?今のなんです?」

 「ヤバッ!シンジくん!急いでアタシの車に乗って!」

 「え?え?」

 葛城さんは僕の腕を乱暴に掴むと、近くに停められている蒼いルノーに飛び
乗った。

 「えっ?何?何なんですか?」

 僕は慌てて葛城さんに質問をする。現状にイマイチ付いて行けてない。

 僕が気絶している間に何か状況が変化したのだろうか。

 「ちょっち飛ばすから、しっかりつかまっててね!」

 「えっ?えええええええええ〜〜〜〜〜〜〜!!!??」

 葛城さんが言うと同時にルノーは猛烈なスピードで発進したので、思わず口
から叫び声があがる。

 (質問に答えてもらえる状況じゃないのかな・・・?)

 胸中で涙しながら思う・・・・。

 

 ズズゥーーン・・・

 

 (?)

 先程と同じ振動がルノーを襲う。僕は不審に思い、辺りを見回す。

 「あ、あの・・・、さっきからしてるこの揺れなんです?」

 「あぁ、これ?う〜〜ん・・・。窓の外見てみて。」

 葛城さんに言われた通りルノーの窓から外を見てみた。

 「!?」

 そこには現実離れした光景が展開されていた。

 そこには、UNの兵器が空中を旋回し、必死に攻撃している。その攻撃目標
が・・・・

 「かかかかかかかか怪獣!!?」

 「使徒よ。」

 「し、しと?」

 葛城さんの口から聞き慣れない言葉が飛び出た。

 「葛城さん、しとって・・・・?」

 「あっ、ミサトで良いわよ。」

 「は、はぁ・・・。で、ミサトさん!使徒って!?」

 「今は詳しく説明している暇はないわ・・・。」

 「はあ・・・・・」



 ズガァーーーーン!!!!



 唐突に爆音が響いた。驚いて、再度窓の外に眼をやった。すると、UNの兵器
が、使徒とよばれる怪獣の腕から発せられた閃光に貫かれ、破壊されていた。

 「うわぁ・・・、強〜〜〜い・・・。」

 「税金の無駄遣いよねェ・・・。」



 キィィーーーーン・・・



 (?)

 再度聞こえてきた擬音を不審に思い、窓の外に目をやる。

 すると、UNが使徒から一目散に逃げていく。

 「どうしたんですかね?諦めちゃったんですかね?」

 僕は窓の外を指差しながら言った。

 「え?ま、まずい!!」

 「へ?」

 「顔引っ込めて!!」

 「へ?へ?」



 ピカッ!



 窓の外が一瞬光ったかと思うと、次の瞬間



 ズゴオオオオオオ!!!



 
 爆音と爆風が、同時に襲ってきた。爆風をルノーは真横から受け、大仰なア
クションと、共に転がる。
「うわっ!!うわあああああ!!!」

 ルノーが一回転、二回転・・・・。

 「きゃあぁぁあぁぁぁぁ!!!」



 ごろごろごろごろごろ・・・・



 ルノーが転がる。転がる。転がる。



 「だ、大丈夫ですか!?ミサトさん!!」

 「ぐすん。あいつら、手加減を知らないのかしら・・・。」





 



