エヴァンゲリオン−MPD−

 CASE:11 物語は始まる


 彼女の肉体は確かに死に、朽ち果てた。

 されど、彼女の魂は確かに生き延び、そして、再び現世へと舞い降りた。

 彼女は天使である。

 残酷な天使である。

 彼女の奏でるテーゼは

 人を再生へと導くのか。
 
 それとも、破滅を誘発するのか。

 それは誰にも分かりはしないし、

 彼女自身も分からないだろう。

 結局のところ、終焉の時が、早いか遅いかの違いでしかない。

 人は

 儚く

 脆く

 故にお互いを求め合う

 自分勝手で

 だが暖かい

 そんな種なのだ。

 そんな







 
















 使徒なのだ
























 空気が重い

 空は青く澄み渡っているのに

 風が心地良いのに

 この部屋の空気は重い

 その部屋には音が無いように思えた

 実際には『彼女』が叫んでいる筈なのだが

 『彼女』は『彼』入ってきた事さえ気付かず

 そして、『彼女』の直ぐ側で『彼』が重大な話をしているにも関わらず

 『彼女』は叫び続けた

 だが、彼女だけ別の空間に取り残したかのように、『彼女』の音は僕達には届かなかった

 物語は

 まだ動き始めたばかりの頃だった

 彼女は何も知らず、物語を読み進める

 まだ見ぬ本の1頁、1頁をワクワクしながら捲る事になるのだ

 それが、この物語での『彼女』の出発点なのだ。




 「クローン・・・・・??」

 声が震えている。焦点が定まらない。だが、目の前に父が居て、その横で、ミサトさん

が叫んでいて、僕の後ろで綾波さんが僕を見詰めている事は理解出来る。

 だが、今、僕の頭の中はそれらを統括するべきものが欠落したかのように、紐を結う紐

がなくなったかのように、思考はばらばらに散らかっている。

 「使徒リリス・・・・??2人目・・??!3人目!!!???」

 叫びだった。

 「なんだよ!!なんなんだよ!!!ここに来てから訳がわからないよ!!!」

 「なんだよ使徒って!!!なんだよクローンって!!!2人目って!!3人目っ

て!!!!!ここに、第三新東京市に来てから何もかもが変だよ!!!」

 「使徒!!EVA!!!そして・・・!!!!!」

 










 「カズヒコ!!!!!!」























 見ていると心が温かくなり、見ていると抱き締めたくなる男の子。

 私が読んだ事のある本で、今の私ととてもよく似た心境の女の子がいた。

 その子は、その心境を恋と言った。

 恋
 
 だとすれば、私は彼に恋をしたのだろう。

 恋をしたのだと自覚すると、胸がキュンと締め付けられるような錯覚に陥った。

 だが、不快ではなかった。

 嬉しかった。

 何時までも見ていたい男の子。

 何時まで見てても飽きない男の子。

 そんな彼が、顔を強張らせ、大声で叫んでいる。

 どうして?どうして?

 怖い顔をしないで

 私に向けたあの優しい笑顔を見せて

 私が大好きなあの笑顔を見せて

 そして私の方を向いて、抱き締めて

 華奢な私の体が壊れてしまう位抱き締めて

 

 カズヒコって誰?

 その人の名が貴方を苦しめるの?

 その人の名が貴方をそんなに恐ろしい形相にさせているの?

 それほど貴方を追い詰めるカズヒコって誰?

 私は貴方の力になりたい。

 だから、カズヒコが誰なのか、何なのか知りたい。

 それを知れば貴方が何を恐れ、何に対して怒りを抱き、何を求めているのかが分かる気

がする。

 だから知りたい。カズヒコとは



 何なの・・・・・・?






