新世紀EVANGELION MACHINE ARMS



第8話 「再製の魂と再生の心」



葛城家 10:00


朝食を終えてこの家にいる者皆がひとつのテーブルに集まっている。
そう、これからのことを相談するためだ。
和やかな雰囲気の中に少し緊張感を持った独特な雰囲気の中会議は始まる。
(今回の会議に限り発言を分かりやすくします。)

ミ:「それじゃあ、何から決めようかしら」

シ:「ミサトさん、今晩の夕食のメニューのこともあるから
   リツコさんの引越しから決めてもらえませんか?」

ミ:「そうね。じゃあリツコどうするの?」

リ:「どうするのってねぇ、アタシは引越ししたいわよ」

ミ:「んじゃあ、このリツコの引越しに反対の人〜」

もちろん誰も手をあげない。

ミ:「そんじゃあ、リツコ、今日からあなたはこの家の、この家族の一員よ。
   改めてよろしくね!リツコ」

リ:「ふふふ、こちらこそミサト」

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ

リ:「ありがとう、みんな」

ミ:「さてと、これでリツコの引越しは決定。
   今日の午後にも荷物を取りに行きましょうか」

リ:「そうね、住民票くらいMAGIをつかえばすぐだし。」

ミ:「それじゃあ、次の話題。
   現在の状態についてリツコから話してもらうわ」

リ:「分かったわ。
   それじゃあ、人類補完計画について説明するわ。これには2つあるの。
   ひとつはゼーレと呼ばれる秘密結社によるもの。
   このゼーレの計画はアタシは詳しく知らないけど
   シンジ君が話してくれた通りの計画だと思っても間違いない。
   シンジ君の話を聞く限りではダミープラグとロンギヌスの槍がないと発動できないと思う。
   だから、ダミープラグの開発は表面上は進むけど進展はほとんどさせないし
   ロンギヌスの槍はネルフが確保していれば問題ないと思うわ。
   つぎに碇指令の計画。
   これは碇指令がアダムとリリスとの禁断の融合を果たすと言うもの。
   碇指令は亡くなった碇ユイに会うためにずっと今までこの計画を進めてきた。
   この禁断の融合により、爆発的なエネルギーが発生してサードインパクトを起こす。
   周りの人など気にしないあの人らしいやり方だわ。
   そして、この計画に必要なのはレイなの。
   詳しくは言わないけど、レイはこの計画の要なの。
   でも、レイはそんなことしたくないでしょ」

レ:「はい、私には家族がいます。
   こんな温かい絆を私は捨てたくありません。
   それに、みんな私のことを人間として見てくれる」

リ:「分かったわ。
   レイがこの計画を望まない限り、碇指令の計画は発動しない
   ただ、アタシは気になることがあるの」

ミ:「何なのリツコ?」

リ:「昨日のシンジ君の話の中に出てきた悪魔が言ったこと覚えている?
   神は記憶をためこみ、何かをしようとしていた。
   しかも実行寸前だったのよ。つまり、ここで第3の補完計画が浮上してきたの。
   はたして神が何をしようとしてるのかは分からない。
   ただ、そんなに期待してもいいものじゃないと思う。
   いずれにせよ、あたしたちの未来を神様が今ごろ決めるのはごめんね」

ア:「確かにそうね。
   アタシたちは自分の未来を作るために戻ってきたの。
   神様なんかに邪魔はされたくないわ」

リ:「とりあえずアタシの知ってるのはここまで。
   ゼーレについては加持君がよく知ってると思うから
   加持君、バトンパスね」

加:「分かった。
   俺を雇っていたゼーレ。
   これは昔から世界を動かしてきた金持ち連中さ。
   ネルフの資金もここから出てる。
   聞いた話ではこいつらは延命措置を取っているみたいだ。
   よっぽど死ぬのが怖いんだろう。
   もっとも中には普通のやつもいるが。
   それでだ、ちょっと興味が沸くような物を連中は持ってるんだ」

ミ:「加持、それはなに
   まさか、聖書とかそんなものじゃないわよね」

加:「残念でした、というのかな?
   葛城の答えは半分あたってる」

ミ:「どういうことよ」

加:「連中は死海文書を持ってる。
   死海文書は死海で発見された人類が誕生する前から存在したと言われる予言書さ。
   これはキリスト教の元になってると同時にこの宗教を根本から覆すとも言われているものだ。
   セカンドインパクト前には解読もある程度進んでいたんだが
   セカンドインパクトのごたごたで行方知れずになった。
   それをどうしたのかゼーレは教典として持ってるのさ。
   使徒の襲来もこの死海文書に書かれており、
   使徒との戦いはほんの序章にしかすぎないらしい」