 「わはははははははははは!!」

 巨大スクリーンが正面にある発令所に、壮年の男性の声が木霊する。

 「見たかね!?これが我々のN2地雷の威力だよ!!これで君の新兵器の出
番もないというわけだ!!」

 男性の嬉しそうな声が、だだっ広い発令所に木霊する。

 その声を彼等がいる箇所から少し下の席に座っているサングラスをかけた怪
しい男性は、ただじっと画面を見ていた。

 「電波障害のため目標確認までしばらくお待ちください!」

 モニターの前に座っている眼鏡を掛けたオペレーターの男性が声をあげる。

 「あの爆発だ。ケリはついている。」
男性は嘲るように言う。

 しばらくし、モニターに著しい変化が表れた。

 「爆心地にエネルギー反応!!」

 「何ぃ!!?」

 発令所に戦慄が走る。

 「映像回復しました!!」

 先程までノイズが混じっていた巨大スクリーンが、一瞬で鮮明になる。

 「おお!!」

 鮮明になった画像の中心にはまるで衣に蹲ったような体勢で佇む深緑色の人
間の姿形に似通った使徒、『サキエル』がいた。

 「我々の切り札が・・・・。」

 「町一つを犠牲にしたんだぞ!」

 そして画面ではサキエルが再び動き出す様を鮮明に映し出した。

 「化け物め・・・・。」

 搾り出すような声・・・と、同時に発令所に電話が掛かってくる。

 「・・・・・・はっ・・・・・・はっ、分かっております・・・。・・・・・
はい・・・・では失礼致します・・・。」ピッ・・

 そして、電話が切れると同時に先程までただ座ってスクリーンを見ていたサ
ングラスの男性がゆっくりと立ち上がり、彼等の方へ向き直る。 

 「碇くん、本部から通達があった・・・。」

 男性は碇と呼んだ男性を忌々しげに見詰め、悔しそうに次の言葉を搾り出し
た。

 「本作戦の指揮権は君に移った!!お手並みを拝見させてもらおう!!」

 「我々国連軍の所有兵器が通用しなかった事は認めよう。しかし碇く
ん!!・・・・君なら勝てるのかね?」

 「ご心配なく・・・、そのためのネルフです。」

 碇はサングラスを中指でずり上げ、嘲笑うかのように言った。







 「特務機関ネルフ?」

 「そう。国連軍の非公開組織・・・。」

 先程とは場所が変わって今は、なにやら長い通路をルノーがカートレインに
乗って滑走している。

 「私もそこに所属してるの。ま、国際公務員ってやつね・・・。あなたのお
父さんと同じよ・・・・。」

 「『人類を守る立派な仕事』ってやつですね・・・。」

 「なにそれ?皮肉・・・?」

 「別に・・・・。」

 僕は自分でも嫌になるくらい投げ槍に答えてしまった。

 そこから数秒ほど会話は止まり、ルノーの中を重苦しい沈黙が支配した。
・・・

 ・・・・・・・・・・・

 「ミサトさん・・・・。」

 「ん・・・、何・・・・?」

 「父は・・・何のために僕を呼んだんですか?父はもう僕の事なんか忘れて
いるのだとばかり・・・」

 僕は、手紙を受け取った時点で思い始めた事を告白した。

 「――それは・・・、お父さんに会って直接聞いた方が良いわね・・・。」

 「これから・・、父の所に行くのですよね?」

 僕は、恐る恐るミサトさんを見ながら言った。ミサトさんはちょっと困った
ような表情を浮かべ、僕の方を見ている。

 唐突に、鼻の奥で、地の焼けるような匂いがした。そして、一瞬頭痛がして、
それから意識は暗転してしまった。僕の意識だけ、暗転してしまった。

 「・・・苦手なのね・・・、お父さんのこと・・・・。」

 「・・・・・・・。」

 「・・・?シンジくん・・・?」

 「苦手とか・・・、そんな甘っちょろいもんじゃない・・・。」

 「え・・・・?」

 「俺は、奴に対して、殺意以外の感情を持っていない・・・・。」

 「シ、シンジくん・・・!?」

 







 俺は既に状況を把握しつつあった。

 どうやら俺は、過去に戻ってくる事に成功したらしい。実際、時を超えるの
はこれで二度目。一回目は赤い海から2000年に跳んだ時、そして、二度目
が今回だ。2000年に跳んだ時は、俺の肉体は、雨宮 一彦という男の肉体
に居候させてもらっていた。要するに、多重人格になっていた。しかし、以外
な事に雨宮 一彦という男は、俺が入る前から解離性同一性障害という病気で、
心の中に別の人格が何人かいた。故に、俺が入っていった時も、案外冷静に、
「もう一人増えた所であまり大差ない」とクールに決め

た。もっとも、その人格の人間全員と話した訳ではなく、主人格の雨宮 一彦
と、もう一人の人格、西園 伸二の二人としか会話していない。他にも人格が
存在するという事を知ったのは二人の言葉による物だ。2000年の3月から
9月の六ヶ月間、俺は、彼の元で様々な事を学んだ。もっとも詳しく学ぼうと
思った事は、人の殺し方だ。どうすればより効率的に人を殺せるか、また、格
闘術、拳銃の扱い方、更には自分をコントロールする方法まで学んだ。
 肉体的に学んだのではなく、頭の中でしか学んでいなかったので聊か不安だ
ったが、まぁ、何とかなるだろうと、俺はポジティブな考えを持っていた。
ようするに、以前と似た状況らしい。唯一の誤算が、その肉体が俺自身だと言
うことだ。

 この事に最初は戸惑った物の、実際この方が作業をやりやすいかもしれない。

 この世界の碇 シンジが使徒と戦っている時に、俺が強制的に俺たちの体の
主導権を握り、暴走に見せかけて使徒を殲滅できる。使徒を大っぴらに倒して
も決して疑われる事はない。

 (しかし、やはり協力者は必要かな・・・?)

