新世紀EVANGELION MACHINE ARMS

第3話 「あなたと私」


オーバーザレインボー 後部デッキ



アスカはびっくりしたようだ。
無理もない。
僕が、
僕が、
僕が人を殺したんだから。


アスカにすべてを話して何かが切れる音がした。
いや、心が壊れたのかもしれない。
ナンダカオカシクナッテキタ。
アハハハハハハハハハ。

「ふふふふふ」

自称気味に笑ってしまう。
だっておかしいじゃないか!
人を殺して、のこのこアスカの前に出てくるなんて。
僕みたいなやつは、人間のクズだ!
大体虫が良すぎたんだ!
人を殺したようなやつが世界を変える?
そんなの無理に決まってる。

ソシテボクハオオゴエデワラッタ。
アハハハハハハハハハハ。


「ふふふふ、あははははは
 おかしいだろ?アスカ。
 こんな殺人者が今この場で生きているんだよ!」

もうどうでもよくなってきた
アスカは俯いている。
僕なんか見たくないんだろう。
殺人を犯した僕を。
でも今の僕には気づかなかった。
アスカが手を握り締めているのを。
そうすることでなにかに耐えるように。


「しかも両腕は兵器!
 いつまた殺すか分からない!
 そんなことをしでかすやつはみんなから
 後ろ指差されて孤独に生きるんだよ!僕みたいなやつは!
 なのにいま、アスカの横に居るんだ。傑作だね!
 そんなな精神異常者がここに「バキッ」



そんな鈍い音がして僕は中に舞った。
ナニガオコッタンダ?
だがすぐに甲板に叩きつけられた。
一瞬なにが起こったか分からなかった。
顔がズキズキと痛む。
アスカガボクヲナグッタノカ?
だが、ようやく分かったころ、僕はアスカに胸倉を掴まれていた。
アスカの顔はものすごい顔をしていた。
その顔には怒り、悲しみの感情が剥き出しにされていた。
ナンデソンナカオシテイルンダ?

「シンジ!あんたなにいってんのよ!!!
 自分がおかしい!?そんなの知らないわよ!!!
 精神異常者!?今のあんたを見ていたらそうなるわよ!!
 わたしがいつあんたを笑った!?
 笑ってんのはあんたよ!!
 あんたはただ自分から逃げてるだけよ!!
 むかしのあたしのように!!
 人を殺した!?そんなの関係ない!!
 わたしはたとえ殺人鬼だろうと
 使徒であろうとシンジがシンジならそれでいいのよ!!
 ほかには何も望まないわ!!
 世間に後ろ指指されようと関係ない!!
 あたしにはシンジがいればそれでいいの。
 もうこれ以上シンジが
 自分を傷つけるのを見るのは嫌なの!!
 だから、もう、もう、ううう」

そう言ってアスカは僕の胸で泣き始めた。
僕の胸にあったかいものが広がっていく。
それはアスカの涙とともに広がっていく。
アア、ナニカくずれていく。
僕の心にあった悲しみが、絶望が。
僕はやさしく彼女を抱きしめた。
あの事件から
いや、過去から戻ってくるときからだろう。
なくなった本当の意味でのやさしい自分が
戻ってきた気がする。

「アスカ、ありがとう。そしてただいま。」

その言葉にぼくは自分のすべてを込めた。
その言葉を聞いてアスカは僕を見上げた。
青い瞳の奥にあったのは、喜び
その瞳を見ていると僕は何かがこみ上げてきた。
すると僕はアスカに抱きしめられていた。
彼女のいい匂いがしてきた。

「お帰りなさい。シンジ。
 もう無理はしなくてもいい。
 わたしがあなたの支えになるから。
 泣きたいときは思いっきり泣けばいいわ。」

アスカはそう言って僕の頭をなで始めた。
やさしく、そして僕の存在を確認するように。

う、

アスカの胸で僕は今までの悲しみを洗い流した。

無限に広がる海をバックに
少女にもたれかかる少年。
それをやさしい眼差しで見つめ
抱きしめ少年をさすってやる少女。
いつもの勝気な少女は
一人の少年の母のように見えた。

ひっく、ひっくと声が聞こえる
オーバーザレインボーの後部デッキ。
しばらく彼らの邪魔はしないでおこう。










少し前
オーバーザレインボー 艦橋



(たくなんなのよ!こいつら!イライラ)

「では弐号機の引渡しは新横須賀に陸揚げされたときに 
 と言うわけですね。分かりました。

ばたんと書類を閉じるミサト
こめかみに血管がかなり浮いている。
あきらかに怒ってる。
(ったく!人がこんなに重い書類を持て来ているのに、
 目も通さないなんて!)
ちなみに、ミサトが持っている書類は30`くらいある。
なんでこんなにあるかというと、ミサトの友人のリツコいわく
「このくらい細かい書類がないと太平洋艦隊のお堅い連中は
 納得しないわよ。」
ということらしい。
しかし、リツコの読みも外れてしまったようだ。
まさか読んでもらえないとは思ってもなかったようだ。

「ただし、非常事態ではネルフの権限が最優先
 されることを忘れない・に!

半分切れかけながらミサトは
廊下へつかつか出て行った。
もちろん書類はもってない。
(自分たちで見とけ!こんのバカヤロー!!)