ミ:「そんなものがあったの」

加:「ああ、だが俺の知ってるのもここまでだ。
   スパイをしててもすべてを知ることはできないからな」

ミ:「じゃあ、今度は次の使徒について。
   シンジ君の話では次は浅間山火口にて使徒が現れるそうね」

シ:「はい」

ミ:「時期的にはそろそろ来そうね。
   リツコ、D型装備の強化はできるかしら?」

リ:「そうね、何とかするわ。
   それに、D型装備に取り外し可能な冷却パイプを取り付けてみるわ。
   あとは装甲の強化をやれる範囲で進めるわ」

ミ:「分かったわ。お願いねリツコ」



ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ


リ:「MAGIからのメッセージみたいね。ちょっと見てくるわ」

そう言ってリツコは自分の部屋に戻る。


























そして、しばらくしてからリツコが慌てて戻ってきた。

「どうし「大変よ!セントラルドグマに何か起こったわ!」

「セントラルドグマって・・・・!!!!まさか!!!!

「メインLCLプラントじゃないけど異常が確認されたのはダミープラグの開発ルーム」

「ミサトさん!僕も行っていいですか!?」

「だめよ、危険すぎるわ!」

「いや、どうしても僕は何があったのかこの目で見たいんです!」

「「「私たち(僕)もいくわ!(いきます!)」」」

「・・・・わかった。ついてきなさい!

そしてシンジたちは家を飛び出しネルフへ向かった。












セントラルドグマへ続く廊下

「ねぇリツコ!異常って何が起こってるのよ!
 必要とあらればガスマスクがいると思うんだけど!」

「MAGIの監視カメラがその部屋で動く物体を見つけたの!」

「りっちゃん、それってねずみかなんかじゃないのか!?」

「そんなことはないわ!
 赤外線で判断しているから移動する物体の大きさも大体わかるわ!
 間違いなく侵入者よ!」

「他に具体的な情報はないの!?」

「ないわ!その部屋にある物といったら・・・未完成のダミープラグくらいしかないわ!」

「仕方ない!
 みんな!敵はどこから来るか分からないから注意して!」

















セントラルドグマ ゲート前




ピッピッピピピッピ・・・・



「いい、みんな。
 これから先はレイの・・・・
 すべてが明らかになるわ。
 どんなことがあってもレイを一人の女の子としてみてあげて」

リツコはコントロールパネルを操作してみんなに言った。
レイは覚悟を決めていた。信じてはいても・・・・・・

「あたりまえよ。そんなの言われなくても分かってるわよ」

ミサトはそう言いながら銃をいつでも撃てるようにする。
そう、みんな銃を構えいつでも突入できるように構えた。
シンジも左右マシンガンとガトリングにそれぞれ変えて扉が開くのを待った。

そしてリツコが自分のカードを読み取り機に通した。




ピーーーーーーーーーーーッ




ガコオン


ウィーーーーーーーン






ロックをはずす音が聞こえ重い扉は少しずつ開いていった。





ガコォオン






そして完全に開ききったとき、全員がセントラルドグマに飛び込んでいった。
























ダミープラグ開発室前

「ここよ!」

リツコはカードを取り出し読み取り機に通した。

ピーーーーーーーッ

しかし今度は開くことはなかった。
何度やってみても同じだ。

「中からカギがかかってるわ!」

「リツコさん!下がってください。」

そうしてシンジは右腕をレールガンに変え発射した。


ドゴーーーン


扉は跡形もなく吹っ飛んだ。
ミサトが中に入り、それにみんなが続く。
別段変わったところなどなかった。
わけのわからない機械が壁際にセットされ
部屋の真ん中あたりにエントリープラグのようなものが横たわっていた。

「そんな・・・・
 なんてこと・・・」

リツコが見たもの。
それは・・・・・・・



















ハッチの開いた、中に何も入ってないダミープラグだった。
















「なんてこと・・・
 ダミーが・・・
 自分の意志を持って逃げ出したの?」

「リツコ!どういうことなの?」

ミサトには何のことか分からなかった。
(ダミーが意思を持つ?機械にそんなものはないはずよ!)