 一応、未来から帰ってきて全てを知っているとはいえ、たとえ、使徒の力を
持っていても、やはり一人だと心もとない。

 だから、協力者が必要となる。

 (ミサトさんを協力者にするか・・?)

 (いや、復讐を俺の計画に挟まれると迷惑だ。論外。)

 (綾波を・・?・・・確かにこちら側に引き込むのは可能だ。しかし、彼女
が完璧にこちら側に付くかと聞かれると、確信が持てない。)

 綾波はアイツを信用しきってる・・・。

 (でも、一応綾波は候補だな・・・・。)

 (リツコさんは・・・?知識もある。判断力もある・・・。しかし、彼女は
アイツの事を・・・・。)

 (一応候補だな・・・・。)

 (おっと、大事な奴を忘れていた。)

 碇 シンジ

 一応俺たちは同じ人物なのだが、俺のほうが後から来た為、主人格はあいつ
だ。だから、この計画を遂行するには否応なしにシンジの協力が必要になってくる。

 (こいつは考えるまでも無く協力者だ。なんせ・・、俺なんだからな・・・。)

 とすると、シンジは数の中に入らない・・・。

 (最低でも二人だ・・・。)

 (綾波と、リツコさんか・・、最終候補は・・・・。)

 どちらにしろ、誰も味方にならなくても、最低限の事はしよう・・・。

 (アスカ・・・・・)

 俺は胸中で愛しい女性を想った。





 白を基調とした廊下、ゴミ一つ、塵一つ落ちていない、完璧に清掃された廊
下。そこを今僕は歩いているわけで・・・、しかし、結局歩いているだけで・・・

 「ミサトさん・・。」

 「ん?何?シンジくん。」

 「・・・・迷いましたね・・?」

 「えっ!?(どきぃ!)」

 どうやら図星だったらしい。

 「はぁ・・・」

 溜め息をついた。中学生らしからぬ壮年の溜め息・・・。自分でもちょっと
嫌になる。

 「シンジくん、若いのにそんな溜め息ついちゃだめよん!それに迷ってない
わ!もうちょっとだから辛抱なさい!男の子でしょ!!」

 (男の子とかそういうの関係ないと思うんだよなァ・・・。)

 先程からずっと歩いている。ミサトさんの足取りに迷いがない。恐らく最初
は自信を持って進んでいた

のだろう。だが、僕は見てしまった。

 (内容が同じ掲示板を三度見てしまったんだよな・・・。言うべきかな・・・・)

 (おかしいわね。確かこっちでいいはずなんだけどナ・・。)

 ミサトはもうすこし真面目にここの説明を聞いていればよかったと、今更に
なって自分の怠け癖を呪った。

 その時、彼女たちの背後で、チンッという金属音に似せた電子音が聞こえて
きた。

 二人同時に振り返ると、ちょうどエレベーターから金髪の二十代後半の女性
が降りてきた。

 真一文字にむすばれたルージュをひいた唇。染めているのであろう、不自然
な金髪。目元にはホクロがあった。いかにも私は科学者ですと主張している白
衣。

 一見して絡み辛い風貌だと、シンジは思った。

 「おそかったわね、二人とも。」

 「あ、リツコ・・・」

 ミサトさんが情けない声を出す。

 「あんまり遅かったから迎えに来たわ。人手も時間もないんだから・・・グ
ズグズしてる暇はないのよ。」

 リツコと呼ばれた女性がミサトさんに容赦ない鉄槌を下す。

 「ごめ〜ん、迷っちゃった。まだ不慣れでさァ・・。」  

 一方ミサトさんはそんなリツコさんの言葉を気にすることもなく、悪びれる
様子も無く、照れるように頭を

掻いている。

 「その子ね・・・、例のサードチルドレンって・・・。」

 (三人目の適任者−サードチルドレン−・・・って、なんだ・・?)