 「あ・・・・綾・・波さん・・・・・」
 
 背中に感じる二つの豊かな山。

 肩から胸にかけて回されている白く細い両腕。

 安心できる暖かさが僕を包み込んでいる。

 背中に感じる二つの膨らみ。

 「大丈夫・・・・」

 彼女はそっと呟いた。

 「怖くないわ・・・・。私はカズヒコという人の事は知らない・・・。でも――」

 彼女はそこで一度言葉を区切った。戸惑っているのかのような。そういった感じであっ

た。
 
 「大丈夫・・・・。私が貴方を守るもの・・・・・」

 なんとも言い表し難い感情が僕の心を包み込んだ。寒い土地で、一人ぼっちのところに

毛布をかけてもらったかのような。そんな、暖かさが僕の心を占めていた。

 「ククク・・・・、皆、俺の時とは全然違うなぁ・・・・」

 僕の心は急に温かさを失った。僕の口から紡ぎ出された声によって・・・。

 「綾波・・・。一つ教えといてやるよ・・・・・」

 「シンジ・・・くん・・・・・?」

 彼女は僕の語調が激変した事に戸惑い、僕の首に回していた手を解いた。

 「俺がカズヒコなんだよ・・・・・」

 やめれくれ・・・

 これ以上、僕の大事な人を傷つけないでくれ・・・・

 「安心しろ・・・、シンジ・・・・。」

 だが、僕の心境に反し、カズヒコの言葉はひどく落ち着いていた。

 と、言うより、いつもと感じが違う・・・・。

 「綾波・・・。そして、ゲンドウ・・・、いや、父さん・・・。」

 ひどく悲しそうな語調に変わっている。いや、語調だけではない。彼の心には今までと

は違う、別の感情が渦巻いていた。

 それは、嫉妬によく似ていた・・・・。

 「なんだ・・・。カズヒコ・・・・・・。」

 父さんは、大して驚いた様子もなく、まっすぐ、カズヒコの目を見詰めている。

 綾波さんも、カズヒコを見詰めている。

 「2人に・・・、話がある・・・・・・」

 カズヒコは立ち上がった。

 「が・・・、その前に・・・・。」

 カズヒコは、部屋の隅に目を向けた。そして、そこにあるものに向ってこう言った。

 「まず、ミサトさんをどうにかしよう・・・・」

 未だに電話に向って叫びつづけているミサトさんの存在に僕達はいま、やっと気がつい

た。

 とりあえず、僕(今はカズヒコ)と父さんはミサトさんを抱えて廊下に投げ飛ばした。

 病室に、本当の静寂が訪れた。

 
 
 

 数分の沈黙が病室を包み込んだ。

 俺達はその間、何も喋らず、ただお互いの事を見詰めつづけた。

 ゲンドウは、サングラス越しにオレの瞳を覗き込むように。

 オレは、右目を瞑りながら、ゲンドウを見詰める。

 綾波は、恐らく、まだオレの事を見ているのだろうか。

 まぁ、どうでも良い事だ。

 「一体、どうしてこんな事になったのかなぁ・・・・」

 オレは自重気味に呟いた。

 「こんな事・・・・・?」

 ゲンドウは表情を変えずに言う。

 「綾波の事だよ・・・。なんで彼女が死んでるんだ・・・・?」

 「それは、先程シンジにも説明したが、零号機の機動実「そうじゃねぇよ・・・」

 オレは、ゲンドウの言葉を遮る。

 「死んだ原因じゃねぇ・・・。何が作用して綾波は死んだ・・・・・?」

 「??どういう事だ・・・・?」

 「少なくとも、オレの時は綾波はまだ二人目だった・・・・。だが、どう言う事だろう?

こっちに戻ってきた時にはすでに三人目だ・・・・。」

 「何が言いたいのだ・・・?」

 「ひょっとして、2000年の五月頃に、お前に接触したのが最大のミスなのかもな」

 「2000年の・・・五月・・・・?」

 「アマミヤ カズヒコという名前に覚えは無いか・・・?もしくは、西園 伸二という

名前に・・・」

 「西園・・・伸二・・・・。・・・・!!まさか!!お前は雨宮 一彦なのか!!!?」

 ゲンドウが叫んだ。それに綾波は多少ビックリしたようで、小さな体を強張らせた。

 「クク・・・・、西園を通してしか、雨宮を思い出せないのか・・・?そんなに忘れた

いのか?
 