「レイ・・・・」

「はい・・」

「みんなに真実を教えなくてはいけないようなの・・・・
 教えてもいいかしら・・・・・?」

「はい、私は赤木博士を・・・
 みんなを信じてます。」

「ありがとうね・・・レイ」

リツコはレイを抱きしめた。
しばらくの間続いた後、
「ついてきて」
とリツコは言って歩き出した。














セントラルドグマ 中枢



「みんなにこのことを言うのがつらいなんて・・・・
 昨日の夜のことがなければアタシはなんのためらいもなく
 これからのことを話したでしょうね・・・・」

「リツコ、ここは何をするところなの」

ミサトの疑問ももっともだ。
この世界でミサトや加持、それに前の世界で心を壊していたアスカもこの施設のことは知らない。
カヲルはうすうす気付いているらしく顔からいつもの笑顔が消えている。
この施設が何をするところか・・・
レイとどういう関係にあるのか・・・・
知っている者は少ない。

「今に分かるわ。
 ・・・・・本当にいいのね、レイ。」

「はい、何度も言いますが私は信じてます」

でもレイは不安だった。
人間ではないと知られる・・・・
そうしたら・・・・家族は離れていくのではないだろうかとレイは思っていた。

「分かったわ・・・」
 
リツコは携帯端末を操作した。


周りの水槽がごぼごぼと音を立てて何かの姿を映し出した。

「な、なんなの!これは・・・レイ!?」

「そうよミサト・・・
 これはレイの・・・・・・
 パーツなの・・・」

「なぜ!」

「私は碇指令にエヴァから碇ユイの代わりとして作られました。
 そして、ガフの部屋から魂を定着させた・・・・
 それが私。そしてここにいるのは・・・私の、私の・・・」

レイは涙を流しながら語った。
そのレイをリツコは抱きしめながら言った。

ごめんなさい、あなたの口から言わすなんて・・・・

「いいんです。赤木博士。」


そして、ミサトが二人を抱きかかえながら言った。

「レイ、私たちはあなたにどんな経緯があろうとも気にしないわ。
 だからレイ、安心して」

「そうだともレイちゃん。俺たちはそんな些細なことなど気にしないさ。
 なんたって家族なんだからな!」

「レイ、アタシは前の世界では人形みたいだって言って嫌ってた。
 でも、あんたは正真正銘の人間よ。
 それにあなたが信じた絆はそんなにやわなもんじゃないわ」

「レイ、僕らにどんな経緯があろうとも心配することはないよ。
 大丈夫、みんなこう言ってるんだ。ほかの人も受け入れてくれるよ」


と、家族という絆がどれほど強いかを知ったレイの感動的なシーンの中
シンジは違和感を感じた。
それは前の世界でここにきたことがあったからかもしれない・・・・

(なにか・・・おかしい・・・)









そして、シンジは気づいた!
たくさんのレイの素体が浮く中、さっきと場所違うに移動した・・・・













レイの素体を・・・・・・










それは・・・・・
殺気の篭った目でレイを見つめていた・・・・・
そしてにやりと笑っていた。
シンジにはその素体の目が・・・・赤く光ったのを見た。


(!!!)

シンジはゆっくりレイたちに近づいてこう言った。

「ミサトさん、リツコさん、レイ。
 絶対に驚いたりしないでください。
 いいですか?」

「ぐす、なに、どうしたのおにいちゃん」

「よく聞いて・・・・
 リツコさん僕のちょうど真裏にいるレイの素体・・・分かりますか?」

「ええ、分かるわ・・・
 こっちを見て笑ってるあれね」





























「あれがダミーです。
 ダミープラグの中にいたやつです」



























「リツコさん、あいつを何とかできませんか?」

「・・・・殺すと言うことかしら?」

「・・・・・はい。
 あいつはレイのことを狙ってます。
 このままほっとけばいつかは・・・・ 
 こんなことを言うのは嫌なんですが・・・」

「・・・・・・・分かったわ。
 レイ、よく聞きなさい」
 
リツコは端末をレイに渡す。

「このボタンを押せば水槽内に通じるパイプやダクトなどの
 すべての通路が瞬時にベークライトで固まるわ。
 そして、こっちのボタンを押せば水槽内にあるものはすべてなくなる・・・」

レイは端末とリツコの顔を交互に見ている。

「これはあなたがやらなくちゃいけないことなの・・・
 あなたが一人の人間として生きていくためにはこれを壊さなくちゃいけないの。
 作ったアタシじゃなくてあなたが押さなくちゃだめなの・・・・
 ごめんなさいね。作るだけ作ってあなたにこんなつらい仕事を押し付けるなんて」