 「あ・・・はじめまして、碇 シンジです・・・。」

 僕は一応挨拶をしておいた。

 「私は技術一課E計画担当博士――赤木リツコ。よろしく。」

 リツコさんは上っ面だけの笑みを僕にみせた。そして形だけの握手を求めて
きた。

 僕は断わる事も出来ず、取り合えず手を握った。

 (女の人の手って暖かくて柔らかいなァ・・・・って、僕は何を考えている
んだ!?(汗))

 頭の中でちょっと関係の無い事を妄想して、シンジは少々自嘲気味になった。

 「いらっしゃい、シンジくん。お父さんに会う前に見せたいものがあるの。」

 「みせたいもの・・・。」

 僕はリツコさんの意味深な言葉を反芻した。





 「指令!使徒前進!強羅最終防衛線を突破!!」

 「進行ベクトル5度修正なおも進行中!予想目的地、我第三新東京市!!」

 オペレーター達の叫びが発令所に響く。

 碇 ゲンドウはその様子をただじっと見詰めている。

 目の前にある巨大スクリーンには前進する使徒が映っていた。

 「よし!総員第一種戦闘配置だ!」

 『はっ!!』

 ゲンドウがオペレーターに指示をだす。その指示にオペレーター全員がユニ
ゾンする。

 「冬月、後を頼む・・・。」

 「ああ・・・。」

 冬月と呼ばれた壮年の男性は重々しく頷いた。



 ウィィィーーーン・・・



 ゲンドウは、エレベーターに乗って降りていく。

 それを横目で見ながら冬月は目線をスクリーンに移した。

 (三年ぶりの息子との再会か・・・)

 冬月は不器用な父親と、その父親に対して恨みを抱いているだろう少年が、
果たしてまともな会話が出来るか心配だった。結局、人と人は完全に理解しあ
えることは有りえない。だがしかし、

 (その為の補完なのだろうがな・・・・。)

 冬月はスクリーンを凝視した。

 使徒が行のスピードを更に上げたかのように見えた。







 闇。

 今の風景を言葉で表す場合、これ以上適切な言葉はないだろう。

 ミサトさんと、リツコさんに連れられて、ここに来たまでは良いのだが、電
気がついていない精で何も見えない。

 「真っ暗ですね・・・。」

 僕は独り言を呟くかのように言った。

 「今電気をつけるわ。」

 闇の何処にいるか分からないが、リツコさんの声がする。

 

 カシャン



 何処かで金属音がした。同時に急にその空間に光が灯る。

 「うっ・・・」

 僕は腕で顔を覆い、光を遮った。

 光に目が鳴れてきたので腕を降ろした。

 そしてその光を受けて照り輝く紫があった。



 「か、顔おおお!!?」

 

 僕の目の前には顔があった。

 紫色のヘルメットらしき物をつけ、額からは角が出ている。目は鬼のように
吊り上がっていて、見る者には恐怖感を与える。

 「ろ、ロボットなんですか・・?」

 僕は恐る恐る、背後に居るだろうリツコさんに、声をかけた。

 「厳密に言うとロボットじゃないわ。人の作り出した究極の汎用ヒト型決戦
兵器、人造人間エヴァンゲリオン!!」
 
リツコさんが、誇らしげに言った。

 (なんか、長ったらしい名前だなぁ・・・・。)

 (そう言うなよ。呼ぶ時は略称でEVAって呼ぶんだ。不都合はないだろう?)

 不意に、僕の頭の中で誰かが話し掛けてきた。誰かは分からないが、誰かは分かる。

 (また君か・・・。車の中で何度も僕に話し掛けてきたけど、君は何なのさ?)

 (俺はお前、お前は俺。同じ存在だ。ただ違う所と言えば、知ってるか知ら
ないかの点だけだな・・。)

 (知ってる・・?君が何を知っているって言うんだい?)

 (そのうち話してやるよ。補完の済んだお前だ。全てを受け止められるさ・・・。)

 (そのうちねェ・・・・。補完って何・・・?)

 (どうでもだろ・・・。それよりもシンジ、俺のことを『君』なんて呼ぶん
じゃない。俺はお前だぞ?)