「ミサトさん!まってぇなぁー」
「すごい、すごすぎる!!」

結局少年2人は艦橋あたりをうろつくこととなった。








オーバーザレインボー 第2ブロック 食堂

「はらたつわねぇえええええええ!!」
グシャ、と音を立ててつぶれるドイツ産のビール缶。
もうすでに空だったらしくこぼれてはない。
よく見ると彼女の横には5本くらい原型をとどめてない空き缶が。
そして当の本人は女性では考えられない顔をしている。
その形相はゲンドウでも逃げ出すほどの顔だった。
もちろんこの食堂には誰も居ない。
正確に言うと全員逃げた。
ミサトのゲンドウも逃げ出す顔を見たからだ。
・・・作者も逃げたい・・・



しばらくして
やけ酒をあおるミサトの裏に男の影が。
ミサトもそれに気づき、拳銃に手をのばす。
それでも男は近づいてくる。


ミサトは銃の安全ロックをはずした。


ガタン

いきなりテーブルを蹴飛ばし同時に
ミサトが銃を構えた先にいたのは・・・

無精ひげ
ちゃんとしまってないネクタイ
髪を後ろで束ねた髪型

手をあげて冷や汗を流して立っているのは・・・・加持だった。

「よ、よお、葛城。」

、なんであんたがここにいんのよ!!」

「いや、アスカの随伴と本部の諜報部に
 転勤になったからなんだが・・・・
 先に拳銃しまってくれないか?」

そう言われて拳銃をしまうミサト。
ほっとして加持も手をおろす。

「ったくあんたの顔をこんなところ
 でも見なくちゃいけないなんてねぇ。」

「ははは、でもどうしたんだ? 
 いきなり拳銃とは物騒だな」

報告は聞いてるでしょう

「・・・ああ」

「だからよ。」

加持はもちろん知っていた。
本部のチルドレンを狙った事件が
多数起こっていることを。
そして、本部はその原因が諜報部の
レベルの低さと判断し、教官として誰がふさわしいかを
スーパーコンピューターMAGIに判断させたところ
加持の名前が出てきたのだった。
それで加持が本部に呼ばれたのだった。


「ところでアスカ知らないか?
 どこ見かけてもいないんだが?」

「・・・加持君、正直に答えて、
 アスカの変化、どう思う?」

「・・は?」

「私はアスカが丸くなったという何というか、
 なにかがあるのよ。絶対
 シンジ君とも初対面ではなかったはずよ。
 加持君、何か知ってる?」

「え、いや何も。
 それにアスカは変わりないぞ。
 いつもと同じく勝気で少しわがまま
 そして自分は一番じゃなくちゃいけないと思い込んでる。
 アスカはいつものとおりだ。」

「そう・・・」

「何があったか教えてくれないか?」

そしてミサトは加地に何があったか話した。
そう、シンジを見つけたアスカがいきなりシンジに抱きつき
ラブラブだったことを。

「なるほどねぇ。
 あのアスカが。」

「これは推論なんだけど
 聞いてくれる?」

「言ってみろ」

「彼らはもっと昔に会ってた。
 そしてそのころから親しい関係になってた。
 でも、シンジ君もアスカも今までの資料から言って
 会えるはずがない。
 そうなると可能性はひとつ」

「どこか俺たちの知らないルートで知り合ってたってことか」

「ちがうわ。」

「だったら何なんだ?」

「私も最初は加持君と同じように考えてた
 でもシンジ君は使徒戦で、命令違反を犯したり
 私の作戦内容に意見を言ってきてる。
 彼の言った通りの作戦は成功している。
 特にヤシマ作戦がいい例だわ。
 私はポシトロンライフルを使った超長距離射撃を提案した。
 エヴァ2機にそれぞれ砲手、防御の役割を与えた。
 勝率は8.0%。私が考えたなかで最も高かった。
 でも彼は猛反対
 そして彼が提案した作戦は
 私の作戦をもとにしたものだった。
 ポジトロンライフルを使っての超長距離射撃。
 そこまでは私と一緒だった。
 でも彼の次の言葉に驚いたわ
 アメリカのトップシークレット
 最新攻撃衛星イカロスを使うと言い出したわ。
 わたしはこのとき彼に恐怖を抱いたわ。
 なぜこの子がイカロスを知っているのかわからなかった。
 これは極秘裏に進められた計画。極秘中の極秘。
 私が知ったのもついこの間。
 勝率は91.3%
 彼はイカロスを乗っ取り、正確に使徒を攻撃して見せた。
 そして作戦は成功した。
 加持君、私は確信するわ。
 彼らはこれからのことを知っている。間違いなく。」

「考えすぎだろう、葛城」
 
「・・・今日家を出るとき、
 彼は私にあるものを用意してほしいと言ったわ」
 
「なんだい、それは?酔い止めか?」

加地は笑いながらタバコに火をつけようとした。
しかし、次のミサトの言葉にタバコを落としそうになった。
そして加地もシンジがすべてを知っていると確信した。
(俺が何を運んでいるかも知っているな。絶対に。
 ならば彼らは俺の知りたいことも・・・・)
ミサトは何といったのか。
彼女はこう言った。





















「N2爆弾よ」

これはN2爆弾をつかうということだろう。
つまり使徒の襲来を意味していた。











次回予告

ミサトはシンジが敵ではないかとおもい始める。
そこに第7使徒 ガギエルの襲来。
ミサトはこの戦いのあと2人を加持の船室に呼んだ。
アスカとシンジが船室に入ったとき、
ミサトは銃を握り締めていた。
そして一発の銃声・・・・

何が起こったのか!
シンジは、
アスカは、
加持は、
ミサトは。




次回

新世紀EVANGELION MACHINE ARMS

第4話
「真実のFamily」

サービスは・・・・
難しそう・・・・・


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