「・・・・いいんです。
 私もこの私でないもののせいで悲しむ赤木博士を見たくありません。
 それに自分で未来は作るものです。
 みんなもつらいことがあっても逃げ出しませんでした。
 だから、みんなは家族を手に入れられたと思います。
 私だって乗り越えれます。だって、赤城博士がそばにいるから・・・」

「レイ・・・」

「博士、お願いがあります。
 このボタンを押すとき・・・・・・・手をつないでいてもらえますか?
 お兄ちゃんもアスカにそうしてもらったように。」

「分かったわ」

もうレイに不安などなくなっていた。
それは横にリツコと言う大切な人がいたからだ。
前の世界ではありえなかった関係・・・・
そして二人は立ち上がる。
レイは一つ目のボタンを押した。

ピッ

ジャーと言う音がして、水槽のパイプにベークライトが張り付く。
中にいたダミーも驚いてガラスを叩いている。
加持やアスカはゆっくりと水槽から離れてミサトのところに行った。
カヲルは逆に水槽に近づいて素体を見ていた。
その目に怒りと悲しみを映し出しながら・・・・




ドンドンドンドン





そして、レイはリツコの手を強く握り






ドンドンドン









リツコもレイの手を強く握り返し











ドンドンドンドンドン

『やめろーーーー』




















「さようなら」




















ピッ















レイはボタンを押した。




中にいたダミーは暴れ狂う。
周りの素体もどんどん崩れていった。
そして、リツコはレイにもたれかかった。

ごめんね・・・レイ


レイは最初は驚いたがやがて
シンジが泣いていたミサトを慰めた時のように
リツコの背中をさすり始めた。
やさしく、やさしく・・・・・・









レイとリツコがともに体を預けあうその裏では
レイの素体とダミーと、
そして彼女の暗い過去が崩れていった。
オレンジのLCLの光が中枢に広がっている。
ミサトたちは少しはなれたところで彼女らを見ていた。
そして・・・・・・・
ミサトは誰にも聞こえない小さな声で語った。

「レイ、
 過去を拭い去ることはできないのよ。
 でも、忘れることはできるわ。
 あなたは前に進んだのよ。
 リツコとの絆もようやく手に入れられたのね。
 
 リツコ、
 あなたはレイのいい母親になるわ。
 レイの支えになり、レイに支えてもらう。
 あなたも手に入れたのね。
 本当の絆を。」

シンジはアスカに寄りかかり
ミサトも加持に寄りかかり、
カヲルはしばらく水槽にもたれかかっていたが
レイとリツコに呼ばれ、彼もまた家族のぬくもりを知った。
そしてリツコは家族がどれほどすばらしいものかを知り
レイとカヲルはいつまでこうしていたいと思った。


















       『だけどいつか気づくでしょうその背中には
               はるか未来目指すための羽があること』

                   (残酷な天使のテーゼより抜粋)



















次回予告


レイとカヲルに頼まれ、そして自ら望んで彼らの母となったリツコ。
そして数日後ネルフの警報が意味するのは第8使徒の出現だった。
そして前回と同様に深く熱いマグマの中に降下するアスカ。
使徒に果たして勝てるのか!
作者は湯煙ムフフな温泉を書くのか!
いや・・・・・・・書けるのか?

次回

新世紀EVANGELION MACHINE ARMS

第9話
「セカンドマグマダイブ」

さ〜てこの次も、サービス、さーびすぅ!


ーーーーーーーーーーーあとがきーーーーーーーーーーー

いきなりですがこの話での再生と再製の違いについて説明しておきます。
再生:元に戻る。正確には本来のあるべき状態へ。
再製:再び作り出す。オリジナルとは別のもの。
この概念でレイとダミーを書かせていただきました。
レイは再生、ダミーは再製という感じです。

さーて、次はアスカの『マグマダイバー』になるわけです。
・・・・・温泉シーンどうしよう。
今必死に考えています。
そろそろ過去の話も書かなくちゃいけないし・・・・
ムズカシー。

まだまだ謎は増えていきます。
途中で解決されるもの・・・・・
そして現在登場予定のある『兵器』・・・・
思いもかけない展開にご期待ください。

最後になりました。
いつも応援してくださる皆様。
掲載してくださるタームさん。
そして・・・・・・この話を読んでくれた全国の皆さん。

「心のそこから・・・ありがとう!

また次のあとがきで会いましょう!
inserted by FC2 system