 (僕が君ってことは名前が一緒ってことだろ?同じ名前の人を呼ぶのって抵
抗があるんだよね・・・。)

 (それもそうか・・・。じゃあ、自己紹介しとこう。俺の名前は・・・・)

 (名前は・・・・?)

 (・・・俺はアマミヤ カズヒコだ・・・。)





 「シンジくん・・?」

 「はっ、はい?!」

 不意に声を掛けられ、動揺した。頭の中での会話に集中してしまい、リツコさんとの会話が途切れていた。

 「どうしたの・・?」

 ミサトさんが、心配して、声を掛けてきた。

 「何でもないです。ただ、ちょっとビックリしただけです。」

 (多重人格になっちゃったのかな、僕は・・・。)

 「そう・・・。」

 リツコさんが、大して興味の無いようなあじけの無いいい加減な声をあげる。

 「それより・・、これも父の仕事なんですか・・・?」

 「そうだ・・!」

 不意に上の方から声が聞こえてきた。

 記憶の中に埋もれかけていた声・・・。

 数年前僕を捨てて、何処かへ行ってしまった、あの男の声・・・。

 僕は恐る恐る上を見上げた。

 そこには会いたかった男が居た。

 そこには会いたくなかった男が居た。

 矛盾した感情が僕の中で渦巻く。

 「ひさしぶりだな・・・。」

 父さんが、感情の篭らない声で言う。

 「父さ「ゲンドウ!!」

 僕の言葉は途中で中断された。僕自身の言葉によって・・・。

 「碇 ゲンドウ・・・。俺は、お前を殺す為に戻ってきた・・・。」

 「何を言っている・・・。」

 ゲンドウは表情を変えずに言った。

 そして、僕の口は咆哮をあげた。溜まりに溜まっていた物を一気に吐き出すように、
 
「死・ね・ェ・えええええ!!」

 次の瞬間僕は跳躍していた。たった一回の跳躍で既にエヴァンゲリオンの角
の先端部分まで飛び上がっている。

 僕の体は既に僕の制御下になかった。

 今の僕の体はアマミヤ カズヒコが制御している。





 あとがき(に非常に酷似しているもの・・・)


 Shinji IS God?に投稿していたMPDに加筆をしております。
 主にあとがきを加筆しておりおます(爆)
 本編をもっと修正しろよと思う方がひょっとしたらいるかもしれません。
 まぁ、多分、そんな恐ろしい事を口にする人はいないでしょうけど(笑)
 「本編を修正しなさいよ」
 いたあああああああ!!!!!!!(飛び跳ねる)
 「煩いわね!!当然のことでしょ!!?普通加筆って言ったら本編の方でしょうが!!!」
 そそそ、そんな恐ろしい事よく口に出来ますね、ユイさん・・・
 「何も恐ろしい事ないじゃない!!」
 あんまり騒ぐと血圧が上がりますよ
 「いらない心配しないでよ!!!」
 な、何を言うのですか、ユイさん!!僕はあなたの事を第一に考えているんですよ(笑)
 「(笑)←がある時点で信用ないわよアンタ・・・・・」
 (笑)
 「ムカッ・・・(笑)返し」
 (笑)返し返し返し
 「返しすぎじゃない?」
 そんな事ないですよ(笑)戻し
 「戻すな!」
 (笑)斬り
 「必殺技!!?」
 (笑)拳
 「もう、疲れた・・・。さよなら」
 待ってくださいよ、ユイさん(笑)溜め
 「煩い!帰る!!」
 (笑)砲!
 「んぎゃあ!!」
 は、はじめてユイさんに一矢報いることが出来た!!
 人生の目標を達成したので皆さん、さようならぁ〜〜!!
 「(笑)連脚!!!」
 んぎゃう
           by;羊をめぐる冒険


マナ:シンジが突然、碇司令にぃ・・・。(@@)

アスカ:やっちゃいたい気持ちはわかるけど・・・びっくりしたわね。

マナ:やっちゃだめでしょ。(^^;

アスカ:世界平和の為には必要なのよ。

マナ:世界平和を言うなら、あなたこそ悪の権化だわ。

アスカ:アンタはただ、シンジを奪いたいだけでしょ。(ーー#
作者"羊をめぐる冒険"様へのメール/小説の感想はこちら。
yukorika@hotmail.com

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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