 雨宮 一彦の事をさぁ・・・・?」

 「やめてくれ・・・・」

 ゲンドウは苦しそうに呟いた。

 「たった一度しか会わなかったのに、お前の記憶の奥底に、錆のようにこびり付いた雨

宮 一彦・・・」

 「やめてくれ・・・・!」

 「居酒屋で喧嘩しただけなのに、奴の名はお前の中に残り続けた・・・」

 「やめろ・・・!!」

 「なぁ!、なぁ!!どうだった!!?」

 「頼む・・、やめてくれ・・・!!!」

 「喧嘩した奴が次の日、碇 ユイと並んで歩いているのを見て、お前、どうだった!!?」

 「やめろォオオオ!!!」

 ゲンドウは、オレの胸倉を掴んで、俺を睨みつけた。

 鼻息が荒い。顔が上気している。

 「だからお前は殺したんだよなァ!!?テメェの舎弟を使って雨宮を殺したんだよな

ァ!!!?」

 「うおおおおおおおお!!!!!!!」

 ゲンドウは、オレの胸倉を掴んだ手の反対の手を振り上げた。

 ゲンドウは拳を振り下ろした。

 次の瞬間、オレは右目を開いた。そして、ゲンドウの左肩を凝視した。

 紅い右目でゲンドウの左肩を凝視した。

 次の瞬間、ゲンドウの左肩から、鮮血が吹き出た。

 噴水のように、血が、紅い血が吹き出た。

 オレは、その血を全身に浴び、真っ赤に染まった。

 綾波も、その光景を受け入れきれないのか、茫然としたまま鮮血を浴びる。

 ゲンドウが床に崩れ落ちる。

 オレは、そんなゲンドウを見詰めつづけた。

 「ウワァアアアアアアアアア!!!!!」

 オレの口から悲鳴があがった。オレじゃない。アイツだ。

 「父さん!!父さん!!!」

 シンジは、倒れているゲンドウに駆け寄った。

 (どういう事だ!!何もしないって!!)

 (ゲンドウが殴りかかって来たんだ。自己防衛だよ・・・・)

 「ふざけるな!!元はと言えばお前が父さんを怒らせるような事を言ったから!!!」

 (怒らせるような事・・・・・?)

 カズヒコは、シンジの頭の中で嘲笑した。

 (逆なんだよ、シンジ・・・・)

 「何が・・・!!?」

 (ゲンドウは俺を怒らせた・・・。いや、怒らせたって位、甘くない・・・)

 (ゲンドウは、俺を二度殺そうとして、一度殺している・・・・)

 「えっ・・・・??」

 「俺は、ゲンドウに殺されたんだよ・・・!!」

 再び、俺はシンジから体の支配権を奪い、そう叫んだ。

 


                 つづく



あとがき(進展無し(笑

皆様に報告が御座います。
前回、The Epistlesに掲載させて頂いた僕の作品-MPD-
それのCASE:05にて、誤植が発覚・・・・
CASE:05にて初登場しました委員長どの・・・
彼女の名前が
何故か
洞木 ノゾミになってました・・・・。
・・・・・・・
ヒカリじゃん(笑)
ミスです。読んでいる物好きな方々、気にしないで読んでください・・。
「同じミスをShinji IS God?でもやってるのよねぇ・・・・・」
それを完全に忘れて投稿している僕ってなんて前向きなんでしょう(笑)
「前向きっつ〜〜か、馬鹿よね・・・・」
馬鹿って言ったら自分が馬「黙れ」どがすっ
げぺっ
「馬鹿というより・・・・見直しが足りないのよアンタは・・・・」
試験があっても見直しなんて断固としてしませんからね、僕は・・・
「それで迷惑するのは誰かしら・・・・・?」
マリオでしょう
「断じて違う!!」
じゃあ、クッパ?
「ターム様でしょう!!?掲載して頂いてるんだから!!!迷惑かかりまくりよアンタ!
!!」
ノッコノコ
「微妙になんか違う!!!」
ルウィージ
「仮にも緑色の奴よね!!?」
・・・・・
「ど、どうしたの・・・・・?」
てへっ、ネタギレです(笑)
「国民的アクションゲームを舐めすぎよアンタぁぁああああ!!!!」
    (何度目かの)強制終了・・・


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